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Dragon's Jazz Corner

「ライブ・レポート・2008」

注:詳しいライブ・レポートは下↓へスクロールしてご覧下さい。


■鈴木道子 鈴木道子(vo)、Q.いしかわ(ts,vo)、清水絵理子(p) 2008/12/18
■松島啓之・クインテット 松島啓之(tp)、山田譲(as)、今泉正明(p)、嶋友行(b)、高橋徹(ds) 2008/12/13
■土濃塚隆一郎・トリオ 土濃塚隆一郎(flh)、塩川俊彦(g)、河上修(b) 2008/12/12
■村田浩バップ・バンド 村田浩(tp)、澤田一範(as)、松本全芸(p)、矢野伸行(b)、宮岡慶太(ds) 2008/12/04
■宮野裕司カルテット 宮野裕司(as)、中牟礼貞則(g)、吉野弘志(b)、池長一美(ds) 2008/11/29
■白根真理子 白根真理子(vo)、布川俊樹(g)、佐藤浩一(p) 2008/11/25
■宮本貴奈・トリオ 宮本貴奈(p)、井上陽介(b)、マーティン・モレル(ds) 2008/11/08
■渋谷毅&石崎忍 渋谷毅(p)、石崎忍(as) 2008/10/18
■太田寛二・トリオ&上野尊子 太田寛二(p)、片山勝義(b)、村田憲一郎(ds)、上野尊子(vo) 2008/10/12
■宮下博行・トリオ 宮下博行(p)、佐藤有介(b)、嘉本信一郎(ds)
ゲスト:白根真理子(vo)
2008/10/09
■オリビエ・アントゥネス・トリオ
■ヘンリック・グンデ・トリオ
オリビエ・アントゥネス(p)、ヘンリック・グンデ(p)、
イェスパー・ボディルセン(b)、モーテン・ルンド(ds)
2008/10/05
■小川高生&野本晴美 小川高生(as)、野本晴美(p) 2008/09/27
■ウイリアム浩子 ウイリアム浩子(vo)、平岡雄一郎(g)、矢野伸行(ds) 2008/09/15
■池長一美・トリオ バート・シーガー(p)、吉野弘志(b)、池長一美(ds) 2008/09/12
■浅川太平・トリオ 浅川太平(p)、鉄井孝司(b)、鈴木カオル(ds) 2008/08/29
■鈴木良雄・カルテット 鈴木良雄(b)、井上信平(fl)、ハクエイ・キム(p)、大村亘(ds) 2008/08/04
■鈴木道子&渥美幸裕・トリオ 鈴木道子(vo)、渥美幸裕(g)、鉄井孝司(b)、小森耕造(ds) 2008/07/26
■スティーブ・キューン・トリオ スティーブ・キューン(p)、エディ・ゴメス(b)、ビリー・ドラモンド(ds) 2008/07/26
■類家心平・カルテット 類家心平(tp)、ハクエイ・キム(p)、鉄井孝司(b)、吉岡大輔(ds) 2008/07/14
■河原秀夫&ペンタグラム 河原秀夫(b)、井上信平(fl)、竹中俊二(g)、
福田重男(p)、セシル・モンロー(ds)、ブーフーウー(cho)
2008/07/07
■土濃塚隆一郎・カルテット 土濃塚隆一郎(flh)、野本晴美(p)、河上修(b)、宇山満隆(ds) 2008/06/27
■南博・トリオ 南博(p)、鈴木正人(b)、芳垣安洋(ds) 2008/06/23
■竹内直・カルテット 竹内直(ts,fl)、清水絵理子(p)、井上陽介(b)、江藤良人(ds) 2008/06/16
■渡辺文男・カルテット 渡辺文男(ds)、高橋知己(ts)、元岡一英(p)、小杉敏(b) 2008/06/10
■杉本喜代志&平井庸一 杉本喜代志(g)、平井庸一(g)、ゲスト:井谷亮志(per) 2008/06/07
■ロバータ・ガンバリーニ ロバータ・ガンバリーニ(vo)、
タミール・ヘルデルマン(p)、ニール・スウェインソン(b)、ジョー・ラ・バーベラ(ds)
2008/05/31
■辛島文雄・トリオ 辛島文雄(p)、川村竜(b)、高橋信之介(ds)
ゲスト:池田篤(as,ts)
2008/05/26
■石田幹雄 石田幹雄(p) 2008/04/14

[ライブ・レポート]
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年



■鈴木道子(vo)、Q.いしかわ(ts,vo)、清水絵理子(p)を聴いてきました。

鈴木道子さんの管楽器入りを聴く機会がなかったので楽しみに出かけました。
それもQさんのテナー・サックスならいやが上にも期待は膨らみます。
結果は・・・心から楽しめる素敵な大人のライブでした。
Qさんの持つキャラクターでしょうね。
穏やかで暖かい雰囲気とユーモアたっぷりのお話はとても居心地のいいものでした。

テナー・サックスが入ると道子さんの歌もムードが一段とアップします。
Qさんのバッキングがまた色気があるし上手いです。
バラードはムード満点、アップ・テンポはソウルフルで2セットが楽しめるライブです。
Qさんのボーカルと二人の掛け合いも面白かった。
それにしてもQさんは喜寿なのに元気溌剌として演奏もまったく衰えもみせていません。
サックスのコントロールは抜群だし音もキレイに伸びています。
改めてテナー・サックスの響きに痺れました。

曲目は「Beautiful Friendship」、「All The Way」、「Someone To Watch Over Me」、
「Solitude」、「Embraceable You」、「The Man I Love」、「All The Things You Are」、
「All Or Nothing At All」、「Easy Living」、[Don't Explain]、「Lover Man]、等々
中でもアビイ・リンカーンの「Throw It Away」が圧巻でこの曲がこの日のハイライトでした。
歌は凄いのひと言・・・これにはライブ・ハウスの観客もすっかり引き込まれてしまいました。
もう1曲はこの時期にはぴったりの「The Christmas Song」が素晴らしかった。
道子さんのバラード表現には益々磨きがかかって輝きを増しています。
Qさんのテナー・サックスがムードを盛り上げて拍手喝さい。

アンコールは「On The Sunny Side Of The Street」とGブルースの2曲で大サービス、
Qさんが自分で「アンコール!」と叫んだのにはみんな大笑いでした。

3人のとてもリラックスした歌と演奏がきけました。
絵理子さんはテンポのいいホンキー・トンク・タッチや軽快にスイングするピアノも楽しそうでしたね。
ソウル系も一味違うアプローチを持つのでQさんや道子さんにはぴったりだと思います。

ところで「The Christmas Song」はメル・トーメ(vo)の書いた曲ですがクリスマス・ソングでは一番好きかもしれない。
先日、メル・トーメのオリジナルを聴く機会があったけれど良かったです。

At The "NARU" Yoyogi On 2008/12/18



■松島啓之・クインテットを聴いてきました。
松島啓之(tp)、山田穣(as)、今泉正明(p)、嶋友行(b)、高橋徹(ds)

「そうだよ、これだよ!これ!!」っていう感じで背筋がゾクゾクっとしました。
1960年代に私がリアル・タイムで聴いていたハード・バップ・サウンドがこれです。
私がイメージするギンギンの”モダン・ジャズ”を堪能しました。

松島啓之(tp)さんと山田譲(as)さんのコンビネーションは抜群ですね。
お付き合いも長く、ツーカーの仲。
松島さんのアタックは強いですが基本的にはクールな演奏を心がけているようでした。
リー・モーガンにマイルスやチェットの味付けが入って緊張感と深味が出ました。
対する山田さんはまさしく火の出るような熱いプレイを展開してくれました。
強烈な印象を残した・・・体調も絶好調のようなのでこれからも活躍してくれることと思います。
このホット&クールの対比がこのグループの最大の魅力です。
ウエイン・ショーターの2曲から幕開け、まさしくこのグループにはぴったりの選曲です。
その他に「スカイラーク」、「アイ・ラブ・ユー」、「ナシメント」など。
今泉正明(p)さんもこのグループにはぴたりとはまるピアニストです。
自然に身体揺れてくるスイング感とグルーブ感がたまりません。
グイグイと押し出す粘っこいピアノは今泉さん独自のものです。
高橋徹(ds)さんは叩き過ぎないのがいい、繊細なリズムを刻むハイセンスなドラマーです。
先日、佐々木昭雄(org)さんのアルバムで松島さんと共に聴いたばかりです。
嶋友行(b)さんは体調イマイチとみましたがどうか。

At The "Nica's" Machida On 2008/12/13




土濃塚隆一郎・トリオを聴いてきました。
土濃塚隆一郎(flh)、塩川俊彦(g)、河上修(b)

土濃塚隆一郎さんを聴くのは今年3回目ですが相変わらずの元気なフリューゲル・ホーンを聴かせてくれました。
ここは初のギター・トリオということで興味津々で出かけていきました。
トリオ編成だとより土濃塚節が前面に出てくるので凝縮したプレイを聴くことができました。
曲目はオリジナル、スタンダード、敬愛するフレディ・ハバードの作品です。
「ジャイアント・ステップ」、「恋とはなんでしょう」、「ソーラー」、
「チャイルド・イズ・ボーン」、「レッド・クレイ」、「ジブラルタル」など。

ライブのキーマンは明らかに塩川俊彦(g)さんでした。
土濃塚さん曰く10年前にストリートで一緒に演った仲でそれ以来だそうです。
久し振りに共演したいと思って声をかけたそうです。
10年間のお互いの成長を実感できたでしょうか。
私はスロー・バラードに魅力を感じました。
塩川さんの持つソウルフルでブルージーな感覚が生かされたと思います。
ギターの音色もきれいです。
特に河上さんとは初顔合わせでこの二人のコラボレーションは面白かったです。
河上さんが仕掛けて塩川さんが応える形でしょうか。
お互いに探りあいながらのインタープレイがスリル・満点。
ここでも一瞬に生きるジャズの魅力を満喫しました。
スキャットを交えたスピード感溢れる素晴らしいベース・ソロ、河上さんのプレイは実に楽しいです。
多彩な表現力は驚異的、エンタテイナーでもあるので十分に楽しませてくれます。
このライブは土濃塚=塩川、河上=塩川の対決が聴きどころになりました。

河上さんとちょっと話をする機会がありました。
ベースは独学だそうです、この頃のジャズ・メンには独学と言う人も多いですね。
渡辺貞夫さんのグループでの厳しかった修行時代のことなどを話してくれました。
日野皓正さんや元彦さんの話も聞けました。

ところで、ノー・トランクスでは演奏の合間に店主の村上さんがかけてくれるアルバムも楽しみ一つです。
今夜はこの2枚でした。
どうです、シブい選択ではありませんか。

*Phineas Newborn Jr Trio / Newborn Touch
Phineas Newborn Jr(p), Leroy Vinnegar (b), Frank Butler(ds)

*Kenny Burrell Trio / When Lights Are Low
Kenny Burrell(g), Larry Gales(b), Carl Burnette(ds)

At The "No Trunks" Kunitachi On 2008/12/12




■村田浩BAP・BANDを聴いてきました。
村田浩(tp)、澤田一範(as)、松本全芸(p)、矢野伸行(b)、宮岡慶太(ds)

このバンドを見たいと思ってから何ヶ月も過ぎましたがようやく機会を得て見ることができました。
バンドのイメージは黒、重厚で存在感のあるバンドでした。
5年以上のキャリアを誇るレギュラー・バンドはコンビネーションも抜群です。
強力で熱いライブはビンビンと身体に響いてきました。
実に魅力的な雰囲気とサウンドを持っているので根強い人気があるのが伺えます。
曲目は「Bouncing With Bud」、「Dig」、「Chi-Chi」、「What Is This Thing Called Love?」、
「Along Came Betty」、「End Of A Love Affair」、「Half Nelson」、「Bebop」、等々。
ビバップの名曲が次々に演奏されました。
村田浩(tp)さんのワン・ホーンで「PS I Love You」、
澤田一範(as)さんのワン・ホーンで「I Can't Get Started」のバラードは素晴らしかったです。
矢野伸行さんをフューチャーしたクリフォード・ブラウンの「George's Dilemma」も良かったです。

ライブで一番見たかったのは澤田さんです。・・・やっぱり澤田さんは凄かった。
何人ものプロのアルト奏者から「澤田さんは別格です」と聞いていましたがその理由が分かりました。
技量やノリはもちろんのこと、その迫力あるプレイには圧倒的な凄みがあります。
チャーリー・パーカー〜ルー・ドナルドソン〜キャノンボール・アダレイ、まったく素晴らしいのひと言です。
村田さんのトランペットはバップの香りがプンプン、ブラウニー、ガレスピー、初期マイルス、
ドナルド・バード、リー・モーガンを彷彿とさせるものです。
松本さんのピアノはスピード感十分、バド・パウエル〜ホレス・シルバー、ボビー・ティモンズのラインか。
矢野さんはスイング感溢れるベース・プレイで達者なアルコ・ソロも聴きどころ。
宮岡さんのドラムスはパワフルでエネルギッシュでこのバンドにはぴったりです。
5人が一体になって繰り出すビバップの世界、まさしくたまらないサウンドを聴かせてもらいました。
これはクセになるかもしれません。

At The "Nica's" Machida On 2008/12/04



■宮野裕司(as)、中牟礼貞則(g)、吉野弘志(b)、池長一美(ds)を聴いてきました。

思うに2005年に初お目見え以来、このカルテットの出演は楽しみにしています。
何回聴いてもこのメンバーは素晴らしいと思います。
実力者同士の密度の濃いインタープレイとコラボレーションは最高です。
演奏中に演奏者同士がニヤリとするシーンもしばしば見受けられます。
各人のアプローチが面白いんでしょうね。
それだけに毎回スリルに溢れた演奏が聴けるというわけです。
曲目はリー・コニッツやジム・ホールを中心にしたクールな選曲です。
やり慣れたものはあまりやらずにぶっつけ本番で選んでいるようですね。
今回の白眉の1曲はカナダのドン・トンプソン(b)の「For Bill Evans」でした。
ジム・ホールの「Careful」も良かった。
宮野さんのソフトでふくよかなアルトの音色には独特の味があります。
中牟礼さんのユーモアたっぷりのお話も面白いですよ。

At The "No Trunks" Kunitachi On 2008/11/29



■白根真理子(vo)、布川俊樹(g)、佐藤浩一(p)を聴いてきました。

ジャズ仲間のMさんを通じて知り合った白根真理子さんのライブです。
白根さんのコンセプトは「POPJAZZ」です。
ネーミングの通り、ポップスとジャズの中間を狙う音楽を志向しています。
音楽ファンの中にはジャズに抵抗を感じている人もいるのでこういう試みは大事ですね。
ここからさらにジャズ・ファンが増えてくれるといいと思います。
白根さんのジャズの師匠は布川俊樹さんです。
以前から布川さんのギターも見たかったのでちょうど良かったです。

ライブはまずはギターとピアノのデュオによるインストルメンタルからスタートしました。
曲目は「All The Things You Are」・・・大好きな曲です。
布川さんについては多くを語る必要はないと思います。
多方面で活躍する日本を代表するジャズ・ギタリストの1人です。
音色の美しさは特筆もの、流れるように歌うギター・プレイはさすがです。
年齢的にも脂が乗っていて表現力に磨きがかかりました。
佐藤さんはバークリー帰りのまだ25歳の若さですが好センスで実に趣味の良いピアノを弾きます。
相手なりのフレキシブルな感性を持っていると思います。
微妙なピアノ・タッチを持っているのが個性的でこれからの期待を期待しています。

白根さんは日本語で歌うオリジナルを含めてソフトな歌声で聴かせてくれました。
スタンダードは「ニアネス・オブ・ユー」、「ラブ・フォー・セール」、「ナイト・アンド・デイ」、
「ウエイブ」、「ユー・アー・マイ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ」、等々。
CDに収録されたバート・バカラックの「アルフィー」は3セット目で歌ってくれたかどうか、
ライブではマイケル・フランクスの大ヒット曲の「アントニオ・ソング」を聴かせてくれました。
こういう選曲も「ポップ・ジャズ」ならではと思います。

トリオで歌うのは初めてと言っていましたがギターとピアノのトリオは成功しました。
白根さんも気持ち良く歌えたと思います。
もっとポップス寄りかと思っていたんですがずっとジャズっぽくてスリルとサスペンスがありました。
やはりライブは実際に見て聴いてみないと分かりませんね。


At The "Jay-J's Cafe" Meguro On 2008/11/25



■宮本貴奈(p)、井上陽介(b)、マーティン・モレル(ds)を聴いてきました。

「ビル・エヴァンスに捧ぐ」、”Remembering Bill Evans”Tourの最終日とのことでした。
ひと言で言えば、このトリオは素晴らしかったです。
宮本貴奈さんは茨城県結城市出身、バークリー音楽院卒業後アメリカで活躍中、現在は南部アトランタ在住です。
井上陽介さんは現在の日本を代表するベーシストです。
マーティン・モレルさんはご存知ビル・エヴァンス・トリオの名ドラマーで今回が4回目の来日とのことでした。
大の日本びいきでお寿司が大好きなようです。

このコンサートはビル・エヴァンス・ファンにはたまらないでしょうね。
エヴァンスゆかりの曲が次々に演奏されました。
スロー・バラードが中心、それもエヴァンス・スタイルそのもので。
「ワルツ・フォー・デビィ」、「マイ・フーリッシュ・ハート」、「不思議な国のアリス」、「マイ・ロマンス」、
「ブルー・イン・グリーン」等々、圧巻は最後に演奏された「ナーディス」とアンコールの「枯葉」でした。
前奏からスロー・テンポで入って徐々にテンポ・アップ、
盛り上がったところでベースとドラム・ソロ、最後の掛け合いの息もピッタリです。
宮本さんの切れのあるピアノは今後の活躍を期待させるに十分なものでした。
今はまだスロー・バラードよりアップ・テンポなものにより魅力を感じたのはやむを得ません。
ビル・エヴァンス・トリオ大好きの井上さんの超絶プレイも凄かったです。
当時のアルバムを擦り切れるまで聴いていたモレルさんと一緒にやれるとはとても想像出来なかったそうです。
タキシードを着て現れたモレルさんのドラミングには品格を感じました。
特徴のあるブラシ奏法はもとより、テクニック、リズム感は申し分なく、安定感は抜群です。
エヴァンス・トリオに7年間も在籍した実力は伊達ではありません。

At The "Swinghall" Musashinoshi On 2008/11/08



渋谷毅(p)、石崎忍(as)を聴いてきました。

渋谷&石崎コンビには独特の雰囲気があって良かったです。
マスターの村上さんに「この組み合わせは誰の考えですか?」と聞きました。
答えは「渋谷さん」でした。
道理で相性はピッタリだと思いました。
石崎さんはリー・コニッツ、この日の渋谷さんはレニー・トリスターノかセロニアス・モンクか。
超クールで叙情的、静謐なライブでグッときました。
ノリノリのライブももちろんいいですがこういうのもまた捨てがたいです。
チャーリー・ヘイデン(b)の「サイレンス」が白眉の1曲。
テンポのある曲はチャーリー・パーカーの「ナウ・ザ・タイム」だけでした。
レポートには載せていませんが渋谷さんを聴くのは今年はこれが3回目です。
峰厚介(ts)さんとのデュオ、前回は渡辺文男(ds)トリオ&鈴木道子さんでした。
渋谷さんの音楽性は深く幅広い、ピアノは本当に美しいです。
精力的な音楽活動をしているようですね。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2008/10/18



■太田寛二・トリオ&上野尊子を聴いてきました。
太田寛二(p)、片山勝義(b)、村田憲一郎(ds)、上野尊子(vo)


太田寛二さんは一度聴いてみたいと思っていました。
大阪の若手のジャズ仲間のNさんの一押しだったです。
その太田さんと以前からのファンである上野尊子さんの共演ということで楽しみに出かけていきました。
期待通りの実に居心地の良いピアノが聴けました。
デューク・ジョーダン、ケニー・ドリュー、バリー・ハリス、
バラードならエロール・ガーナーとかをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。
ちょっと話をする機会がありましたが驚いたことにピアノは独学だそうです。
17歳で本格的に勉強、18歳でプロ入り、21歳で初リーダー・アルバムということで、
これはもう卓越した感性と才能を持つ天才肌のピアニストだと思いました。
絶妙なタッチと美しい音色、そのプレイにはバップの香りがいっぱい詰まっています。
メンバーは片山勝義(b)さんと村田憲一郎(ds)さん。
このトリオならではの味わい深い演奏はまさに”大人のジャズ”、若手ではとうていこの味は出ません。
村田さんは歯医者さんなのに精力的な音楽活動には頭が下がります。

上野尊子さんをここで聴くのは2回目になります。
前回は大事に持っていたCD「Getting To Know You」(Insights/1988)にサインをお願いしました。
「サインは苦手なんだなぁー」と言いながらも快く応じてくれました。
前回のピアニストは福井ともみさんでした。
曲目は「On A Clear Day」、「Prelude To A Kiss」、「All The Things You Are」、「Come Fly With Me」、
「Smile」、「The Shadow Of Your Smile」、「Too Close For Comfort」、「How About You?」、等々、
特にラストに歌った尊子さんの愛唱曲の「God Bless The Child]は絶品でした。

At The "Nica's" Machida On 2008/10/12



■宮下博行・トリオを聴いてきました。
宮下博行(p)、佐藤有介(b)、嘉本信一郎(ds)

ジャズ仲間のMさんから神戸で活躍中の素晴らしいピアニストがいるというので出かけました。
2ステージ、オリジナルが中心ですが1ステージごとにスタンダードを1曲づつ入れる構成です。
オリジナルは変化に富んだ曲想でリズムも多彩、とても一筋縄ではいきません。
スタンダードの凝ったアレンジも良かったです。
オープニングは自作の美しいバラード「with the flower of time」で最も宮下さんらしい選曲でした。
印象に残ったのは「Fly Me To The Moon」でこれが斬新な感覚で素晴らしかったです。
フューチャーされた佐藤さんのベース・プレイが印象に残っています。
もう1曲のスタンダードは「Georgia On My Mind」でピアノ・トリオで演奏するのは珍しいかな。
オリジナルでは嘉本さんのモンク風の曲(曲名は失念)にスリルとサスペンスがありました。
宮下さんは想像していたよりもずっと懐が深く幅広い音楽性の持ち主です。
メロディ・メーカーとしての才能も十分に感じることができました。
ビル・エバンズ〜キース・ジャレット系のリリカルで透明感のあるヨーロピアン・テイストはもちろんのこと、
ウィントン・ケリー〜モンティ・アレキサンダーに繋がる熱く切れ味鋭いタッチとスイング感も持っています。
この”HOT&COOL”のバランス感覚が絶妙で実に気持の良いピアノを聴かせてくれました。

共演の佐藤さん、嘉本さんは共に見るのは2回目になります。
佐藤さんを最初に見たのは2年ほど前だと思います。
その時もいいベーシストだなぁーと思いましたが格段の進歩を遂げていました。
歌心のある、また一人のいいベーシストに出会った気がします。
嘉本さんのユニークなドラミング・スタイルも一度聴いたら忘れられませんね。
このトリオのキーマンは嘉本さんのドラムスにあると思いました。
独特のうねるビートやリズム感はクセになります。
同行の女性陣は絶賛していました。

ライブには「ポップ・ジャズ」のボーカリストの白根真理子さんも来ていたんです。
2ステージ目の最初に飛び入りで1曲披露してくれました。
スロー・バラードからアップテンポに展開する「My Romance」も素晴らしかったです。
すぐに共演できてしまう、こんなところもジャズの魅力の一つですね。

このトリオは刺激的で好バランス、とても良いトリオです。
アット・ホームな雰囲気の中で聴くジャズは最高でした。


At The "UNAMAS" Mitaka On 2008/10/09



■オリビエ・アントゥネス(p)&ヘンリック・グンデ(p)
イェスパー・ボディルセン(b)、モーテン・ルンド(ds)聴いてきました。


オリビエ・アントゥネスにはデビュー時から注目していました。
スウェーデンにはイェスパー・ルンゴー(b)とアレックス・リール(ds)という
世界的な素晴らしい組み合わせのリズム・セクションがいます。
その二人を継承するイェスパー・ボディルセン(b)とモーティン・ルンド(ds)がバックと聞けば見逃すわけにはいきません。
演奏は期待通りの素晴らしいものでした。
3人が登場した時は一見普通のサラリーマンみたいでジャズ・ミュージシャンという感じは全然しなかったです。
しかし静かに演奏が始まると雰囲気は一変、私はグイグイと引き込まれてしまいました。
曲目は「love for sale」、「all of you」、「you and night and music」、
「nature boy」、「milestones」、「when lights are low」。
3人のコンビネーションが抜群でまるで水を得た魚のように生き生きとしたプレイを展開してくれました。
アントゥネスの緩急を織り交ぜた自在で流麗なピアノは凄いとしか言いようがないです。
この思い切りのいい疾走感はライブならではのもの、CDだけだとこの凄さは伝わってきません。
ボディルセンの完璧なピッチとタイム感、切れのあるベース・プレイはよどみをまったく感じさせません。
ルンドのビート感、グルーブ感も申し分なくその多彩な表現力に驚きました。
ボディルセンとルンドの組み合わせはヨーロッパを代表するリズム・セクションになるのは間違いないでしょう。
この3人は三位一体で抜群のコンビネーション、品格を感じさせるトリオでした。

前半が終わるとピアニストが交代してヘンリック・グンデが登場、
こちらはスイング感溢れる力のあるプレイを聴かせてくれました。
曲目は「stella by starlight」、「autumn leaves」、「smile」、「comes love」、「bye bye blackbird」、etc。
ベースとドラムスがそのままでピアニストだけが変わるという企画も面白いです。
しかし、二人並べて聴いてしまうとプレイヤーには厳しいものがありますね。
持ち味が違うので比較してもしょうがないと思いながらもどうしても比較することになります。
リズム・セクションとの相性がありますが軍配は明らかにオリビエに上がりました。
コンビーネーションやバランスの差がハッキリと出てしまいます。
二組のトリオの醸し出す雰囲気がまったく違うんです。
アンコールは乗りのいい「oleo」だったか、ピアニストが入れ替わりながらの演奏は圧巻でした。
このコンサートは録音されていたようなのでいずれライブ盤として出るかも知れません。
これもまた楽しみなところです。


At The "Swinghall" Musashinoshi On 2008/10/05



■小川高生(as)、野本晴美(p)を聴いてきました。

小川さんは聴きたいと思いながらなぜか延び延びになっていました。
2005年に出たアルバム「澤田一範&小川高生/COOL BLUES」以来3年越しですね。
ようやく機会を得て聴くことができました。
チャーリー・パーカーのビ・バップの精神を踏襲しながら独自の表現力を磨いています。
自在のコントロールは凄い、全力投球のプレイを思う存分に堪能しました。
年齢を重ねて益々パワーアップしているような気がします。
バラードでは特に「Yesterdays」が素晴らしかったです。
圧巻だったのはセロニアス・モンクの「Well, You Needn't」でした。
最近はモンクの曲をよく取り上げているようですね。

曲目は相変わらず定かでないですが・・・。(順不同)

*Time To Smile
*They Say It's Wonderful
*People Time
*Kiss Me Again
*Billie's Bounce
*My Old Flame
*Now The Time
*A Night In Tunisia
etc

野本さんとのデュオは続けて2回見ました。
野本さんは売れっ子ピアニスト、多くのプレイヤーと共演して益々レベル・アップしています。
リズム感もいいし切れもあるのでこれからも精進を期待しています。


At The "Ko-Ko" Shibuya On 2008/09/27



■ウイリアム浩子(vo)、平岡雄一郎(g)、矢野伸行(b)を聴いてきました。

ジャズ・ヴォーカルの世界で知られている武田さんがオーナーの国立の「カフェ・シングス」です。
私が「ジャズ・ヴォーカルに疎くてヴォーカルは1割も聴かない」と話すと
武田さんから「ダメですよ、せめて2割か3割にアップして下さい」と言われました。
そのせいでしょうね、少しヴォーカルを聴く機会が増えました。
その「カフェ・シングス」の初ライブに行ってきました。
こけら落としに選ばれたのは武田さんが一押しのヴォーカリスト、ウイリアム浩子さんです。
武田さんは常々自分が好きなヴォーカリストのライブをやりたいと言っていました。
その願いが実現できて嬉しかったんじゃないかな。
会場は超満員、座る場所もないほどの盛況でした。

記憶も定かではないですが以下のような曲目だったと思います。(順不同)

*A Nightingale Sang In Berkeley Square
*All The Things You Are
*Bewitched
*Someday My Prince Will Come
*Stella by Starlight
*It's You or No One
*Love For Sale
*The Shadow Of Your Smile
etc

1曲目を歌いだした途端に「これは・・・いいなぁ〜」と思いました。
実にスムーズに自然に声が出てきました。
声がとてもきれいで高音部の伸びが素晴らしい。
コントロールが抜群なので特にバラードが良かったです。
これだけじっくりとバラードを聴かせる歌手は少ないんじゃなかな。
私にとっての白眉の1曲は「Bewitched」で、これはもう最高でした。
思わず頭の上で拍手してしまったほどです。
「A Nightingale Sang In Berkeley Square」も素晴らしかった。
ゆったりとした雰囲気で極上のジャズ・ボーカルを聴かせてもらいました。
ギターの平岡さんは上手いですね。
抜群のテクニックとリズム感で観客を沸かせていました。
矢野さんの落ち着いたベース・プレイも良かったです。

ウイリアム浩子さんは多分、時々は聴きたくなる歌手です。

At The "Sings" Kunitachi On 2008/09/15



バート・シーガー(p)、池長一美(ds)、吉野弘志(b)を聴いてきました。

このトリオは毎年1回この時期に関西地方を中心にコンサート・ツアーを続けています。
もう何年目になるんでしょうか。
私は2005年から見ているので4回目になりました。
バートのオリジナルが中心でスタンダードを間に入れての構成です。
1番の聴きどころは3人の密度の濃いコラボレーションにあります。
この日のトリオは絶好調、特にバートの乗りに乗った演奏は実に刺激的でした。
手元を見ていて気が付きましたが普通ピアニストは指先を立てていますね。
ところがバートは指の腹で弾いていました。
切れ味は鈍る代わりに微妙な強弱と流れが可能になっていると思いました。
美しいメロディ・ラインを持つオリジナルにはライブ・ハウスもシーン・・・。
まるでコンサート会場のように長く拍手が続きました。
むずかしい変拍子は当たり前、9拍子というのも演っていました。
2拍子が3つで6拍子、それに3拍子を足して9拍子だそうです。
何気なくやってしまう池長、吉野のコンビも凄いです。
フリーな展開を要素に入れたインター・プレイはスリル満点、好バランスで音楽性も高い。
1年に一度ですが進化するトリオを聴くのが楽しみです。


At The "Sometime" Kichijoji On 2008/09/12



■浅川太平・トリオを聴いてきました。
浅川太平(p)、鉄井孝司(b)、鈴木カオル(ds)

約30年ぶりに新宿ピットインの昼の部に行ってきました。
ここを登竜門にして多くの若いジャズメンが羽ばたいていきました。
実に貴重な場所を提供し続けている思います。

見たのは浅川太平・トリオです。
ウィーク・デイの昼間にもかかわらずかなりの観客が入っていました。
じっと若手の成長を見守っているファンが多いのは心強いです。
浅川さんは期待のピアニスト、すでにかなりの人気を集めています。
日本のジャズ・ファンの目敏さはさすがです。
演目は昨年発売された初リーダー・アルバムを中心にしたオリジナルです。
浅川さんは真摯なジャズマン、どういう経緯とイメージで作曲したかを詳しく話してくれました。
彼は独自の音楽観を持っていてそれをメーセージとして我々に伝えています。
こういう若手ピアニストは貴重ですね。
CDの1曲目を聴いて驚いた「PULSER」も演奏してくれました。
ブルースだそうですが超高速フレーズはやはり凄いです。
その表現を可能にするテクニックを目の当たりにしました。
リズムも多彩で凝った演奏を聴かせてくれました。
安定したベース・ラインを支える鉄井孝司さんはこのトリオのキーマン、
繊細なパルス・リズムを繰りだす鈴木カオルさんの好演も見逃せません。
トリオとは別に浅川さんのソロ・ピアノもかなり面白いのではと思いました。


At The "Pit Inn" Shinjuku On 2008/08/29



鈴木良雄カルテットを聴いてきました。
鈴木 良雄(b)、井上 信平(fl)、ハクエイ キム(p)、大村 亘(ds)

このメンバーは初顔合わせのようで興味がありました。
鈴木さん、井上さんのベテラン2人に伯英、大村の若手2人が挑戦する構図。
初顔合わせというのはスリルがありますね。
どんな組み合わせの妙が出てくるか、見当がつきません。
若手の二人は共にオーストラリアで勉強していたとのことです。
伯英さんの師匠はオーストラリアを代表するジャズ・ピアニストのマイク・ノックだそうです。
マイク・ノックのフレーズはユニークで斬新、私も時々聴いていました。
道理で伯英さんのソロも一筋縄ではいかないはずだと思いました。
大村さんのドラムスは実に趣味がいいです。
寄り添うようにピタリと合わせてくるので共演者は気持いいでしょうね。
オリジナルとスタンダードを織り交ぜて聴かせてくれました。
オリジナルの手探り状態はやむを得ません。
今回の聴きどころはジャズ・スタンダードにあると思っていました。
マイルスの「SOLAR」は背筋がゾクゾクするほど良かったです。
4人の醸し出すグルーブ感はもう最高、グイグイと押してくる感じ、これが白眉の一曲で素晴らしかった。

伯英さんはいいですよ。
注目のピアニストは5人になりました。
今年になってから石田幹雄、伯英、浅川太平、以前から注目の海野雅威、丈青。
先日、ライブハウスで話したジャズ・ファンから荒武裕一朗という名前を聞きました。
本田竹広さんの弟子ということで要注目株だそうです。
楽しみなピアニストが目尻押しです。


At The "Sometime" Kichijoji On 2008/08/04



■鈴木道子(vo)&渥美幸裕(g)・トリオを聴いてきました。
鈴木道子(vo)、渥美幸裕(g)、鉄井孝司(b)、小森耕造(ds)

鈴木道子(vo)さんと鉄井孝司(b)さん。
お気に入りのヴォーカリストとベーシストの共演なんて一瞬信じられませんでした。
偶然というより不思議な因縁を感じました。
それで何をおいても見に行かねばと思っていました。
道子さんもいつもとは違う感じで楽しそうでしたね。
ジャズはジャズとして、もっとソウルフルに歌いたいと思っていたんでしょうね。
選曲もよりソウルフル、アビー・リンカーン(vo)を2曲取り上げていたのが印象に残りました。
共演してまだ間がないので手探りな状態も感じられましたが慣れてくれば魅力的な組み合わせになると思いました。
若手に囲まれて気分も上々、アンコールも2曲も歌ってくれてサービス満点。
道子さんの新たなる挑戦に期待したいです。

渥美幸裕さんは初見、ジャズ・ギターとアコースティック・ギターを持ち替えてのプレイ。
ファーストでは「オーバー・ザ・レインボー」、セカンドでは「サマー・タイム」の超スタンダード・ナンバーを聴かせてくれました。
ジャズを中心にしてソウルやR&B、ロックやファンクがクロス・オーバーするところにいるミュージシャン
にも多くの逸材が隠れていますね。渥美幸裕さんにもそんな印象を持ちました。
必ずや頭角を現してくるのは間違いのないところです。
鉄井さんの幅広い音楽性にも感心しました。
類家心平カルテットの強烈なプレイ、今回のソウル、R&Bでの卓越したリズム感。
浅川太平・トリオも素晴らしかった。

小森耕造(ds)さんもクロスオーバー・ミュージシャンの1人。
独特のリズム感の持ち主でユニークなドラムスを聴かせてくれました。


At The "KAMOME" Yokohama On 2008/07/26



■スティーブ・キューン・トリオを聴いてきました。
スティーブ・キューン(p)、エディ・ゴメス(b)、ビリー・ドラモンド(ds)

メンバー的にも重厚で落ち着いたピアノ・トリオです。
いつもならベーシストはデヴィッド・フィンクですが今回はエディ・ゴメスです
最大の聴きどころはこのゴメスとのコラボレーションになると思っていました。
うねるように響く強力なゴメスのベースをキューンがどう迎え撃つのか。
たしかにゴメスは多弁でしたがキューンがガチッと受け止めていたので、横綱同士のぶつかり合いは互角でしたね。
間に入ったビリー・ドラモンドが実に良かったです。
いつの感じることですがドラモンドは慌てず騒がずのとても趣味のいいドラムを聴かせてくれます。
まさしく確実、堅実なドラマーというのがピッタリな感じ。
曲目はキューンのオリジナル2曲、ゴメスのアルコによる父に捧げた印象的なバラード、
最新作のクラシックのジャズ化1曲、ファーストの終わりはお決まりの「ロータス・ブロッサム」でした。
ケニー・ドーハム(tp)のこの曲はよほど好きなんでしょうね。
日本でも人気があるということで来日時の公演では必ず聴かせてくれます。
知っている曲はここ1曲だけだったけれど満足です。
今回は次の予定があってファースト・ステージだけで失礼しました。
当然ながらセカンドのほうがずっと良かったそうです。


At The "Swinghall" Musashinoshi On 2008/07/26



類家心平カルテットを聴いてきました。
類家心平(tp)、伯英(p)、鉄井孝司(b)、吉岡大輔(ds)

これは実に魅力のあるライブだったです。
自分達のサウンドを真摯に追及している意欲が伝わってきました。
オリジナルが中心だと思いますが全体の構成が組曲風になっていました。
1曲づつの時間が長いですがその中に静と動との起伏があります。
まるで会話を楽しんでいるようなメンバー同士のインタープレイが最大の聴きものです。
これは一朝一夕には出ない雰囲気なのでかなり馴染んでいる証拠だと思いました。
グループ全体で音がうねりを持って押し寄せてくる感じです。
同時にピーンと張り詰めた緊張感があって、単純に乗れるという感じではありません。
もちろん、パワフルでエネルギッシュな面も持ち合わせています。
一言で言えば聴かせるカルテット、この迫力は是非体感して欲しいですね。
類家さんのクールで切れのあるトランペットの響き、伯英さんの美しくも疾走するピアノはただ凄い、
自在な展開を見せる吉岡さんのパワー溢れるドラムス、そんな中で私が驚いたのは鉄井さんの存在です。
こんなベーシストがいたのかという感じ・・・このグループをガチッと支えています。
テクニックはもちろんのこと、リズム感抜群で歌心がありました。
これだけ主張があるグループは珍しいのではないでしょうか。

面白かったのは各人のソロが終わっても拍手が起きなかったことです。
というか、こちらにしてみればソロに連続性があるので拍手したくてもタイミングがつかめないんですよ。
繋がりを持ったまま間隔を空けずに次のプレイヤーのソロに突入してしまいます。
こんな形のジャズ・ライブは珍しいですね。これだけでも十分に個性的だと思いました。
もちろん、曲が終われば拍手喝さいは言うまでもありません。


At The "KAMOME" Yokohama On 2008/07/14



■河原秀夫&ペンタグラムを聴いてきました。
河原秀夫(b)、井上信平(fl)、竹中俊二(g)、福田重男(p)、セシル・モンロー(ds)、ブーフーウー(cho)

河原さんが率いるペンタグラムはファンキーなグルーブ感が最大の魅力です。
曲目はオリジナルとスタンダードが半々くらいの構成です。
「ソー・ホワット」、「マイ・フェバリット・シングス」、「アイ・フィール・グッド」、「ブラック・バード」等々。
コーラスをフューチャーしたものでは「チャタヌガ・チュー・チュー」、「ブルー・ムーン」でした。
久し振りに聴いた信平さんのフルートは貫禄十分で良かったです。
竹中俊二さんの超絶テクのエレキ・ギターも凄いよ。
ポップな感覚を持つ福田さんのピアノ、セシルのドラムも生き生きと躍動していました。
河原さんはヒップ・ホップ・ダンスを習っているようで達者なダンスも披露してくれました。
新しいものに挑戦する姿勢は大したものです。
私は「うーむ、これは凄いなぁー」と唸ってしまいましたよ。
見て聴いて楽しめるエンタテイメント溢れるグループです。

At The "Sometime" Kichijoji On 2008/07/07



土濃塚隆一郎・カルテットを聴いてきました。
土濃塚隆一郎(flh)、野本晴美(p)、河上修(b)、宇山満隆(ds)

今年一番のライブを聴きました。
というか、これほど熱気に溢れるジャズ・ライブを聴いたのは初めてです。
スリル満点、まさに一期一会のジャズの醍醐味を味わいました。
サド・ジョーンズの「ア・チャイルド・イズ・ボーン」、ウディ・ショウの「スウィート・ラブ・オブ・マイン」、
フレディ・ハバードの「レッド・クレイ」と「ジブラルタル」、ボッサの名曲、ジョビンの「ハウ・インセンシティブ」、
ミュートを使ったバラード、マクダニエルズの名曲、「フィール・ライク・メイキン・ラブ」など、
オリジナルを交えて聴かせてくれました。

なにしろ河上さんと宇山さんのコンビネーションが抜群、これほど息が合ったリズム・セクションも珍しいです。
ベースとドラムが融合するとこれほどのパワーが生まれるのか。
二人のグイグイと繰り出す強烈なグルーブ感、ドライブ感が凄かったです。
身体にビンビンと響いてきて熱くなりました。
ベテランの河上さんのユニークなキャラクターは愛すべきものです。
遊び心があってリラックスさせる潤滑油、そのエンタテイナー振りに拍手が鳴り止まないほどでした。
宇山さんのオーソドックスなドラミングは実にいいですね。スナップがビシッと効いているので安定感十分。
加えてそのアグレッシブなプレイは魅力がいっぱいです。

その二人に触発されて土濃塚さんのフリューゲル・ホルンが疾走し、炸裂しました。
エネルギッシュでパワフル、全力投球の演奏スタイルはいつも変わりません。
これには本当に感心させられます。
相変わらずのよく鳴るラッパ、進化する土濃塚隆一郎を聴かせてもらいました。
一音、一音をより大事にしてきた感じがしました。
ロングトーンが良くなった、やたらに音数を吹かなくなって音の終わりに気持が入っています。

野本さんは超売れっ子ピアニストの一人、しなやかなタッチと流れるようなフレージングは素晴らしい。
この組み合わせは珍しく、このメンバーでやるのは初めてじゃないかと思います。
野本さんも実に楽しかったんじゃないかな。
それほど4人のバランスが良く、迫力満点、ピッタリと息が合ってました。

鳴り止まぬ拍手の中、精魂傾けた演奏で体力の限界、アンコールなしというのも十分にうなずけるものでした。

一晩寝てもその興奮は冷めやらず、それほどに気合の入ったライブでした。
4人のプレイヤーのいずれもが絶好調なんて時はそれほどありません。
一瞬に生きるジャズの魅力を満喫しました。
「う〜ん、これは良かった」・・・マスター、これの録音は録ってあるの?


At The "No Trunks" Kunitachi On 2008/06/27



南 博・トリオを聴いてきました。
南 博(p)、鈴木 正人(b)、芳垣 安洋(ds)

南 博さんの対話型ピアノ・トリオを堪能してきました。
現在、もっとも脂の乗っているピアニストじゃないかと思います。
やっぱり、人気がありますね、ライブ・ハウスは超満員。
南さんと芳恒さんのコラボレーションは良かったです。
南さんのリリカルでユニークな展開は刺激的、芳恒さんはハイレベル、好センスなドラマーで
この二人の掛け合いも聴きどころです。
間に入った鈴木さんがきっちりとキープしているので安定感があります。
選曲は主にこの5月に発売されたばかりのニュー・アルバムからのものです。
「Like Someone In Love」、「How Insensitive」、「Misterioso]、「My Foolish Heart」、
「Solar」、「Chelsea Bridge}など、フリーな展開のピアノ・トリオも1曲、
南さんのおしゃべりも面白かったです。
「白鍵と黒鍵の間に」という本を出版したそうで、そのプロローグの部分を弾き語りで聞かせてくれました。
銀座の修行時代の話・・・会場は笑いに包まれて、プレイヤーと観客の距離が一気に縮まりました。

私は南さんの初リーダー・アルバムを持っています。



南 博(p)、水谷浩章(b)、ツノ犬(ds)
竹野昌邦(sax)
1998/Media Rings/


At The "Sometime" Kichijoji On 2008/06/23



竹内 直カルテットを聴いてきました。
竹内 直(ts,fl)、清水 絵理子(p)、井上 陽介(b)、江藤 良人(ds)

エネルギッシュでパワフルな演奏を聴きたくて出かけました。
竹内さんの演奏には大きな揺れを感じます。
これのルーツは何なんだろうと思いましたが民謡を聴いて納得しました。
日本民謡のリズム感が底辺に流れていてそれが身体を自然に揺らせるのかもしれません。
高速連続フレーズを可能にするブレス・コントロールは迫力満点。
竹内さんのコルトレーン・ライクのプレイ、江藤さんのエルヴィン・ジョーンズばりの強力なドラムス。
井上陽介さんの超絶プレイも驚きました。
超売れっ子の清水絵理子さんはリズム感抜群でしなやか、ちょうど潤滑油の役割を果たしています。
曲目は去年出したニュー・アルバムからの選曲が多いです。
レギュラー・カルテットなのでコンビネーションも良く、間合いもバッチリ決まっていました。
「I Love You」、「Stella By Starlight」、「Like Someone In Love」等々、
特に富山民謡の「Kokiriko」は圧巻。
「窓のサンサはデデレコデン はれのサンサもデデレコデン」の大合唱と手拍子で盛り上がりました。


At The "Sometime" Kichijoji On 2008/06/16



渡辺 文男カルテットを聴いてきました。
渡辺 文男(ds)、高橋 知己(ts)、元岡 一英(p)、小杉 敏(b)

このカルテットはバップ・フィーリングがいっぱいで気持ち良かったです。
選曲もコルトレーン、モンク、オーネット、サド・ジョーンズなど、ひとひねり効いていて面白かった。
前回は渡辺さんが急病で流れたらしいですが、今回は渡辺さんも元気な姿をみせてくれました。
ピアノ・トリオの3人は付き合いも長いようでコンビネーションも抜群です。
高橋さんの野太いテナー音、元岡さんの絶妙なピアノ・タッチはたまりませんねぇー。
小杉さんのよくスイングする強靭なベース、渡辺さんの元気溌剌としたプレイと見どころ聴きどころがいっぱいです。
なにより、ライブ・ハウスのプレイヤーと観客の一体感が最高でした。
この雰囲気はなかなか出ないんじゃなかと思います。
多分、私と同年代、あちこちから声がかかって、みんなジャズが好きなんだなぁーと思いましたよ。
モダン・ジャズの王道をいく心から楽しめる熟年コンボでした。
今度は文男さんの歌もじっくり聴きたいね。
久し振りの横濱だったけど、また必ず行きたいです


At The "AiREGiN" Yokohama On 2008/06/10



杉本 喜代志(g)×平井 庸一(g)のデュオを聴いてきました。
ゲスト井谷 享志(per)

杉本喜代志さんは久し振りなので期待を持って出かけました。
この二人の組み合わせは対照的なギタリストで面白かったです。
杉本さんはグラント・グリーンを思わせる超グルービーなプレイ、音数は少なくてもさすがにその存在感は十分です。
平井さんはガボール・ザボのジプシー・ギター、ジョー・パスかバーニー・ケッセルか。
超絶テクニックの持ち主です。9月にはマシュマロ・レーベルから新譜が出るそうです。
初顔合わせなのでスタンダードが中心、ラウンド・ミッドナイト、サテンドール、ボディ&ソウル、イパネマの娘など
2ステージ目には井谷享志さん(per)のゲスト出演があって盛り上がりました。
井谷さんも懐が深いプレイヤーと思ったので要注目です。
杉本さんは腱鞘炎だそうで現在治療中だと言っていましたが早く治るといいですね。
良くなったら自己のコンボを結成したいと意欲満々でした。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2008/06/07



ロバータ・ガンバリーニ&タミール・ヘルデルマン・トリオを聴いてきました。

タミール・ヘルデルマン(p)、ニール・スウェインソン(b)、ジョー・ラ・バーベラ(ds)の3人は
ネクタイをして端正な服装で登場、控え目な大人のトリオでロバータを十二分に引き立てていました。
ボーカル・ライブは時にバックの方が目立つ時があるのでこれは好感がもてるものです。
このライブのもう一つの目的にドラムのジョー・ラ・バーベラを見るという目的がありました。
さすがに手慣れたもので安定感のある演奏を聴かせてくれました。

2ステージともヴォーカルのお決まり、ピアノ・トリオで1曲演奏してから主役の登場です。
ロバータは薄紫というか薄いピンクというか、淡いパンタロン・スーツで登場。
「プア・バタフライ」、「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ストリート」、「イージー・トゥー・ラブ」、
「ラッシュ・ライフ」、「ボデイ・アンド・ソウル」、「ラバー・カムバック・トゥー・ミー」、
「ジャスト・スクイーズ・ミー」、「イッツ・ドント・ミーン・ア・シング」
「エスターテ」、「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」、などを熱唱。
選曲の中心になるのは彼女の2枚のCD作品の中で歌われているものです。

特筆すべきはジャズ・フィーリングが抜群なのでスキャットがまた素晴らしいことです。
元々管楽器を勉強していたようで、そうでなければこれほどのフィーリングは出ません。
ラストはイタリア語で歌う「エスターテ」、これが抜群の雰囲気で最高です。
マイクを手で覆って口で演奏するトランペットの擬音がまた素晴らしかった。
まるでトランペットのソロを聴いているようで驚かされました。
これには観客も唖然としてシーン、終わった後は大興奮の拍手喝さいです。
アンコールの大拍手、スタンディングオベーションの観客もかなりいました。
アンコール曲は「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」、これまた自在の展開で楽しませてくれました。
ロバータ・ガンバリーニは聞きしに優るボーカリストでした。



ロバータのサイン入りジャケット。



ROBERTA GAMBARINI & HANK JONES / LUSH LIFE
roberta gambarini(vo), hank jones(p),
george mraz(b), willie jones V(ds)
2005/55 records/


At The "Swinghall" Musashinoshi On 2008/05/31



辛島 文雄・トリオを聴いてきました。
辛島 文雄(p)、川村 竜(b)、高橋 信之介(ds)
ゲスト:池田篤(as、ts)

注目の若手を従えた魅力的なトリオです。
特に近年急速に頭角を現してきた高橋信之介さんにも引かれました。
2ステージ目からは池田篤(sax)さんがゲスト出演。
やっぱり辛島さんは素晴らしいです。
強烈なドライブ感と抜群のスイング感は他の追随を許しません。
特筆すべきはスロー・バラードの演奏、バラードでも自然に身体が揺れてくる感じです。
流されない、柔でないがっちりとしたピアノはたまりません。
さすがにファンも多くてライブハウスは満員盛況、年配や女性ファンも多いです。
川村さん、高橋さんにも十分なソロ・スペースが空けられていて二人の若さ溢れるプレイも聴きどころ。
辛島さんと高橋さんの掛け合い、コンビネーションも面白かったです。

翌日から2ヶ月にわたる全国ツアーに出かけるようで会場は壮行会の様相を呈していました。
「A列車で行こう」では観客から自然に手拍子が起こったりして多いに盛り上がりました。

辛島さんとちょっと話をしましたが全国ツアーは青森から石垣島まで。
もう10年以上もこんな生活を続けていると言っていました。
それにしてもそれを続けられる辛島ファンが全国にいるということですね。
全国のみなさん、この辛島文雄・トリオも見逃せません。
近くに行ったら是非聴きに行って下さい。

両隣に座っていた方が私と同年代のジャズ・ファン。
一人は辛島さんの追っかけ、もう一人は高橋さんの追っかけだそうです。
「年寄りの追っかけで申し訳ないなあー」と笑っていました。
こういうところで同好の士と出会って話をするのは楽しいものです。
山口真文(ts)さんや宮ノ上貴昭(g)さんの話題も出ました。


At The "Sometime" Kichijoji On 2008/05/26



■石田幹雄(p)さんのソロ・ライブを聴いてきました。
懇意のライブ・ハウスのマスターが一押しの石田幹雄(p)さんのソロ・ライブに行ってきました。
今年は年初から色々ありまして、これが今年の最初のライブになりました。

1時間弾きっぱなしで汗びっしょり、格闘技の如くのピアノを聴かせてくれました。
まずはフリージャズに通じるエネルギッシュでパワフルな演奏に驚かされました。
しかし、激しければ激しいほどその反対側にある”静”の部分が強調されることになります。
石田さんの魅力はその二面性、落差、コントラストにあると思いました。
「動と静」、「熱と冷」が最大の魅力でしょう。
ちょっと話をした時、誰か特別なピアニストに影響を受けたわけではないそうですが、
ビル・エバンスはよく聴いたと言っていました。
新作のCDではレニー・トリスターノも取り上げられています。
現在26歳、これからが楽しみなピアニストの一人です。
海野雅威さん、佐藤丈青さん、石田幹雄さんはこれからも注目していきたいと思っています。


At The "No Trunks" Kunitachi On 2008/04/14




[ライブ・レポート]
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