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Dragon's Jazz Corner

「ライブ・レポート・2012」

注:詳しいライブ・レポートは下↓へスクロールしてご覧下さい。


■TOKU・カルテット TOKU(vo,flh)、ユキ・アリマサ(p)、楠井五月(b)、横山和明(ds)
ゲスト:Shiho(フライド・プライド)
2012/12/02
■バート・シーガー・トリオ バート・シーガー(p)、池長一美(ds)、吉野弘志(b) 2012/10/08
■松島啓之・クインテット 松島啓之(tp)、山田穣(as)、今泉正明(p)、楠井五月(b)、高橋徹(ds) 2012/09/10
■エリック・アレキサンダー
&ヴィンセントハーリング
エリック・アレキサンダー(ts)、ヴィンセント・ハーリング(as)、
百々徹(p)、金森もとい(b)、小林陽一(ds)
2012/07/27
■ごめんね 後藤輝夫(ts)、橋本信二(g)、小泉高之(ds)、土田晴信(org) 2012/07/14
■鈴木良雄&Generation Gap 鈴木良雄(b)、中村恵介(tp)、山田拓児(sax)、ハクエイ・キム(p)、大村亘(ds)
ゲスト:アダム・ナスバム(ds)、山本昌広(as)
2012/05/28


[ライブ・レポート]
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年




■TOKU・カルテットを聴いてきました。
TOKU(vo,flh)、ユキ・アリマサ(p)、楠井五月(b)、横山和明(ds)
ゲスト:Shiho(フライド・プライド)

TOKUさんは以前見に行ったライブのゲスト出演が良かったので、いつか聴いてみたいと思っていました。
今回ようやくその機会を得ました。

まず感じたのはジャズっぽい雰囲気を持っていたことです。
そこにいるだけでジャズを感じる何かです。
実にカッコいいと思いましたよ。
声はシブいし深みもあります。
加えてスキャットは管楽器奏者なのでお手のものです。
このジャジーな雰囲気はたまりませんね。

まずは軽く「Night And Day」でスタート、続いて「My Foolish Heart」、
「The End Of A Love Affair」の並びとなりました。
ボサノバの「コルコバード」、「イパネマの娘」、
ゲストにフライド・プライドのShihoさんが登場してエリントン・ナンバーかな。
それと今の時期にふさわしいメル・トーメの「クリスマス・ソング」を披露してくれました。
その他に「Fly Me To The Moon」、「Smile」など、
特に後者は「ス〜マ〜イ〜ル」の大合唱で盛り上がりました。

今回はバックも素晴らしいと思いました。
ユニークな音使いを聴かせるベテランのユキ・アリマサさんと
期待の若手ベーシストの楠井五月さん、天才若手ドラマーの横山和明さんという布陣です。
これが初めてとは思えないほどバッチリとハマっていました。
それぞれがお互いに刺激を受けて切れ味の鋭い各ソロが展開されました。
これもまたジャズの醍醐味のひとつですね。
だからトリオによる歌の間奏がまた大きな聴きどころになりました。
TOKUさんも感化されて歌はもちろんのこと、フリューゲル・ホーンの響きが良くなったのは当然です。
ちなみにこのカルテットは全員牛年生まれと分かってみんなで大笑いです。
こんな因縁もあってこれからも共演は続くのではないかな。
これからのカウ・カルテットの活躍を期待しましょう。

At The "Sometime" Kichijoji On 2012/12/02




■バート・シーガー・トリオを聴いてきました。
バート・シーガー(p)、池長一美(ds)、吉野弘志(b)

バート・シーガー・トリオを聴くのは何回目になるのかな。
このHPでライブ・レポートをし始めた2005年にはすでに登場しています。
紹介するのも一番多いと思います。
何度も書いているのでもう書くこともないほどです。

でも今回もやはり素晴らしかったです。
というより、一番良かったかもしれません。
演目はバート・シーガーのオリジナルが中心でそれにスタンダードが挟まる構成。
「My Romance」、「Summer Night」、「You Go To My Head」、「Everything I Love」など。

ここは何といってもバート・シーガー&池長一美のコンビネーションが抜群なんです。
この二人のインタープレイが最大の聴きどころ、見どころになります。
20年来の付き合いで気心も知れていて大親友だそうです。
だからこそ二人のコンビネーションが光る。
バートが先行し池長が応える、もちろんその逆もあります。
曲想もリズムもその日の気分しだい、だから同じ曲でも次に同じようには決してなりません。
変拍子は当たり前、刻々とリズムが自在に変化するんです。
今回、特に素晴らしかったのは「Everything I Love」でした。
間奏でしばらく二人はデュオで演奏しましたがこの「会話」がなんともいえない幸せな「空間」でした。
ライブ・ハウス全体が一つになる瞬間を体験できるライブなんてそうはありませんよ。

バート・シーガーの凄さは絶対的な自分の世界を持っていることです。
決して迎合や妥協をしないで自分の感性を貫く姿勢が見えます。
それが大きなうねりを持って観客を自分の世界に引き込んでしまいます。
まるで波に洗われているようで実に心地良いんです。
曲の始まりはどこからともなく、終わりはいつも余韻を残すようにスーッと波が引きます。
切れ味優先のジャズ・ピアニストの中では珍しいタイプですね。
音を繋げる独特なコード・ワークや和音の使い方にも個性があります。

池長さんの語るパーカッション的ドラムスはいうことはありません。
表現力が多彩で変幻自在に変化する・・・これはもう見てもらえば一目瞭然です。
この二人の間に入る吉野弘志(b)さんも大変だと思いますよ。
でもすでに7年来の付き合いになりますね。
吉野さんは中央線ジャズでよく知られたベーシストです。
ジミー・ギャリソンばりのベース・プレイは健在でアルコ・プレイも達者です。

At The "Sometime" Kichijoji On 2012/10/08




■松島啓之・クインテットを聴いてきました。
松島啓之(tp)、山田穣(as)、今泉正明(p)、楠井五月(b)、高橋徹(ds)

松島啓之(tp)&山田(as)のフロント2管クインテットは何度か聴いています。
当初のベーシストは嶋友行さんだったけど体調が戻らないまま亡くなりました。
まだ51歳だったのに・・・大西順子・トリオでの鮮烈なプレイが印象に残っています。

さて、このグループは本当に魅力があります。
音楽的にも年齢的にもバチッとハマっているんです。
もうね、「痺れる〜」のひと言です。
1960年代のギンギンの主流派ハード・バップ・サウンドがここにあります。

気心の知れたメンバーですが山田穣さんの復活が大きいと思います。
一時期、体調不良で心配しましたがここへきての復活ぶりには目を見張るものがあります。
次々と湧き出るフレージングと火の出るような強烈なプレイは健在で圧倒されました。
松島さんや他のメンバーもそれに触発されてかグイグイと突っ走る演奏になりました。
松島さんもいつものクールなプレイはどこへやら、ノリノリの凄い演奏を聴かせてくれました。

ここは選曲も魅力でいつもリー・モーガンの曲を演ってくれるのも嬉しいです。
幕開けは「You Are My Everything」、以下「ウエイン・ショーターの曲」、
デューク・エリントンの「Come Sunday」、「サド・ジョーンズの曲」、
ジョー・ヘンダーソンの「Kicker」、リー・モーガンの「Ceora」はボサノバで、
「In A Sentimental Mood」、「Just Friends」、など、
ラストの締めくくりはチャーリー・パーカーの「Grooveyard」でしたが、
それこそあっという間に時間が経ってしまいました。

特に印象に残ったのはバラードの2曲で「カム・サンディ」は山田さんをフューチャーして
ドラムの高橋徹さんとのコンビネーションが聴きどころになりました。
「イン・ア・センチメンタル・ムード」は松島さんが主役、
ただ一人の若手ベーシストの楠井五月さんのデュオがまた素晴らしかった。
今泉正明(p)さんのバッキングも手慣れたもの、ブロック・コードは強烈な印象を残します。
今泉&楠井&高橋のリズムセクションは粘っこくて黒い・・・このノリがまたクセになります。

なにしろメインストリームなハード・バップ・ジャズが聴けるのでたまりませんよ。
このグルーブ感は最高・・・自然に身体が揺れてくるんです。
お薦めのグループなので是非ライブ・ハウスに足を運んでみて下さい。
十二分に楽しめることは請合います。

At The "Sometime" Kichijoji On 2012/09/10




■エリック・アレキサンダー&ヴィンセント・ハーリング聴いてきました。
エリック・アレキサンダー(ts)、ヴィンセント・ハーリング(as)、
百々徹(p)、金森もとい(b)、小林陽一(ds)

お題目はエリック・アレキサンダーとヴィンセント・ハーリングのサックス・バトルですが
実際の黒幕は小林陽一さんで小林さん率いる「グッド・フェローズ」の拡張版です。
小林さんとハーリングは若い頃のストリート・ミュージシャン仲間で付き合いは長いです。
そのハーリングとエリック・アレキサンダーには共演したアルバムがあります。
百々徹さんは現在来日公演中ですがニューヨークで活躍している期待のピアニストです。
それに日本で売り出し中の若手ベーシストの金森もといさんの組み合わせです。

小林陽一&グット・フェローズは日本のジャズ・メッセンジャーズと比喩されるようにハード・バップ・バンドの名門です。
若手の登竜門でもありここで修行した有名プレイヤーは数多くいます。
つくづく小林さんは偉いと思いますよ。

このメンバー(ベーシストだけが違う)で吹き込んだ小林さんの新譜があります。
「絆」というんですがコンサートはいわばこの新譜発表会の様相でした。
前半5曲、後半4曲、アンコール1曲の構成でした。
バップ・ナンバーでスタート、間にアレキサンダーとハーリングのバラードを挟み、新譜から3曲演奏しました。
「きずな」、「Koba's Delight」とアンコールの「What A Wonderful World」です。
その他、「Here's That Rainy Day」、「MIsty」などが演奏されました。

エリッ・アレキサンダーの音色は艶やかで惚れ惚れしました。
抜群の音色を誇ります。
ノンブレス奏法をちょっと披露したような気がしましたがこれをマスターするとまた表現力が広がりますね。
ヴィンセント・ハーリングは、楽器が新品のせいか今ひとつしっくりきていないような感じでした。
新しいとどうしても音が硬くなります。
何度もリードを替えていたのはそのせいだと思います。
でもソロは素晴らしかった、そのフレージングの上手さは特筆ものです。
もう一人のハイライトはやはり百々徹さんでしょうね。
ここに入っても一際目立つピアノ・プレイを連発していました。
バッキングは今ひとつですがソロに入ると強烈な個性を発揮しました。
タイミングが独特でピアノの音色も多彩です。
どうしてあんな微妙な音が出るのか・・・エリックやヴィンセントも不思議がって覗き込んでいたほどです。
金森さんはしっかり押さえてしっかり弾く・・・ベーシストの原点を忠実に守っていました。
奇をてらわず出来ることをやる・・・音もよく出ているし安定感も十分です。
この若手の二人にはこれからの益々の活躍を期待したいです。
小林さんのドラミングは相変わらずの心地良さ・・・メンバーの信頼感は絶大です。
ドラムが安定しているので共演者はリラックスして伸び伸びと演奏していました。

At The "Swinghall" Musashinoshi On 2012/07/27




■「ごめんね」を聴いてきました。
後藤輝夫(ts)、橋本信二(g)、小泉高之(ds)、土田晴信(org)

「ごめんね」は後藤輝夫(ts)さんを中心にしたソウル・ファンキー・バンドです。
オルガン入りレギュラー・バンドとしては貴重な存在だと思います。
いつでもノリノリなので気分爽快になれるんです。
ストレス解消には最適・・・グルービーな大人のジャズ・バンド。
そんなこともあって時々聴きに出かけます。
この日は3連休の初日ということもあって超満員の大盛況でした。

命名は後藤さんの「Go-Men.net」からですが
何かあれば「ごめんね〜」で済ませられるので中々にシャレた名前です。
狙いはスタンリー・タレンティン(ts)+ジミー・スミス(org)といったところかな。

後藤さん、橋本信二(g)さん、小泉孝之(ds)さんは不動のメンバー。
気心の知れた3人のラインがしっかりとしているのでブレがありません。
お互いにやりたいことがよく分かっています。
リズムがはっきりとしていて聴きやすく、自然に体が揺れて手拍子も出てきます。
オルガンのメンバーだけが時々変わります。
去年から土田晴信(org)さんが加わりました。
土田さんのオルガンはスマートですがもう少し粘っこさが欲しいような気がします。
下卑た味わいが出ればもっと良くなると思います。
フロントは後藤さん、橋本さんの名手二人なので安定感、安心感は抜群です。
でもこのバンドの決め手は小泉孝之さんのドラムスにあるかも。
小泉さんのドラムは機関車のごとく突っ走ります。
ドドド・ドドド・ドドドドン・・・グイグイと疾走する力強いドラミングが最大の魅力です。
心を揺さぶる呪術的要素もあります。

この日の演目は「Summertime」、「Minor Chant」、「Night And Day」、
「What's Going On」、「What A Wonderful World」、
「My One And Only Love」、「Ask Me Now」、「Moose The Mooche」、
「Teach Me Tonight」、オリジナルのブルースやバラードなど。

ボサノバの「Night And Day」、テンポを上げた「What A Wonderful World」が良かった。
後藤さんのアレンジも聴きどころになります。
バラードでもスイング感があるのでゆったりとしたうねり具合が心地良いです。
今回はちょっと気分が入り過ぎて森進一風になったのはご愛嬌です。
誰でも楽しめるバンドなので是非ライブハウスに足を運んで下さい。

At The "Sometime" Kichijoji On 2012/07/14



■鈴木良雄&Generation Gapを聴いてきました。
鈴木良雄(b)、中村恵介(tp)、山田拓児(sax)、ハクエイ・キム(p)、大村亘(ds)
ゲスト:アダム・ナスバム(ds)、山本昌広(as)

鈴木良雄(b)さんが率いるジェネレーション・ギャップは結成4年ほどになるかな。
1年に1回以上は聴く機会があります。
若手の成長を見るのが楽しみなグループの一つです。
演目は鈴木さんとメンバーのオリジナルが中心でスタンダードがほとんどないのが特徴になっています。
以下、鈴木さんは愛称のチンさんと呼ばせてもらいます。
1stではチンさんの日本的な曲想の「藍」、
2ndではハクエイさんのエキゾチックかつドラマチックな「NEWTOWN」が聴きどころになりました。
この日のハイライトはハクエイ・キム(p)さんと大村亘(ds)さんの絡みにありました。
共にオーストラリアのシドニーに学んだ個性溢れる二人です。
テンポや拍子が自由自在に変化してスリリングなプレイを聴かせてくれました。
間に入ったチンさんのマイ・ペースが不思議な緊張感を生んでいます。

ハクエイさんは独自の間合い、タイミングを持っています。
しなやかな指先が鍵盤に絡みつくような感じで、さらに粘っこいピアノが聴けます。
独特のブルース・フィーリングと根っこにはスイング感もあるのでこのピアノにハマる。
セクシーなので女性に人気なのも当然かな。
チンさん曰く:「ジャズ界のダルビッシュ」だそうです。
大村さんの語るドラムも面白かった。
メロディを奏でるようにまるでピアノのようなドラムの鳴らし方です。
こちらも自在性豊かで個性があります。


山田拓児さんはアルト・サックス、ソプラノ・サックス、バス・クラリネット、
中村恵介さんはトランペットとフリューゲル・ホーンを持ち替えての演奏です。
どうだろう?・・・二人共にちょっと大人しくなったような気がしました。
失敗を恐れずにもっと思いっきり吹いてもいいと思うよ。
中村さんはこの日、トランペットのマウスピースを忘れたようなのでその影響もありました。
こんな時にはフリューゲル・ホーンで通したほうが良かったかもしれませんね。


この日は二人のゲストが出ました。
まずはアルト・サックスの山本昌広さん。
途切れるような、いななく奏法が特徴かな。
オーネット・コールマン、エリック・ドルフィー、ソニー・フォーチュン系の新進プレイヤー。
ハクエイさんや大村さんにはピッタリの感じがしました。

もう一人はなんとドラマーのアダム・ナスバムです。
このハプニングには驚きました。
こういうことがあるからライブは止められないんです。
ナスバムさんはチンさんの昔からの友人だそうです。
アダム・ナスバムは1980年代から大活躍で超売れっ子ドラマーの一人です。
コンテンポラリーのジャズ・シーンでは外せませんね。
前日、新宿ピット・インの「ジョン・アバークロンビー・トリオ」に出てたとのこと。
このライブには多くの日本人・ジャズ・ミュージシャンが聴きに行っていたそうです。
ECMファンやコンテンポラリーなギター・ファンには見逃せないでしょうか。
アバークロンビーの日本公演はたった一日だけとか、前日は香港だったそうです。

前置きが長くなりましたがこのナスバムがまた凄かったです。
懐の深い大きなドラムが聴けました。
がっしりとした体躯から押し出されるドラムは迫力満点でした。
腹にズシンズシンと響いてくる感じ・・・豪腕ドラマーという表現がピッタリです。
それが目の前で見られるんですからたまりませんよ。
これは凄く儲けた気分になりました。
曲目はジャズ・スタンダードになっているマイルスの「ソーラー」です。
山本さんも加わったセクステットで多いに盛り上がりました。

At The "Sometime" Kichijoji On 2012/05/28




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