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(420) EDEN ATWOOD / TURN ME LOOSE
eden atwood(vo)
david morgenroth(p,arr), chris colangelo(b), joe labarbera(ds)
2009//
イーデン・アトウッド(vo)の新譜です。
名前は知っていたので1枚くらい聴いたことがあると思っていましたが初見でした。
イーデンは喉の腫瘍の手術をしたようで声質や歌い方が以前と違ったそうです。
たしかに美声とはいえず、いがらっぽい感じになったと思うけど私はこちらが好みです。
オリジナル1曲を含む選曲もなかなか凝っていて楽しめました。
すんなりと入ってくるわけではないけど心に沁み入る内容はかなり濃いです。
カントリーの香りもありました。
特にじっくりと歌い上げたスロー・バラードが素晴らしくてジーンときました。
ベスト・トラックはバースから入る(12)「I'LL CLOSE MY EYES」です。
これだけゆったりとしたテンポは珍しいので新味、イーデンの実力の証明にもなりました。
デューク・エリントンの(10)「DON'T GET AROUND MUCH ANYMORE」もいいです。
今年の11月〜12月にかけて日本公演が予定されているようです。
良さそうなので私も見に行くつもりでいます。
(中間系)
(419) COREY WILKES & ABSTRAKT PULSE
/ CRIES FROM THE GHETTO
corey wilkes(tp,flh), kevin nabors(ts), scott hesse(g),
junius paul(b), isaiah spencer(ds), jumaane taylor(tap)
2009/PI Recordings/
コーリー・ウィルクス(tp)は初見、ジェームス・カーターのライブ(ライブ・レポート参照)で出会いました。
これが実にクールな演奏で印象に残ったので会場でこのCDを購入したんです。
プロフィールを見ると1979年生まれの30歳の若手トランペッター。
レスター・ボウイ亡き後のアート・アンサンブル・オブ・シカゴで吹いているそうです。
スタイルはマイルス・デイビスとレスター・ボウイの中間をいく感じだと思いました。
うるさくないし、音数は少なく安定感があっていいんだな、これが。
(5)「RAIN」のバラードを聴くとその実力が分かります。
さて、今作のメンバーはまったく知らない人ばかりでしたが刺激的で新鮮でしたよ。
”ABSTRAKT”って”ABSTRACT”じゃないけどシャレなのかな。
こういったリズム&ブルース、ソウル&ファンキーでフリーに片足を突っ込んだ演奏は久し振りです。
以前はこういった演奏もよく聴いたのですが最近はすっかりご無沙汰していました。
なんか、いつの間にか軟弱になってしまったようです・・・年だから仕方ないけどね。
かなりの刺激を受けたのでちょっと濃いジャズも聴きたい気分になってきました。
(まじめ系)
(418) 渋谷毅 & 松風鉱一 / BLUE BLACKの階段
渋谷毅(P)、松風鉱一(as, ts ,bs, fl, bcl,bamboo sax)、
2009/CARCO/
先日、ライブ(ライブ・レポート参照)を見た時にこのアルバムを購入しました。
全曲、松風さんのオリジナル。
渋谷&松風のデュオは超個性的で相性バッチリ・・・・・もうね、文句なしに素晴らしいです。
実はこの二人の魅力はライブでなければ到底味わうことはできないと思っていたんです。
でも、これは間違っていました。
二人の濃密で深遠なロマンチックな世界はこのCDでも十二分に味わうことができます。
涙が出そうになりました。・・・・・実際、言葉が浮かばないほどいいんです。
根っこには演歌の心が・・・日本人で良かった・・・。
(中間系)
(417) HIROMI KASUGA TRIO & QUINTET / NEW YORK CALLIN'
春日宏美(p), marco panascia(b), pete vannostrand(ds)
joe magnarelli(tp,flh)(1,3,6,9), mike dirubbo(as,ss)(3,9,6)
2008/Hiromi Kasuga/
春日宏美(p)さんはニューヨーク在住、現在2009年日本・ツアーが行なわれています。
先日、その初日のトリオのライブに行ってきました。
共演メンバーは安東昇(b)さんと池長一美(ds)さんという興味深いものでした。
スタンダードとオリジナルをまじえてのライブでしたが、正直、ちょっと物足りない感じがしました。
それはなぜか?
初日の上、まだ題名の付いていない新曲も何曲が演奏されたので手探り状態にあったんです。
いきなりの新曲はきついのではと思いましたがこのCDを聴いて納得しました。
オリジナルが7曲にジャズ・スタンダードが3曲の構成です。
春日さんの最大の魅力はコンポーザー&アレンジャーの才能だと思います。
CDでどんなスタンダードを演奏しているかによってそのプレイヤーの音楽性がある程度つかめます。
ここではチャーリー・パーカー(as)とバド・パウエル(p)のビ・バップの立役者の二人と
ヘンリー・マンシーニ(com,arr,p)の映画音楽が演奏されていました。
つまり、春日さんの中にはビ・バップと美しい映画シーンがあるわけですね。
自己のトリオにジョー・マグナレリ(tp)とマイク・ディルボ(as)がゲストで参加しています。
良かったのは(3)、(6)、(9)の2管編成のハーモニーとアンサンブルです。
特に(9)「PARK AVENUE SOUTH」は親しみやすいテーマ、(5)「クレオパトラの夢」の流れも楽しかった。
中々良く出来ている作品だと思うし、作曲とアレンジの上手さと相まって心に響くものがありました。
(くつろぎ系)
(416) KENT LANGTHALER SEVEN / HEAD IN
oliver kent(p), uli langthaler(b), mario gonzi(ds),
jorg engels(tp), thomas kugi(bs), johannes enders(ts), johannes herrlich(tb)
2009/ATS Records/
ドイツ系オリバー・ケント(p)とユリ・ラングザラー(b)の双頭セプテットのアルバムです。
オリジナルが5曲にジョー・ザビヌル、ビリー・ストレイホーン、オスカー・ペティフォードが取り上げられています。
4管編成の演奏はめったに聴くことはないのでしごく新鮮な感じがしました。
ここではトランペットが効果的な役割、軽快でサウンドがぐっと引き締まります。
以前、ケントの作品を買ったことがありますがその時もヨハネス・エンダース(ts)が共演していました。
4管ですが管はあくまで脇役で明らかに主役はピアノ・トリオだと思います。
分厚いアンサンブルをバックにオリバー・ケントのピアノが疾走するという趣向です。
今作はなんといってもケントのピアノが光る一枚です。
ベスト・トラックはザビヌルの(4)「HIPPADELHIA」か。
(中間系)
(415) YUTAKA SHIINA QUARTET / WALKIN' IN THE CLOUDS
椎名豊(p),
rodney whitaker(b), 広瀬潤次(ds), tim armacost(ts),
本川悠平(b)(4)
2008/Scene-a Music/SCENE001
今週は偶然ながら力のあるピアニストを2枚選びました。
椎名豊さんはゆったりとして雄大なピアノ・プレイが最大の魅力です。
ルーツはやはりマッコイ・タイナー(p)だと思います。
今作は自身のレーベルの第一作になるものです。
その思い入れも気合も十二分にそそぎ込んだ意欲的なアルバムに仕上がりました。
椎名さんにとってこれが8年ぶりの新作なんてちょっと信じられない思いです。
アメリカに乗り込んでの録音、ロドニー・ウィテカー(b)とティム・アマコスト(ts)を起用しています。
広瀬潤次(ds)さんも元気一杯でその張り切りぶりが伝わってきました。
収録曲の8曲は少ないので1曲、1曲が長く、その分思い切ったソロ・スペースが取れました。
全体を通してブンブンと黒くてまとわりつくような感覚のロドニーの存在感が光ります。
表題曲の(3)「WALKIN' IN THE CLOUDS」は親しみやすい印象的なテーマを持っています。
(4)「BITTER SWEET」での二人のベーシストの競演も面白かったです。
カルテットで演奏された(6)「TUCK-A-WAY」はアルバム中もっともスリリングな展開になりました。
イマジネーション溢れるプレイは今作のベスト・トラックか。
ボーナス・トラックとして付け加えられた(8)「UBS」も聴き応えがありました。
打楽器風なピアノ・タッチが強烈でこちらをベストに選ぶ人も多いでしょうね。
(中間系)
(414) ERIC REED TRIO / STAND !
eric reed(p), rodney whitaker(b), willie jones V(ds)
2009/WJ3 RECORDS/
久し振りにこれでもか、これでもかと力で押してくるピアノ・トリオに出会いました。
このエリック・リード(p)の新作は文句なしにいいです。
テーマは”神に捧ぐ”、全曲彼自身のオリジナルで渾身のアルバムだと思います。
(1)「STAND !」や(2)「PRAYER」はマッコイ・タイナー(p)を彷彿とさせるスケールの大きさがあります。
エリックのルーツはここにあったのかとの思いを強くしました。
(4)「GIT'CHA SHOUT ON」のスピード感、(5)GRATITUDE」の美しさにはグイと引きこまれました。
(10)「EVERYTHING THAT HAS BREATH」の心地良いノリもお気に入りです。
現在のエリックの音楽性が全て網羅されているといっても過言ではないと思います。
いかにもアメリカ的でゴスペル、ブルース&ソウルが根底にあるし、最高傑作になるかもしれません。
ロドニー・ウィテカーの黒くベタベタとまとわりつくようなベースもたまりません。
プロデューサーはウィリー・ジョーンズV(ds)でエリック・リードの魅力を引き出しました。
力強く、意欲的で刺激的なピアノ・トリオ作品になっています。
(中間系)
(413) KAZUHIKO KONDO QUARTET / SUBSTANCE
近藤和彦(as,ss)、
今泉正明(p), 上村信(b)、大坂昌彦(ds)、
小曽根真(P)(2,5,9,11)、岡崎好朗(tp)(6)
2009/55Records/FNCJ-5532
近藤和彦(as,ss)さんの初リーダー・アルバムが出ました。
近藤さんはよく知られたサックス奏者でそれこそあちこちのバンドのメンバーに名前が連なっています。
すでに何枚か出していると思っていたのでこれが初リーダー・アルバムと聞いて意外な感じがしました。
プロデュースは小曽根真(p)さんでここでも4曲に参加しています。
先日、横浜までCD発売記念ライブ(ライブ・レポート参照)に出かけたけど良かったです。
ライブ会場で購入したので近藤さんにサインをお願いしました。
メンバーも魅力的、曲目は全て彼自身のオリジナルで固めて意欲的な作品です。
何曲かスタンダードを入れるかどうか、迷ったと思いますがここにこだわりを感じました。
曲想も幅広くリズムも変化に富んでいるので現在の近藤さんの全貌を十分に伝えていると思います。
音楽性も豊かで作曲能力も非凡です。
ライブでもそうだったけどフラメンコの(5)「EL CANTARRO DE MALLORCA」が新鮮でした。
訥々とした話しっぷりでライブ会場の笑いを誘ったのは(4)「UNDER THE DIM LIGHT」のことでした。
これを聴いたある人から「平成のレフト・アローン」(↓注参照)との感想を言われたそうです。
これには共演者も苦笑、似ているので私も「なるほどなぁー」と思いました。
(2)「FROM DOCTONE」は大好きだった故ケニー・カークランド(p)に捧げた曲。
それこそ今泉正明(p)さんはピッタリの存在でしょうね。
1曲だけ岡崎好朗(tp)さんが(6)「UNEXPECTED」に参加しています。
ニューヨークの爆破テロの印象を綴ったもので最初からトランペットを意識して書いた曲だそうです。
今作品はアップ・テンポのノリもバラードの表現力も自在で近藤さんの実力がフルに発揮されています。
バックのメンバーは小曽根さんを始めとして今泉さん、上村信(b)さん、大坂昌彦(ds)です。
今泉さんのリズム感溢れる力強いタッチ、上村さんのベースは堅実で安定感十分、
大坂さんのフレキシブルでメリハリのあるドラムスはこのグループの充実度を物語っています。
注:レフト・アローン
マル・ウォルドロン(p)が不世出の歌手ビリー・ホリデイに捧げた名曲。
ジャッキー・マクリーン(as)の切ないまでのアルト・プレイに泣けます。
(中間系)
(412) MISHA PIATIGORSKY TRIO / 17 ROOMS
misha piatigorsky(p), boris kozlov(b), ari hoenig(ds)
2009/MISHAMUSIC/
ミシャ・ピエティグルスキー(p)は「ドラ流目立たないけどいいアルバム」の(386)で紹介しました。
それは1997年の録音だったのでもう12年前になります。
その時は元気溌剌だったけど、現在はどんな感じになっているのか、興味深く聴いてみました。
2009年1月録音、今作も自身のレーベルなので自主制作盤です。
やっぱり12年間は長いので技術的にはもちろんのこと精神面での落ち着きが顕著です。
全10曲はじっくりと考えて取り組んだ意欲的な作品だと思います。
ボリス・コズロフ(b)とアリ・ホーニグ(ds)のメンバーも魅力です。
マーチ、バロック、フラメンコ、バラード、ワルツ、ブルース、トルコ風あり。
音楽性もリズムも実に多彩、色々な表情を見せてくれたので楽しめました。
展開が面白かったのはフラメンコ調の(3)「BLACKFIRE」で一番の長丁場の8分です。
私的には美しいメロディ・ラインを持つ曲が良かったです。
そういう意味で(4)、(5)からウェイン・ショーターの(6)への流れが気に入りました。
一枚を飽きずに聴き通せるけど反面色々やり過ぎてややまとまりを欠いた感もあります。
(中間系)
(411) SATOSHI KOSUGI QUINTET / BASS ON TIMES
小杉敏(b)、
岡崎好朗(tp), 橋本信二g)、元岡一英(p)、江藤良人(ds)、
2009/Pax Box Press/PBP-0001
ベテラン・ベーシストの小杉敏さんの初リーダー・アルバムが出ました。
アルバムを出すと聞いた時にまずはメンバー構成に興味を持ちました。
小杉さん、橋本さん、元岡さんの団塊の世代に30代でバリバリの岡崎さん、江藤さんの組み合わせです。
収録曲は上記の通り、 まさに満を持したアルバムで選曲も実によく考えられています。
こだわりが感じられる幅広い選曲は小杉さんの音楽性を余すところなく伝えていると思います。
セロニアス・モンクやマイルス・デイビス、ビートルズも世代的には外せないところです。
(3)「No Moon At All」は憎い選曲。
唯一のオリジナル(7)「Little Journey」は盟友の橋本信二さんの作曲です。
(8)「There Gose My Heart」では小杉さんの口笛によるテーマが聴けました。
ラストのホレス・シルバーの(10)「Filthy McNasty」はドンピシャの選曲だと思います。
ノリのいいファンキー&グルービーな演奏はこのグループの大きな特徴になっています。
ただ残念だったのはボサノバがなかったことかな。
ライブではジョビンのボサノバを元岡さんとのデュオで聴かせてくれました。
これがすごく印象的だったので外れたのは惜しかったです。
重量級メンバーによる黒い演奏・・・このグループの真髄はライブ(ライブ・レポート参照)にあるかもしれませんね。
最後にもう一つ、このCDの装丁が素晴らしいんです。
こんなに丁寧に作られたCDアルバムは見たことがありません。
実際に手に取ってみたら驚くと思いますよ。
この作品は新レーベル「PAX BOX PRESS」の初アルバムです。
レーベルのHPはこちらからどうぞ・・・「Pax Box Press]
(中間系)
(410) MAGNUS HJORTH TRIO / OLD NEW BORROWED BLUE
magnus hjorth(p), peter eldh(b), snorre kirk(ds)
2009/STUNT RECORDS/
デンマークのマグナス・ヨルト(p)とペーター・エルド(b)はライブ(ライブ・レポート参照)で見たばかりです。
このCDの存在は知っていましたがライブに行くことが決まっていたので我慢していました。
特別深い理由もないんだけど先入観なしにライブで聴いたほうがいいかなと思いました。
オリジナルはヨリスが7曲、スノーレ・キルク(ds)が1曲、その他にスタンダードが2曲という構成です。
オリジナルはもちろんいいですがスタンダードも刺激的で生き生きとした新鮮な感覚で蘇ってきました。
(1)〜(2)〜(3)の流れで一気にグイと引き込まれてしまうことは請け合います。
ライブと同様に独特の間合いとタイミングはここでも生きていて、なんかワクワクするものがありました。
テンポやリズム、フレーズを聴いていても何が出てくるか分からない、意外性があります。
こういう感じ方は大事ですね。
ヨルトは絶妙なリズム感と切れのあるタッチ、美しい音色とさらにそれを可能にするテクニックの持ち主です。
清流が流れるかの如く清冽で爽やかなフレージングが満ち溢れて心地良いです。
加えてライブではアグレッシブにグイグイと突っ走る迫力満点のプレイも聴かせてくれました。
流麗、華麗、静謐、美しいといったようなヨーロッパ・ピアノの伝統を超越したスケールの大きさを感じました。
ヨルトもエルドも25歳、多分キルク(ds)も同年代だと思います。
若さは宝もの、若さには大きな可能性を秘めているのでそれだけでも将来が楽しみです。
このトリオの怖いもなしの思いっきりのいいプレイはいかにも若さの特権でしょう。
ここしばらくはこういう感覚を忘れていたのですごく新鮮だったです。
最近は若くても老成した感じのプレイヤーが多いのでこれがもの凄い魅力になっています。
ただ、47分弱の収録時間は短いので少々物足りません。
もうあと2、3曲聴ければもっと良かったです。
(中間系)
(409) RODNEY JONES QUARTET / DREAMS AND STORIES
rodney jones(g),
kenny kirkland(p), marc johnson(b), jeff "tain" watts(ds)
2005(Rec?)/SAVANT/
先日紹介した近藤和彦(as)さんのアルバムとライブでケニー・カークランド(p)の話題が出ました。
カークランドは「DOCTONE」と呼ばれていたようですね。
それで聴きたくなって何かないかなと探して選んだのがこのアルバムです。
2005年の「みんなのベスト3」でMさんが挙げていた作品です。
以前、最初に聴いた時に「へぇー、こんな演奏が埋もれていたのか・・・」と思いました。
カークランドのピアノがいいのでここでも惜しい人を亡くしました。
今作は2005年発売ですがカークランドは1998年に亡くなっているのでその前の録音です。
でも録音データがまったく残っていなくて多分1985年頃じゃないかということです。
それもマーク・ジョンソン(b)の日記だか記憶だかの頼りない話でハッキリしたことは分かりません。
でも内容も録音もいいし、きちんと企画して収録されたものだと思います。
いずれにせよ、こうして陽の目を見たことは幸運でした。
もちろん、ここではロドニー・ジョーンズ(g)のプレイも聴きどころになります。
ロドニーは1990年代になるとソウル・ファンキー路線に行くのでまだこの頃は進路を模索中かな。
師匠はジョン・ルイス(p)で約2年間、ニューヨークでじっくりと指導してもらったとありました。
自身のオリジナルが8曲にジャズ・スタンダードが4曲の全12曲は意欲的な作品になっています。
最後にウエス・モンゴメリー(g)の曲が入っているのがミソ、心の師匠はウエスだったんでしょうね。
カークランドとの付き合いは10代からだそうです。
他のメンバーもマーク・ジョンソン(b)にジェフ・ワッツ(ds)とくれば魅力十分で絶好調のプレイを聴かせてくれました。
カークランドの参加はもちろんのこと、興味あるメンバー構成からも貴重盤の一枚といえます。
(中間系)
(408) ERIC ALEXANDER QUARTET / IT'S ALL IN THE GAME
eric alexander(ts),
harold mabern(p), nat reeves(b), joe farnsworth(ds)
2006/HighNote/
このところファンク系のテナー・サックスを聴くことが多かったのでストレートなテナーが聴きたくなりました。
選んだのはエリック・アレキサンダーのこのアルバムです。
思うにエリックは損をしていると思います、あまりにあちこちに出るので粗製濫造のイメージがあります。
出れば出るほど出来不出来の可能性も高まるでしょう。
実際、今年見たライブでは期待外れでピンときませんでした。
そんなこともあって今作の存在は知っていながらジャケットとメンバーを見てなんとなくパスしていました。
ところが予想とは大違いで抜群に良かったです。
よくコントロールされた艶のある音色と魅力あるフレーズに参りました。
成長著しく以前の豪快無比から表現力のあるテナー・プレイが加わってきました。
もう怖いものなしのテナー奏者に育ちつつありますね。
コンスタントに年2枚以上のアルバムをリリースしているのも人気のほどを物語っています。
こういうのを聴くと日本制作盤とは明らかにコンセプトが違います。
日本盤の主流はスタンダード+バラードですがあまりにこれに偏重し過ぎていると思います。
スタンダードをどう料理するかはたしかに大きな魅力ではありますが・・・。
しかし、プレイヤーにしてもそれほど冒険は出来ないので中々刺激的にはなり得ません。
逆にプレイヤー本人がプロデュースすると全体的なバランスが悪くなるので案配がむずかしいです。
ここでのプロデューサーは「Todd Barkan」ですが狙いと選曲がマッチしていてとてもいいです。
だからエリックの実力を十二分に伝えていると思います。
オリジナルの(5)「OPEN AND SHUT」が印象的、コルトレーンから一歩抜け出たような気がする。
この艶はエリック独自のものでまったく素晴らしいです。
今作はバックのメンバーも好演していてエリックのベスト盤ではないでしょうか。
気心の知れた馴染みのあるメンバーだけど、思わぬところで強力な一枚に出会いました。
聴き応えありでお薦めです。
(まじめ系)
(407) HITOMI NISHIYAMA TRIO / MANY SEASONS
西山瞳(p), hans backenroth(b), anders kjellberg(ds)
2007/Spice Of Life/
西山瞳さんのこのアルバムは発売時に話題になりました。
その時はなぜかパスしましたが改めて聴いてみるとやはりいいです。
ライブを見た時(ライブ・レポートを参照)も感じましたが、日本情緒溢れる作風で詩情豊かです。
流麗ながら切れのある力強いタッチも魅力あります。
バックがスウェーデンの二人なので和風に北欧テイストが加味されている感じがしました。
俗にいう、「ちょうどいい案配」になっています。
全9曲はオリジナルが6曲にその他3曲です。
レイ・ブライアント(p)に武満徹(comp,arr)さんにパット・メセニー(g)の選曲は面白いと思いました。
これを見ても一筋縄ではいかない中々にしたたかなピアニストです。
しかしながら出来はオリジナルのほうが断然いいと思います。
なぜなら西山さんには根底に「日本の歌心」があるのでそれが個性となって心に響くからです。
(5)「BEFORE NIGHT FALLS」や(3)「SAKIRA」は印象に残りました。
(中間系)
(406) Q ISHIKAWA QUARTET / IN MY LIFE
Q 石川(ts,vo)、佐藤修弘(P)、吉田桂一(P)、
久松隆二(eb)、稲葉国光(b)、チッコ・相馬(ds)
2007/What's New Records/WNCJ-2176
Q・いしかわさんの前作の「Q'S GROOVE」(2003)がお気に入りになったので今作も買ってみました。
Qさんが加齢と共に活動範囲を広げているのはそれだけ人気があるということですね。
やさしくて聴きやすくて楽しい・・・それが多くのファンに支持されている理由だと思います。
刺激もなく新しいところは何もないけれどいい、聴いているとなんかホッとするんですよ。
年齢を経て、良くも悪くもこれが自分だということをよく知っているんですね。
多少変わっているけどできることをやりたいようにやる・・・確固たる自分のスタイルを確立しています。
「もう上がり目もないしなぁー、もうこれ以上はむずかしいけどなぁー、もうちっと頑張るか」てな感じ。
でもまだまだ枯れたくない・・・この哀愁が私にはよく分かります。
ここではホレス・シルバー(p)の(7)「SONG FOR MY FATHER」が一番のお気に入りです。
3曲でボーカルも披露していますがこれにもまた味わいがあります。
(5)、(8)、(10)「ALL THE WAY」もいいよ。
ライブを見て聴いてみるとその居心地の良さが分かります。
(くつろぎ系)
(405) KEVIN HAYS TRIO / YOU'VE GOT A FRIEND
kevin hays(p), doug weiss(b), bill stewart(ds)
2009/Jazz Eyes/(輸入盤)
ケヴィン・ヘイズ(p)の新譜です。
ライブ(ライブ・レポート参照)を見に行った時に購入しました。
キャロル・キングやポール・サイモン、ポール・マッカトニーのヒット曲を取り上げています。
自身のオリジナルが1曲もないのが珍しいのでスタンダード作品集ということになるでしょうか。
当然ながら聴きどころはそれらの曲をどう料理しているかになります。
前3曲はけだるいような独特のリズム感はいかにも新感覚のジャズ・ピアニストだと思います。
若い頃に聴いていた馴染み深い曲でしょうがやや間延びしている感覚はまぬがれませんでした。
やはり本領発揮は後半の4曲で特にモンクの(4)「THINK OF ONE」は聴き応えがありました。
ケヴィンがいかにモンクに傾倒していたのかを物語る内容です。
トリオ全体が生き生きと躍動して(4)〜(5)「SWEET AND LOVELY」への流れは最高でした。
(まじめ系)
(404) HARRY ALLEN QUARTET / HERE'S TO ZOOT
harry allen(ts),
dave mckenna(p), michael moore(b), jake hanna(ds)
1997/BMG Japan/
どうも私はこのハリー・アレンとエリック・アレキサンダーを1セットとして考えるフシがあるようです。
最近エリックを聴いたのでこんどはハリー聴きたくなりました。
選んだのが1997年に発売されたこのアルバムです。
この時ハリーは30歳そこそこで今作は初来日記念盤ということになっています。
BMGから立て続けに3枚出していますがこの頃すでにハリーのスタイルは完成されていたと思います。
テクニックも音色も風格十分で、そのよどみないフレーズの素晴らしさには驚くばかりです。
今作は一応ズート・シムズに捧げるという形になっていますがそれはあんまり関係ありません。
あくまでハリーのスタイルを表に出している作品です。
よく知られたスタンダード集でそれぞれいい出来ですが私は特に(5)「GROOVEYARD」が気に入っています。
このテンポでのこのノリは何回聴いてもたまりませんでした。この時期のハリー・アレンは本当にいいです。
デイブ・マッケンナ(p)、マイケル・ムーア(b)、ジェイク・ハナ(ds)のバックも一工夫あって楽しめました。
この当時、エリックがツッパリならハリーは優等生という感じで安定感、安心感はリードしていました。
ひとつ懸念されるとすれば器用貧乏におちいる可能性があったということでしょうね。
エリックはストレートなハードバップ一辺倒ですがハリーはスイングでもボサノバでも何でもできます。
それが良いか悪いかは別にして迷いがない分だけエリックの方が成長度が大きかったかもしれませんね。
10年経って聴き比べてみるとどうもそんな感じになってきたと思いますがどうでしょうか。
スポーツの世界でも完成されているより荒削りの方が魅力的だとよく言われています。
もちろん、ハリー・アレンの実力も十分なので巻き返しもあると思っています。
(くつろぎ系)
(403) HELIO ALVES QUARTET / IT'S CLEAR
helio alves(p),
romero lubambo(g), scott coley(b), ernesto simpson(ds)
2009/Reservoir/(輸入盤)
ブラジル出身のラテン系ピアニストのヘリオ・アルヴェスの新作です。
彼のアルバムを購入したのは2枚目になりますがきっかけはロメロ・ルバンボ(g)との共演にありました。
ルバンボの名前には個性があるので一度聞いたら忘れませんがこのところあちこちで名前を見ます。
特にボーカルのバックで見かけることが多いような気がしますが興味を惹かれました。
今作はラテン・アメリカン特有の派手さはなく地味ですが中身は相当に濃いです。
それぞれが達者なので驚きました。
ヘリオの美しく流麗なピアノにルボンバの生ギターがどう絡むかが聴きどころになります。
名手スコット・コーリーのベース、アーネスト・シンプソンのパーカシブなドラムが支える形。
表題曲の(6)「IT'S CLEAR」は美しいバラードでピアノ・トリオでの演奏です。
ドラマーのアーネストは初めて聞く名前ですが記憶に留めておかねばなりませんね。
ラテン系としては異色作か、珍しくBGMで気楽に聴けるというアルバムではなかったです。
(まじめ系)
(402) CHARLES DAVIS QUARTET / PLAYS THE MUSIC OF BENT JAEDIG
charles davis(ts),
sam yahel(p), ben street(b), kresten osgood(ds)
2008/FRESH SOUND/(輸入盤)
ベテランのチャールス・デイビスはマルチ・サックス奏者です。
今作は珍しい”Bent Jaedig”作品集です。
チャールス・デイビスは一般的にはバリトン・サックス奏者として知られていると思います。
地味なのであんまり目立っていませんがバリトン奏者として貴重な存在になっていました。
さて、ここではテナー・サックスを駆使して演奏を繰り広げています。
ベニー・ゴルソン・タイプか、クネクネとした骨太の一風変わったスタイルは面白いです。
さらに訥々とした大らかで素朴な感じ、ゴツゴツとした不器用な感覚もあって好感が持てます。
微妙なノリで展開される(4)「BALLAD FOR BREW」のバラード・プレイにガツンときました。
バリトン・プレイの影響が出るのか重厚な感じがします。
共演者を見ると普段はオルガン奏者として知られるサム・ヤヘルがピアノで参加しています。
ベン・ストリート(b)&クレステン・オスグッド(ds)の組み合わせも渋いです。
普段着でないチャールスのテナーとヤヘルのピアノが聴けるということで一票入れたいと思います。
(中間系)
(401) MONICA BORRFORS & SWEET JAZZ TRIO/ REMENBERING BILLIE
monica borrfors(vo),
lasse tronqvist(cor), mats larsson(g), hans backenroth(b)
2004/Spice Of Life/SOL J-0019
コテコテ・ジャズが続いているのでフッと息抜きにジャズ・ボーカルを聴いています。
選んだのはモニカ・ボーフォース&スウィート・ジャズ・トリオの2枚目のアルバムです。
題名どおりのビリー・ホリディ(vo)作品集ですが趣はまったく異なっています。
こういったトリビュート盤はどこかに原作の面影を感じさせるものですがそういうものを感じさせません。
ストレートでさらりとした歌い方は自分の持ち味を生かす意味でもとても好感が持てます。
ボーカルの名曲がずらりと並んでいるのも嬉しい。
共演のスウィート・ジャズ・トリオの好演もあってしっとりと落ち着いた佳作です。
(くつろぎ系)
(400) FREDDY COLE / LOVE MAKES THE CHANGES
freddy cole(vo),
cedar walton(p), grover washington jr(ts,ss), eric alexander(ts),
george mraz(b), ben riley(ds), david williams(b),
kenny washington(ds), hiram bullock(g), etc
1998/Fantasy/(輸入盤)
甘さと渋みがマッチしたフレディ・コールの作品です。
「最近の愛聴盤」で紹介中の「In The Name Of Love」が良かったので何枚か買ってみました。
その中で一番印象に残ったのがこのアルバムです。
バックのメンバーはジャズとフュージョンの混成部隊ですがこれがなかなかに面白かったです。
特に当時は新進気鋭だったエリック・アレキサンダー(ts)の素晴らしさは特筆ものです。
テナーが聴こえるたびに一味違う何かを感じて、やっぱり独特の感性を持っていると思いました。
もちろん、どこにいてもフレディ・コールのマイペースは変わりませんよ。
酸いも甘いもわきまえたラブ・ソングには味わい深いものがります。
伊達に年を取ってはいないんだよね。
そういえば、フレディ・コールもこの6月に来日予定があります。
(くつろぎ系)
(399) GO-MEN.NE / TOKYO NIGHT BEAT
後藤輝夫(ts,ss),
橋本信二(g)、金子雄太(org)、小泉高之(ds)、
ゲスト:六川正彦(elb)
2004/What's New Records/WNCJ-2138
こちらは後藤輝夫(ts)さん率いるオルガン入りファンキー・バンド:「ごめんね」の初アルバムです。
このバンドのライブもノリノリで多いに楽しませてくれるので大好きです。
メンバーのオリジナルの他にグラント・グリーン(g)やクール&ザ・ギャングの曲もあります。
これらを見るとこのバンドの目指す方向が分かると思います。
後藤さん、橋本信二(g)さん、小泉高之(ds)さんは不動のメンバー、変わるのは若手のオルガン奏者です。
正直なところ、オルガン奏者は層が薄いので人選に苦労しているのは伺えます。
ここでのオルガンは期待の金子雄太さんなのでこの頃の「ごめんね」が一番充実していたと思います。
そういう意味でもこのアルバムは貴重なものになると思っています。
このグループの魅力は今作に集約されているのではないかな。
1曲目の「INNER SIDE BLUES」でぐいと引きつけられました。
(6)「BY THE TIME I GET TO PHOENIX」のバラードもいい。
アップ・テンポでもミディアムでもバラードでもグルービーなノリが心地良いです。
後藤さんは名手だと思う。
(くつろぎ系)
(398) K J B TRIO/ NEAR AND FAR
池長一美(ds), john lockwood(b), bert seager(p)
2008/Invisible Music/(輸入盤)
池長一美(ds)、ジョー・ロックウッド(b)、バート・シーガー(p)の「k・J・B・TRIO」の3枚目のアルバムです。
2年に1枚の割りでコンスタントにリリースしているのも高く評価されている証拠だと思います。
スタンダードが3曲にオリジナルが7曲の構成、基本的に静謐で耽美的な作風は変わっていません。
前2作のドラ盤入りしていますが今作もいいです。
もっと知られてもいい存在・・・なんか典型的な「目立たないけどいいアルバム」って言う感じがします。
気心の知れた3人のコンビネーションは抜群、全体的にリズム感が出てきたので一番聴き易いと思います。
スタンダードの解釈は新鮮そのもの、(1)「ONE FOR MY BABY」でグイと引き込まれてしまいました。
オリジナルの(4)「ONE NOTE WALTZ」の美しさは特筆もの。
(7)「LEARNING TO TRUST IN LOVE」のバラードもいい。
池長さんもジョンもバートも素晴らしいのでみなさんにも是非聴いてもらいたいです。
私は毎年の日本公演を楽しみにしていますが今年は10月に予定されているそうです。
このトリオが聴きたいと言うと、池長さんはロックウッドが引っ張りだこの忙しさで残念と言っていました。
上質のピアノ・トリオでお薦め。
2週続けて聴き応えのあるピアノ・トリオに当たりました。
(中間系)
(397) TAKAKO AFUSO / MABUI NO UTA
安富祖貴子(vo),
井上陽介(b,arr)、大隈寿男(ds)、小山太郎(ds)、
安井さち子(p)、岡安芳明(g)、川嶋哲郎(ts)、
太田剣(as)、金子雄太(org)
2007/M&I JAZZ/MYCJ-30409
今作は安富祖貴子(vo)さんの2枚目のアルバムです。
安富祖さんは50年に1人の逸材との触れ込みで私のジャズ仲間の評判も上々です。
選曲もジャズにこだわらずに幅の広い構成になっています。
これは彼女の音楽性の広さを物語っていてジャンルを超えるジャズ・ヴォーカリストだと思います。
まだまだ若いのでこれから人生の経験を積んでどこまで深味を増すのか、大いに楽しみな存在です。
最大の魅力は切れ味鋭いパンチ力のある歌声にあると思います。
これは習って会得できるものでもなく、生まれ持った天性のもので彼女の貴重な財産でしょうね。
ふと、若い頃の弘田三枝子さんを思い出しました。
(1)「MERCY MERCY MERCY」、(6)「AIN'T NO SUNSHINE」、
(9)「SONG FOR MY FATHER」なんかは惚れ惚れしました。
バックのメンバーの好演も見逃せないアルバムになっています。
人気者になっても相変わらず活動の中心は沖縄にあるので人柄を表しているようです。
足が地に付いて上滑りしていないのも好感が持てますね。
(中間系)
(396) MADS VINDING TRIO / BUBBLES & BALLADS
mads vinding(b), jacob karlzon(p), morten lund(ds)
2008/BRO RECORDINGS/(輸入盤)
マッズ・ヴィンディング&ヤコブ・カールゾン&モーティン・ルンドの組み合わせには魅力があります。
このヴィンディングが中心のスタンダード作品集は聴く前から「これはいいぞ」という予感がありました。
ウエイン・ショーター(ts)の(1)「NEFERTITI」、(6)「FOOTPRINTS」の2曲が新味です。
予想通り、久し振りに重厚で聴き応えのあるピアノ・トリオに出会ったような気がします。
このトリオは深い海のような感触でグーッと奥深く引き込まれるような感覚です。
最近思うのですがピアニストには切れと流れのどちらかを重視する傾向にあると思います。
もちろん、両方できる人が多いですがどちらかに偏っている感じがします。
二兎を追うのはむずかしいかも知れませんね。
カールゾンはどちらかというと後者でしなやかで美しい独特のタッチを持っています。
切れはあまり感じませんが音のつながりが微妙に個性的なんです。
全体を引き締めるヴィンディングのベースと好センス溢れるルンドのドラムスも聴き応えは十分です。
じっくりと聴けるピアノ・トリオでお薦めの一枚。
(まじめ系)
(395) MARICA HIRAGA / MORE ROMANCE
平賀マリカ(vo),
gerald clayton(p), james genus(b)、lewis nash(ds)
chuck loeb(g), grant stewart(ts)(3,8,10)
2008/BOUNDEE/DDCB-13005
現在最も人気があると思われる平賀マリカさんのアルバムを買ってみました。
最大の魅力は包み込むようなソフト歌声にあると思いました。癒し系がぴったりの表現か。
彼女の場合は案外選曲がむずかしいのではないかと思いました。
あまり味付けを濃くしないほうがいいというか、自然にさらりと歌った曲がいいと思います。
(1)「SUNNY」とか(9)「FEVER」とかのポップスでも一ひねりある歌は多分向いていない。
スティービー・ワンダーの(11)「LATELY」は良かったけど。
ジャズ・テイストが濃すぎるのも合わないのではと思います。
ここでは(2)「MOONLIGHT SERENADE」、(5)「I'M IN THE MOOD FOR LOVE」、
(8)「LOVE IS HERE TO STAY」、(10)「WHAT'S NEW」が印象に残りました。
選んでみると軽快なスイング系のスタンダード・ナンバーが並んでいます。
前作と前々作がエリック・アレキサンダー・カルテットやマンハッタン・ジャズ・クインテットとの共演。
今作はバックのメンバーがやや小粒ですがその分リラックスした異色作になっていると思います。
多分、谷間の作品になって貴重盤になる可能性が高いです。
彼女の持つ声質や雰囲気からいって間違いなくボサノバがいいと思いました。
最新作はそのボサノバなので聴いてみたいです。
(くつろぎ系)
(394) SCOTT HAMILTON & BUCKY PIZZARELLI / THE RED DOOR
...remember Zoot Sims
scott hamilton(ts), bucky pizzarelli(g)
1998/CONCORD Records/(輸入盤)
購入のキッカケはバッキー・ピザレリ(g)にありました。
先日、ジャズ仲間のNさんがバッキーの映像を紹介してくれたのです。
女性ヴォーカルでしたがそこでのリズム・ギターが素晴らしく彼の職人芸を目の当たりにしました。
それで何かいいものはないかと探していて選んだのがこのアルバムです。
スコット・ハミルトン(ts)とのデュオ・アルバムで、これならバッキーのギターが堪能できると思いました。
思ったとおりの出来、素晴らしいアルバムに仕上がっています。
ギター一本のバックでも名人芸の域、現在これほどのリズムを刻めるギタリストはいないと思います。
ズート・シムズ(ts)を偲ぶ今作品はスタンダード作品集で文句なしの内容です。
表題曲の(3)「THE RED DOOR」や(7)「JUST YOU, JUST ME」の絶妙なスイング感が素晴らしい。
「チャッ、チャッ、チャッ」と刻むコード・ワークには惚れ惚れしました。
かのカウント・ベイシーのオール・アメリカン・リズム・セクションのフレディ・グリーン(g)を彷彿とさせるもの。
心底痺れました、今さらながらバッキーの実力を再評価した次第です。
もう一枚、そのフレディ・グリーンを偲んだ彼のアルバムがあったのでそちらも注文するつもりです。
スコット・ハミルトンにとっても代表作の一枚になると思います。
(くつろぎ系)
(393) TARO KOYAMA
QUARTET /
DRUMGENIC
小山太郎(ds),
近藤和彦(as,ss), 田中裕士(p)、井上陽介(b)
2005/M&I
JAZZ/MYCJ-30353
今作も先日のライブの時に小山太郎さんから手渡しで購入しました。
見た瞬間にまずはメンバーに注目しました。
録音時、全員が同年代でほぼ40歳前後、まさに脂が乗りきっている年頃です。
特に近藤和彦さんのワン・ホーンは魅力があります。
小山さんと井上陽介(b)さんはツー・カーの仲、共にトップ・プレイヤーに成長しています。
田中裕士さんには黒い感覚があるし幅広い音楽性を持つユニークなピアニストだと思います。
曲目構成もよく考えられていて太郎さんの全貌を網羅している感じがします。
リズム・パターンも多彩なのでこれを聴けば全てが分かる仕掛けになっています。
一番良かったのはオリジナルの(2)「TAIL TO
NOSE」です。
ジャケット写真にあるように太郎さんは車好きのレース好き。
まさに疾走するレース・カーのようにドライブ感溢れる演奏が聴けました。
(中間系)
(392) T M D / CRY ME A RIVER
川嶋哲郎(ts,fl)、岡安芳明(g)、上村信(b)
2006/What's New Records/WNCJ-2166
今週はライブ絡みで川嶋哲郎(sax,fl)さんを聴いていました。
川嶋さんには以前より注目していて初リーダー・アルバム以来しばらく追いかけていました。
そんなわけで日本人プレイヤーとしては”ドラ盤”入りが断トツに多いです。
もっともここのところはご無沙汰していてニュー・カルテットもまだ聴いていませんが。
さて、この東京銘曲堂も長いですね。
川嶋さん、岡安芳明(g)さん、上村信(b)さんのトリオです。
何年の付き合いになるのかな、気心も知れて馴染んでいるので深味のあるコラボレーションが聴けます。
特に川嶋=岡安のコンビネーションは最高です。上村さんの隠し味がまた効いています。
重厚なテナー・サックスの音色と美しいフルートの対比がなんとも心地良くてたまりません。
川嶋さんは一皮むけたような気がします。清冽さが加わってよりクリアな音色になりました。
バラードがいいです。スタンダードをじっくりと聴くには最適のアルバムだと思います。
心に沁み込む珠玉のスタンダード作品集でお薦めです。
(中間系)
(391) DR.LONNIE SMITH QUARTET / RISE UP !
ronnie smith(org,vo),
donald harrison(as), peter bernstein(g), herlin rirey(ds), etc
2008/PALMETTO/(輸入盤)
最近のマイ・ブームのソウル、ファンク路線でロニー・スミス(org)の新譜を買ってみました。
ロニー・スミスはBNのジョージ・ベンソン(g)やルー・ドナルドソン(as)の作品で知りました。
自身名義のアルバムも5枚ほどブルー・ノートに残されています。
少し遅れてきたオルガン奏者ですが元気に活躍しているのは喜ばしい限りです。
今作はメンバー的にも面白そうな気がしました。
ピーター・バーンステイン(g)やドナルド・ハリソン(as)のプレイに興味がありました。
特にドナルド・ハリソンが久し振りでどんなプレイをしているのか、聴きたかったです。
ハリソンを聴くのは7年ぶり位か、テレンス・ブランチャード(tp)と双頭コンボはよく覚えています。
ここでは高音部を多用してファンキーに吹きまくっていました。
聴いてみるとバーンステインもハリソンもぐっとモダンな感覚ですがまったく違和感はありません。
スミスのサウンドは当時のアーシーな感覚からかなりスマートになっていると感じました。
でも根っこには生粋のソウル魂が染み込んでいます。
まだまだ伝統は生きている、懐かしさと共に嬉しく思いました。
ロニー・スミスは良き時代を知る数少ないオルガン奏者として貴重な存在になっています。
(くつろぎ系)
(390) FREDDY COLE / IN THE NAME OF LOVE
freddy cole(vo),
jason miles(p,key), rometo lubambo(g), dean brown(g),
will lee(b), kelth carlock(ds), jeff mironov(g),
cassandra reed(vo), jane monheit(vo), etcl
2003/TELARC/(輸入盤)
フレディ・コール72歳の歌声、久々の男性ボーカリストの登場です。
あのナット・キング・コールの末弟、お兄さんに似てピアノとボーカルが達者です。
今作はあるライブ・ハウスの休憩時間にかかっていてガツンときたアルバムです。
もうね、ノリ、雰囲気共に抜群だったので「誰ですか、これ?」って聞いてしまいました。
いわゆる有名なスタンダードは1曲もありませんが実に出来の良いアルバムだと思います。
「フレディ・コールってこんなに良かったっけ」というのが正直な感想です。
男性ボーカルでこれほど気に入って連続的に聴いたアルバムはありません。
寝る前に聴いてはただただ心地良くそのまますぐに寝入ってしまいました。
1970年代に流行ったAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック」を彷彿とさせるものです。
今作の狙いもそこにあって、1曲目がその時に人気を博したボズ・スキャッグスの曲です。
ソフト&メロウな曲想とフレディのややかすれた渋い歌声がなんとも心地良くてたまりません。
都会的でスマートなアレンジが微妙にマッチして抜群の雰囲気を醸し出しています。
「サラバ、トウキョウ〜」から始まる(1)「HARBOR LIGHT」はまさしく演歌の世界です。
(2)、(3)への流れもグー、「好きだなぁー、こういうの、センスあるなぁー」と思いました。
(6)におけるギター・プレイ、(7)におけるソプラノ・サックスの調べにも痺れました、
なにしろバランス感覚が絶妙なんです、その他の曲も珠玉の名演が目白押しです。
プロデュースのジェイソン・マイルスの手腕も大したものです。要注目じゃないでしょうか。
聴けば聴くほど味が出る、極上のスルメ盤だと思います。
しかし、狙いが狙いだけに本格的なボーカル・ファンには少々甘く感じるかも知れません。
余談ですが、ドラ盤も370枚ほどになっていますがボーカルものは極端に少ないです。
特に男性ボーカルとなると「一体今までどんな歌手がが登場しているのか?」、気になりました。
「*ケビン・マホガニー、*ジミー・スコット、*ジョン・ピザレリ、*カート・エリング、*マイケル・ブーブレ、
*ピーター・フェスラー、*ジョージ・ベンソン&アル・ジャロウ、*ピーター・シンコッティ、
*森山浩二、*牧野竜太郎」の11人で今度のフレディ・コールが12人目になりました。
やっぱりというかたったの3%余りでした。女性も最近増えましたが15人だけです。
両方合わせても全体の7%余りにとどまっています。
(くつろぎ系)
(389) TOSHIHIRO AKAMATSU QUARTET / STREAM OF LIFE
赤松敏弘(vib),
市川秀男(p), 村上聖(b), 大阪昌彦(ds),
後藤浩二(p), 養父貴(g), 鈴木良雄(b), マリンバ王子(marimba)
2008/VEGA/VGDBRZ0030
こちらもライブ絡みで購入した赤松敏弘(vib)さんの最新作です。
ライブの時に赤松さんから手渡しで購入しました。もちろんサイン入りで。
カルテット、クインテット、デュオ、ソロまで楽しめるアルバムで構成のバランスもいいです。
ベテランと若手を配した組み合わせにも興味がありました。
市川秀男(p)さんと名古屋の逸材、後藤浩二(p)さん、鈴木良雄(b)さんには村上聖(b)さん。
大坂昌彦(ds)さんには新感覚のギタリストの養父貴さんを配しています。
そして赤松さん自身にはマリンバ王子さんです。
ということで、今作には色々な表情が詰まっています。
一番面白かったのは赤松、養父、村上、大坂の組み合わせで(2)、(3)で聴けます。
オリジナル曲ですがこれが実に刺激的でいいです。新味、新鮮な感じがしました。
養父さん、村上さんのプレイにも注目です。
全体的には養父さんのギターが良いアクセントになっていると思います。
赤松さんの師匠のゲイリー・バートンもカート・ローゼンウィンケル(g)とやってますね。
私的、赤松さんのベスト・アルバムです。
(中間系)
(388) LUIS PERDOMO TRIO / PATHWAYS
luis perdomo(p), hans glawischnig(b), eric mcpherson(ds)
2008/Criss Cross/(輸入盤)
ベネズエラ出身のルイス・ペルドモ(p)はミゲール・ゼノン(as)の作品で聴いたことがあります。
今作は何となく愛嬌のあるジャケットの写真に引かれて購入しました。
ジャケットからはもっとごつくて硬い感じがしますが持ち味は繊細かつ流麗なものです。
年齢も38歳で思ったよりも若く、失礼ながらだいぶ写真のイメージとは違っていました。
音楽性はラテン感覚が強いかといえばそうでもなく、ちょうど中間点にいるような感じがします。
オールラウンド・プレイヤー・・・若い時のチック・コリア(p)をイメージすると分かりやすいかもしれませんね。
(1)「SPEAK LOW」における前奏部から湧き上がってくるようなピアノ・プレイは聴きものです。
美しいタッチとスピード感、ペルドモの才能はここで十分に感じることが出来ると思います。
とは言うものの彼の真髄はやはりラテン系の曲にあると思いました。
ベスト・トラックは(4)「FULIA CHANT」で印象的なフレーズが満載、トリオのバランスも頭一つ抜けています。
続いて(7)「CHIMANTA」の雨が滴り落ちる風情のソロも魅力的です。
オリジナルとスタンダードの構成もいいですが個人的にはオリジナルの方が良かったです。
最後に「悪くない、手慣れている、上手いんだけどなぁー」・・・正直、もう一つ刺激が欲しい気がします。
(中間系)
(387) JIMMY McGRIFF & HANK CRAWFORD QUARTET / RIGHT TURN ON BLUE
jimmy mcgriff(org), hank crawford(as), rodney jones(g), jesse hameen(ds)
1994/TELARC/(輸入盤)
この半月ほど体調不良で好きなライブも外出も出来ずじまい。
家に篭っていたのでネット・ショッピングをしてしまいました。
久し振りにCDの爆買いをしたんだけどコテコテ系サックス奏者のアルバムです。
アーネット・コブ、ジミー・ホレスト、アイク・ケベック、ウィリス・ジャクソン、ドン・ウィルカーソン、
スタンリー・タレンタイン、メシオ・パーカー、ハンク・クロフォードといったところです。
しばらくはギンギンのソウル、ファンク、ブルース路線に浸ってみたいと思っています。
ワン・パターンなんだけど、ノリのいいこういうのを聴いているとなんか元気が出るような気がしました。
そんな中でまず気に入ったのは比較的新しいジミー・マクグリフ&ハンク・クロフォードのこのアルバムです。
レイ・チャールス・グループに在団したクロフォードはソウル系サックス奏者の見本みたいな存在です。
クロフォードは今年の1月に亡くなったばかり、74歳でした。・・・合掌。
今作はコテコテではあるけれどスマートな雰囲気を併せ持っているのが特徴です。
オルガンのマクグリフとクロフォードのコンビネーションも定評のあるところで聴き易いです。
(4)、(8)のバラードでは泣きアルト、(7)、(8)の強烈なグルーブ感が一番の聴きどころになります。
ただ、(6)「TEACH ME TONIGHT」はもっとムードが欲しかったけど。
もう一つの聴きどころはロドニー・ジョーンズのギター・プレイにあります。
彼には↓の素晴らしいアルバムがあるので是非聴いてみて下さい。
ケニー・カークランドの参加が貴重です。
*RODNEY JONES QUARTET / DREAM AND STORIES (Savant/2005)
rodoney jones(g), kenny kirkland(p), marc johnson(b), jeff"tain"watts(ds)
(くつろぎ系)
(386) MISHA PIATIGROSKY TRIO / HAPPENIN'
misha piatigorsky(p), peter klinke(b), eric harland(ds)
2009(1997Rec)/MISHAMISIC/(輸入盤)
ミシャ・ピエティゴルスキー(p)と読むのか、初見です。
1997年録音のミシャ自身のレーベルなので自主制作盤に近いと思われます。
購入のキッカケはエリック・ハーランド(ds)の参加にありました。
ハーランドは近年、最も注目しているドラマーでこれからもドラ盤参加は増え続くだろうと思っています。
1968年テキサス生まれで神様はエルヴィン・ジョーンズ(ds)、今作は19歳の時に録音されたものです。
ハーランドは1997年にグレグ・オズビー(as)のBNのアルバムが初レーコーディングになっています。
しかし今作は1月収録ということで、これが事実上のデビュー作になるのではと思います。
12年前の若さ溢れる元気いっぱいの溌剌としたプレイが聴けますよ。
ここではもちろん、ミシャの瑞々しいピアノも聴きものです。
1曲目からグイと引き込まれます、緩急と強弱の危ういバランスがたまりません。
同じフレーズを続けてもへ〜チャラ、若者は若者らしくドンドン暴れてもらいたいです。
奇をてらうどころか、そのまんま若さに任せて突っ走っているのが実に魅力的です。
「どうだい、これが俺たちのスタンダードだ、あんたに分かる?」っていう感じ。
こんな(3)「YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC」も初めて聴きました。
ムードもへったくれもありません・・・が・・・輝いている。
ピアノ・ソロで演奏される(8)「ALL THE THINGS YOU ARE」は新鮮、ミシャの非凡さが伺えます。
自主制作盤なればこその自由自在、若い時はやりたいようにやればいいです。
どうせ年を取れば大人しくなるんですから・・・中には大人しくならない人もいますが・・・常に例外はある。
私は今までこれほど元気になるピアノ・トリオを聴いたことがありません。
いつも聴いているスタンダードのどれとも違う解釈とプレイ・・・よく分からないけど面白くていい。
てなわけで元気になりたい人にはお薦めのピアノ・トリオ・アルバムです。
売り切れたら中々手に入らない貴重盤になると思います。
エリック・ハーランドに注目している人にも見逃せない一枚です。
(中間系)
(385) JACOB YOFFEE QUARTET & QUINTET / DEAD RECKONING
jacob yoffee(ts,ss),
george colligan(p), jeff grubbs(b), james johnson V(ds),
gary thomas(fl)(4,9), sean jones(tp)(1,10), carolyn perteete(vo)(9)
2008/INNER CIRCLE MUSIC/(輸入盤)
ジェイコブ・ヨフィー(ts)は初見、名前の読み方もこれでいいのか分かりません。
初めてのプレイヤーを購入をするキッカケはどんな順番になるでしょうか。
私の場合は@共演のメンバー、A演奏曲目、Bプロデューサー&レーベル、Cジャケットの順かな。
さしずめ今作は@ジョージ・コリガン(p)、ゲイリー・トーマス(fl)、シーン・ジョーンズ(tp)に注目、
Bグレグ・オズビー(as)のプロデュースとオズビー自身のレーベルが決め手になりました。
全曲、ジェイコブのオリジナルでオーソドックスな力のあるコルトレーン派〜Mベース系の流れ、
ひとひねりあるもののコンテンポラリーな主流派ハード・バップが聴けます。
表題曲の(1)「DEAD RECKONING」ではいかにも現代風の印象的なソロを聴かせてくれました。
シーン・ジョーンズ(tp)の好演もあって出色の出来になっています。
ワン・ホーンの(8)はそのまんまコルトレーンでこれがジェイコブ・ヨフィーのルーツだと思います。
もちろん、ジョージ・コリガンのピアノとゲイリー・トーマスのフルートも聴きどころになります。
疾走感のある(6)「AFTERMATH」でコリガンとジェイコブ、(4)「RAVEN」でトーマスのプレイも光る。
(5)、(9)は和風情緒を感じさせるバラード、(7)は中近東風味のオリエンタル・サウンドです。
全体的にパタパタとしたドラムスが気になるものの張り切りようと意欲は十分に伝わってきました。
初リーダー・アルバム、これからの期待を含めて先物買いをしておこうと思います。
(中間系)
(384) JUNKO OCHI / I WANT YOU
越智順子(vo),
竹下清志(p), 小笹了水(b), 門奈紀生(bandoneon), 道祖淳平(g)、etc
2005/Studio F Project/
私事ですがこの2日間ほど風邪で寝込んでしまいました。
そういう時に聴くジャズはどれでもいいというわけにはいきませんよね。
耳にやさしくリラックスしてヒーリング効果のあるアルバムを探すことになります。
今までだと私の場合、ヨーロッパ系のピアノ・トリオを聴きことが多かったんです。
特にヤン・ラングレンが良かった、理屈ではなく一番しっくりときていました。
さて、今回はボーカルが聴きたいということで何を選ぶかを考えました。
そして選んだのがこのアルバムです。
「最近の愛聴盤」でも紹介中ですが越智順子さんは去年ガンでお亡くなりになりました。
今作は2004年の録音、2005年に発売されたアルバムです。
ストリングスをバックに歌われたものですがこれがすごく聴き易かったです。
魅力的な選曲と共にそのアレンジがとても良くマッチして疲れた心身を癒してくれました。
寝てる時にずっと聴いていましたが、このやさしさは何だろうかと考えてしまいました。
ひょっとしてこの頃から体調が・・・。
ただ、元気だったらちょっと物足りなかったかもしれません・・・ずい分勝手な解釈だと思うけど。
この3月初旬には越智さんのライブ盤も発売になるそうなのでそれも聴いてみたいです。
(くつろぎ系)
(383) HIDEFUMI TOKI QUARTET / THE GOOD LIFE
土岐英史(as),
大石学(p), 坂井紅介(b), 日野元彦(ds)
1996/Fun House/
土岐英史(as)さんの珠玉のバラード演奏集です。
あるCDショップの中古盤売り場で見つけました。
数年前までは中古盤売り場もけっこうマメに見ていましたが最近はすっかり根気がなくなりました。
いつもは見ないんだけど久し振りに何気なく見ていたらポツンとあったんです。
それも田村博(p)さんのアルバムと一緒に並んでいました。
最初は「一瞬、何でここにあるの?、ホントかなぁー」と思いましたよ。
まさかこんなところで出合うとは思わなかったですが探していたアルバムだったので嬉しかったです。
さしづめ「犬も歩けば棒にあたる」かな・・・やっぱり出歩いてみるもんですね。
改めてレコードやCD蒐集はマメに動いている人が強いと思いました。
スタンダード中心のバラード集ですがオリジナルの3曲がアクセントになっている構成もいいです。
じっくりと聴かせる土岐さんのプレイもさることながら美しく瑞々しい大石さんのピアノも光ります。
圧巻はピアノレス・トリオで演奏される(5)「MY ONE AND ONLY LOVE」で10分強の熱演。
紅介さんのベース、元彦さんのブラシのコンビネーションもよく最高の仕上がりです。
(8)「BODY AND SOUL」はベースとのデュオ、小品ですが素晴らしかった。
ゆったりとした気分で心に沁み入る演奏を聴きたいと思います。
この作品はジャズ仲間のAさんのジャズ聴きのキッカケになったアルバムだそうです。
聴けばそれも十分納得できます。
このラインにはもう一枚「イン・ナ・センチメンタル・ムード」(1992Rec)があります。
土岐英史(as,ss)、鈴木宏昌(p)、野力奏一(p)、桜井郁雄(b)、日野元彦(ds)
現在は2枚共に入手困難になっているのは残念です。
土岐さんのライブは2006年の6月に行ってますがそれ以来3年近くも見ていないのはまずいですね。
早速、機会を見つけて出かけようかと思っています。
(くつろぎ系)
(382) NNENNA FREELON / LIVE
nnenna freelon(vo),
takana miyamoto(p), wayne batchelor(b), woody williams(ds),
beverly botsford(per), scott sawyer(g), brandon mccune(org)
2003/CONCORD/(輸入盤)
ボーカルを集中的に聴き始めてから一番数多く聴いているのはニーナ・フリーロンのこのアルバムです。
もう何年も前にジャズ仲間から紹介されて入手したんですがそのままほっぽらかしにしていました。
久し振りに聴いてガーンときて1ヶ月以上毎日聴いていましたよ。
買った時には何ともなくて、あとで聴いたら物凄く良かった。・・・こういう経験はけっこう多いと思います。
これもそんな一枚ですが特に印象深いものになりました。
音楽監督はアメリカで活躍中の宮本貴奈(p)さんで、それに気が付いたのも聴き直しをしてからです。
宮本さんは去年帰国公演をしたんですが私はそれを見に行きました。
ビル・エバンスを偲ぶ、井上陽介(b)、マーティン・モレル(ds)とのトリオ・・・ライブ・レポートを参照して下さい。
これは私の感性に合ったアルバムなのでどの曲も素晴らしいと思います。
特に(5)「MEANING OF THE BLUES」は何度も繰り返し聴きました。
スティービー・ワンダーの(9)「THE TEARS OF A CLOWN」も(6)「BODY & SOUL」のアレンジも面白い。
要するにみんな良かったです。全部がいいなんていうアルバムはそうそうはありません。
ここで老婆心ながらのご忠告を一つ・・・経験者は語る、自戒の意が大きい。
気に入った作品があるとそのプレイヤーの別の作品を聴きたくなるのはジャズ・ファンの習性です。
ところが入手しても「聴くのはキッカケになったそのアルバムだけだった」というのも少なくありません。
つまりそれが琴線に触れたわけでそれ以上のアルバムには中々出会えないものなんです。
よほどこだわりがあるならともかくこの「落とし穴」には落ちないようにしたいものです。
で、ニーナ・フリーロンもこの一枚しか持っていません。・・・いつまで我慢できるか・・・。
(中間系)
(381) JORIS ROELOFS QUARTET / INTRODUCING
joris roelofs(as,cl),
aaron goldberg(p), matt penman(b), ari hoenig(ds)
2008/MATERIAL RECORDS/(輸入盤)
ヨリス・ルーロスは弱冠24歳のアルト・サックス奏者です。
まずはCDから流れてくる美しいアルトの音色に驚いてしまいました。
このスムーズさは完璧なフィンガリングと息使いのたまものだと思います。
末恐ろしいというか、多いに楽しみなサックス奏者が登場してきました。
ここはまたメンバーも素晴らしいです。
アーロン・ゴールドバーグ(p)、マット・ペンマン(b)、アリ・ホーニック(ds)とくれば見逃せません。
スタンダード4曲、オリジナル4曲、ワーン・マーシュ(as)とデイブ・ホランド(b)が1曲づつ入っています。
チャーリー・パーカーの影響下はもちろんのこと、マーシュの曲が一つのヒントを与えてくれています。
私はオリジナルに興味を持ちましたが他の曲もアレンジが新鮮なので聴きどころも多いです。
テンポやリズム・パターンが多様、バックの3人も生き生きと躍動していて特にアリ・ホーニックが凄い。
スタンダードなら(2)「SWEET&LOVELY」、オリジナルなら(6)「THE RULES」や(9)「BETER !」も面白かった。
ドラムとのデュオ(7)「FOUR WINDS」、ベースとのデュオの(10)「SKYLARK」もスリル満点、
(2)「DOOIE HOEK」や(8)「FRANCISCA」のクラリネットも聴きものです。
ヨリスは現代的な感覚を持っているようで曲想も変化に富んでいて飽きさせません。
このデビュー作があまりにいいのでこれからが心配になるほどです。
余談ですが「イントロデューシング・〜」というアルバムは外れが少ないような気がします。
(まじめ系)
(380) AARON PARKS QUARTET / INVISIBLE CINEMA
aaron parks(p), mike moreno(g), matt penman(b), eric harland(ds)
2008/BLUE NOTE/(輸入盤)
アーロン・パークス(p)は初見、現在風の静謐でクールなピアニストです。
初リーダー・アルバムが全曲オリジナルというのも珍しいですね。
それだけ彼の才能が認められているということだと思います。
聴いてみればすぐに分かると思いますが「独特の世界」を持っています。
しなやかで流れるようなタッチと共にトータルなグループ・サウンドを追求しているのが特徴です。
案外聴き易いのは和風の味付けがあるからだと感じました。
注目のマイク・モレノ(g)とマット・ペンマン(b)、エリック・ハーランド(ds)との組み合わせにも惹かれました。
(1)「TRAVELERS」〜盛り上がりみせる(2)「PEACEFUL WARRIOR」〜(3)「NEMESIS」の流れが聴きどころ。
彼らの醸し出す雰囲気は一聴しただけで「これは只者ではないなぁー」と思わせるものがあります。
好センスを感じさせる作品でコンテンポラリー路線のジャズを聴くなら見逃せない一枚です。
(まじめ系)
(379) DIANNE REEVES / WHEN YOU KNOW
dianne reeves(vo),
steve wilson(as)(7), romero lubambo(g)(1-9), russell malone(g)(1-5,8,10),
billy childs(p)(1,7,9), george duke(p)(2), geoffrey keezer(p)(5,6),
dave carpenter(b)(3), reuben rogers(b)(2,5,6,8), reginald veal(b)(1,7,9,10),
antonio sanchez(ds)(1,3,7,9), oscar seaton(ds)(2), greg hutchinson(ds)(5,6,8,10),
lenny castro(per), etc
2008/BLUE NOTE/(輸入盤)
ダイアン・リーブスを聴くのも本当に久し振りです。
以前聴いたのは1980年代の”Mtフジ・ジャズ・フェスティバル”の時だったか。
ボーカルに関してはまったくの浦島太郎状態になっています。
ダイアン・リーブスも濃いボーカリストだったですが大分やわらかくなっていました。
洗練されたスウィート&メロウな味わいが加わって、変化してきたと思います。
生粋のジャズ・ボーカル路線では生き残るのがむずかしかったかもしれませんね。
「十分な声量と音域、美しい歌声、歌の上手さは折り紙付き」と申し分のないヴォーカリストです。
何度もグラミーを取ったようですがそれも当然でしょう。
今作のバックも豪華絢爛、1曲目の「JUST MY IMAGINATION」でグッときてしまいました。
「う〜ん、素晴らしい」・・・最もライブで見てみたいヴォーカリストです。
今までパスしてしまったのが残念だったかも・・・去年の9月にも来日していました。
(中間系)
(378) JOHN BUNCH TRIO / PLAYS THE MUSIC OF IRVING BERLIN
john bunch(p), frank vignola(g), john webber(b),
guest:frank wess(fl)(2,3,5,7,9,12)
2008/ARBORS RECORDS/(輸入盤)
これはNさんのベスト3の一枚です。
ジョン・バンチ・トリオ&カルテットのアーヴィング・バーリン作品集です。
加えてフランク・ウエスがフルート1本で参加したのにも興味がありました。
ジョン・バンチ(p)が86歳、ゲストのフランク・ウエス(fl)も86歳という物凄いアルバムです。
70代ならまだしも80代半ばを過ぎてもこれだけの演奏が出来るというのはもうそれだけで賞賛に値します。
ジャズには自分の人生がそのまま出ますね。
たしかに若い時に比べれば肉体的な衰えを感じるのはやむを得ません。
ひいては肉体的な衰えは全ての衰えにも通じてきます。
ただ、その時の自分の感情をそのまま表現することに関してはまったく変わっていないんです。
いかに表現するかがジャズの重要な要素の一つです。
ここで聴く二人は年齢を重ねた分だけの深い味わいがあります。
ジョン・バンチはギター・トリオを率いてスイング感溢れるご機嫌な演奏を聴かせてくれました。
一方のフランク・ウエスは危うくてハラハラ、ドキドキしましたがスリルとサスペンスがありました。
カルテットでのベストは(9)「THEY SAY IT'S WONDERFUL」で、(7)「ISN'T THIS
A LOVELY DAY ?」も良かった。
年季の入ったプレイと軽快なスイング感、それを味わってもらいたいたアルバムです。
二人に敬意を表してのドラ盤入りになりました。
(中間系)
(377) CASSANDRA WILSON / LOVERLY
cassandra wilson(vo),
marvin sewell(g), jason moran(p), lonnie plaxico(b),
reginald veal(b), herlin riley(ds), lekan babalola(per), etc
2008/BLUE NOTE/(輸入盤)
今年は少しボーカルも聴こうということで選んだのがカサンドラ・ウィルソンの新譜です。
この前カサンドラの作品を買ったのは1999年の「Traveling Miles」だったか。
たしかデビュー・アルバムと2枚目も持っているはずですが、それでももう10年も前のことになります。
カサンドラはかなり濃いボーカルリストなのでいかにも妥協のないジャズ・ボーカルという感じがしました。
でもこのようなスタンダード作品集なら比較的聴き易いと思います。
今作はもちろんカサンドラがスタンダードをどう料理しているかが聴きどころになります。
当然ながら一筋縄ではいきません。
鬼才ジェイソン・モラン(p)とマーヴィン・セウエル(g)のプレイも聴きものです。
マーヴィン・セウエルは以前ゲイリー・トーマス(ts)のアルバムで聴いたことがありますが雰囲気ピッタリの起用。
ただ1曲のオリジナルの(8)「ARERE」って日本語なのかな。
多分、即興演奏だと思いますがこれが出色の出来で印象に残りました。
スタンダード集の中で1曲だけ異色なんだけど、ここに収録したくなったのもよく判ります。
(まじめ系)
(376) PATRICIA BARBER / THE COLE PORTER MIX
patricia barber(p,vo), chris potter(ts)(3,5,7,10,13), neal alger(g),
michael arnopol(b), eric montzka(ds), nate smith(per)(1,11,12)
2008/BLUE NOTE/(輸入盤)
このお正月はボーカルを聴く機会が多かったです。
去年は日本人プレイヤーでしたが今年はそれに加えてボーカルも聴いてみたいと思っています。
改めて感じたんですがボーカルはちょっと濃いめの味付けが私の好みのようです。
今作はピアノ&ボーカルのパトリシア・バーバーのコール・ポーター作品集です。
ディープ&ビターな世界・・・落ち着いてしっとりとした雰囲気がなんとも心地良いです。
ニール・アルガーのギターが実にいい味を出しています。
もう一つ聴きどころはもちろんクリス・ポッター(ts)のバッキングにあります。
一癖あるポッターの起用こそがこのアルバムのコンセプトと意気込みを表現していますね。
ここでも越智順子さん↓と同様に(5)「JUST ONE OF THOSE THINGS」が素晴らしいです。
奇しくも同じ曲が続いてしまいました・・・聴き比べも面白かったです。
自作の(2)「LATE AFTERNOON AND YOU」や(7)「C'EST MAGNIFIOUE」も良かった。
その他にも魅力のある曲が目白押しで琴線に触れました。
これからも長い間愛聴できるアルバムだと思っています。
(中間系)
(375) BRIAN BLADE & THE FELLOWSHIP BAND / SEASON OF CHANGES
brian blade(ds), jon cowherd(p,org), kurt rosenwinkel(g),
myron walden(as,bcl), melvin butler(ts), chris thomas(b)
2008/VERVE/(輸入盤)
注目すべきドラマー、ブライアン・ブレイドが率いる”Fellowship”の3枚目のアルバムです。
1枚目が1998年、2枚目が1999年なのでほぼ10年振りの新作になりました。
去年はあんまりこういったコンテンポラリー路線は聴く気にならなかったですが今年は聴きますよ。
1曲目の「RUBYLOU'S LULLABY」にこのアルバムの魅力が凝縮されていると思います。
牧歌的というか、広い大地を連想させるというか、北欧やカナダ、ECM的サウンドの影響を感じさせます。
今作の決め手はカート・ローゼンウィンケル(g)の参加にあると思います。
ローゼンウィンケルには参加するだけでサウンドががらりと変わってしまうほどの存在感があります。
ここでも独特の浮揚感とある種の気だるさを演出しています。
彼のリーダー・アルバムだとこれが濃厚に出過ぎるところがあるのでサイドのほうがいいかもしれません。
しかし、この気だるさがなんともいえず個性的で居心地がいいんです。
私はこのサウンドに浸ってはいつも眠くなってしまいます。
最後の(9)「OMNI」はジョン・コルトレーン・サウンドを彷彿とさせるもの。
コルトレーンはすでにスタンダードになっていて、みんなここを通り過ぎてきているんですね。
(まじめ系)
(374) JUNKO OCHI / JESSE
越智順子(vo),
ユキ・アリマサ(p)、大石学(p)、道下和彦(g)、
石橋敬一(b)、納浩一(b)、大坂昌彦(ds)、
小島勉(ds)、ヤヒロ・トモヒロ(per)、太田剣(sax)、他
2001/Village Records/VRCL-3024
越智順子(vo)さんを偲んで聴いています。
先月、ライブに行こうかと思って調べてみたら、去年の7月に肝臓ガンで亡くなったと知りました。
越智さんは大阪出身、ライブでファンの心をつかんで頭角を現してきた実力派です。
気取りがなくふっくらとして元気、いかにも”大阪のおばちゃん”という雰囲気を持っていました。
ゴスペル、ソウル系のジャズ・ボーカリストとして活躍を期待していたんですがとても残念です。
「まさかなぁー、まだ43歳ですよ」・・・信じられない・・・もっとライブに行っておけば良かった。
ジャズ・ボーカルは年齢を重ねるごとに良くなるのでまだまだこれからだと思っていました。
今作はメジャー・デビュー盤ということですが幅広い選曲になっています。
これを聴けば越智さんの全体像がほぼ分かると思います。
特に1曲目の「JUST ONE OF THOSE THINGS」が素晴らしいです。
このスイング感、このノリは何と表現したらいいのか、たった3分余りなのが惜しいほどです。
その他にも印象に残る曲が目白押しなので亡くなったのが残念でなりません。
このアルバムには越智さんの実力と魅力が凝縮されていると思います。
(くつろぎ系)
(373) HARVIE S & KENNY BARRON / NOW WAS THE TIME
harvie s(b), kenny barron(p)
2008/SAVANT RECORDS/SCD-2092/(輸入盤)
こちらのハービー・S(b)とケニー・バロン(p)のデュオはmiyukiさんとイムクさんのベスト3です。
ハービー・Sは初見、出自はラテン系ジャズのようです。
曲目はスタンダードからウエイン・ショーターまでの構成です。
1曲目にピアノとベースのデュオでは珍しいパーカーの「CONFIRMATION」で驚かされました。
(2)「ALL OR NOTHING AT ALL」〜(3)「BODY AND SOUL」の唄ものがいいですね。
自作の(4)「TAKE YOUR TIME」がベスト・トラックだと思います。
バラードの(6)「MIYAKO」が続くか・・・なぜショーターが選ばれたか明らかになる出来です。
ケニー・バロンは絶好調とみました・・・素晴らしいピアノ・・・文句なしの出来でしょう。
バロンが主役と思わせる部分があるけれど、それがハービー・Sの持ち味で最大の魅力なのかもしれません。
ひけらかさない控え目なベース・プレイには好感が持てます。
スイング感は十分、落ち着いていて居心地が良いアルバムなので時々は引っ張り出して聴きたくなると思う。
これからも長い間愛聴できる作品。
(中間系)
(372) KENNY WERNER & JENS SONDERGAARD / A TIME FOR LOVE
kenny werner(p), jens sondergaard(as)
2008/STUNT RECORDS/STUCD-08092(輸入盤)
このケニー・ワーナー(p)とイェンス・ソンダーゴー(as)の作品はmanaさんとGAKOさんのベスト3です。
存在は知っていましたがなんとなく買わなかったアルバム。
これは見事に1本取られました。
副題に”Play Ballads”とあるようにスタンダードのバラード集なんだけど、もうね、素晴らしいの一語です。
もしもこのアルバムを聴いていたら私もベスト3入りは間違いありませんでした。
二人の緊張感溢れるコラボレーションには唸るばかり、今年どころか近年でもベスト3を争うアルバムです。
「最近の愛聴盤」↓でケニー・ワーナーはつかみどころがなくイメージがわかないと書いたばかりです。
ところがこれを聴いてワーナーは根っからのロマンチストだと思いました。
そうでなければこれほどロマンチックなピアノはとてもじゃないが弾けません。
私の好みからいえばこれがワーナーのベスト・アルバムと言えます。
イェンス・ソンダーゴーの前作は「MORE PEPPER」というライブ盤でした。
多いにアート・ペッパーを意識した作品でしたが自由に吹いているこちらのほうが断然いいです。
二人のあまりの素晴らしさに(5)「OVER THE RAINBOW」では涙が出た。
いろいろ書いたけど、本当は何も言いたくない感じがします。
ただ、聴いていたいだけです。
(中間系)
(371) THE HARRY ALLEN - JOE COHN QUARTET /
STOMPIN' THE BLUES
harry allen(ts), joe cohn(g), joel forbes(b), chuck riggs(ds)
guests : john allred(tb), scott hamilton(ts)(1,4,8)
2008/ARBORS/ARCD-19353/(輸入盤)
私は最近このハリー・アレン&ジョー・コーン・カルテットにすっかりはまっています。
このカルテットは人気があるようでコンスタントにアルバムをリリースしています。
それも当然、これほど気持ち良くスイングさせてくれるグループはそうはありませんよ。
このカルテットを聴いて思い出すのはルビー・ブラフ(cl)&ジョージ・バーンズ(g)・カルテットです。
1970年代にスイング感溢れるプレイと心地良いサウンドで人気を博したのグループです
こういった聴き易くて居心地が良いジャズはいつの時代でも一定の評価を得るものですね。
ここでも抜群のスイング感でホントに気持ちがいいです。
トロンボーンの効果が抜群・・・サックス、ギターの音色が絶妙にマッチしてたまりません。
テンポのある曲はもちろんですがバラードの(4)「MY OLD FLAME」もいいです。
クインシー・ジョーンズの(7)「I ONLY HAVE EYES FOR YOU」はもう最高だった。
スコット・ハミルトン(ts)も3曲に参加しています。
”スイングがなければ意味がない”・・・自然に身体が揺れてくる感覚を楽しみましょう。
(くつろぎ系)
(370) JAVON JACKSON QUARTET / ONCE UPON A MELODY
javon jackson(ts),
eric reed(p), corcoran holt(b), billy drummond(ds)
2008/PALMETTO/PM-2136(輸入盤)
気になるテナー・サックス奏者の一人、ジャヴォン・ジャクソンの新作です。
購入した前2作がファンク・ジャズ路線だったので久し振りのストレート・アヘッドなジャズ作品になりました。
やわらかでまろやかな音色、超クールな奏法はメロディ重視のアルバム作りだと思います。
メンバーを見るとエリック・リード(p)の起用が嬉しい、ここでも刺激的な演奏を繰り広げています。
ビリー・ドラモンド(ds)との付き合いは長く、ベースのコーコラン・ホルトは新人だと思います。
メロディ重視のコンセプトがしっかりと生かされたアルバムです。
取り上げられた曲を見ると彼の心境が手に取るように分かるような気がします。
(1)ウエイン・ショーター(ts)は彼がジャズ・メッセンジャーズ時代によく演奏したと思われます。
(3)ソニー・ロリンズ(ts)はジャヴォンの神様、(8)マッコイ・タイナー(p)は親分的な存在かな。
バラードの(5)「MY ONE AND ONLY LOVE」はテナー・サックスにはピッタリの選曲です。
(2)「WILL YOU STILL BE MINE」や(7)「THE IN CROWD」にも思い入れがあるんでしょうね。
ジャヴォンの並々ならぬ実力を現したアルバムで楽しめると思います。
特に(5)「MY ONE AND ONLY LOVE」や(9)「LIKE A STAR」のバラード表現が聴きどころ。
適度な刺激のテナーのワン・ホーン・カルテットは聴きやすく落ち着いた大人のジャズとも言えます。
(中間系)
(369) AKIO SASAKI TRIO & QUINTET / FLY BY NIGHT
佐々木昭雄(org), 岡安芳明(g), 高橋徹(ds)
松島啓之(tp), 岡淳(ts)
2007/What's New Records/WNCJ-2179
日本のオルガン・ジャズの決定盤です。
去年のSさんのベスト3でしたが遅ればせながら入手しました。
聞きしに優る出来栄えのアルバムです。
佐々木昭雄さんを聴いたことがなかったのでこれほどのオルガン奏者が日本にもいたのかと驚かされました。
オルガンのベーシックなフォーマットはオルガン、ギター、ドラムスのトリオですね。
ここに松島啓之(tp)さんと岡淳(ts)さんのフロント2管を配したジャズの王道クインテットです。
なんといっても素晴らしかったのは自作のブルースの(5)「NIGHTCAP」でした。
全員のソロがピタリと決まって、ブルージー&グルービーな雰囲気がもうたまりません。
正直、この1曲のために買っても惜しくないと思いました。
続く(7)「HAVE YOU MET MISS JONES ?」、(8)「LOVE WALKED IN」はトリオで演奏されますが、
ここでの佐々木さんと岡安芳明(g)さんのコンビネーションが抜群で背筋がゾクゾクっとしました。
しっとりと支える高橋徹(ds)さんもまたいいです。
(くつろぎ系)
(368) SCOTT HAMILTON QUARTET / ACROSS THE TRACKS
scott hamilton(ts),
duke robillard(g), gene ludwig(org), chuck riggs(ds)
guests:doug james(bs)
2008/Concord/(輸入盤)
ハリー・アレン(ts)とエリック・アレキサンダー(ts)の話題になれば次はスコット・ハミルトンになるかな。
順当というか、実に分かり易い展開になりました。
スコット・ハミルトンはハリーやエリックとの共演盤もあって相通じることも多く、二人が受けた影響も大きいと思います。
こうしてみるとスイング系のテナー奏者としてのハミルトンが果たした役割はとても重要だったですね。
ハミルトンは1970年代の後半、フュージョンとフリージャズに行き詰まりを感じる中で颯爽とデビューしてきました。
その当時、ベン・ウエブスター系の原点回帰のスイング・テナーはとても新鮮に聴こえたものです。
停滞していた日本ジャズ界に一大センセーションを巻き起こしたのをよく覚えています。
ウイントン・マルサリス(tp)がデビューした時もそんな感じがしたのでいかに反響が大きかったか分かると思います。
以来、30年余り、終始一貫自分のスタイルを貫き通しジャズ・シーンに確固たる地位を築いています。
間違いなく「ワン・アンド・オンリーの世界」を持っているテナー・マスターの一人になりました。
ここではオルガン・トリオがバックということでよりハミルトンの魅力が増幅されたと思います。
ハミルトンは白人ですが私は黒い感覚を持っています。
ソウルフルとはまた違う、なんというかアーシーで下卑た味付けがあるというか、そういう感じがします。
表現がむずかしいですが、私にとってはそれがとても魅力的なところなんです。
(9)「MEMORIES OF YOU」は別にして選曲からもそれがうかがえると思いますがいかがかな。
(3)「SAVE YOUR LOVE FOR ME」のスロー・バラードなんて涙が出そう・・・。
(くつろぎ系)
(367) MONTY ALEXANDER TRIO / IN TOKYO
monty alexander(p), andy simpkins(b), frank gant(ds)
2004(1979Rec)/PABLO/(輸入盤)
モンティ・アレキサンダーは好きなピアニストです。
1979年の初来日コンサートを東京芝の郵便貯金ホールに見に行きました。
実はこのアルバムのことをジャズ仲間のNさんから聞いた時は不思議に思いました。
私はこの「In Tokyo」を持っていなかったのです。
ライブ盤ならば「見逃すはずないのになぁー、なぜだろう」とずっと考えていました。
>(「In Tokyo」はスタジオ録音なんですけど、日本でのライヴ録音は残ってるんでしょうか」)
このNさんのコメントで納得しました。
多分その時にはスタジオ盤なので急ぐことはないと思って、そのまま忘れてしまったアルバムだろうと思います。
早速、注文して入手しました。
今作は録音が個性的・・・スイング感溢れる強烈なピアノとゴツゴツとしたベース音が生々しく迫ってきます
スタジオ録音でもすぐ目の前で演奏しているような感じでまるでライブ盤のようです。
それで先日の「新作アンプ試聴会」にも持って行って聴かせてもらいました。
CDには(9)、(10)、(11)がボーナス・トラックとして追加されていて、魅力ある曲目からも見逃せないところです。
コンサートでは モンティの歌も聴きたかったけれどこの時は歌ってくれませんでした。
若い頃はジャズ・クラブで弾き語りをやっていたみたいでキングコールみたいな感じです。
来日記念盤では1曲披露してくれていたのでライブでもてっきり歌ってくれるものと思っていました。
聴けなくてガッカリしたのを今でもよく覚えています。
モンティは「Live! Montreux Alexander」(1976)で大ブレイクして一躍ジャズ・シーンの桧舞台に登場してきました。
モントリューからはミシェル・ペトルチアーニやゴンザロ・ルバルカバも同じ道を通っていますね。
カムバック派ではレイ・ブライアントがつとに有名です。
(中間系)
(366) THE HARRY ALLEN - JOE COHN QUARTET /
GUYS AND DOLLS
harry allen(ts), joe cohn(g), joel forbes(b), chuck riggs(ds)
special guests:rebecca kilgore(vo), eddie erickson(vo)
2007/ARBORS RECORDS/ARCD-19354(輸入盤)
なんだか急にハリー・アレン(ts)が聴きたくなって購入しました。
ことテクニシャンということに関してはハリーに並ぶものはいないでしょうね。
現役では最も達者なテナー・サックス奏者だと思っています。
レスター・ヤング〜スタン・ゲッツを受け継ぐプレイヤーとしても重要な位置を占めています。
加えてクラシカルなスイング・ジャズの感覚も持ち合わせています。
ソニー・ロリンズ〜ジョン・コルトーレーン系のエリック・アレキサンダーとは対照的です。
ハリーが42歳、エリックが40歳で年齢的にも近くこの二人が主流派テナーを引っ張っていく存在になると思います。
さて今作はブロードウエイで何度も上演されている「Guys And Dolls」の作品集です。
1950年代が初演ですがストーリーも面白く大人気のミュージカル、作詞作曲はフランク・レッサーです。
マーロン・ブランド、フランク・シナトラ主演で「野郎どもと女達」の題名で映画化されています。
CDを聴いていたらまた映画を見たくなってしまいましたよ。
ギタリストのジョー・コーンは著名なテナー奏者のアル・コーンの息子さんです。
ゲストの二人のヴォーカリストについてはまったく知りませんでした。
でも、とてもいい雰囲気なので引き込まれました。
エディー・エリクソンの本職はバンジョー、ギター奏者のようですがボーカルも味わいがあります。
ハリーのバッキングがまた素晴らしく惚れ惚れとしました。
「LUCK BE A LADY」はもう最高。
このジャケットには孫娘が興味津々、デザインに惹かれるところがあるのかもしれませんね。
(くつろぎ系)
(365) YUSUKE INOUE TRIO "Z'S" / STRAIGHT AHEAD
井上陽介(b), 多田誠司(as,ss,fl), 納谷嘉彦(P)
ゲスト:大阪昌彦(ds)(2,3,5,8,9)
2007/M&I JAZZ/MYCJ-30438
井上陽介(b)さんが率いるドラムレス・トリオの「Z's」のアルバムです。
名実共に現在の日本のNO.1ベーシストにアルトの多田誠司さんとピアノの納谷嘉彦さんの組み合わせ。
曲によって大坂昌彦(ds)さんがゲスト出演していて、このトリオ編成にこだわらないのも好ましいです。
表題通り「ストレート・アヘッド」なスタンダード・ジャズが聴けます。
井上さんはあちこちのセッションに引っ張りだこなのでライブでは出会う機会が多いです。
抜群のビート感、リズム感、素早いレスポンスを可能にする驚異的なテクニックを持っています。
私はオスカー・ピーターソン・トリオの名ベーシスト、レイ・ブラウン〜ニールス・ペデルセンをイメージしています。
そういえば最近、ベーシストではこのペデルセンとロン・カーターをよく聴いています。
実力者の多田さん、納谷さんも好演していて安定感のある仕上がりになっています。
日本のジャズのレベルの高さを実感できる一枚です。
(中間系)
(364) FRANCO CERRI QUARTET
/ E VENIA DA CAMPI CHE DI CERRI SENTIA
franco cerri(g),
alberto gurrisi(org), mattia magatelli(b), riccardo tosi(ds)
2008/RED RECORDS/(輸入盤)
今週は図らずもベテラン二人の選択になりました。
秋も深まるなんとなく物悲しい季節には落ち着いた雰囲気のジャズが聴きたくなります。
こちらはイタリア・ジャズ界の重鎮、フランコ・チェリ(g)の新作です。
いぶし銀の如くの味わい深いプレイはこの時期にはぴったりだと思います。
バックにオルガンを起用しているので心地良いグルーブ感もあります。
このオルガンは面白いと思いました。
ソウルフルなアメリカのそれとは一線を画した薄味のスマートな演奏で新鮮です。
ジャズ・スタンダード中心の選曲、ちょうどいい案配なのでゆったりと浸ることが出来ます。
(くつろぎ系)
(363) KENNY WERNER TRIO / WITH A SONG IN MY HEART
kenny werner(p), johannes weidenmueller(b), ari hoenig(ds)
2008/Venus Records/VHCD-1013
ケニー・ワーナー(p)は興味が尽きない、気になるピアニストです。
普通は聴いているとイメージが固まってくるものですがこのワーナーだけはどうにもつかみ所がありません。
それでついまた聴いてみたくなります。
結果、かなりの枚数を持っていますが未だにイメージが固まらないです。
独特の感性と表現力を持っていてユニークなアプローチを見せてくれます。
このスタンダード作品集でも同様の感想を持ちました。
引き出しが多くてとても一筋縄ではいかない展開です。
聴く人にイメージを固まらせないのは、ワーナーの方が一枚も二枚も上手かも知れませんね。
このトリオは2000年代に入ってからのレギュラー・トリオといえるものです。
(まじめ系)
(362) TAKAO OGAWA & KEIICHI YOSHIDA / INTO SOMEWHERE
小川高生(as,ss), 吉田桂一(p)
2002/What's New Records/WNCJ-2110
先日、ジャズ仲間のGさんが主催した「新アンプ試聴会」に持参したアルバムです。
小川高生(as)さんと吉田桂一(p)さんのデュオはじっくりと聴くには最適だと思いました。
まるでライブ会場にいるような感じで、すぐそこで演奏しているように聴こえます。
参加したみなさんの評判も上々でした。
最近私はデュオ作品を聴くことが多くなっていますがプレイヤー同士の濃密なコラボレーションが魅力です。
小川さんの卓越した表現力と吉田さんの絶妙なピアノ・タッチが織りなす今作もまた素晴らしい一枚です。
(中間系)
(361) ALEX RIEL QUARTET / LIVE AT STARS
alex riel(ds),
charlie mariano(as), jakob karlzon(p), jesper lundgaard(b),
2008/Cowbell Music/#40(輸入盤)
ここでの興味はチャーリー・マリアーノ(as)とヤコブ・カールゾン(p)にありました。
マリアーノはなんと録音時は83歳ですよ。
とても信じられないほどの溌剌としたプレイを展開しています。
微妙に音をずらすところに独特の表現力を感じました。
加齢と共に益々尖がって刺激的、挑戦的になったきたのではないかと思います。
80を過ぎてからの精力的な活動には凄いとしか言いようがありません。
マリアーノは20歳でデビュー、27歳で初リーダー・アルバムを吹き込んでいます。
以来、65年間の長きに渡り第一線で活躍していることになります。
アルト奏者ではリー・コニッツ(81歳)、フィル・ウッズ(77歳)、フランク・モーガン(75歳)と続いています。
コニッツより年上だったとはちょっと驚きました。
アレックス・リール(ds)とイェスパー・ルンゴー(b)はヨーロッパを代表するリズム・セクションです。
加えてヤコブ・カールゾンがまた素晴らしいです。
このピアノ・トリオの魅力は(3)「ALL THE THINGS YOU ARE」で十分に堪能することができました。
選曲はお馴染みのスタンダードばかりですが甘さは控え目、極上のジャズ・アルバムに仕上がっています。
(中間系)