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Dragon's Jazz Corner

「ライブ・レポート・2009」

注:詳しいライブ・レポートは下↓へスクロールしてご覧下さい。

■大西順子・トリオ 大西順子(p)、井上陽介(b)、ジーン・ジャクソン(ds) 2009/12/13
■荒武裕一朗・トリオ 荒武裕一朗(p)、安東昇(b)、本田珠也(ds) 2009/12/06
■安東昇・トリオ 安東昇(b)、澤田一範(as)、森田修史(ts)
ゲスト:斉藤良(per)
2009/12/02
■宮野裕司・カルテット 宮野裕司(as)、中牟礼貞則(g)、吉野弘志(b)、池長一美(ds) 2009/11/28
■高橋知己4&渡辺文男4 高橋知己4=高橋知己(ts,ss)、津村和彦(g)、工藤精(b)、斉藤良(ds)
ゲスト:清水くるみ(p)
渡辺文男4=渡辺文男(ds)、元岡一英(p)、小杉敏(b)、高橋知己(ts,ss)
ゲスト:鈴木道子(vo)
2009/11/23
■イーデン・アトウッド イーデン・アトウッド(vo)、デビッド・モーゲンロス(p) 2009/11/22
■小林陽一・カルテット 小林陽一(ds)、松島啓之(tp)、熊谷泰昌(p)、高道晴久(b) 2009/11/21
■清水秀子&前田憲男 清水秀子(vo)、 前田憲男(p)、斎藤誠(b)
2009/11/12
■鈴木道子G&橋本信二 鈴木道子(vo)、吉田桂一(p)、小杉敏(b)、村田憲一郎(ds)
ゲスト:橋本信二(g)
2009/11/09
■アンドレア・マルチェリ・トリオ アンドレア・マルチェリ(ds)、トーマス・クラウセン(p)、ステファノ・センニ(b)
2009/11/07
■大口純一郎&梶原まり子 大口純一郎(p)、梶原まり子(vo)
ゲスト:桜井郁雄(b)、石川早苗(vo)、上田裕香(vo)
2009/11/05
■松島啓之・カルテット 松島啓之(tp)、今泉正明(p)、嶋友行(b)、横山和明(ds)
2009/11/04
■石川早苗&橋本信二・トリオ 石川早苗(vo)、橋本信二(g)、田村和大(p)、トオイダイスケ(elb)
ゲスト:梶原まり子
2009/10/30
■久保島直樹・カルテット 久保島直樹(p)、旧橋壮(ts,ss,fl)、是安則克(b)、野村綾乃(ds)
2009/10/24
■ごめんね(後藤輝夫・カルテット) 後藤輝夫(ts)、橋本信二(g)、小泉高之(ds)、西川奈々(org)
ゲスト:石川早苗(vo)
2009/10/19
■バート・シーガー&池長一美・トリオ バート・シーガー(p)、吉野弘志(b)、池長一美(ds)
2009/10/14
■土濃塚隆一郎・トリオ 土濃塚隆一郎(flh)、塩川俊彦(g)、小泉P克人(b,elb)
2009/10/03
■百々徹・トリオ 百々徹(p)、中村恭士(b)、中村雄二郎(ds)
ゲスト:長谷川朗(as)
2009/10/01
■鈴木道子&岡崎好朗
&ユキアリマサ・トリオ
鈴木道子(vo)、岡崎好朗(tp)、
ユキアリマサ(p)、佐藤”ハチ”恭彦(b)、加納樹麻(ds)
2009/09/30
■ケイ赤城・トリオ ケイ赤城(p)、杉本智和(b)、本田珠也(ds)
2009/09/17
■松風鉱一&小森慶子・クインテット 松風鉱一(as,ts,fl)、小森慶子(as,ss,cl)、
清水くるみ(p)、,吉野弘志(b)、藤井信雄(ds)
2009/09/11
■牧野竜太郎&清水絵理子 牧野竜太郎(vo)、清水絵理子(p)、中林薫平(b)
2009/09/10
■ビンセント・ハーリング・カルテット ビンセント・ハーリング(as)、
ジル・ムキャロン(p)、エシェット・エシェット(b)、小林陽一(ds)
2009/09/03
■国貞雅子&荒武裕一朗 国貞雅子(vo)、荒武裕一朗(p)、生沼邦夫(elb)
2009/08/21
■広瀬潤次・カルテット 広瀬潤次(ds)、片倉真由子(p)、中村恭士(b)、太田朱美(fl)
ゲスト:堀秀彰(p)
2009/08/12
■太田朱美・カルテット 太田朱美(fl)、石田幹雄(p)、安東昇(b)、力武誠(ds)
2009/08/07
■ジェームス・カーター・クインテット ジェームス・カーター(ts,ss,fl,bcl)、コーリー・ウィルクス(tp)、
ジェラルド・ギブス(p)、ラルフ・アームストロング(b)、レオナード・キングス(ds)
2009/08/02
■出口誠・トリオ 出口誠(p)、安ヵ川大樹(b)、井川晃(ds)
2009/07/27
■渋谷毅&松風鉱一 渋谷毅(p)、松風鉱一(as,ts,bs,fl,cl,bamboo sax)
2009/07/24
■ギラ・ジルカ&井上ゆかり ギラ・ジルカ(vo)、井上ゆかり(p)、塩本彰(g)
2009/07/13
■寺井尚子・カルテット 寺井尚子(vln)、北島直樹(p)、店網邦雄(b)、中沢 剛(ds)
2009/07/11
■中村誠一・カルテット 中村誠一(ts,cl)、吉岡秀晃(p)、沼上励(b)、横山和明(ds)
ゲスト:奥平真吾(ds)
2009/07/09
■鈴木道子&渥美幸裕・トリオ 鈴木道子(vo)、渥美幸裕(g)、金子雄太(org)、小森耕造(ds)
2009/07/06
■白根真理子&布川俊樹 白根真理子(vo)、布川俊樹(g)、佐藤浩一(p)
2009/06/30
■マグナス・ヨルト&池長一美・トリオ マグナス・ヨルト(p)、ペーター・エルド(b)、池長一美(ds)
2009/06/28
■近藤和彦・カルテット 近藤和彦(as)、今泉正明(p)、上村信(b)、大坂昌彦(ds)
2009/06/12
■ジョアン・ドナート&山中千尋 ジョアン・ドナート(p)、山中千尋(p)
2009/06/08
■ケヴィン・ヘイズ・トリオ ケヴィン・ヘイズ(p)、ダグ・ワイス(b)、ビル・スチュアート(ds)
2009/06/04
■大槻”KALTA”英宣・Vertical-Engine 大槻”KALTA”英宣(ds)、太田 剣(as,ss,fl)、
天野清継(g)、新澤健一郎(p,key)、鈴木正人(b)
2009/05/21
■小杉敏・クインテット 小杉敏(b)、岡崎好朗(tp)、橋本信二(g)、元岡一英(p)、江藤良人(ds)
2009/05/18
■シーラ・ジョーダン シーラ・ジョーダン(vo)、ピーター・ミケリッチ(p)、原朋直(tp)
2009/04/17
■高田ひろ子・カルテット 高田裕子(p)、佐藤有介(b)、池長一美(ds)、アンディ・べヴァン(ss)
2009/04/13
■太田朱美・カルテット 太田朱美(fl)、石田幹雄(p)、安東昇(b)、力武誠(ds)
2009/04/10
■サキソフォビア 岡敦(ts,sinobue)、緑川英徳(as,ss)、竹内直(ts,bcl)、井上"JUJU”博之(bs,fl)
2009/04/06
■西山瞳・カルテット 西山瞳(p)、鈴木央紹(ts)、吉田豊(b)、池長一美(ds)
2009/04/02
■赤松敏弘・トリオ&川嶋哲郎 赤松敏弘(vib)、川嶋哲郎(ts,fl,ss)、生沼邦夫(b)、小山太郎(ds)
2009/03/15
■峰厚介&清水絵理子 峰厚介(ts,ss)、清水絵理子(p)
2009/02/20
■金子雄太&鈴木道子 金子雄太(org)、鈴木道子(vo)
2009/02/09
■岡田勉・カルテット 岡田勉(b)、峰厚介(ts)、野力奏一(p)、村上寛(ds)
ゲスト:佐藤”ハチ”恭彦(b)、片倉真由子(p)
2009/02/02
■宮下博行・トリオ 宮下博行(p)、佐藤有介(b)、嘉本信一郎(ds) 2009/01/26
■エリック・アレキサンダー・カルテット エリック・アレキサンダー(ts)、デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、
ジョン・ウィーバー(b)、ジョー・ファーンズワーズ(ds)
2009/01/13
■鈴木道子 鈴木道子(vo)、米田正義(p)、山田晃路(b) 2009/01/11

[ライブ・レポート]
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年



■大西順子・トリオを聴いてきました。
大西順子(p)、井上陽介(b)、ジーン・ジャクソン(ds)

大西順子(p)さんは今年11年ぶりに新譜を出して話題になりました。
ライブにはずっと行きたいと思っていたので実現できて良かったです。
大西さんを見るのは十数年ぶり、落ち着いた美しい女性になっていました。
当初予定した原大力(ds)さんがインフルエンザで倒れたということで
急きょCDにも入っているジーン・ジャクソン(ds)さんが参加ということになりました。

演目はCDが中心です。
「バック・イン・ザ・デイズ」、「ビター・スイート」、「イル・ウインド」、
「ハット・アンド・ベアード」、「ブルースを歌おう」、「楽興の時」、
「サムシング・スイート、サムシング・テンダー」、「G.W.」、
スタンダードで「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」、
アンコールは「ドゥ・ナッシン・ティル・ユー・ヒア・フロム・ミー」だったと思います。

オリジナル3曲からスタートしましたがいきなりのアップ・テンポで驚きました。
普通は手探りというか、様子を見てくるものですが最初から全開で飛ばします。
でも、これで私はグッと引きつけられてしまいましたよ。
大西さんの強力な左手はやはり凄いです。
鍵盤の左側を使うことが多くて低音部の使い方が巧みでスピード感と切れ味は抜群でした。
「凄いなぁ〜、上手いなぁ〜」というしか表現がないような気がします。
井上陽介(b)さんも2曲でフューチュアーされて強烈なベース・プレイを披露してくれました。
アルコ・ソロを含めていつ聴いても惚れ惚れします。
ジーン・ジャクソンさんはしごくオーソドックスなドラマーだと思いました。
スナップの利いたしなやかなドラミングには安定感があります。
大きな身体でパワフルですが繊細なテクニシャン、CDで聴くよりはずっと静かな感じです。

人気の大西順子・トリオということもあってライブ・ハウスは超満員の大盛況でした。
みなさん、熱心なジャズ・ファンのようでまるでコンサート会場にいる雰囲気。
3人が巧みな技を持っているのでそれぞれのソロに聴きどころがいっぱいです。
特にアップテンポが圧巻、疾走感あふれる演奏にはグイグイと引っ張られる感じがして爽快そのものでした。


At The "Sometime" Kichijoji On 2009/12/13



■荒武裕一朗・トリオを聴いてきました。
荒武裕一朗(p)、安東昇(b)、本田珠也(ds)

荒武さんがいう今年の集大成のライブは強力無比の猛烈なトリオを聴かせてくれました。
これほど迫力のあるトリオを聴いたのは初めてです。
巨大な波が押し寄せるというか、音の大洪水に見舞われるというか、そんな感じのライブでした。
オリジナルが中心、あと荒武さんが敬愛する本田竹広(p)さんとモンクの曲を何曲か。

「The Only Thing」、「Talking Junction」、「Water Under The Bridge(T.Honda)」
「Golden Flower」、「Heritage」、「Evidence(T.monk)」、「Family」、「夕焼け」、
アンコール:「Ain't Tell You A Good Way But(T.Honda)」

荒武さんは本田竹広さんに傾倒してプロを目指したと聞いています。
そんな荒武さんにとっては息子の本田珠也さんとの共演は格別のものがあると思います。
3年ぶりの共演とのことですが感慨無量のものがあったでしょうね。
1曲づつが長くて物語性があって起承転結がありました。
静かに始まって徐々に熱くなり、ぐーと盛り上がってまた静かに戻るというパターンです。
明らかに仕掛け人は珠也さんです。
そのパワフルでエネルギッシュなドラミングは珠也さん独自のものです。
つくづくご両親から受け継いだジャズのDNAが大きく働いていると思いました。
もの凄い迫力のドラミングは押しに押しまくってきます。
「ドドドドドド、ジャーン、ジャーン」
この圧力は共演者を鼓舞せずにはいられません。
それに触発されて荒武さんも安東さんも気合は十分、力を尽くして必死のレスポンスになりました。
結果、ノリまくりのもの凄い演奏になったんです。
体力も能力も出し切った3人がこれでもかこれでもかとぶつかり合います。
汗が飛び散り、ガッツ溢れる格闘技のようなトリオ演奏です。
これほどのライブはそうそう見られるものではありません。
観客からは「ウオーッ!!」という声が上がる、拍手は鳴り止まぬ。
荒武さん自身も感激していたほどです。
言葉が出ないほどお客さんに感謝の意を表していました。
「いやぁ〜、素晴らしかった」・・・観客のみなさんも大満足だったと思います。

荒武さんは強烈な力強いタッチに腕が痺れたとの感想を話していました。
安東さんは大奮闘で汗びっしょりでした。
それに対して珠也さんは清々としたものでしたね。

At The "Pit Inn" Shinjuku On 2009/12/06




■安東昇・トリオを聴いてきました。
安東昇(b)、澤田一範(as)、森田修史(ts)
ゲスト:斉藤良(ds)

安東昇(b)さんは「直立猿人's」という5人編成のユニットを持っています。
メンバーは澤田一範(as)、森田修史(ts)、田村博(p)、安東昇(b)、古地克成(ds)です。
先日、これを見逃したのは残念でしたが今回の情報を得て楽しみにしていました。
サックス2本にベースという組み合わせは珍しいと思います。
実験的要素もあるので3人にとっても刺激的だったでしょうね。
気合が入るのも当然で、強烈なサックス・バトルが聴けました。

1set:セロニアス・モンクの「パノニカ」、コール・ポーターの「恋とは何でしょう」、
フランク・フォスターの「シモーネ」、モンクの「エビデンス」。
2set:ジーン・デパウルの「4月の思い出」、デューク・エリントンの「コットン・テイル」、
ウエイン・ショーターの「オリエンタル・フォーク・ソング」、
チャールス・ミンガスの「プロフィール・オブ・ジャッキー」。

安東昇さんは根太いベースの音色と野性味溢れるプレイが魅力です。
その激しいプレイとはうらはらに普段は口数も少なく物静かでシャイな感じがします。
演奏になるとそんなクールな表情はどこかに吹っ飛んで、俄然熱く燃えてくるんですよ。
そのコントラストがまた面白いと思います。

澤田一範さんは日本を代表するアルト・サックス奏者でそれこそ別格的な存在です。
アイデア豊富、切れのあるフレーズ、圧倒的なプレイは群を抜いています。
その迫力のある音色は到底アルト・サックスとは思えないほどです
音の存在感が凄くてテナーの太い音と比べてもまったく遜色ありません。
目の前1メートルに肉迫してじっくりと聴かせてもらいました。

今回のもうひとつの目的に森田修史(ts)さんを見ることにありました。
若手期待のテナー・サックス奏者です。
相手が実力者の澤田さんとあって最初からかなり気合が入っていましたね。
若者らしく思いっきりぶつかっていく姿勢は見ていて気持ち良かったです。
まだまだ荒削りながらその意欲的で思い切りのいいプレイは魅力十分です。
スピード感ある演奏は高音部の使い方に特徴があると思いました。
個性あるテナー奏者に育って欲しいです。
対抗意識丸出しの澤田さんとのバトルは面白かったなぁー。
惜しかったのはエンジンがかかるまで2曲くらいかかったことかな。

この日はちょうど斉藤良(ds)さんが遊びに来ていて後半に飛び入りしてくれました。
偶然ですが斉藤さんは先週の高橋知己(ts)さんのライブで見たばかりです。
お店にあるものを適当に組み合わせてパーカッション奏者として加わったんです。
やっぱり鳴り物が入るとリズム感がハッキリとしてサウンドが俄然分厚くなりました。
自身の身体を含めて、回りのものを全て利用した素晴らしいパーカッションでした。

今夜のベストプレイは「エビデンス」でここのサックス・バトルが凄かったです。
後半のサックス同士の交換、8小節から4小節〜2小節と徐々に短く盛り上がってくるのが圧巻でした。
「シャイニー・ストッキングス」の作者で知られるフランク・フォスター(sax)の「シモーネ」も美しい曲で良かったです。
ライブの最後に「オリエンタル・フォーク・ソング」〜「プロフィール・オブ・ジャッキー」を
続けましたがこれは曲想とリズムがほぼ同じだったのでメリハリがつきませんでした。
ここの曲目構成は考える余地があると思います。


At The "上町63" Yokohama On 2009/12/02



■宮野裕司・カルテットを聴いてきました。
宮野裕司(as)、中牟礼貞則(g)、吉野弘志(b)、池長一美(ds)


個性あるこのグループも大好きです。
ここでしか聴けないスペシャル・メンバーですが素晴らしいですよ。
ポール・デスモンド&ジム・ホール・カルテットやチコ・ハミルトン・カルテットを彷彿とさせる
クールな50年代〜60年代のアメリカ・ウェスト・コース・ジャズのサウンド。
静かで落ち着いて、でも中身は熱い、実に密度の濃い演奏が聴けます。
これを聴けば、なぜウエスト・コースト・ジャズが人気になったか、よく分かると思います。

「I Wish I Knew」、「For Bill Evans」、 「Touch Your Lips」、 「One Morning In May」,
「Child Is Born」、「Everything I Love」 ジム・ホールのブルースを2曲など。
ブラジルの曲が素晴らしかったんだけど忘れたのが残念です。

このライブの良さはなにより演奏者同士が刺激を受けているのが伝わってくるんです。
グループを組んでからもう5年になるかな、今でも進化しています。
遊び心があるのでどういう展開になるのかは曲が始まってみないと分かりません。

年に2、3回のライブでしか聴けないけど私は幸運にもその最初からお付き合いさせてもらっています。
日本でこういうジャズが聴けるというのはとても貴重だと思っています。
多分、このメンバーでしか聴けないでしょうね。
宮野さんのアルトの音色とスタイルはワン・アンド・オンリーの世界、中牟礼さんの味わい深いギター、
吉野さんの端正でビシッときまるベース、池長さんのアイデアいっぱいのメロディアスなドラムス。
4人が絡んで得も言われぬ幻想的な世界を創り出しています。
あまりの居心地の良さにこのサウンドにはずーっと浸っていたいような気分になります。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2009/11/28



■高橋知己4&渡辺文男4、ジョイント・コンサートを聴いてきました。
高橋知己4=高橋知己(ts,ss)、津村和彦(g)、工藤精(b)、斉藤良(ds)
ゲスト:清水くるみ(p)
渡辺文男4=渡辺文男(ds)、元岡一英(p)、小杉敏(b)、高橋知己(ts,ss)
ゲスト:鈴木道子(vo)

このコンサートは高橋知己(sax)さんのプロ生活40周年を記念して企画されたようです。
高橋知己・カルテットと渡辺文男・カルテットの2セットが聴けて、さらにゲスト入りというお得なコンサートでした。

高橋さんは北海道出身、素朴で豪快でストレートなテナー&ソプラノ・サックス奏者です。
その剛毅で朴訥としたプレイぶりは北海道の自然そのもの、個性的でグイと引き込まれてしまいます。
すっかり魅了されているファンも多いんじゃないかと思います。
今年はこのメンバーで新しいCDも出しているので演目もこのCDからが中心になりました。
オリジナルの「Abbey's Tail Tate」と「Together」、ホレス・シルバー(p)の「Peace」、
女性トロンボーン奏者のメルバ・リストンの「Rainbow」、ジョン・コルトレーン(ts)の「The Promise」が聴けました。
選曲も良く考えられていて特に珍しい「Rainbow」は美しい曲で心に残りました。

津村和彦(g)さんは幅広い音楽性を持つギタリストで何でも来い型プレイヤーです。
切れのあるロック系の響きに魅力があると思いました。
工藤精(b)さんは太く温かいベーシストでオーソドックスなプレイが身上だと思います。
斉藤良(ds)さんも幅広い音楽性でパーカッシブなドラミングが特徴でした。
相手なりに合わせてくる語るドラムスが面白かったです。
ゲストの清水くるみさんは尖がっているピアニストで一筋縄ではいきません。
フリーとのはざ間で行き来するのがスリリングです。
このクインテットをひと言で表現すると多国籍ジャズということになるでしょうか。
それぞれの個性の混沌としたところから始まってグーッとひとつにまとまってくる感じです。

後半は渡辺文男(ds)・カルテットの登場です。
こちらは平均年齢がぐっと上がってバップ・テイストがいっぱいの演奏になりました。
タッド・ダメロンの「Smooth As The Wind」とセロニアス・モンクの「Monk's Dream」のインストからスタート、
そのあと鈴木道子(vo)さんの登場となりました。
いつものことですが道子さんと文男さんの会話は面白いです。
最近、文男さんはボーカルに興味があるようでボーカル・アルバムを考えているそうな。
たしかに文男さんにの歌は味があっていいです。
ここで文男さんのひと言、「昔、演歌歌手に憧れた、美空しばりが好き」・・・。

「I've Got You Under My Skin」、「Candy」、「God Bless The Child]、
「No Moon At All」、「Embraceable You」、「All Or Nothing At All」、
アンコールで「What A Wonderful World」、「F Blues」。

元岡一英さんの跳ねるような絶妙なピアノタッチはたまりません。
小杉敏さんの良く伸びるベースはベースがリズム楽器ということを再認識させてくれます。
文男さんの歌うブラッシュ・ワークは大好きです。
やっぱり女性ボーカルのバックにはテナー・サックスが一番合いますね。
道子さんも音響設備の整ったコンサート・ホールで思いっきり歌えたと思います。
最高は「Embraceable You」・・・会場はシーン・・・これはもう素晴らしかったです。


At The "Swinghall" Musashinoshi On 2009/11/23



■イーデン・アトウッドを聴いてきました。
イーデン・アトウッド(vo)、デビット・モーゲンロス(p)

イーデン・アトウッドは3回目の来日のようですがこれから3週間にわたって日本各地を公演します。
今回、東京国立のカフェ・シングスがその幕開けになりました。
人気歌手の出演とあって大入り満員の大盛況になりました。

イーデン・アトウッドさんはドーンと大きいです。
そのマイクの高さにまずはビックリしました。
身長180センチでグラマーで美人、モデルや女優をしていたのも十分納得しました。
当然ながら、その存在感は圧倒的です。

CDを聴いた時からそのゆったりとしたノリのバラードは最高だと思っていましたが、
現実に目の前で聴いてみて、その素晴らしさにジーンときて背筋がゾクゾクとしました。
会場のみなさんもきっと同じ思いだったと思います。
強く余韻が残っているので曲目も忘れもしません。
5曲で聴けました。
前半で「I'll Close My Eyes」と「Deep Purple」、
後半で「I Wish You Love」と「Here's to Life」、
アンコールで「My funny Valentine」、
特に「「I Wish You Love」は大好きな曲なので嬉しかったです。

その他、演目は最近の2作のCDからのものが多かったようです。
イーデンの根っこにはカントリーがあるので「Home」、「Don't Fence Me In」など数曲。
ブルースは「Miss Celie's Blues (Sister)」 、ボサノバで「So Nice (Summer Samba)」、
スタンダードで「Girl Talk」、「Way You Look Tonight」、「Easy Street」等、
特に美しい「For All We Know」は良かったです。
アンコールの手拍子に合わせて歌った高速調の「Them There Eyes」は即興のファン・サービス。

テンポ・アップすると独特のノリになります。
単語の切り方、つなげ方に特徴があって、これが彼女の大きな個性になっています。
少しかすれたハスキーな声質は私の好みで聞き続けても疲れない感じがします。
高音部がやや辛そうなのは声帯を手術した影響でしょうか。
でも、表現力がぐっとアップしたと思うのでこのことがマイナスにはなっていません。

デビッド・モーゲンロスはロマンチックなピアニストでした。
バラードにおけるイーデンとの相性はバツングンです。
ただ、テンポが上がるとピアノだけでは辛い感じがして、ここではベースが1本欲しいと思いました。

イーデンさんはとても気さくな人柄でチャーミングでした。
笑顔がとっても素敵です。
やっぱり、アメリカの一線級のヴォーカリストはさすがに大したものです。
一緒に見ていたジャズ仲間達も大絶賛の大満足でした。


At The "Cafe' Sings" Kunitachi On 2009/11/22



■小林陽一・カルテットを聴いてきました。
小林陽一(ds)、松島啓之(tp)、熊谷泰昌(p)、高道晴久(b)

今日は小林陽一・カルテット。
管楽器が一つ足らないのでグット・フェローズにはなりません。
その分、それぞれの充実したソロが聴けそうな予感はします。
車の渋滞に巻き込まれたので到着が遅れてライブは始まっていました。
かなり早めに出たのにこればかりは予測がつかないので困ります。

「ボリビア」、「コン・アルマ」、「イッツ・ユー・オア・ノー・ワン」、「プレデュード・トゥ・ア・キス」、
「ニカス・ドリーム」、「オレオ」、「オールモスト・ライク・ビーイング・イン・ラブ」、「ドナ・リー」、
「クラウズ」、「エビデンス」、「ナイト・イン・チュニジア」等。

シダー・ウォルトン(p)の「ボリビア」、ホレス・シルバー(p)の「ニカス・ドリーム」、
セロニアス・モンク(p)の「エビデンス」なんかはバップ・ファンにはたまらないでしょうね。
「オールモスト〜」と「クラウズ」はお客さんからのリクエストで渋い選曲です。
「オールモスト〜」は唄もの、「クラウズ」はキャノンボール・アダレイ(as)のボサノバで有名ですが
松島啓之さんのトランペットに痺れました。

小林陽一さんの疾走感のあるドラミングは本当に気持いいです。
押し寄せる波に洗われているような、滝に打たれているような、そんな感じがします。
多彩で張りのある太鼓の響きが気持を高揚させ鼓舞してくるんです。
松島さんは先日聴いたばかりですが相変わらず切れのある演奏を聴かせてくれました。
熊谷泰昌さんは期待のピアニストとの評判です。
メンバーに加わったばかりということもあって今のところはまだ手探りの状態かも。
もう少ししたら思い切りも出てくると思います。
バップ・テイストもスピード感もあるので音に強弱というか、メリハリがつけばもっと良くなると思います。
今回一番注目したのは高道晴久(b)さんです。
このはじくというか、跳ねる感じのベース・ラインは個性的で面白かったです。
しっかり押さえてしっかり弾く、だから音もしっかり出てきます。
アイデアが豊富で次はどんなフレーズを弾いてくれるのかとワクワクしました。
ここの小林=高道のリズム・ラインは強力です。

演奏者に1メートルとない接近戦には興奮しました。
トランペット、ベース、ドラムスはもう目の前です。


At The "Nica's" Machida On 2009/11/21



■清水秀子(vo)&前田憲男(p)を聴いてきました。
清水秀子(vo)、 前田憲男(p)、斎藤誠(b)

清水さんと前田さんを聴きたくて行ってきました。
前回、8月のライブは前田さんの体調不良で流れた経緯があります。
特に前田さんのボーカルのバッキングは珍しいと思います。
現れた途端に早速、「今日はボーカルのバックに雇われたピアニストです」と言って笑わせました。

前田憲男さん
プレイヤーの誉め言葉には色々あるでしょうが何を言っても足りません。
奥行きがあって懐の深い演奏を聴かせてくれました。
そこに居るだけで周囲を圧倒する雰囲気あるし堂々たる貫禄があります。
要はこれが巨匠と呼ばれる人のオーラなんだと思いましたよ。
ピアノから出てくる音のひとつひとつの存在感が違っていました。
75歳とは到底思えぬかくしゃくとしたプレイはその話術と共に真のエンターテイナーです。

清水さんは最初は緊張していましたがすぐに立ち直ってきました。
やっぱり相手が相手なのでそう簡単にはいかないです。
3曲目あたりから声も良く出てきて、しっかりと歌っていました。
安定感は十分で原曲の良さを存分に引き出す唱法が持ち味です。
二人とのコンビネーションもとても良かったです。
最近は渋谷毅さんのオーケストラにも参加して幅が広がり精力的に活躍しています。

斉藤さんはしなやかでよく伸びるベーシストで表現力も多彩、名手だと思います。
その寄り添うようなベース・ラインは歌い手にとって最高なんじゃないかな。
口笛で吹くソロには拍手喝さいです。

演目は
「Misty」、「Like Someone In Love」、「Can't Help Loving That Man Of Mine」、
「Prelude To A Kiss」、「A Foggy Day」、「My Ship」, 「Day By Day」、
「Lady Is A Tramp」、「My Favorite Things」、「Gentle Rain」、
「Come Rain Or Come Shine」, 「Too Close For Comfort」、「Time For Love」、
「Autumn Leaves」、等々。

普通、ボーカルのバッキングは縁の下の力持ちとか後ろからそっと支えると
いうような表現をしますが前田さんは明らかに違っていました。
ボーカルと一緒にピアノもグーッと盛り上がっていくんです。
これは本当に素晴らしいことだなぁーと思いました。

アンコールに応えて、「これからみなさんの知っている曲を演奏します」
枯葉・・・スーッと引きずられて取り込まれ、ポイと放され、またフッと戻るような凄い感覚の枯葉が聴けました。
その音の魔術に翻弄されてしまうんですね。

年季の入った前田さんのファンから声がかかって大いに盛り上がりました。
私は同じ空間に身を置くことができて感激しました。


At The "Jay-J's Cafe" Meguro On 2009/11/12



■鈴木道子グループ&橋本信二を聴いてきました。
鈴木道子(vo)、吉田桂一(p)、小杉敏(b)、村田憲一郎(ds)
ゲスト:橋本信二(g)

私は鈴木道子さんの大ファンですがレギュラー・トリオを紹介するのは初めてでした。
いつでも見られるのでつい別の組み合わせばかりライブ・レポートしてました。
遅ればせながらご紹介します。
このトリオは落ち着いていて穏やかな雰囲気ですが実力の程は折り紙付きです。
今回、橋本信二(g)さんが加わって趣がガラリと変わったので書くきっかけになりました。
橋本さんの持ち味のファンキーでソウルフルなライブになったのが面白かったです。
このような一期一会のジャム・セッションはジャズの醍醐味のひとつです。
橋本さんがファンキー&グルービーなギターを弾きまくって刺激する。
すると徐々にみんなの反応が熱気を帯びてきます。
普段はしっとりと聴かせるメンバーが俄然熱くなってくるのを感じました。

吉田桂一(p)さんは一見おとなしそうですが実は羊の皮をかぶった狼なんです。
相手次第というか、タイミングというか、この日も相当に気合が入っていました。
先日、10月の道子さんのライブでこんなことがありました。
その時のメンバーは渡辺文男(ds)さん、吉田さん、佐々木悌二(b)さんのトリオでした。
そこに偶然、ボブ・ムーバー(as)、安保徹(ts)さん、他4人の管楽器奏者が飛び入り、
さらに村田憲一郎(ds)さんまで加わって一大ジャム・セッションになったんです。
「ナイト・イン・チュニジア」・・・ここでの吉田さんのプレイが強烈に凄かったです。
バップ・テイスト溢れる火の出るようなソロは一緒に聴いていたジャズ・ファン共々度肝を抜かれました。
ここで久々に牙が出た。
ライブではこんなハプニングも度々起こるので楽しみです。

小杉敏(b)さんは今年リーダー・アルバムを出したばかりで心身ともに充実しています。
それは自信に満ち満ちたプレイぶりにも表れています。
盟友の橋本さんが相手とあっては負けるわけにはいきませんよ。
強力なベース・ラインをブンブンと押し出してきました。
なんとこの日はツアー帰りで最後の力を振り絞ったとか・・・橋本さんも一緒でした。

今回、一番驚いたのは村田憲一郎(ds)さんのはじけぶりです。
ビシバシと叩き出すアグレッシブなドラミングに驚かされました。
いつもはそれほど叩くことはなかったので実に新鮮な思いがしました。
村田さんは歯医者さんと二足のわらじをはく異色のジャズ・マンとして知られています。

道子さんもノリノリで踊りながら汗を光らせての大熱唱となりました。
特に橋本さんとの掛け合いは圧巻。
持ち歌を歌ってもいつもの表情とはまったく違いました。

「I Remember You」、「What A Difference A Day Makes」、「Georgia On My Mind」、
「Embraceable You」、「P.S. I Love You」、「New York State Of Mind」、
「Come Rain Or Come Shine」、「I've Got You Under My Skin」、「In The Dark」、
「F Blues」、「I Love You More Today Than Yesterday」、等々。

というわけで、橋本さんが一人加わっただけで気分とサウンドがガラリと変わってしまいました。
それだけ橋本さんの個性が強いというわけですね。
それとジャズメンは根底にファンキー&ソウルが大好きという一面もあると思います。
お茶ノ水ナルの40周年記念ライブの一環だそうですが最高のライブが見られて良かったです。


At The "Naru" Ochanomizu On 2009/11/09



■アンドレア・マルチェリ・トリオを聴いてきました。
アンドレア・マルチェリ(ds)、トーマス・クラウセン(p)、ステファノ・センニ(b)

このライブがあると聞いた時、即行こうと決めました。
ヨーロッパの第一線級のピアノ・トリオが聴けると直感したからです。
特にデンマークのベテラン・ピアニストのトーマス・クラウセンには興味津々でした。

リーダーはイタリアのアンドレア・マルチェリ(ds)、ピアノはトーマス、
ベースは同じくイタリアのステファノ・セン二という組み合わせです。
去年、CDが出ているのでその一環の日本公演だと思います。
今回はベーシストだけが違いました。

結果は予想を上回る素晴らしいライブでした。
なんというか、グーッと迫ってくる音圧というか、音の厚みが違うと思いました。
3者のバランスが良くオーソドックスなピアノ・トリオの王道を行きます。
リーダーのアンドレアは好センスのドラマーで緩急自在、パーカッシブなプレイも聞かせてくれました。
その安定したドラミングは聞いていてまったくぶれることがありません。
上手いです、全てに大きな余裕を感じました。

トーマスはビル・エバンス系ですが一般的なヨーロッパ・ピアノのリリカル&静謐とは一線を画すと思っていました。
それはなぜか・・・今回その理由が判ったような気がします。
鍵盤を叩くタッチがとても強いんです。これほど叩く人は少ないと思います。
バラードでは一転してやさしいタッチになります。
つまりタッチの強弱が一番の個性だと思いました。
これが好みの分かれ目になるかもしれませんね。
握手をした時に感じましたが大きくて分厚い手をしていました。
以前は突っ張っていましたが近年はまたオーソドックスなスタイルに戻っているようです。

もうひとつ強調したいのは一番若いステファノ・センニです。
これがまた素晴らしいベーシストでオーソドックスで奇をてらうところはまったくないんです。
その安定したベース・プレイには目が点になってしまいました。
スムーズな動きでリズムもばっちり、音もキレイに出てきます。
私は一発でファンになってしまいましたよ。
アンプなしの生のベース音は本当に心地良かったです。

ベストはCDにも入っているオリジナルの「Caro Mio Ben」でいかにもイタリアの風景を感じさせる美しい曲でした。
バラードではバート・バカラックの「A House Is Not A Home」やビル・エバンスの「Waltz For Debby」、
スタンダードで「If I Were A Bell」、ブルースでマイルス・デイビスの「All Blues」、
ボサノバのリズムのオリジナル「Sundance」、
サンバで演奏されたヘンリー・マンシーニの「Charede」などが印象に残りました。
アンコールは「Body And Soul」だったです。

選曲も気配りが利いているのがよく分かる構成になっていました。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2009/11/07



■大口純一郎&梶原まり子を聴いてきました。
大口純一郎(p)、梶原まり子(vo)
ゲスト:桜井郁雄(b)、石川早苗(vo)、上田裕香(vo)

先日聴いた梶原まり子さんの印象が強烈だったので早速聴きに出かけました。
共演が大口純一郎さんなので興味津々でした。

演目はI氏が書き取ってくれたものです。
「Chelsea Bridge (piano solo)」、「Ruby, My Dear (piano solo)」、「I Thought About You」、
「Misty」、「Day By Day」、「Manha de Carnaval」、「Love Letter」、「There Will Never Be Another You」、
「Verdad Amarga (piano solo)」、「Happy Birthday」、「The Nearness of You」、
「Chega de Saudade」、「A Foggy Day」、「Autumn Leaves」、「But Beautiful」、
「There Is No Greater Love」、「Bewitched, Bothered and Bewildered」、「Bye Bye Blackbird」

まずは大口純一郎(p)さんのピアノ・ソロでビリー・ストレイホーンとセロニアス・モンクの2曲。
ピアノからバチンと弾き飛ばされた音には力がこもっています。
ビンビンと心に響いてくる音には一音一音に存在感がありました。
個性的なピアニストはみんな独特の間合いを持っていますね。
ぜい肉をそぎ落とした研ぎ澄まされた感性を味わうことができました。
この感覚がなんともいえずいいんですよ。
大口さんがラテン好きなことは初めて知りました。
「Verdad Amarga (piano solo)」、「Chega de Saudade」は素晴らしかったです。

やっぱり梶原まり子(vo)さんのグルーブ感とスイング感は凄かったです。
強弱や緩急が微妙に変化するのでまるでアドリブを聴いているようなボーカル。
だからこそ大口さんとの掛け合いも面白かったです。
独特の間とタイミングは梶原さん独自のものでしょうね。
誰にも似ていない個性と味わいがあります。
グイと心に踏み込まれる感じもその通りでした。
これは麻薬みたいなもので時々は聴きたくなると思います。
梶原さんの「インプロビゼーションの世界」はそのままジャズの魅力でもあります。
やっぱり自分の世界を持っているのは最大の強みです。
で、今夜の最高は「Day By Day」と「Love Letter」になりました。

嬉しかったのは最近気に入っている曲が2曲共に聴けたことです。
「Day By Day」と「A Foggy Day」
別にリクエストしたわけでもないのに何で選ばれたのか、これも不思議といえば不思議だったです。

ゲストにまずはベテランの桜井郁雄(b)さんが登場してビックリ、前半の4曲に参加してくれました。
ベースが入るとサウンドに厚みとスイング感が増すので聴き応えがありました。
太く包み込むような温もりのあるベース音にはホッとします。

石川早苗(vo)さんは「The Nearness of You」を歌ってくれました。
心をこめて歌ってくれて高音が良く伸びてキレイでした。
この自然な感覚がとてもいいです。

初めて聴いた上田裕香(vo)さんの「Chega de Saudade」(No More Blues)もインパクトがありました。
ブラジル音楽というか、このラテンのノリにはちょっとショックを受けました。
いずれまたゆっくりと聴いてみたいと思っています。

ゲスト陣も豪華で華やかになりました。
というのは、この日は常連のI氏の誕生日だったそうで私も偶然そこに居合わせたことになります。
誕生日パーティの様相になって多いに盛り上がりました。


At The "Gate One" Takadanobaba On 2009/11/05



■松島啓之・カルテットを聴いてきました。
松島啓之(tp)、今泉正明(p)、嶋友行(b)、横山和明(ds)

松島啓之さんも人気のあるトランペット奏者です。
ここはハード・バップ中心の曲が聴けるということでで安心して出かけていきました。
演目は「Ruby, My Dear」、「Jitterbug Waltz」、「Enbraceable You」、「Airegin」、
「Kicker」、「Along Came Betty」、「Darn That Dream」、
「ナシメント」(聴いたことあるけど曲名だかミルトン・ナシメントの曲か不明)、等々。
選曲ではセロニアス・モンクが2曲演奏されたのが目立ちます。
ソニー・ロリンズの「エアジン」やジョー・ヘンダーソンの「キッカー」はノリノリの演奏。
私的ベストは前半ではバラードの「Enbraceable You」、後半はボサノバの「ナシメント」が良かったです。
特にトランペットのワン・ホーンでボサノバを聴いたのは久し振りなので新鮮でした。

松島さんはシャイで物静かですがクールな中にも切れのあるプレイが身上です。
この日もハード・バップの魂が宿った熱いプレイを聴かせてくれました。
今泉正明(p)さんはしなやかなタッチが鍵盤を疾走するピアニストの一人です。
バップにもう一つモダンな味が加味された個性を感じています。
今回、一番注目したのは若い横山和明(ds)さんでした。
聴けば聴くほど好センスの持ち主で抜群のリズム感と絶妙のタイミングを持っていると思います。
彼のドラムはパルス波がさざなみのようの押し寄せては引く感じがしています。
スーッと吸い込まれるような心地良いリズムを感じることができました。
嶋友行(b)さんは体調がイマイチのようなので一日も早い回復を祈っています。
ライブハウスでは松島さんのファンから声援がかかって大いに盛り上がりました。
こういったジャズ・ファンが大勢いるのは心強いと思いました。


At The "Sometime" Kichijoji On 2009/11/04



■石川早苗&橋本信二・トリオを聴いてきました。
石川早苗(vo)、橋本信二(gt)、田村和大(p)、トオイダイスケ(elb)
ゲスト:梶原まり子

先日書いたとおり、石川早苗(vo)さんと橋本信二(g)さんが聴きたくて出かけて行きました。
初めてでしたが懇意のI氏に偶然出会えたのでスーッと溶け込んでまるで常連のようになってました。
終わりに橋本さんに声をかけたら「いつからいたの〜! 全然気付かなかったよ〜!」てな感じです。

石川早苗さんは先日も感じたんですが鋭いパンチ力とジャズ・フィーリングを持っています。
今回聴いてみると、よく伸びる美しい高音が最大の魅力だと思いました。
ハイ・ノートになってもまったくストレスを感じさせません。・・・これは石川さんの宝です。
アタックを抑えてストレートな歌い方でも十分に通用します。
ということで今夜の最高はキャロル・キングの名曲「Will You Love Me Tomorrow? 」でした。
しっとりと歌い上げてムード満点、心にジ〜ンと沁みました。・・・拍手も一番多かったし。
あとバラードでは「Close To You」と「Old Devil Moon」もいい感じでした。
アップ・テンポでは「Love For Sale」がスピード感溢れるノリでぶっ飛ばして気分爽快です。
ボサノバは「One Note Samba」に「Wave」、日本語で「ハナミズキ」と構成も良かったと思います。
8ビートで歌われた「Fly Me To The Moon」も新味で面白かったです。
まだまだ若いので色々と挑戦して成長してほしいです。

今回橋本さんの新しい一面を見ました。
まずはインストで「Stompin' At The Savoy」からスタートしましたがこの橋本さんがカッコ良かったです。
スイング感溢れるゴージャスなジャズ・ギターが聴けました。

ボーカルのバッキングもボサノバも初めて聴くので、こんなにブルージーでロマンチックだとは思わなかった。
いつもはもろファンキー・ギタリストだったからなぁー・・・。


田村和大(p)さんもライブ・ハウスのスケジュールでよく見かけるので一度聴きたいと思っていました。
ボーカルのバックでのピアノとギターの組み合わせはむずかしい部分があったと思います。
それでもよくスイングする切れ味の良いピアニストの片鱗を見せてくれました。
今日のところは顔見世ということでいずれじっくりとそのピアノ・プレイを聴いてみたいです。


同じく初めてのトオイダイスケさんはエレクトリック・ベースを披露。
I氏曰く:エレベといえばジャコ・パストリアスですがスティーブ・スワロウを聴いてエレベを始めたのは珍しいと思う。
たしかにオーソドックスで安定感のあるベース・プレイを聴かせてくれました。
つい多弁になりがちなジャズ・エレキ・ベースは諸刃の剣ですが可能性はまだまだあると思っています。


実は梶原まり子さんもなんとか聴ければと期待していましたが1曲披露してくれました。
「The Man I Love」
「あー、良かった」・・・全身から発する強烈なグルーブ感、スイング感は凄かったです。
心に沁みるというよりグイと心に入り込んでくるというか、踏み込まれる感じがしました。
こういう経験はあまりないです。
・・・たしかにジャズ・ボーカルは年齢と共に進化します。


今回、またひとつ行動範囲が広がったと思うので嬉しかったです。

At The "Gate One" Takadanobaba On 2009/10/30



■久保島直樹・カルテットを聴いてきました。
久保島直樹(p)、旧橋壮(ts)、是安則克(b)、野村綾乃(ds)

急に見に行こうと決めたので着いた時にはライブはすでに始まっていました。
小雨にもかかわらず熱心な久保島ファンが聴きに来ていたので人気があります。

久保島さんを聴くのは2回目で前回は林栄一(as)さんとのデュオでした。
聴けば誰を敬愛しているのか一目瞭然・・・マル・ウォルドロン(p)です。
ポン・ポン・ポン・ポツン・ポツンと落ちる独特のタッチが特徴的です。
幾何学的というかクールな表情はレニー・トリスターノ(p)という感じも受けました。
ライブはオリジナルが中心でバラードとテンポのあるものを交互に演奏していました。
この独特のサウンドは心地良くてハマッてしまう人もいるでしょうね。
もちろん、単純な展開にはならずフリー・フォームにも片足を突っ込んでいます。
やっぱり、中央線ジャズは個性派揃いで面白いですね。

旧橋壮さんは一度聴いてみたかったサックス奏者です。
幅広い音楽性と個性的な奏法は自分の言葉で語っています。
テナーでは低音部をアクセントにしての演奏ですが根っこはウェイン・ショーター(ts)か。
特筆すべきはソプラノ・サックスでこれは大いに魅力がありました。
これほど多彩なソプラノの表現は中々聴けないと思いました。
面白かったなぁー・・・益々磨きをかけてほしいです。

ベテラン・ベーシストの是安則克さんを見るのは久し振りでした。
なんでかなと思うほど出会いませんでした。
このグループでも要の存在で真ん中にドーンと立っているとその存在感が目立ちます。
滑らすようなねじるような個性あるベース・プレイはそのまま、強烈なアルコ・ソロにはガツンときました。

野村綾乃さんの名前はあちこちのライブ・ハウスのスケジュールで見かけています。
女性ドラマーを見る機会はほとんでなかったので楽しみにしていました。
結果は男性ドラマーと比べてまったく遜色はありませんでした。
同じように演奏していても女性独特の繊細さやまろやかさが出ていたのは面白かったです。
この激しくもソフトな感覚が女性ドラマーの持ち味だと思います。
多彩な表現力を持っているのでこれからが楽しみです。

ところでライブの合間に店主の村上さんがかけてくれたCDがマックス・ローチ・カルテットでした。

*MAX ROACH QUARTET / SPEAK, BROTHER, SPEAK
Clifford Jordan(ts), Mal Waldron(p), Eddie Khan(b), Max Roach(ds)

これがそのまんまこのグループのサウンドに近かったので驚きました。
さすがです。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2009/10/24



■「ごめんね」を聴いてきました。
後藤輝夫(ts)、橋本信二(g)、小泉高之(ds)、西川奈々(org)
ゲスト:石川早苗(vo)

後藤輝夫さん率いる「ごめんね」も大好きなグループです。
”ごめんね”のグループ名の由来は前回も書きました。
リーダーの後藤輝夫さんのサイト名が「Go-men.net」で続けて読むと”ごめんね”になりますね。

「ごめんね」を聴くのは今年2回目になります。
サックスにオルガン・トリオのレギュラー・カルテットは貴重ですね。
後藤さん、橋本さん、小泉さんは不動のメンバーでオルガン奏者に若手を起用しています。
グイグイと疾走するノリのいいサウンドが最大の魅力だと思います。
ブルージー&ファンキー&ソウルの形容がぴったりのグループです。
気心も知れる熟年3人の掛け合いの楽しさは折り紙付き。
オルガン・トリオに乗ったグルービーな後藤さんのテナー・サックスはご機嫌です。
メリハリのある切れるプレイが聴きどころ、引き出しをたくさん持っているので名手だと思います。
ファンキーな橋本さんのギター・プレイはハジけると本当に面白いです。
私は橋本さんの酔ったギターが大好きですっかりハマっています。
ドンドコ、ドンドコと押し出してくる揺れる小泉さんのドラムスも存在感がありました。
この日は小泉さんの誕生日だったそうです。

ここは正直、若手のオルガン奏者の出来にあると思います。
西川さんは何ヶ月か前に聴いた時はまだまだ手探りの状態でした。
それがプレイにも現れて弱々しい感じがしたものです。
しかし、若いっていうのは素晴らしいですね。
後藤さんの熱心な指導もあってか、この数ヶ月間でぐっと成長していました。
思いっきりの良い力強いタッチに変わってきていました。
聴いていて、つい「粘れ〜、粘れ〜、頑張れ〜」とつぶやいてしまいました。
ブルージーでアーシーな感覚がオルガンの最大の魅力、
粘っこいリズムをグイと押し出すようになればもっと良くなると思います。

スタンダードは「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」、「ゼア・イズ・ノー・グレーター・ラブ」、
「ユー・ドント・ミー」しか分かりませんでした。
「ユー・ドント・ミー」では後藤さんが「牛丼のみ〜」と紹介して
橋本さんが「味噌汁なし」とチャチャを入れてうけました。
これを聞いた時、以前ギターの中牟礼貞則さんが「チャイルド・イズ・ボーン」を
「茶色いズボン」と紹介したのを思い出しました。
ジャズ・メンには駄洒落ッ気もあります。
そういえば、後藤さんのリンゴのシャツも洒落てたなぁ〜。

ゲストには石川早苗(vo)さんが登場、「ラブ・フォー・セール」を聴かせてくれました。
パンチ力とジャズ・フィーリングを感じました。
橋本さんと共演しているようなので、もう一度ゆっくりと聴いてみたいと思っています。


At The "Sometime" Kichijoji On 2009/10/19



■バート・シーガー(p)&池長一美・トリオを聴いてきました。
バート・シーガー(p)、池長一美(ds)、吉野弘志(b)

私は毎年1度行なわれるこのトリオの公演を楽しみにしています。
この組み合わせになってからもう5年目になるのか、年々進化しています。
端正で硬質然としたピアノ・トリオの王道、格調高く、好バランスで音楽性にも優れています。
三位一体のコラボレーションはビル・エバンス・トリオを彷彿とさせるものです。

オリジナルとスタンダードの構成で少しオリジナルのほうが多いと思います。
スタンダードは「Old Devil Moon」、「How About You」、「One For My Baby」、「Going Home」、
アンコールは「You Go To My Head」等々、
オリジナルでは「Prelude」、「How High Is the Ocean」、「Learning To Trust In Love」、「Bounce」等
私はオリジナルのほうが好きなのでどれも良かったです。
特に美しいバラードの「Learning To Trust In Love」は心に沁みたし、
ハジけるという意味を持つ変拍子の「Bounce 」も面白かったです。

このトリオもありきたりではなくて独特のタイミングとタイム感覚を持っています。
変調、変拍子を多用するのは現在のアメリカのピアノ・トリオのひとつの行き方かもしれませんね。
もちろん、美しいメロディ・ラインは健在で静謐で耽美的なプレイも堪能できます。

今回新鮮に感じたのはライブのハイライトになったと思える「Going Home」でした。
なんと今曲ではマッコイ・タイナー・トリオを感じさせるスケールの大きな演奏を聴けたことです。
これはそのまんまマッコイ、ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)ではないかと目を見開きました。
フォー・ビートでグングン押してくるトリオにゾクゾクッとしました。
それぞれが多くの引き出しを持っていて、何が出てくるか分からない面白さがありました。

バートは無駄な動きが少ないピアニストでフレーズの垂れ流しはしません。
ひとつひとつ考えて意味のあるメロディをつむぎだしている感じがします。
なんというか、学者風で真面目、シャイで人柄の良さを感じます。
池長さんの語るドラムスはいつも素晴らしくて確固たる独自のスタイルを築いています。
バートとの付き合いは長くツーカーの仲、二人の息の合ったインタープレイはいつも楽しみにしています。
吉野さんは年々馴染んできてきっちりとしたプレイを展開、アルコ奏法は相変わらず上手いです。

At The "JZ Brat" Shibuya On 2009/10/14



■土濃塚隆一郎・トリオを聴いてきました。
土濃塚隆一郎(flh)、塩川俊彦(g)、小泉P克人(b)

土濃塚さんは1年に何度か聴きたくなるプレイヤーです。
いつ聴いても元気溌剌、精一杯思いっきり吹いてくれるのでこちらまで元気になります。
プレイが熱くて鋭い、なにより演奏するのが大好きという気持が伝わってきます。
塩川俊彦(g)さんとのコンビを見るのは2回目で今回のベーシストは小泉P克人さんでした。

このトリオの魅力はソウル&ファンキーな演奏にあります。
基本的にビートのはっきりしたフュージョン系のサウンドが特徴です。
オリジナルが中心でしたが前半のハイライトは初めて聴く椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」、
後半は愛奏曲のフレディ・ハバードの「レッド・クレイ」でした。
土濃塚さんの持つ音楽性にこの2曲は曲想がぴったりハマります。
塩川さんは切れのあるギタリストで音色もキレイ、リズム感のあるプレイが魅力です。
小泉さんを見るのは2回目、ファンキー・ベーシストという表現がピッタリだと思います。
やっぱりアコーステック・ベースよりもエレキ・ベースがしっくりときますね。
で、この日のベストは3人のグルーブ感溢れる「レッド・クレイ」ということになりました。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2009/10/03



■百々徹・トリオを聴いてきました。
百々徹(p)、中村恭士(b)、中村雄二郎(ds)
ゲスト:長谷川朗(as)

ひと言で言えば刺激的で面白いピアノ・トリオでした。
前述のケイ・赤城・トリオといいこういうトリオにハマってしまうと普通のピアノ・トリオでは物足りなくなるかもしれません。
もちろん、この行き方やサウンドが好きか嫌いかは重要な要素にはなりますが・・・。

百々徹さんは何年前になるのか、「DODO」というアルバムが紹介されてジャズ・ファンの間で評判になりました。
今回、機会を得て初めて見ることができました。
お話もユーモアがあって中々面白いピアニストです。
まずはスタンダードの「オール・ザ・シングス・ユー・アー」からスタート。
出だしはビル・エバンスかと思いましたがそれも一瞬のこと、9拍子にアレンジされていて新味を出していました。
ここからオリジナルが中心になって変調、変拍子のオンパレードでした。
ありきたりのリズムはなく、ユニークで3人の頭の中はどうなっているのかと思いましたよ。
当然ながらフリー・フォームもあります。
ほとんどが初共演といっていいのにむずかしいリズムもビシリと決めてくるのには驚きました。
しかし、3人の力量が高いのでむずかしさを感じさせずに難なくこなしてしまいます。
私は大いなる可能性を感じました。
本場、ニューヨークで活躍する若者達は凄いです。


百々さんは変わった感覚の持ち主ですが力強いタッチと素早いパッセージは強烈な印象を残します。
バラードではケヴィン・ヘイズやブラッド・メルダウに相通じる新感覚のピアノを感じました。
ベースの中村恭士さんは前回8月に広瀬潤次(ds)さんで見たばかりですがまたまたの来日です。
チャーネット・モフェットを彷彿とさせるスイング感とスピード感、
ベース弦を押さえ込み、ブーン・ビーンと弾く強烈なベース・プレイを聴かせてくれました。
注目の片倉真由子(p)さんの新アルバムにもカール・アレン(ds)と共に参加しています。

今回初めて見たドラマーの中村雄二郎さんには恐れ入りました。
まだ20代ですが素晴らしい感覚をもつドラマーです。
必ずや頭角を現わしてくると断言しておきます。
昨日の加納樹麻さんといい可能性のある若手のドラマーを連続で見ました。

また、この日はゲスト出演がありました。
サックス奏者の長谷川朗さんが加わってのカルテット演奏です。
シダー・ウォルトンの「ボリビア」とスタンダードの「イン・ア・センチメンタル・ムード」です。

若さ溢れる気合の入った熱気のあるライブが見られて嬉しかったです。


At The "Sometime" Kichijoji On 2009/10/01



■鈴木道子&岡崎好朗&ユキアリマサ・トリオを聴いてきました。
鈴木道子(vo)、岡崎好朗(tp)、
ユキアリマサ(p)、佐藤”ハチ”恭彦(b)、加納樹麻(ds)

興味ある組み合わせだったので見てみたいと思いました。
道子さんとトランペットの共演はあんまり見たことがなかったし、実際二人の掛け合いは面白かった。
もう一つの目的は評判の高いドラマーの加納樹麻さんを見ることにありました。
スタートはインストで「9月の雨」、外はシトシトと雨が降っていたのでピッタリの選曲になりました。
前半のベストは「I grad there is you」のバラード、後半になるとグッとノリが良くなって
「The very thought of you」、「 If I shoud lose you」、「All or nothing at all」、「Candy」
の並びは圧巻でした。
道子さんの歌はいつもよりもジャズ・テイストが強く、緩急自在の展開でジャズの魅力を満喫しました。

このところ岡崎好朗(tp)さんを聴く機会も多いですがやっぱりバラードがいいです。
そのまろやかな音色でクールな味わいは都会の夜にピッタリかな。
ユキアリマサさんの力量はよく知られているところです。
タッチもリズムも個性的で次にどんな音が出てくるか、展開がつかめない面白さがあります。
佐藤”ハチ”恭彦さんの軽快でスイング感溢れるベースは爽やかな感じがします。
アリマサさんとハチさんのコンビはガチッと決まっていて微動だにしません。
1本スジが通っているので安心して聴いていられる安定感と安心感があります。

さて、加納樹麻さんは好センスのドラマーでした。
抑えるところは抑え、叩く時には叩く、ドラム・ソロにも言葉がありました。
驚いたのはのはボーカルのバックやトリオでスーッと消える時がありました。
まったくボーカルやトリオに溶け込んでしまうというのは素晴らしいことですよ。
ドラムスの存在を感じさせないのは稀有の才能、さすが評判になるだけのことはあります。
このトリオは出来るだけ音数を控えているのでボーカルがグ〜ンと浮き上がってくるバックだったです。

ワン・ホーン・カルテット、ボーカル、トリオ、とそれぞれのコラボレーションの魅力満載のライブでした。
めったに見られない組み合わせで楽しかったです。


At The "Body And Soul" Minamiaoyama On 2009/09/30



■ケイ赤城・トリオを聴いてきました。
ケイ赤城(p)、杉本智和(b)、本田珠也(ds)

このトリオは結成してから9年、その間に5枚のCDを出しているそうです。
ケイ赤城さんは年に2回ほど来日してこのトリオで演奏していると聞きました。
それくらいだと常に新鮮な気持になれるので長続きしている秘訣かもしれませんね。
長い歴史があるので気心も知れていて、トリオとしての行き方も確立されていると思います。
ウィーク・デイにもかかわらずライブ・ハウスは満員の盛況でした。
このグループの魅力と人気のほどが伺えました。

聴いた途端、赤城さんの音が弾丸のように飛んでくる感じがしました。
パワーに満ちた弾かれた音です。
オリジナルが中心で舞台音楽を聴くような流れは常に物語性を持っています。
赤城さんがテンポとテーマを出したあと、最初は手探りというか、それぞれが勝手な方向を向いて、
混沌としたところからまたまとまってきてグーッと盛り上がるパターンです。
3人のうち誰かが舞台の中央に登場してパフォーマンスを繰り広げ、それを二人がサポートしていく形です。
1曲が長くてピアノ・トリオとしてはちょっと見ないパターンで非常に個性的です。
単純なフォー・ビートはまったく出てきませんでした。
当然ながらフリー・フォームもあちこちに見かけることができます。
でも決してバラバラではなく心地良く聴こえるのはバランスの良さ、3人の実力の証しともいえます。
それぞれが個性を発揮しながら三位一体のうねるトリオを感じることができました。
このトリオの持ち味は力強い呪術的なサウンドで観客が酔いしれるひと時を演出してくれます。
「ドドドド、ドドドド」、これは本田珠也さんのドラムスに因るところが大きいです。
杉本智和さんの短く切るアルコ・ソロも面白かった。
それぞれの力量は知られているので特に書くこともありません。
みなさん、多彩な表現力を持っています。

ライブハウスはまるでコンサート会場のようだったです。
観客のみなさんはいかにもこのトリオを聴きに来ているという雰囲気でした。
ピアノ・トリオとしてはやや難解なんだけどジャズ・ファンの層も厚いと嬉しくなりました。

At The "Sometime" Kichijoji On 2009/09/17



■松風鉱一&小森慶子・クインテットを聴いてきました。
松風鉱一(as,fl,ts)、小森慶子(as,ss,cl)、清水くるみ(p)、吉野弘志(b)、藤井信雄(ds)

7月に松風鉱一さんと渋谷毅さんのデュオを聴きましたが師弟コンビの
双頭クインテットに興味があったので出かけていきました。
このメンバーは以前ピアノレスのカルテットで聴いたことがあります。

やっぱり、松風さんはつくづく個性的だと思う、誰にも似ていません。
聴いていると独特の風情を持っています。
なんとなく日本やアジアの田舎の原風景が見えてくるような気がします。
木の温もり、フルートの音色も日本の竹笛に近い感じがする。
そんな独自の世界のサウンドは心地良いものです。
横ノリ、縦ノリというよりも前後ノリで自然に身体が前後に揺れてくるのが面白かったです。

全曲オリジナルでライブ全体をオリジナルだけで通してしまうスタイルも珍しいです。
それもトリッキーなテーマでリズムも独特、とても一筋縄ではいかない曲が並んでいます。
・・・で、このグループの決め手は藤井信雄(ds)さんにあると思いました。
タイトなリズムを繰り出して、吉野弘志さんのベース・プレイと共に安定感がありました。
藤井さんも吉野さんも幅広い音楽性を持ち、その存在感は十分です。

お弟子さんの小森慶子さんもやっぱり師匠に似ていました。
マルチ・プレイヤーでアルト、ソプラノ、クラリネットを駆使してぴょんぴょんと跳ねてくれました。
クラリネットは多彩な表現力を持ち、低音部分をうまく使うので一番個性的に思いました。
師匠の松風さんもアルト、テナー、フルートを1曲ごとに持ち替えます。
そんなんで、こんがらないのかと余計な心配をしてしまいましたが・・・大丈夫。
特にクラリネットとフルートという組み合わせはあまり見ないので新鮮だったです。
2曲聴けました。

清水くるみ(p)さんも実に刺激的で良かったです。
音遣いが繊細、指先が鍵盤を跳ね回るという感じがしました。
ブロック・コードも強烈、これまたユニークな感性の持ち主なんでしょうね。

このベテラン同士の組み合わせは一味、二味違います。
このメンバーは「超個性的」という表現がぴったりという気がする。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2009/09/11



■牧野竜太郎&清水絵理子を聴いてきました。
牧野竜太郎(vo)、清水絵理子(p)、中林薫平(b)

牧野竜太郎さんもずっと聴きたいと思っていた歌手です。
昨年出たアルバムの「RYUTARO MAKINO/RM」をドラ盤(No.348参照)に選んで以来気になっていました。
ついでにそのCDを持って行ってサインをお願いしました。

まずは声がいい、ソフト、メロウな声質が魅力、これは男性歌手にとっては一番の武器です。
声量もジャズ・フィーリングも十分で素材としては一級品だと思いました。
スタンダードにオリジナルを交えてのライブ・パフォーマンス。
CDでも感じたとおり、とてもジャズの範疇だけではおさまりきれません。

*「Let's Get Lost」、*「Stardust」、*「It's Only A Paper Moon」、*「In My Life」、
*「Don't Get Around Much Anymore」、*「Come Rain Or Come Shine」、
*「Night And Day」、*「Blue Skies」、*「Can't Take My Eyes Off You」等々、
オリジナルは*「La,La,La」、*「至福の時」ともう1曲。

選曲も凝っていてリズムやノリが難しい曲を取り上げていると思います。
「ペイパームーン」や「ブルー・スカイ」、「ナイト・アンド・デイ」もそんな傾向の曲です。
若さにまかせたチャレンジャー精神の意欲は買えるし、思いっきりもいいです。
圧巻だったのは*「カム・レイン・オア・カム・シャイン」のバラード1発、
じっくりと歌い上げて「今夜の最高!」、これにはガツンときました。

シンガー・ソング・ライターとしての才能もあるのでそちらが先にヒットしてしまうかも。
新曲の*「We Say Love」(曲名は言わなかったけれど多分こんな題名だと思います)
エコロジーのメッセージを秘めているので注目の曲です。

言葉の間と間が安定してスムーズに繋がるようになったらもっと良くなると思います。
もっとも今は荒削りでも全然かまいませんよ。
まだ30歳だものね、これからどれくらい伸びていくか、本当に楽しみです。

清水絵理子(p)さんは体調を崩していたようですが回復してきて良かったです。
なんだか肩の力が抜けたようでしなやかでやわらかくなったような気がします。
特にインストで演奏された*「チャイルド・イズ・ボーン」は素晴らしかった。
表現力がグ〜ンとアップ、しっとりとして新鮮な感じがしました。
「災いを転じて福となす」

中林薫平(b)さんは真摯なプレイが印象的、もう少し粘っこさがあるといいかな。
アルコ・ソロに見どころがあるのでさらに磨きをかけてほしいです。


At The "Naru" Yoyogi On 2009/09/10



■ビンセント・ハーリング・カルテットを聴いてきました。
ビンセント・ハーリング(as)、
ジル・ムキャノン(p)、エシェット・エシェット(b)、小林陽一(ds)

ビンセント・ハーリング(as)を見るのは2回目です。
何年前になるのか、ナンシー・ウィルソン(vo)のバックで来日した時に見ました。
その時はソロ・パートが少なかったので残念に思ったものです。
ビンセントはストリート・ミュージシャン出身で現在では珍しいタイプのプレイヤーです。
ここで共演する小林陽一さんとはその時以来の付き合いで「日本の先生」と紹介していました。

ステージに現れた時、共演の3人はスーツにドレス姿だったけどビンセントは普段着でした。
実は少し前に行ってお茶を飲んでいたらそこにプレイヤーのみなさんが居たんです。
くつろいでいたので普段着、他の3人が着替えたのにビンセントがそのままだったので面白かったです。

よく言われることですが雰囲気はキャノンボール・アダレイ(as)に似ています。
しかし、当然ながら中身は似て非なるもの、多弁ですがやや情緒には欠けます。
その代わり音に力があって迫力満点、会場に鳴り響くアルト・サックスの音色は存在感がありました。
パワーは肉食系そのもの、ビ・バップの香りがプンプンして良かったです。

演目はスタンダードが中心です。
*「スィート・アンド・ラブリー」、*「イン・ア・センチメンタル・ムード」、*「チェロキー」、*「モーニン」、
*「イースト・オブ・ザ・サン」、*「上を向いて歩こう」、*「エブリタイム・ウィ・セイ・グッドバイ」等々、
アンコールはメドレーでバラード曲?から*「ナウ・ザ・タイム」でした。

特筆すべきはエシェット・エシェットでこんなに凄いベーシストとは思いませんでした。
CDでは何枚か聴いていますが地味なのでまったくのノー・マークだったんです。
聴くと見るのでは大違い、しなやかで粘りのあるベース、弾き過ぎないし、リズム感、テクニック共に抜群です。
これには観客も大喜びで拍手喝さいでした。
小林陽一さんも楽しかったです。
陽気で明るいドラミングは聴いていて心が晴れ晴れしてきます。
このライブでの中心人物、音楽監督は明らかに小林さんだったです。
みんなが全幅の信頼をおいているのがよく分かりました。
ちなみに小林さんが率いる「小林陽一&グッドフェローズ」も根強い人気があります。
当初、ピアニストはアンソニー・ウォンジーだったですがジル・ムキャノンに変更になっていました。
カナダ出身の若手の女性ピアニストでしたがまったくの力不足でした。
彼女の出番になるとテンションが下がってしまうのです。
歌も2曲披露しましたが同様の印象です。
バップ・テイストが感じられず、全てが手探りなので盛り上がりに欠ける最大の原因になりました。
今後の精進を期待したいと思います。

私はアンソニー・ウォンジーのピアノも楽しみにしていたんですよ。
主催者からピアニストが変更したとのメッセージは一切ありませんでした。
色んな都合があるのはしょうがないですね。
ただ、ひと言、お知らせがあってしかるべきだと思います。
ピアノがアンソニーだったらどんなに素晴らしかっただろうかと思うと残念でした。

At The "Swinghall" Musashinoshi On 2009/09/03



■国貞雅子&荒武裕一朗を聴いてきました。
国貞雅子(vo)、荒武裕一朗(p)、生沼邦夫(elb)

ライブ・ハウスでの例の質問:「だれか、お勧めの人はいませんか?」
と聞いて別々に出てきた国貞雅子(vo)さんと荒武裕一朗(p)さんの共演です。
この半年、ずっと見たいと思っていながらようやく実現しました。
ミュージシャンにとっても熱烈なファンがいることは心強いですね。
そういうファンの口コミが強力な応援団になっています。

演目はインストも含めて*「Someone To Watch Over Me」、
*「Softly As In A Morning Sunrise」、*「Summer Knows」、*「Summertime」、
*「Day By Day」、*「There Will Never Be Another You」、*「Black Coffee」、
*「I Can't Give You Anything But Love」、*「That's All」、
*「Everything Must Change」、*「Love For Sale」、等々です。

国貞さんはゴスペル、ソウル、ブラック・ミュージック系ということはすぐに分かります。
声質、声量、フィーリングともにその雰囲気は十分に持っています。
以前、一度だけ聴いた時はゲストだったので硬かったですが
この日はホーム・グラウンドということもあってリラックスしていました。
オリエンタルなムードもあるし可愛らしい感じがしました。
アップ・テンポでのリズムやパンチも効いていますがやはり聴きどころはバラードにあると思いました。
特に*「BLACK COFFEE」と*「EVERYTHING MUST CHANGE」は素晴らしかったです。
きっと大好きな歌なんでしょうね。
しっとりとした歌い方で声の伸び、表現力も申し分ありません。

荒武さんは予想をはるかに上回って良かったです。
微妙なタッチとタイミングが魅力、ポツン、ポツンと落ちてくる音がたまりません。
本田竹広(p)さんに傾倒して今でも影響を受けているそうです。
私は意味なく「雰囲気は誰に似ているだろう?」と考えるクセがあります。
聴きながら、すぐそこまできているのに最初は思い出せませんでした。
そうしたら*「JORDU」を演奏してくれたんです。
「そうだ、デューク・ジョーダン(p)だったのか」と納得しました。
伝統的なノスタルジックなピアノと北欧の香りがするスタイルを持っています。
いいですね、ソロ・ピアノを聴いてみたいと思ったのは久し振りです。

生沼さんはこの日エレキ・ベースで参加していました。
やっぱりウッド・ベースが合うような気がする・・・。


At The "Naru" Yoyogi On 2009/08/21



■広瀬潤次・カルテットを聴いてきました。
広瀬潤次(ds)、片倉真由子(p)、中村恭士(b)、太田朱美(fl)
ゲスト:堀秀彰(p)

3年ほど前に中村恭士(やすし)(b)さんのプレイ(2006年の「ライブ・レポート」を参照)を聴いたことがあります。
ドミニク・ファリナッチ(tp)や西藤大信(g)さんとの共演でしたが強く印象に残りました。
その中村さんと私が懇意にしているT氏が親しいと知った時は本当に世の中は狭いと思ったものです。
今年は8月初旬にジュリアード・ジャズ・オールスターズ としてカール・アレン(ds)やドミニク・ファリナッチ(tp)、
ロン・ブレイク(ts)、ここでも一緒の片倉真由子(p)さんらと大坂で演奏したようです。
片倉さんとはバークリーとジュリアードで一緒だったそうです。
しなやかでよく伸びるベースが歌っていました。
フレキシブルで緩急自在、リズム感やタイミングもいいのでバランス感覚に優れています。

今回、注目の二人の若手女性プレイヤーとの共演は見逃せないと思いました。
広瀬潤次(ds)さんのグループは「SOund of JAzZ」という名前が付いているようです。
なにしろみんな若いので元気溌剌としています。
演目は広瀬さんのオリジナルが中心であとはジャズ・スタンダードの構成です。
オリジナルが多かったのが意外でしたけれど曲作りも好きなようですね。

超高速調の演奏は迫力満点、ブンブンと突っ走るので気分爽快になりました。
この日のハイライトは*「JUST ONE OF THOSE THINGS」で、これはもう最高だった。
*「オール・ザ・シングス・ユー・アー」、*「ストンピン・アット・ザ・サヴォイ」、アンコールは*「バイバイ・ブラックバード」
スタンダートといってもリズムや音使いが単純ではないので実に刺激的です。

このライブには初顔合わせの面白さもありました。
太田さんは先週も見たばかりですが片倉さんとの組み合わせは早く聴いてみたかったです。
ここに中村さんと広瀬さんが加わるとどうなるのか。
女性二人の最大の魅力はアグレッシブな点です。
思いっきりグイグイと押して攻めてくるのでそれが心に響いてきます。
片倉さんはあちこちで名前を聞く現在最も注目されている女性ピアニストです。
アプローチが新鮮、所々で知った曲のフレーズをちりばめるユーモアをあります。
バディ・リッチを心の師とする広瀬さんのドラミングも面白かったです。
このグループの特徴は超高速のスピード感にありました。

飛び入りもあって堀秀彰(p)さんともう一人、バークリー帰りのベーシスト(名前は失念)です。
「イット・クッド・ハップン・トゥー・ユー」を演奏してくれました。
ライブでのこういうハプニングは楽しいものですね。


At The "Naru" Ochanomizu On 2009/08/12



■太田朱美・カルテット を聴いてきました。
太田朱美(fl)、石田幹雄(p)、安東昇(b)、力武誠(ds)

一年に二度も同じメンバーのライブ・レポートを載せることはめったにありません。
しかし、このグループについては例外ということになります。
掛値なしに凄いグループなので4月に見てから再度の登場を楽しみに待っていました。
2回目ですがさらに進化しています。
現在、もっとも刺激的で魅力のあるカルテットだと思います。
エネルギッシュでパワフル、演奏開始と同時にあっという間にその世界に引き込まれてしまいました。
激しく熱い、強烈な印象を残す、爆走するカルテット。
これは絶対にやっている本人達がもの凄く刺激を受けていると思います。
そのギリギリのぶつかり合いが聴いている私達にも伝わってくるんです。

演目はスタンダードにオリジナルを混じえての演奏。
*「オール・ザ・シングス・ユー・アー」、ハバードの*「ジブラルタル」、モンクの*「トリンクル・ティンクル」、
パーカーの*「コンファメイション」など、アンコールは*「ボディ・アンド・ソウル」、
太田さんのオリジナルは*「人工衛星」、*「皆既日食」といったところでした。

紅一点のリーダー、太田朱美(fl)さんの存在が大きいと思います。
朱美ちゃんと呼んだほうがしっくりきますが。
MCのお話や仕草もなんか可笑しくて笑いを誘います・・・天然かな。
男だけだと激しい部分だけが目立ちますがフルートという楽器の特性もありバランスが保たれています。
ミディアムからアップテンポにおける迫力は他の追随を許しません。
惜しむらくはスロー・バラードの表現力がいまひとつか、音数が少なくなると間が持たないところを感じました。
まだまだ若いのでこれからの成長を期待したいと思います。
石田幹雄(p)さんのプレイはもう素晴らしいのひと言です。
身体を前後に揺らしながら打ち鳴らす圧倒的なピアノ・プレイは観客の心を揺さぶります。
しかし、前回にも増して激しく反応したのは安東昇(b)さんと力武誠(ds)さんでした。
前回はまだ遠慮していた部分があったんですね。
今回、この二人も弾けました。
安東さんの弦を引きずり回すようなベース・プレイはその野太い音色と共に実に個性的です。
力武さんは思いっきり前面に出て攻撃的なドラミングを見せてくれました。
完全に一皮むけたというか、グイグイと押し出すその溌剌としたプレイは強く印象に残りました。
一瞬、フリーの世界に突入しそうになりながらもう一歩手前のところで我慢した感じがします。
この緊張感がまたいいんです。


それぞれがこれでもかこれでもかと攻めてくるのでお互いに触発されてもの凄いライブになりました。
受けや守りの姿勢では到底通用しない、まさに「攻撃は最大の防御なり」を実感することになります。
汗が飛び散り、力いっぱい全力をつくす、体力の消耗も激しくて、格闘技としてのジャズを堪能しました。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2009/08/07



■ジェームス・カーター・クインテットを聴いてきました。
ジェームス・カーター(ts,ss,fl,bcl)、コーリー・ウィルクス(tp)、
ジェラルド・ギブス(p)、ラルフ・アームストロング(b)、レオナード・キングス(ds)

マルチ・プレイヤーのジェームス・カーターは鬼才といえると思います。
スーツにネクタイ姿はなんとなく古めかしい昔のジャズ・メンの雰囲気を漂わせていました。
身体が大きいのでテナー・サックスがちょうどいい感じです。
演目はオリジナルが中心。
根底にはリズム&ブルースがあって、ソウル&ファンキー、加えてダンサブル、
おまけにフリー・ジャズの要素まである、パワフルでエネルギッシュなステージを繰り広げてくれました。
その幅広い音楽性はメンバー構成からみても明らかです。
パンフレットを見るとジェラルド・ギブス(p)の本職はオルガン、ラルフ・アームストロング(b)はエレキ・ベース、
レオナード・キングス(ds)はソウル畑の出身です。
コーリー・ウィルクスは30歳、レスター・ボウイ亡き後のアート・アンサンブル・オブ・シカゴのトランペッターで
マイルス・デイビスを彷彿とさせるクールなプレイが印象に残りました。
ジェームスはメチャクチャに上手いプレイヤーです。
素早い運指はもちろんのこと超高音フラジオやかすれた音色、ポッポッポと切る音も面白かった。
あまりに多彩な表現力を持っているので驚きましたがそれがマイナスになっている場面もありました。
テクニシャンに多い落とし穴、ついついしゃべり過ぎてしまうんです。

そんなわけで聴き始めた途端に私は背筋がゾクゾクとしました。
有無をいわせず観客を自分の世界に引きずり込んでしまう、とんでもないジャズ・メンに出会いました。
メンバー全員、まずは自分達が演奏を楽しんでいました。
ステージで踊る、声を出す。
それでまたソロイストが乗ってくると言う構図です。
そのノリが観客にも伝わって会場全体が手拍子というのも珍しい光景でした。

この日、披露してくれたのはテナー・サックス、ソプラノ・サックス、フルート、バス・クラリネットです。
ただひとつ心残りだったのは楽しみにしていたジェームスのバリトン・サックスが聴けなかったことです。
私はバリトン・ファンなのでこれが返す返すも残念でなりません。


アンコールでドン・バイアスの曲をやりましたが尊敬しているようですね。
バイアスは早くにヨーロッパに渡ってしまったので地味ですが
マイルス・デイビスも絶賛しているテナー・サックス奏者です

毛色はかなり違うけれどエリック・アレキサンダーとハリー・アレンに加えて
このジェームス・カーターにも注目して行きたいと思います。
いずれもオーソドックスな感覚を持つ40代のサックス奏者でこれからの活躍を期待しています。


At The "Swinghall" Musashinoshi On 2009/08/02



■出口誠・トリオ を聴いてきました。
出口誠(p)、安ヵ川大樹(b)、井川晃(ds)

出口誠(p)さんが新たに安ヵ川大樹(b)さんを迎えたニュー・トリオです。
この9月に録音、年末までにはCDを出す予定と聞いたのでその前哨戦になるライブです。
みなさん、40歳そこそこで脂の乗り切っているトリオです。
力量は十分、端正で安定感のある演奏を聴かせてくれました。

演目はオリジナルの他、スタンダードと映画音楽が中心です。
バップ、バラード、ボサノバ、変拍子とリズムも多彩でこのトリオの音楽性の高さを物語っています。
ジャズの定番、バド・パウエルの「クレオパトラ の夢」、ビル・エバンスの「Waltz For Debby」、
レッド・ガーランドに捧げた「In The Sky」というオリジナルもありました。
ボサでは「In The Still Of The Night 」とセルジオ・メンデスの「So Many Stars」。
映画音楽はエンリオ・モリコーネの「ネッラ・ファンタジア」、「ニューシネマ・パラダイス」、「スパルタカス愛のテーマ」。
ソロ・ピアノで「For All We Know 」といった具合です。
意外といってはなんですが面白かったのがブルース系です。
安ヵ川さんのオリジナル「New Song」ってまだ題名が決まっていないんでしょうね。
出口さんの「Lucky You!」、アンコールの「サマー・タイム」が良かった。
みんな楽しそうに弾けていたのが印象に残りました。

出口さんのボーカルのバッキングは定評のあるところで、
先日も朝丘雪路さん&小柴大造さんのバックをつとめたばかりだそうです。
安ヵ川さんはしなやかでやわらかいベーシストですがその存在感は抜群です。
井川晃(ds)さんのタイトで切れのある鋭いドラミングも申し分ありません。
ちなみに、安ヵ川さんはすでに「ドラ盤」入りが6枚、井川さんも2枚入ってる実力者です。

ジャズの場合にも適齢期ってあるんでしょうか。
一概には言えないけれど体力に人生経験を加味すると一般的には40〜50代半ばくらいかな。
「いやいや、もっと若い」、あるいは「もっと年取ってからだよ」と言う意見も当然あります・・・。
いずれにせよ、同年代というのは育ってきた社会環境が似ているのでお互いに分かりやすいです。
で、何を言いたいのかというと、私は40代の組み合わせが一番魅力的だということです。
男も女も40代が一番だと思うよ・・・・・。

ジャズ評論家の瀬川昌久さんが見に来ていてご挨拶に立ってくれました。
このトリオには「オリジナリティーがあるので期待しています。みなさんも応援して下さい。」とのことです。
瀬川さんは最長老の一人ですがまだまだかくしゃくとしています。

At The "JZ Brat" Shibuya On 2009/07/27



■渋谷毅&松風鉱一を聴いてきました。
渋谷毅(p)、松風鉱一(as,ts,bs,fl,cl,bamboo sax)

このライブはCD発売記念でもありました。
渋谷毅(p)さんとサックスとのデュオを見るのはこれが3人目になります。
峰厚介(ts)さんと石崎忍(as)さんも見ました。
個性と個性のぶつかり合い、稀にみる濃密なコラボレーションになりました。
松風さんのかすれたような音色と、渋谷さんの美しいピアノが織りなすなんとも幻想的な世界です。
演奏曲目はCDからが中心で全て松風さんのオリジナルです。
メロディ・メーカーとしての松風さんの非凡さも渋谷さんによってさらに生かされたと思います。
渋谷さんの鍵盤を転がすような絶妙なタッチと溢れ出る魅力的なフレーズの数々、
モンク的リズム感、美しい音色、まろやかで暖かい音色はまるで人柄を表すようです。
松風さんは6本もの管楽器を駆使しての奥行きのある演奏を聞かせてくれました。
気だるいような、それでありながら緊張感の漂う確固たる自己の世界を持っています。
主張するし、誰にも似ていない個性があります。
普段はアンコールはしないと言っていた渋谷さんがアンコールに応えてくれました。
それほど二人の醸し出す独特の雰囲気が素晴らしかったんです。
スーッと引き込まれる不思議な感覚があって私はその中の何曲かでふと涙が出そうになりました。
ライブに行けばこの二人の深遠で不思議な世界を味わえると思います。

バンブー・サックスというのは珍しいので松風さんに話を聞きました。
竹の筒を組み合わせたもので小さなサックスの形になっています。
ドイツ人の方がタイで作っているそうです。
やわらかい音がしました。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2009/07/24



■ギラ・ジルカ&井上ゆかりを聴いてきました。
ギラ・ジルカ(vo)、井上ゆかり(p)、塩本彰(g)

私はライブ・ハウスで隣に座った人に話しかけることがあります。
そして必ず聞くことがあります。
「だれか、お勧めの人はいませんか?」
そんな中で出てきた名前の一人がギラ・ジルカさんでした。
今回、そのチャンスにようやく恵まれました。

ギラ・ジルカさんはイスラエル人の父と日本人の母を持ち、出身は神戸です。
ギラはヘブライ語で「喜び」という意味だそうで、英語と日本語の両方に堪能です。
声がいいですね。
ちょっとハスキーでやわらかな感じ、包み込まれるようで目を閉じて聴いていると
そのままスーッと眠ってしまうような気がしました。

演目はスタンダード中心でインストで2曲やってから登場のヴォーカル・ライブのパターンです。
「クロス・トゥー・ユー」、「ナイト・アンド・デイ」、「マイ・ロマンス」、「バードランドの子守唄」、
「ラブ」、「ハニー・サックル・ローズ」、「ラバー・マン」、「イッツ・オンリー・ペイパームーン」、
「オーバー・ジョイ」、「スワンダフル」、「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」、
「マイ・フェバリット・シングス」、「酒とバラの日々」、「ワン・ノート・サンバ」、
「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」、「ルート66」など。

テンポとリズムはぶっつけ本番、バックと相談しながらその時に決めていました。
それぞれのスタンダード・ナンバーがいつもとまったく違う味付けで聴こえてきました。
歌はもちろんうまいです。
特に「バードランドの子守唄」、「ラバー・マン」、「マイ・フェバリット・シングス」が面白かったです。
そういう意味でも一期一会のジャズの魅力が十分でした。

井上ゆかり(p)さんはピアノの音が印象に残りました。
個性的・・・単なる力強いタッチで出てくる音とは明らかに違います。
何というか、バチンと弾き飛ばされた音というか、心にビンと突き刺さる音です。
音色というより音そのものの表現がぴったりなのできっとまた聴きたくなると思います。

塩本彰(g)さんも楽しませてくれました。
幅広い音楽性で表現力も多彩、次はどんなパターンを見せてくれるのかワクワクしました。
ギラさんも全幅の信頼で「次はどうします?」てな感じでした。
ジャンジャカ・ジャンジャカ、ポワン・ポワンと響くユーモア溢れるギターも面白かったです。

3人共に関西出身だそうで、中々に濃〜いライブでありました。
自由に言葉を入れたりしてアドリブも自由自在で吉本的楽しさもある。
やっぱり関東とはブルース感覚が違うような気がします。


At The "Naru" Yoyogi On 2009/07/13



■寺井尚子・カルテットを聴いてきました。
寺井尚子(vln)、北島直樹(p)、店網邦雄(b)、中沢 剛(ds)

CD発売記念、「2009年アダージョ・ツアー」のラスト・コンサートに行ってきました。
寺井さんのライブは4年ぶりです。
1000人収容の大ホールを満席にしてしまう寺井さんの人気と実力は凄いです。
CMにも登場して女性ジャズ・プレイヤーとしては綾戸智恵さんと双璧でしょうか。
入口はどこからでもジャズに興味を持ってくれる人が増えるのは嬉しいことです。

コンサートは3月に発売されたCDからのものが中心です。
「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」、「 アルビノーニのアダージョ」、「プルミエ・ラムール」、
「サムタイム・アゴー/ラ・フィエスタ」、「クリニャンクール」、「心の鍵」、
「 風を感じて」、「 リトル・クライ・フォー・ヒム」、アンコールは「ラスト・ワルツ」
その他に「マイナー・スイング」、「ひまわり」、「枯葉」、「スター・ダスト」など。
スタンダード、クラシック、オリジナル、映画音楽、タンゴ、サンバ、ワルツと多彩な内容になりました。
幅広いジャンルのワールド・ミュージック的な趣向になっていると思います。
私が気に入ったのは「マイナー・スイング」、「枯葉」、「スター・ダスト」の
ジャズ・スタンダード・ナンバーで、やはり私はジャズ度の高い演奏に惹かれました。

寺井さんの魅力は全身全霊を打ち込んだパワフルでエネルギッシュなステージにあると思います。
ステージ衣装は黒が定番のようですが真っ赤でもいいような感じ・・・。
全身を揺らし足を踏み鳴らしながらの情熱的な演奏は見ているだけで熱くなってきます。
それに、あのヴァイオリンの音の美しさはどうでしょう。まったく惚れ惚れしてしまいますよ。

北島直樹(p)さんと中沢剛(ds)さんは寺井さんとの共演歴も長くコンビネーションは抜群です。
北島さんのオリジナル曲と華麗なピアノ・プレイはもうひとつの目玉になっています。
中沢さんの熱いドラミング、店網さんのベースはこのグループのキーマンでしょう。
寺井さんのプレイが激しいのでメンバーのみんなも走りっぱなしの様相です。
最後は体力勝負みたいなところがありますね。
会場全体が熱気に包まれ、エンタテイメントとパフォーマンスに溢れた楽しいステージでした。
観客のみなさんもたくさんの元気をもらえたと思います。


At The "Kannai Holl" Yokohama On 2009/07/11



■中村誠一・カルテットを聴いてきました。
中村誠一(ts,cl)、吉岡秀晃(p)、沼上励(b)、横山和明(ds)
ゲスト:奥平真吾(ds)

このカルテットも以前から気になっていました。
今回、ようやく機会を得て見ることができて嬉しかったです。
テナー・サックスのワン・ホーン・カルテットはハード・バップの香りがプンプンしていました。
結論からいえば、「実に気持良かったぁー」です。

「But Not For Me」からスタート、続いて「The Night Has A tThousand Eyes」、
スタンダードでは「There Is No Greater Love」、「Recado」、「Easy Living」など。
その他にもホレス・シルバー、ハンク・モブレー、チャーリー・ラウズ、ケニー・バレル、
ソニー・ロリンズ、といったプレイヤーの曲を取り上げていました。

中村誠一さんは豪快な王道のテナー・サックスにクラリネットを持ち替えての演奏です。
クラリネットをライブで見るのは久し振りでした。バス・クラリネットはよく見るけれど。
気分爽快、ハード・バップがてんこ盛りのノリにノッたライブでした。
特に吉岡秀晃さんは楽しかったです。
ニコニコ顔で嬉しそうに演奏されるとこちらまで幸せな気分になります。
素早いパッセージの疾走感溢れるピアノ・タッチは本当に凄いです。
沼上励さんもスイング感溢れる安定したベース・プレイで突っ走っていました。
熟年3人は幸せ一杯、遊び心が一杯で楽しいことこの上なし。
ともすれば3人がそのままどこかに遊びにいってしまいそうになるので
若い横山さんがキッチリ締めている感じがしたのが面白かったです。
俗にいう不良オヤジに孝行息子の組み合わせかな。
横山和明さんは10代から活躍しているので知名度の割りにまだまだ若い(24歳)です。
これからが楽しみなドラマーで期待も大きいです。
スナップが効いているので音がきれいで引き締まったタイトなドラミングを聴かせてくれました。
がっちりとタイムをキープして相手なりに合わせるセンスの良さが光ります。

実はこの日は驚きの飛び入りがありました。
なんとニューヨークから帰国中の奥平真吾さんです。
天才ドラマーと騒がれた奥平さんもすでに40代になっています。
しなやかで切れのあるドラミング、表現力も豊かで、ツボを得たドラミングは聴き応えがありました。
この二人のドラマーの競演が見られたのでもの凄く得をした気分でした。

思うにライブでは”いつも何かハプニングを期待している自分”がいます。


At The "Sometime" Kichijoji On 2009/07/09



■鈴木道子&渥美幸裕・トリオを聴いてきました。
鈴木道子(vo)、渥美幸裕(g)、金子雄太(org)、小森耕造(ds)

鈴木さんと渥美さん、鈴木さんと金子さんの組み合わせは聴いたことがあります。
でもこのトリオとの共演を見るのは初めてなので期待を込めて出かけて行きました。
「才能溢れる若いミュージシャンとFUNK JAZZ!」
「新しい風が・・・道子超お薦めライブ」 とありました。
本当に期待以上に盛り上がったライブでした。
ソウル、ブルース、4ビート、レゲエが満載で気持いいことこの上なし。
このメンバーでライブ・レコーディングができたらなぁーと思ったほどです。

今回、私が注目したのは逆方向の魅力です。
つまり、若い人達の4ビート・ジャズと道子さんのソウル、ブルース、レゲエです。
彼らは4ビートでも底辺にはファンキー&ソウルな感覚が満ち溢れているんです。
小さい時から音楽やリズムに親しんでいるのでもう自然に身体に染み込んでいます。
それがもうたまらなく良くて道子さんも楽しそうだったです。
若いミュージシャンに囲まれているせいかもしれませんが生き生きしていました。
気分はノリノリ、元気いっぱいで歌っていました。
「今度、クラブとやらに行って一番前で踊りたい」って言ったら、みんなは不安げな顔をしてましたが・・・。

まずはトリオで「オン・グリーン・ドルフィン・ストリート」からスタート。
道子さんが登場してアビィ・リンカーンの「バード・アローン」、ここで渥美さんはアコースティック・ギターでした。
前半のベストは「Easy Living」、後半のハイライトはやはりアビィの「Throw It Away」だったです。
共にバラードからスタートしてテンポアップで盛り上がる、グルービーな雰囲気がたまりません。

若いって素晴らしいんだよね。もう聴くたびグングン上手くなっています。
特に渥美幸裕さんのギターはどんな音が出てくるかわからない魅力があって、斬新で要注目ですよ。
金子雄太さんはハモンド・オルガンにこだわるところがいいです。
ブルージーながらスマート、次代を担うオルガン奏者で若いファンも多いんじゃないかと思います。
小森耕造さんは個性的なリズムを刻みます。
クラブ・シーンでは知られている存在だそうですね。

なぜかここで急に、昔、「若いってすばらしい」って歌があったのを思い出しました。
槙みちるさんっていったかな。

「All Or Nothing At All」やレゲエのリズムでの「That's All」も良かったです。
ブルースはもうそのまんま黒いムードでこれだけの雰囲気を出せるヴォーカリストはそうはいないんじゃないかな。
道子さんはまだまだに成長途上にあると思います。
自分の世界にぐいと引き込む力は凄いです。


At The "Kamome" Yokohama On 2009/07/06



■白根真理子を聴いてきました。
白根真理子(vo)、布川俊樹(g)、佐藤浩一(p)

白根真理子さんを聴くのは2回目になります。
白根さんは誰にでも聴きやすい「POPJAZZ」を指向しています。
前回は去年の11月だったので7ヶ月振りです。
どんな感じに進歩しているのか、楽しみに出かけていきました。
若手の注目株の佐藤浩一さんのピアノも聴いてみたかったし。

演目はCDからが中心ですがオリジナルと何曲かのスタンダードも歌ってくれました。
まずはギターとピアノのインストでチック・コリアの「バド・パウエル」からスタートです。
「How crazy are you」、「Lullaby of birdland」、「Private eyes 」、「Don’t know why」、
「Night & Day」、「What cha gonna do for me?」、「My one & only Love」、
「Can't Take My eyes off you」、「What a difference a day made」、
「Antonio’s song」、「Candy」、「Amazing Grace」。
オリジナル:「雨音」、「Tryっ!」「PLACE」、「一緒に・・・With You」、「A-LA-LA」。

今回はメンバーもライブ・ハウスも2回目です。
白根さんはリラックスしていい感じ、表現力もぐっとパワー・アップしていました。
日本語のオリジナルはダイレクトに心に響いてくるのでとても良かったです。
シンガー・ソング・ライターとしての才能を感じるし、特にボサノバ・テイストがいいです。
ボサノバならギターなのでつくづく布川さんとのコンビが生きています。
「ポップ・ジャズ」ができるのは布川さんが持つ幅広い音楽性のたまものだと思います。
この日は2本のアコースティック・ギターを駆使してのプレイ。
切れ味鋭いよどみないフレーズはさすがでした。
いつも思うのですがジャンルを問わない「何でも来い」型ミュージシャンは実に魅力的です。

私が気に入ったのはジャズっぽくテンポのある「Private eyes」、ハイライトは「Candy」でした。
特に後者は演奏内容を含めて今回のベスト・プレイだったと思います。
この日初めて佐藤さんが弾けました。
白根さんが大好きだったマイケル・ジャクソンに捧げた「Amazing Grace」がラスト・ソング。
バラードからテンポ・アップして、大いに盛り上がって、最後には心地良い余韻が残りました。
前回はジャズ色、今回は全体的にポップ色が強かったと思います。
このライブには蓋を開けてみないと分からない面白さがあります。
若い音楽ファンに聴いてもらって、これがキッカケでジャズが好きになってくれたらと思います。

若手期待の佐藤さんはあちこちのライブ・ハウスで名前を見かけるようになりました。
ボーカルのバッキングも積極的にやって経験を積んで欲しいと思います。
ボーカルのバックなので大人しかったけど、最後の2曲、「キャンディ」と「アメイジング・グレイス」
で思い切りの良いプレイが出たのでその才能の片鱗を垣間見ることができました。
白根さんのノリも明らかに違いました。


At The "Jay-J's Cafe" Meguro On 2009/06/30



■マグナス・ヨルト&池長一美・トリオを聴いてきました。
マグナス・ヨルト(p)、ペーター・エルド(b)、池長一美(ds)

デンマークのマグナス・ヨルト(p)は初見です。
ヨルトもペーター・エルド(b)も共に25歳の新鋭です。
最初、ジャズ仲間のMさんから一押しのピアニストの来日公演があるとの連絡が入りました。
実現の内輪話も聞くことができました。
今回の公演をプロデュースしたYさんがコペンハーゲンのライブ・ハウスで聴いてヨルトに一目惚れしたそうです。
それで是非、日本に連れてきて池長一美さんと共演させてみたいと思ったそうです。
それが今回の日本公演のきっかけになりましたがまったく大したものですよ。
まさに「一念は岩をも通す」というか、それを実現してしまうところが凄いです。

当然ながら初共演のぶっつけ本番なのでどうなることかと思ったでしょうね。
いざ蓋をあけてみたら稀にみるスリリングな展開になったと思います。
この日は最終日の4日目だったのでかなり練れてきた感じがしました。
曲目は「Everything I Love」、「Green Chimneys」、「I Remember You」、「Skylark」、
「Ask Me Now」、「Love For Sale」、「Caravan」、「Someday My Prince Will Come」、
「I Mean You」、「It's You Or No One」など、
アンコールが「Take The A Train」でした。
セロニアス・モンク3曲、デューク・エリントン2曲、コール・ポーター2曲が選曲されました。

ジャズ・スタンダード中心ですが解釈が新鮮なので背筋がゾクッとする場面がいっぱいありました。
特に目立つのはモンクの3曲でしょうね。
これが素晴らしい。
まさしくこれが今日のハイライトになりました。
「アスク・ミー・ナウ」はもう最高だったです。
エリントンの「キャラバン」も聴き応えがありました。

マグナス・ヨルトは聞きしに優る素晴らしいピアニストでした。
音楽性も秀でていて実に個性的なピアノを聴かせてくれました。
創造力に溢れその表現を可能するテクニックにも恐れ入りました。
ソロではファッツ・ワラーのストライド・ピアノ、急速調ではアート・テイタムを感じさせるテクニシャンです。
バラードでもこれが25歳かというプレイを聴かせてくれました。
年齢と共により深味を増していくことでしょう。
タイミングを微妙にずらすところが刺激的で若さ溢れるアグレッシブでガンガンいくところも迫力満点です。
身体を大きく揺らしながらのプレイ、うねる波が押し寄せる感じは彼の真骨頂だと思います。
音に力のあるのはもう骨格や体力の違いでしょうね。
聴いているこちらも体力を消耗する気がしました。

ベースのペーター・エルドも面白かったです。
まさにベース弦をブンブンと引っ張り、ガリガリと引っかく感じのベースプレイは迫力がありました。
以前、マット・ペンマン(b)を見た時もそんな感じがしたのでヨーロッパの新感覚ベーシストの一人だと思います。
ヨルトとのコンビネーションも抜群でした。
「I Remember You」と「Love For Sale」(ピアノとのデュオ)は彼を大きくフューチャーした演奏で楽しめました。

さて、我らが池長一美(ds)もその存在感を十分に見せつけたと思います。
気合も入っていたし、何より二人との共演を楽しんでいました。
彼らは独特の間というかタイミングを持っているので最初はきつかったと思います。
しかし相手なりに合わせる技量と繊細な表現をみせるドラミングは素晴らしいです。
このフレキシブルな感覚は抜群で天性のものかもしれませんね。
最近は叩く時は叩くというか、表現の起伏が大きくなったのでまた一段と魅力が高まりました。
今回私は、ジャズ・ドラマー、池長一美の真髄を見たような気がします。
まさに池長が彼らの実力を引き出す役目を果たしました。
お互いが刺激し合って触発しての真剣勝負、稀にみるスリリングなライブになったと思います。
コンサートの終わりに池長さんが「あと3日、一緒にやりたかった」という言葉が印象に残っています。
まだ興奮冷めやらず、「う〜ん、これは良かった」。

プロデュースしたYさんご苦労様、本当にどうもありがとう。


At The "JESSE JAMES Tachikawa" On 2009/06/28



■近藤和彦・カルテット を聴いてきました。
近藤和彦(as)、今泉正明(p)、上村信(b)、大坂昌彦(ds)

近藤和彦さんのCD発売記念ライブに出かけました。
近藤さんは現在もっとも旬で多忙なアルト・サックス奏者です。
メンバーも魅力的なのでどうしても見てみたいと思いました。

演奏曲目はCDからでアンコール以外は全て彼自身のオリジナルです。
それも多種多様な曲想のものが多く、作曲能力も非凡です。
アルト・サックスとソプラノ・サックスを駆使して熱いプレイを聴かせてくれました。
色々なバンドや歌手に引っ張りだこなのがよく分かります。
そのまろやかな音色と自在な奏法はアップ・テンポでもバラードでも冴え渡りました。
圧巻は本人からも難しかったというコメントがあったフラメンコ調の曲でした。
「El Cantarro de Mallorca」という曲。
ジャズ的にもリズムが新鮮なだけに興味深く、このライブの目玉になったと思います。
アンコールはただ1曲のスタンダードで「You And The Night And The Music」でしたが
これもまた超急速調の演奏でとても一筋縄ではいきません。

近藤さんはもとよりメンバーの気合乗りも十分で楽しめました。
大坂昌彦(ds)さんはアイデア豊富で表現力も豊か、メリハリのあるドラミングは素晴らしいのひと言です。
今泉正明(p)さんは好きなピアニストの一人ですが美しくも力強いタッチが最大の魅力です。
リズム感も抜群で個性派ピアニストの一人だと思います。
上村信(b)さんは安定感のあるべーシスト、しっかりとベースラインを支えているので
メンバーも思い切ったプレイが可能になります。

大満足・・・ジャンルにとらわれない幅広い音楽性は実に魅力的です。
まさに「近藤和彦の世界」を堪能したライブでした。

At The "Motion Blue" Yokohama On 2009/06/12




■ジョアン・ドナート&山中千尋を聴いてきました。
ジョアン・ドナート(p)、山中千尋(p)

このライブで驚いたのはピアノの音です。
同じピアノでもこんなに違うものかと思いました。
座席の場所もあるかもしれませんがジョアンの音が山中さんとは格段の違いで響いたのです。
曲目は「枯葉」、「オーバー・ザ・レインボー」、「ミスティ」、「テンダリー」、「イパネマの娘」、
「ウエイブ」、「黒いオルフェ」、「ソング・フォー・マイ・ファーザー」、「ワン・ノート・サンバ」等々

山中さんは2001年に澤野商会から「Living Without Friday」をリリース、
続く「When October Goes](2002)で人気を確立しました。
2006年からはメジャーのヴァーブ・レコードからコンスタントにアルバムを出しています。
桐朋学園ピアノ科卒業後バークリー音楽大学に留学、首席で卒業した才媛です。
一方のジョアンはブラジル音楽界の巨匠、ジョビンやジルベルトほど知られていませんが重要な位置を占めています。
ジョアンのピアノは微妙というよりは絶妙なタッチでそれが明確な音として現れてきます。
性格やその時の気分がそのまま音に現れていました。実際、こんな経験は初めてです。
ライブの出来不出来は感じても音の違いまでは気が付かなかったからです。
ボサノバのノリも抜群で、やはり体に染み付いているんだと思います。
歌の声も雰囲気抜群なのでくつろいだ小さなお店で聴いたらどんなに素晴らしいだろうかと思いました。
手数の多いのは山中さんですが一音、一音も存在感がまるで違います。
75歳は伊達に年を取ってはいません。洒脱というか、粋でオシャレです。
Tシャツと靴の柄を合わせているのは驚きました。
「いいね、こういうのは」・・・元気をもらえます。

スタンディング・オベーションもまた当然だと思います。
アンコールは「ブラジル」ともう1曲、お客を楽しませるエンターテイナーでノリにノッていました。


At The "Musashinoshiminbunkakaikan" Musashinoshi On 2009/06/08



■ケヴィン・ヘイズ・トリオを聴いてきました。
ケヴィン・ヘイズ(p)、ダグ・ワイス(b)、ビル・スチュアート(ds)

ケヴィン・ヘイズは現在41歳、ビル・エヴァンス(p)の影響下にある天才肌のピアニストです。
18歳でスティープルチェイス・レーベルからリーダー・アルバムを出しています。
私は新感覚のジャズ・ピアニストとしてブラッド・メルダウ(p)と共に注目しています。

ケヴィンのパンチパーマがやや個性的ですがあとの二人はミュージシャンというより普通の人と言う感じです。
たしか去年の4月にも来日公演がありましたがその時のメンバーは
ケヴィン・ヘイズ(p)、ビセンテ・アーチャー(b)、マーカス・ギルモア(ds)でした。
今回は満を持しての自身のレギュラー・トリオでの登場です。
このトリオには2006年に出した「FOR HERVEN'S SAKE」(Jazz Eyes/2006)という傑作があります。
特にドラムスが注目のビル・スチュアートということで楽しみにしていました。
演目はこのトリオで出した新しいCDからのものを中心にオリジナルも何曲か披露してくれました。
「You've Got A Friend」、「Sweet And Lovely」、「Think Of One」、「Chery」等々、
アンコールは「All The Things You Are」でした。

やっぱり、ビル・スチュアートが凄かったです。彼は期待以上のドラマーでした。
粘っこくうねるかと思えばタイトでシャープな表情も見せます。
思い切りがよく主張するドラムというか、饒舌でものを言うドラムは多彩で見ていても面白かったです。
ビルは元々がR&Bの出身でメシオ・パーカー(as)なんかと一緒にやっていました。
それがロック系ジャズ・ギタリストのジョン・スコフィールドを通じて本格的なジャズ・シーンに登場して来ました。
実に幅の広い音楽性を持っています。
HPの「ドラ盤演奏者リスト」にもすでに7枚入っていてこれからの期待も大きいです。

このライブの最大の聴きどころはケヴィンとビルのコレボレーションにありました。
ふたりの掛け合いは息もピッタリでスリル満点、ビルの語るドラミングは本当に素晴らしいです。
間に入ったダグ・ワイスは地味ですが堅実という印象を持ちました。


At The "Swinghall" Musashinoshi On 2009/06/04



■大槻”KALTA”英宣・Vertical-Engineを聴いてきました。
大槻”KALTA”英宣(ds)、太田 剣(as,ss,fl)、天野清継(g)、新澤健一郎(p,key)、鈴木正人(b)

ライブ・スケジュールを見ていてちょっと面白そうだと思いました。
久し振りにフュージョン系のライブを見たので新鮮だったです。
そのエネルギッシュでパワフルな演奏を十二分に楽しんできました。
それぞれがジャズ・シーンでも活躍していますがジャンルにはこだわらないメンバーです。
実際、演奏しているプレイヤー達がとても楽しそうだったのが印象的です。
思いっきり弾けていたのでみんなこういうのが大好きなんでしょうね。

去年出したアルバムからのオリジナルが中心で8&16ビートのリズム感溢れる演奏が聴けました。
カルタさんのうねる波のようなドラミングは実に心地良いです。
ドドド、ドドド、と体の奥底を揺さぶられるような感じがしました。
太田剣さんは注目のサックス奏者で一度見たいと思っていました。
長身のイケメンで人気があるのも納得です。
キーが違うアルトとソプラノの持ち替えは案外珍しく、この日はフルートも披露してくれました。
天野清継さんの早弾き超絶プレイも満喫しましたが、これはもう恐れ入りましたのひと言です。
ここでは一番の年長ですがキーマンというか、存在感が光ります。
鈴木正人さんは以前、南博・トリオで見ましたがその時とはイメージが違っていたので驚きました。
エレキ・ベースも達者、幅広い音楽性を持つ才人という表現がピッタリのベーシストです。
新澤健一郎さんは以前どこかで見た記憶がありますが思い出せません。
キーボードを駆使したユーモアのあるプレイが最大の魅力です。

いつも思うのですが他のジャンルとジャズのはざ間に身を置くミュージシャンは実に魅力的です。
元々ジャズは懐が深く貪欲なので何でも飲み込んで消化してしまいます。
クロスオーバー&フュージョンもまたジャズの一形態として残っていくと思います。


At The "JZ Brat" Shibuya On 2009/05/21



■小杉敏・クインテットを聴いてきました。
小杉敏(b)、岡崎好朗(tp)、橋本信二(g)、元岡一英(p)、江藤良人(ds)

ベテラン・ベーシストの小杉敏さんの初リーダー・アルバムが出ました。
そのCD発売記念ライブに出かけました。
小杉さんはライブで見かけることが多いので一応顔見知りではあります。
私は小杉さんのブルース・ラインが大好きで聴くたびに「いいなぁー」と思っています。

アルバムを出すと聞いた時にまずはメンバー構成に興味を持ちました。
小杉さん、橋本さん、元岡さんの団塊の世代に30代で脂が乗り切っている岡崎さん、江藤さんの組み合わせです。
それでこのライブには絶対行こうと決めていました。

当然ながら演奏曲目はCD収録曲が主体です。
「No Moon At All」、「Vierd Blues」、「P.S.I Love You」、「Little Journey」、
「Monk's Dream」、「The Feel On The Hill」、「There Gose My Heart」、「Tenderly」、
「Filthy McNasty」、「My One And Only Love」、etc

まずは珍しい「No Moon At All」からスタートでしたが元岡さんのアレンジだそうです。
いきなりの元岡さん、岡崎さん、橋本さんの8小節交換のソロが新味でした。
「Little Journey」は唯一のオリジナルで橋本さんの作曲です。
橋本さんのファンキー&グルービーなプレイはこのメンバーの一つの目玉だと思います。
岡崎さんはコントロールされたクールな音色が特徴で特にバラード・プレイが素晴らしかったです。
「Tenderly」やアンコールの「My One And Only Love」で聴けました。
この曲はテナー・サックスの極めつけと思っていたけどトランペットも良かったです。

元岡さんはバリー・ハリスをイメージするバップ・ピアニストで繊細さを併せ持っています。
「There Gose My Heart」では小杉さんの口笛によるテーマが聴けました。
CDでも聴けるんですが、いやー、これをライブでやるのはむずかしいでしょうね。
江藤さんは売れっ子ドラマーでそのパワフルでエネルギッシュなドラミングに魅了されるファンも多いです。
相変わらずの迫力満点のドラムは強烈です。

小杉さんがCDから外れたというジョビンのボサノバを元岡さんとのデュオで聴かせてくれました。
これがすごく印象に残ったので外れたのは惜しかったです。

ラストのホレス・シルバーの「Filthy McNasty」は最高でした。
ファンキーでノリノリの演奏はまさしくこのメンバーでしか聴けないドンピシャの選曲だと思います。

ホットな橋本、江藤にクールな元岡、岡崎、間に入っているのがリーダーの小杉という関係で面白かったです。
重量級メンバーによる黒っぽいライブは50、60年代のブルー・ノートを彷彿とさせるもので楽しめました。


At The "Jay-J's Cafe" Meguro On 2009/05/18



■シーラ・ジョーダン(vo)を聴いてきました。
シーラ・ジョーダン(vo)、ピーター・ミケリッチ(p)、原朋直(tp)

シーラ・ジョーダンは今年で81歳、ジャズ・ボーカル界の生き字引的な存在です。
CDで聴くとあんまりピンとこないですがライブはまた別ものですからね。
年齢的にそうチャンスはないと思うので出かけていきました。
年輪を感じる深いライブが見られると思ったからです。
結果はほぼ予想通りのライブでした。

80歳を過ぎているのに可愛いらしい感じで声もしっかり出ていました。
スタンダードを歌っても原曲のイメージはほとんどありません。
これが日本で彼女の人気がイマひとつだった原因だと思います。
特徴のあるトーチ・ソングは歌詞も即興、スキャットの乗りも十分です。
即興性の高いフリー・スタイルは完全に独自の世界を作っています。
ジャズ・ボーカルというより一遍の詩を聴いているような印象を持ちました。

長いバース(前奏)から歌われた「マイ・ファニー・バレンタイン」は最高だったです。
深くてクール、マイルス・デイビスのそれを彷彿とさせるものでした。
その他の演目は「How Deep Is The Ocean」、「The Touch Of Your Lips」、「Fairweather(dorham)」、
「Deep Tango(kuhn)」、「Dad Dere(brown/timmons)」、「Confirmation」、等々。

シーラと原朋直さんのコラボレーションは聴き応えがありました。
原さんの丸みを帯びたトランペットの音色がちょうどいいアクセントになっていたと思います。
正直、原さんのラッパがなかったらちょっときつかったかもしれません。
ピーター・ミケリッチ(p)はダスコ・ゴイコビッチ(tp)のグループで聴いたことがあります。
鍵盤に触れるか触れないかの微妙なタッチを持つ繊細なピアニストだったです。


At The "Swinghall" Musashinoshi On 2009/04/17



■高田裕子・カルテットを聴いてきました。
高田裕子(p)、アンディ・べヴァン(ss)、佐藤有介(b)、池長一美(ds)

高田ひろ子(p)さんを見るのは2年ぶりになるかな。
存知よりの池長一美(ds)さんと佐藤有介(b)さんのコンビネーションが聴きたくて出かけました。
オリジナルとスタンダードを交えての演奏を聴かせてくれました。
スタンダードは「ステラ・バイ・スターライト」、「ニアネス・オブ・ユー」、
「オール・ザ・シングス・ユー・アー」、「エブリシング・アイ・ラブ」といったところ。
高田さんはオリジナルがいいのでメロディ・メーカーとしての才能を感じさせます。
圧巻だったのは「レイト・サマー」という曲で4人が一体となったエネルギッシュな演奏が聴けました。

アンディ・べヴァンはソプラノ専門、思うにソプラノ・サックスのワン・ホーンは珍しいですね。
オーストラリア出身、オーソドックスでストレートなサックス奏者です。
この日の池長さんはけっこう叩いていましたがセンス溢れるタイトなドラムはいつ聴いても心地良いです。
高田さん、アンディさん、池長さんの3人はお付き合いも長く馴染んでいます。
ここでは佐藤さんの参加が新味で、彼がフューチャーされるシーンも多かったです。
佐藤さんも幅広い音楽性を持つ新しいタイプのベーシストでこれからの活躍を期待しています。
特にベース・ソロに見どころありと思っています。
それにしても日本のジャズ界はベーシストが最も人材豊富ですね。
優秀な人材があちこちにゴロゴロしています。
私の若い頃はベーシストはほとんど目立たない存在だったので隔世の感がありますよ。

このグループは何というか、親しみの持てる渋いカルテットなので一聴の価値は十分です。
これはリーダーの高田さんの持ち味でしょうね。

At The "Bar Bar Bar" Yokohama On 2009/04/13



■太田朱美・カルテットを聴いてきました。
太田朱美(fl)、石田幹雄(p)、安東昇(b)、力武誠(ds)

エネルギッシュでパワフルで刺激的、今年最高のライブを見ました。
これもメンバーを見た途端、絶対に見逃せないと思いました。
初顔合わせのハプニングを期待、結果は予想を大きく上回る出来です。
4人ががっぷり四つに組んで存分に創造力を発揮した稀にみるライブになりました。

太田朱美さんを見るのは久し振りでしたが成長著しいです。
フルートという楽器によるストレスをまったく感じさせません。
力強くスムーズ、音の切れ、音量、音圧共に申し分ありません。
こわもての3人を従えて堂々のたたずまいで存在感は十分です。
フルートのイメージをくつがえし、可能性を切り開く存在になると確信しました。
どこまで伸びていくのか、本当に楽しみな逸材だと思います。
石田幹雄さんは現在もっとも刺激的なピアニストです。
動と静、熱と冷、湧き出るアイデアとフレーズ、圧倒的なパフォーマンスは見る者を興奮させます。
安東昇さんのベース・プレイも凄かったです。
ゴツゴツとした野太い音色は豪快、その野性味溢れるプレイは若手ではピカイチだと思います。
ともすればどこかに吹っ飛んで行ってしまう太田さんと石田さんを支える安定感もあります。
力武誠さんは日野元彦さんの最後のお弟子さんでしたね。
力武さんも気合十分、まるで水を得た魚のように生き生きとしていました。
グイグイと押し出す思い切りのいいドラミングは力武さんにとっても刺激的で面白かったんでしょうね。
演奏の前に石田さんと安東さんは念入りにストレッチをしていました。
珍しい光景でしたがまったく格闘技そのものの演奏だったです。
否応なく引き込まれて自然に体が揺れてきてカーッと熱くなりました。

演目はスタンダードが中心だったですが原曲のイメージはほとんどありません。
「All The Things You Are」、「All Blues」、「Softly As In A Morning Sunrise」、
「Solar」、アンコールは「Body And Soul」、その他モンクの「トリンクル・ティンクル」、
ハバードの「ジブラルタル」、ヘンダーソンの「メイシャ」、エバンスの曲は失念、等が演奏されました。
ただ1曲のオリジナルは「人工衛星」という曲でこれもまた刺激的だったです。

熱気に溢れた濃密なジャズ空間に包まれた感動的なライブでした。
多分、何か新しいものが生まれる時にはこんな感じなんでしょうね。
そこに身をおいて貴重な体験をしました。
強烈な印象を残す凄いカルテットが誕生したと思います。

At The "No Trunks" Kunitachi On 2009/04/10




■サキソフィビアを聴いてきました。
岡淳(ts,篠笛) 緑川英徳(as,ss) 竹内直(ts,bcl) 井上"JUJU"博之(bs,fl)

このグループも長い間気になっていましたがようやく機会を得ました。
サックス4管のユニットとしてはワールド・サキソフォン・カルテット(↓注参照)が知られています。
このサキソフォビアも結成以来10年を超えようとしています。
ユニークな試みだけに出来るだけ続けていって欲しいですね。
サックス4本はやはり迫力十分、重厚なアンサンブルが聴けました。
サウンドが重たいだけに選曲には気を使っているようで親しみ易いよく知られた曲を選んでいました。
「アイ・ウィッシュ」、「武田の子守唄」、「ベサメムーチョ」、「誰かが私を見つめている」、
「ラブ」、「虹の彼方へ」、「キャラバン」、「黒い瞳」、「桜」、「ネイマ」、等々。
日本情緒の曲目がいいと思いました。
やはり日本の曲はやさしく柔らかい曲調を持っているのでピッタリな感じがします。
「武田の子守唄」が良かった。
圧巻だったのは岡さんの篠笛と竹内さんのバスクラをフューチュアーした「ネイマ」だったです。
当然ながら即興だけなくアレンジも聴きどころになります。
きっちりとそれぞれの役割をこなす分業制度が確立されている思いました。
リズム楽器がないのでやはり決め手はバリトン・サックスのベース・ラインとそれぞれのリズム感が頼り。
延々と吹き続けるノンブレス奏法の竹内直さんの圧倒的なソロが光ります。
岡さんと緑川さんは共にサックス奏者のお手本になるプレイヤーですね。
リーダーは一番若い井上さんだそうです。
縁の下の力持ち・・・たしかに井上さんなくしてこのグループは成り立たないと思いました。

注:ワールド・サキソフォン・カルテットは1970年代にジュリアス・ヘンフィル(as)、オリバー・レイク(as)、
デヴィッド・マレイ(ts)、ハミエット・ブルーイェット(bs)の4人のサックス奏者で組まれたユニット。
強力メンバーによる強烈な演奏が人気を博しました。
後にヘンフィルの代わりにアーサー・ブライス(as)等が加わりました。


At The "Sometime" Kichijoji On 2009/04/06



■西山瞳・カルテットを聴いてきました。
西山瞳(p)、鈴木央紹(ts)、吉田豊(b)、池長一美(ds)

西山瞳さんと鈴木央紹さん。
以前から気になっていた二人のプレイヤーの共演です。
このメンバー構成を見た時にすぐに行こうと決めました。
鈴木央紹さんの名前はむずかしいですが、「ひさつぐ」と読むそうです。

クールでありながら内に秘めた情念を感じるライブだったと思います。
スタンダードは1曲目の「ステラ・バイ・スターライト」だけで、あとは西山さんのオリジナルが中心でした。
このメンバーは初顔合わせだけに手探り状態もあり、適度な緊張感とスリルがありました。
プレイヤーにとっても刺激的だったと思います。
売れっ子テナー奏者の鈴木さんは幅広い音楽性の持ち主で引き出しも多いです。
特に高音部の繊細な音作りに特徴がありました。
テナーなんだけど私はリー・コニッツ(as)をイメージしたのでトリスターノ派の影響ありかな。
マイケル・ブレッカー(ts)〜ボブ・バーグ(ts)のラインもあります。
クール&ホット、期待にたがわぬ印象的なプレイを聴かせてくれました。
現在最も注目されて話題になっているのがよく分かりました。

西山瞳さんの評判は聞いていましたが見たのは今回が初めてです。
ヨーロッパ系の流麗なピアニストですが一筋縄ではいかない感じがしました。
彼女が敬愛するエンリコ・ピエラヌンチ(p)も相当にしたたかだしね。
オリジナルがとてもいいです。
日本情緒溢れる作風で詩情豊かという感じがしました。
静かに美しく始まって徐々に盛り上がってクライマックスへ、また静かになってスーッと終わるというパターン。
そのまま桜のイメージなので今の時期にピッタリか・・・リズムも変化に富んでいて面白かったです。
アレンジも凝っていてすんなり乗れるわけでもありませんがひと言でいえば聴かせるジャズです。

年に何回かは見に行く池長さんの語るドラムスは相変わらず素晴らしいです。
相手なりにコラボレートする能力は頭一つ抜けていると思います。
吉田豊さんは安定感のある中堅ベーシスト、海野雅威・トリオで聴いたことがあるので今回が2回目でした。

それにしてもこの横浜関内地区はライブ・ハウスが密集していますね。
10分ほどの中に何軒あるんでしょうか。
横浜はジャズの似合う街です。
そういえば西山さんも横浜ジャズ・プロムナードでグランプリを取って上昇気流に乗りました。


At The "上町63" Yokohama On 2009/04/02



■第5回25-25プレゼンツ「赤松敏弘トリオ meets 川嶋哲郎」を聴いてきました。
赤松敏弘(vib)、川嶋哲郎(ts,fl,ss)、生沼邦夫(b)、小山太郎(ds)

ジャズ仲間の25−25さんのライブは前回2005年の11月だったので約3年半ぶりになります。
毎回、赤松さんとの組み合わせに誰が選ばれるか楽しみですが今回も意表を突かれました。
最初、川嶋さんと聞いた時には一瞬合わないんじゃないかと思いました。
なんとなく川嶋さんの重厚さにヴァイブの軽快さがイメージできなかったからです。
事実、25−25さんからヴァイブとテナー・サックスの組み合わせは極端に少ないと聞きました。
「一体、どうなるのか?」、一気に興味は盛り上がってすぐに参加を決めました。
どんな展開になるのか、本当に楽しみだったです。

演奏曲目を決めるにあたってリクエストを募集したのも嬉しかったですね。
その時からすでにみんながこのライブに参加している気分になれたからです。
これもいかにも手作りライブならではのことでしょうね。
赤松さんからはこんな質問がありました。

・ヴィブラフォンと言えばこの人のこの演奏!
(曲目/演奏者/収録アルバム名)
・テナー・サックスと言えばこの人のこの演奏!
・ベースと言えばこの人のこの演奏!
・ドラムスと言えばこの人のこの演奏!

この中から演奏曲目を決めようという構想です。
参加者から色々な曲のリクエストが出されたようです。

さて、その結果は?

1st
*It Could Happen To You (軽く身体慣らしの選曲だと思います)
*処女航海 (Mさんのリクエスト、ボビー・ハッチャーソンのアルバムで有名)
*When The World Was Young (25-25さんのリクエストか、古いシャンソンだそうです)
*Django (ヴァイブの名曲、モダン・ジャズ・カルテットですね)
*Elm (小山太郎さんのアルバムから、太郎さんのドラムスをフューチャー)
2nd
*オ・グランジ・アモール (25-25さんのリクエスト、ボサノバ)
*夜は千の眼を持つ (私のリクエスト、ソニー・ロリンズの演奏が好きです)
*Yesterdays (Gさんと私のリクエスト、ベースだとポール・チェンバースのこの曲になるかな)
*ノスタルジア (赤松さんのオリジナルで川嶋さんはフルートで演奏)
*My One & Only Love (私的にテナー・サックスの極めつけの曲だと思っています)
アンコール
*On Green Dolphin Street (最後にモダンジャズの名曲で大いに盛り上がりました)


ライブは面白かったです。
興味ある組み合わせを堪能させてもらいましたよ。
4人は初顔合わせのぶっつけ本番で適度な緊張感があったのが良かったです。
しかしながら、そんな中にも和気藹々とした雰囲気が漂っていました。
これは手作りのライブならではの味わいでしょうね。
気心の知れた赤松さんと太郎さんのラインがしっかりとしているのでブレがなかったです。
この安定感も大きかったと思います。
いつもとは雰囲気が変わって、川嶋さんも楽しそうでしたね。
ヴァイブとの共演は相当に新鮮だったと思いますよ。
テナー・サックスとフルートが3曲、ソプラノ・サックスを1曲披露してくれました。
ヴァイブが入るとラテンのリズムが多くなるし川嶋さんのフルートも満喫しました。
いつもはなんとなく重たい感じがするのでこういった軽快さが新味だったです。
あちこちのライブ・スケジュールで名前を見かける生沼邦夫さんは初見です。
今度、峰厚介さんのカルテットにも起用されているので興味がありました。
切れがあってしなやかな印象、柔軟性のあるオーソドックスなベーシストだと思います。
レイ・ブラウンやポール・チェンバースのライン上にいるので安心感がありますね。
最初は多少緊張感を感じましたが太郎さんとのコンビでグイグイと押し込むグルーブ感は最高でした。
1stでは「処女航海」、2ndでは「夜は千の眼を持つ」が特に素晴らしかった。
赤坂太郎さんは文句のつけようがないドラマーです。
エルヴィン・ジョーンズやロイ・ヘインズを意識したそうです。
若い頃から活躍しているのでキャリアは豊富ですが実年齢はまだまだ若いんだよね。
赤松さんは風邪で入院したばかり、病み上がりとのことでしたがそんなことは微塵も感じさせませんでした。
3年ぶりでしたが益々腕を上げていると思いました。
これからの日本のヴァイブ界を背負っていく存在になるのは間違いないでしょう。
ヴァイブは演奏者そのものが少ないのでほとんど見る機会がありません。
これからはもう少し見なければと思います。

どうだろう、これを機会にまたこのメンバーでやることもあるんじゃないでしょうか。
ていうか、やってほしいですね。
それほど魅力のある組み合わせでした。
25−25さんが放った大ホームランだと思います。


At The "Kamome" Yokohama On 2009/03/15



■峰厚介&清水絵理子を聴いてきました。
峰厚介(ts,ss)、清水絵理子(p)

ジャズ大好きなお客さんに囲まれて、落ち着いた実にいい感じのライブでしたね。
ピーンと一本張り詰めた程よい緊張感は背筋がスッと伸びた気がしました。
シーンとして聴き入っている情景は観客とプレイヤーを一体化する空間で居心地が良かったです。
デュオの最大の魅力は二人の濃密な語り合いにありますね。
ここでも二人のインタープレイとコラボレーションに聴きどころがありました。


峰さんは日本の最高峰のサックス奏者です。
溢れ出るアイデアは次にどんなフレーズが飛び出すのか、ワクワク・ドキドキしました。
ちょっとかすれた感じの独特な音色にも魅力があります。
ウエイン・ショーター(ts)、デイブ・ホランド(b)、サム・リバース(ts)、ドン・チェリー(tp)の曲と聞けば、
今の峰さんが目指している音楽性が分かると思います。
その他、オリジナルとスタンダードはラストの「Beautiful Love」の1曲だけです。
後半2曲目の「いとまきえい」というバラードがこの日の白眉の1曲になりました。
印象的なテーマから自在な即興演奏に入り、どこの行くのかまったく分からない状態に引き込まれます。
引きずり回されて、どこかに連れて行かれて、フッと戻ってくる感覚は峰さんならではのものでしょう。
硬軟織り交ぜてのソロはまったく展開がつかめないスリルがあります。

清水絵理子さんは偶然連続のライブを見ることになりました。
前日はQ・いしかわ(ts)さん、吉田桂一(p)さん、鈴木道子(vo)さんとの共演でした。
特に吉田さんとのピアノの連弾は面白かったです。
連弾というのを初めて見ましたがこれほど息が合うものかと驚かされました。
二人が並んで座れば即興演奏に制約があるのでぶつかると思っていましたからね。

清水絵理子さんは現在最も旬な女性ピアニストだと思います。
あちこちのライブ・ハウスで見かけることができます。
それだけ実力を認めらているということですね。
なぜか、テナー奏者との共演が多いような気がします。
中でも竹内直(ts)さんのグループは井上陽介(b)さん、江藤良人(ds)さんというゴツいメンバー?ですが
紅一点の清水さんが潤滑油の役目を十二分に果たしています。
峰さんのニュー・カルテットでも起用が決まっていてその前哨戦の形になりました。
もっとも今までも色々な機会で共演してきたと思うのでコンビネーションも良かったです。
清水さんのスタイルとしてはオーソドックスだと思います。
現在のピアニストの主流派はバド・パウエル〜ビル・エバンス + セロニアス・モンクというところになりますか。
清水さんにはさらにファッツ・ワーラー系のストライド・ピアノの味付けがあります。
これが大きな魅力だと思います。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2009/02/20



■金子雄太&鈴木道子を聴いてきました。
金子雄太(org)、鈴木道子(vo)

今回はオルガンの金子雄太さんと鈴木道子さんの共演ということで興味を持って出かけていきました。
鈴木さんの歌声と歌唱力がオルガンとマッチしてよりソウルフルな展開になると思ったからです。
ハモンド・オルガンの響きも久し振りだったけど、予想した通りに相性は良かったです。
たしか金子さんと鈴木さんの共演は2回目じゃないかと思います。
最初はお互いに手探り状態の曲もありましたが徐々にこなれてきてグッと密度が増してきました。
普段は聴けないソウルフルな選曲やアレンジも聴けました。

「イエスタデイズ」は大好きな曲ですが金子さんのアレンジが生きました。
2セット目の後半「オール・ザ・ウエイ」〜ビリー・ジョエルの「ニューヨークの想い」から、
アンコールの「この素晴らしき世界」〜「Fのブルース」は最高の盛り上がりで聴き応えがありました。
多分二人はこれからも共演するだろうし、益々濃密なコラボレーションになってくると思います。
これからの共演も多いに期待しています。

ライブでハモンド・オルガンを聴いたのも久し振りでしたがやはり本物の響きは格別のものがありました。
聴いているとソウル、ファンキー、ブルージー、アーシーと言った言葉が溢れ出てきます。
金子さんのプレイにはそういったものに加えて都会的で洗練されたセンスがあると思いました。
オルガンはジャズ・ファンには最も馴染みのあるB−Vタイプです。
1974年まで約20年間作られたそうですが未だに中古市場に出回っている逸品と聞きました。
金子さんの話によるとこのタイプは偶然にうまくできた産物だそうです。
オルガン独特のフット・ベースをはじめ、両手両足をどう使っているのか、思わず覗き込んでしまいました。
目の前で見たのは初めてなので貴重な経験をしました。
しかし、本体が200キロでスピーカーが70キロ、約300キロを移動し組み立てるのは大変だと思います。

横浜のモーション・ブルーには初めて行きました。
有名な赤レンガ倉庫を改造したものですが雰囲気も良く元倉庫だけに音響効果も抜群だったです。

At The "Motion Blue" Yokohama On 2009/02/09




■岡田勉・カルテットを聴いてきました。
岡田勉(b)、峰厚介(ts)、野力奏一(p)、村上寛(ds)
ゲスト:佐藤”ハチ”恭彦(b)、片倉真由子(p)

熟年カルテットの「大人のジャズ」を聴きたくて出かけました。
ところが落ち着いていると思いきやエネルギッシュでパワフルな熱いライブを聴かせてもらいました。
私はつい興奮してしまって体が熱くなってしまいましたよ。
圧倒されて、「ウオーッ」という感じでつい声が出てしまったほどです。
でも、セカンド後半はゲストが入ったので集中力がやや甘くなったかも。

曲目は2007年に出た岡田さんのCDからのオリジナルが中心、それにスタンダードを交えての構成でした。
ライブに行くと熟年のほうが元気な場合があります。
「まだまだ若いもんには負けていられん」という気概を持つからでしょうか。
ここでもまったくその通りの印象、熱くスピード感溢れる演奏には痺れました。
この4人に共通して言えることは一音一音に力があります。
音数が多くても少なくてもハッキリと聴こえることです。
説得力のある音というんでしょうか。とても大事なことだと思います。
村上寛さんのグイグイと押し出すドラムスと岡田勉さんの強靭なベース、野力奏一さんの力強いタッチ
が繰り出すスイング感は迫力十分、そこに峰厚介さんの王道テナー・サックスが乗る構図です。
ここで一番の若手は才人の野力さんで緩急織り交ぜたアイデア豊富のピアノも素晴らしかった。
グループとしてのまとまりも良くそれぞれが存在感のあるプレイを聴かせてくれました。
峰さんと村上さんは70年代後半の人気バンド、「ネイティブ・サン」でよく聴いたものです。
岡田さんも色々な作品に参加しているので聴く機会は多かったです。
数年前には新宿の某有名ホテルのラウンジに毎晩出演していたので何度も聴きに行きました。

加えてこの日は佐藤”ハチ”恭彦(b)さんと片倉真由子(p)さんの飛び入り出演のハプニングがあって楽しめました。
片倉さんはライブ・ハウスのスケジュールでよく見かけますが聴いたのは初めてです。
ユニークなアプローチとリズム感を持っているアメリカ帰りの新進ピアニストでこれからの活躍を期待しています。
岡田さんとハチさんのベースの入れ替わり共演も面白かったです。

At The "Sometime" Kichijoji On 2009/02/02



■宮下博行・トリオを聴いてきました。
宮下博行(p)、佐藤有介(b)、嘉本信一郎(ds)

この宮下博行・東京トリオを見るのは去年の10月に引き続いて2回目になります。
このトリオは面白いと思います。
年に2、3回の組み合わせなので慣れがなく新鮮、ジャム・セッション的面白さがありました。
そんなわけで展開が読めないのが最大の魅力です。
曲の最初はいつも手探りで始まって3人がどう合わせていくのか、今回もスリリングな演奏を聴くことができました。
テンポやリズムのパターンを変えて三者三様の味が出ています。
反面、トリオとしてのバランス、三位一体ということになると疑問符が付くかもしれません。

演奏曲目も変化に富んでいてイヴァン・パデュア、アラン・パスクァ、フレッド・ハーシュの曲を取り上げていました。
スタンダードは「酒とバラの日々」でしたがこのアレンジも面白かったです。
私は特に宮下さんのオリジナルが好きですがバラードとアップテンポの構成もよく考えられています。
変幻自在のピアノ・プレイで持ち味の”HOT & COOL”のバランス感覚が絶妙だと思います。
こういうスタイルを持つピアニストは案外見当たらないので貴重な存在です
嘉本さんは細かく刻むパルスのリズム、うねる波のようなドラムスにはハマります。
佐藤さんはメキメキと腕を上げているのがわかります。
スキャットを交えた歌うようなベース・プレイが聴きどころ。
ソロは歌うように弾けとはよく言われますがそう簡単にできるものではありません。

宮下さんは年に何回か東京に来て演奏しているのも前向きでいいですね。
常に前進の姿勢は買っています。

At The "Sunny Side" Takadanobaba On 2009/01/26



■エリック・アレキサンダー・カルテットを聴いてきました。
エリック・アレキサンダー(ts)、
デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、ジョン・ウィーバー(b)、ジョー・ファーンズワーズ(ds)

エリック・アレキサンダーは今最も輝いているテナー・サックス奏者ですね。
一度見てみたいと思いながら延び延びになっていました。
ようやく今回その機会を得ましたが抱いていたイメージとは少し違いました。
もっとパワフルでエネルギッシュに吹くとばかり思っていました。
出てくる音とはうらはらにほとんど動きのないクールな奏法だったです。
私はどちらかというとこちらのほうが好みです。

4人がステージに登場してきた時に感じたのは「みんな、デカイなぁー」でした。
やっぱり骨格が違うと思いましたよ。
1曲目が20分を越す熱演でこれが一番良かったです。
特にジョー・ファーンズワーズが元気一杯、この日のハイライトは彼でした。
グイグイと押して突っ走るドラミングには背筋がゾクゾクしました。
デヴィッド・ヘイゼルタインはさすがの実力、タッチ、フレーズ共に素晴らしかったです。
雰囲気にも存在感があるというか、容貌には天才的なものを感じました。
反面、ジョン・ウィーバーはイマイチ大人しいというか、これが持ち味なんでしょうか。
だとすれば組み合わせが合わないのかもしれません。
もっと前に出て煽るベーシストのほうファーンズワーズとのコンビが生きます。

演奏したのは5曲でオリジナルが多かったと思います。
1曲目を除いてはやや流している感じがしたのは残念でした。
公演の最終日だったので疲れていたのかもしれませんね。
もっと豪快なステージを見たかったですが全体的にはやや物足りないライブだったです。

コットン・クラブには初めて行きました。
ブルー・ノート東京を小さくした感じで雰囲気は良かったです。
ただ音響がちょっと気になりました。
横の席から見ていたんですが音もまったく横から聞いている感じになりました。
正面の方にはいいでしょうが横からだとそれがちょっと不満かな。
もう少しサラウンドを強調してもいいのではと思います。

At The "Cotton Club" Tokyo On 2009/01/13




■鈴木道子(vo)、米田正義(p)、山田晃路(b)の新春ボーカル・ライブを開催しました。

シングスの店主の武田さんと話をしている中でこのライブを企画、実現する運びになりました。
当日は超満員の大盛況、お陰様でとても良いライブができたと思っています。
鈴木さんの声には好みがあると思います。
しかしながら聴く人を自分の世界に引き込む力があります。
みなさんも「鈴木道子の世界」を肌で感じてくれたんじゃないでしょうか

共演は米田さんと山田さんの両ベテランで、この二人はお付き合いも長く安心感がありました。
米田さんのロマンティックで美しく変幻自在のピアノは大評判、
山田さんのリズム感溢れるベース・プレイも素晴らしかったです。
コンビネーションも良さは折り紙付き、しっかりと鈴木さんを支えていました。
3人共に張り切ったと思います。
なかなかこういう感じの手作りのライブは少ないですからね。
アットホームな雰囲気と良いライブにしたいという意識がプレイヤーと観客を一体化するんです。
そんな音楽空間に包まれるのは本当に心地いいです。
プレイヤーが観客を酔わせ、観客がプレイヤーの良さを引き出す相乗効果がありました。

曲目は相変わらず定かでありませんが・・・(順不動)

* Autumn leaves(インスト)
* I remember you
* The very thought of you
* What a wonderful world
* Good morning heatache
* Candy
* Hush-A-By(インスト)
* Crasy he calls me
* I didn't know what time it was
* If I shoud lose you
* East of the sun
* You've changed
* They can't take that away from me
* Misty
アンコール:* On the sunny side of the street
etc

鈴木さんの真髄はバラードにあると思っていますがアップ・テンポの「East of the sun」や
「On the sunny side of the street」の評判も上々でした。

At The "Cafe' Sings" Kunitachi On 2009/01/11




[ライブ・レポート]
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