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Dragon's Jazz Corner

今週のジャケットのコメント4


NO.701〜以降。

*10周年を記念したNO.442以降のドラ盤紹介ではジャケットも掲載しています。(2008/03/30)






(800) 渋谷毅 & 松風鉱一 / BLUE BLACKの階段
渋谷毅(p)、松風鉱一(as, ts ,bs, fl, bcl,bamboo sax)、
2009/CARCO/

1 Shallow Dream
2 Alone's Blues
3 Requiem
4 Trash For Lucky 7th
5 Keep Straight On (Blue For Naoko)
6 Sunday Afternoon
7 MD Lady
8 ずっと二人で
9 TheLady Of Swan
10 Blue Blackの階段

二人のコラボレーションが素晴らしい。
ゆったりと穏やかに時間が流れていきます。

「レビュー時のコメント」
先日、ライブ(ライブ・レポート参照)を見た時にこのアルバムを購入しました。
全曲、松風さんのオリジナル。
渋谷&松風のデュオは超個性的で相性バッチリ・・・・・もうね、文句なしに素晴らしいです。
実はこの二人の魅力はライブでなければ到底味わうことはできないと思っていたんです。
でも、これは間違っていました。
二人の濃密で深遠なロマンチックな世界はこのCDでも十二分に味わうことができます。
涙が出そうになりました。・・・・・実際、言葉が浮かばないほどいいんです。
根っこには演歌の心が・・・日本人で良かった・・・。

(中間系)

2015/03/22



(799) HIROMI KASUGA TRIO & QUINTET / NEW YORK CALLIN'
春日宏美(p), marco panascia(b), pete vannostrand(ds)
joe magnarelli(tp,flh)(1,3,6,9), mike dirubbo(as,ss)(3,9,6)
2008/Hiromi Kasuga/

1 Relaxin'at Camarillo (Parker)
2 Loss Of Love (Mancini)
3 Third Relations
4 Raindraops
5 Cleopatra's Dream (Powell)
6 Ripple
7 Ms.Butterfly
8 Monk's Dance
9 Park Avenue South
10 Honoka's Lullaby

きっちりとした端正なジャズが聴けました。
クリアな音色もいいですよ。
(10)「Honoka's Lullaby」は赤ちゃんの声も入っていて癒されます。

「レビュー時のコメント」
春日宏美(p)さんはニューヨーク在住、現在2009年日本・ツアーが行なわれています。
先日、その初日のトリオのライブに行ってきました。
共演メンバーは安東昇(b)さんと池長一美(ds)さんという興味深いものでした。
スタンダードとオリジナルをまじえてのライブでしたが、正直、ちょっと物足りない感じがしました。
それはなぜか?
初日の上、まだ題名の付いていない新曲も何曲が演奏されたので手探り状態にあったんです。
いきなりの新曲はきついのではと思いましたがこのCDを聴いて納得しました。
オリジナルが7曲にジャズ・スタンダードが3曲の構成です。
春日さんの最大の魅力はコンポーザー&アレンジャーの才能だと思います。

CDでどんなスタンダードを演奏しているかによってそのプレイヤーの音楽性がある程度つかめます。
ここではチャーリー・パーカー(as)とバド・パウエル(p)のビ・バップの立役者の二人と
ヘンリー・マンシーニ(com,arr,p)の映画音楽が演奏されていました。
つまり、春日さんの中にはビ・バップと美しい映画シーンがあるわけですね。
自己のトリオにジョー・マグナレリ(tp)とマイク・ディルボ(as)がゲストで参加しています。
良かったのは(3)、(6)、(9)の2管編成のハーモニーとアンサンブルです。
特に(9)「PARK AVENUE SOUTH」は親しみやすいテーマ、(5)「クレオパトラの夢」の流れも楽しかった。
中々良く出来ている作品だと思うし、作曲とアレンジの上手さと相まって心に響くものがありました。

(くつろぎ系)

2015/03/16



(798) KENT LANGTHALER SEVEN / HEAD IN
oliver kent(p), uli langthaler(b), mario gonzi(ds),
jorg engels(tp), thomas kugi(bs), johannes enders(ts), johannes herrlich(tb)
2009/ATS Records/

1 Head In
2 Dolma
3 Jhelum
4 Hippadelphia (Zawinul)
5 The Chill
6 Morgenatimmung
7 High Blues
8 Blood Count (Strayhorn)
9 Blues In The Closet (Pettiford)

分厚いアンサンブルが聴けました。
4管編成は新鮮な感覚です。
ペティフォード(b)の名曲、(9)「Blues In The Closet」はランザラーの骨太ベースが唸る。

「レビュー時のコメント」
ドイツ系オリバー・ケント(p)とユリ・ランザラー(b)の双頭セプテットのアルバムです。
オリジナルが5曲にジョー・ザビヌル、ビリー・ストレイホーン、オスカー・ペティフォードが取り上げられています。
4管編成の演奏はめったに聴くことはないのでしごく新鮮な感じがしました。
ここではトランペットが効果的な役割、軽快でサウンドがぐっと引き締まります。
以前、ケントの作品を買ったことがありますがその時もヨハネス・エンダース(ts)が共演していました。
4管ですが管はあくまで脇役で明らかに主役はピアノ・トリオだと思います。
分厚いアンサンブルをバックにオリバー・ケントのピアノが疾走するという趣向です。
今作はなんといってもケントのピアノが光る一枚です。
ベスト・トラックはザビヌルの(4)「HIPPADELHIA」か。

(中間系

2015/03/08



(797) YUTAKA SHIINA QUARTET / WALKIN' IN THE CLOUDS
椎名豊(p),
rodney whitaker(b), 広瀬潤次(ds), tim armacost(ts),
本川悠平(b)(4)
2008/Scene-a Music/

1 Joy Of Spring!
2 Tuck-A-Way
3 Walkin' In The Clouds
4 Bitter Sweet
5 In The Dusk
6 Tuck-A-Way
7 Where Or When
8 UBS

椎名豊さんのダイナミックでスケールの大きいピアノが聴けました。
(2)と(6)は同じ曲ですが前者はトリオで後者はカルテットで演奏されます。
(4)に参加の本川悠平さんは最近ライブで見る機会が多い。
オーソドックスでよくスイングするベーシストです。

「レビュー時のコメント」
椎名豊さんはゆったりとして雄大なピアノ・プレイが最大の魅力です。
ルーツはやはりマッコイ・タイナー(p)だと思います。
今作は自身のレーベルの第一作になるものです。
その思い入れも気合も十二分にそそぎ込んだ意欲的なアルバムに仕上がりました。
椎名さんにとってこれが8年ぶりの新作なんてちょっと信じられない思いです。
アメリカに乗り込んでの録音、ロドニー・ウィテカー(b)とティム・アマコスト(ts)を起用しています。
広瀬潤次(ds)さんも元気一杯でその張り切りぶりが伝わってきました。
収録曲の8曲は少ないので1曲、1曲が長く、その分思い切ったソロ・スペースが取れました。
全体を通してブンブンと黒くてまとわりつくような感覚のロドニーの存在感が光ります。
表題曲の(3)「WALKIN' IN THE CLOUDS」は親しみやすい印象的なテーマを持っています。
(4)「BITTER SWEET」での二人のベーシストの競演も面白かったです。
カルテットで演奏された(6)「TUCK-A-WAY」はアルバム中もっともスリリングな展開になりました。
イマジネーション溢れるプレイは今作のベスト・トラックか。
ボーナス・トラックとして付け加えられた(8)「UBS」も聴き応えがありました。
打楽器風なピアノ・タッチが強烈でこちらをベストに選ぶ人も多いでしょうね。

(中間系)

2015/03/01



(796) ERIC REED TRIO / STAND !
eric reed(p), rodney whitaker(b), willie jones V(ds)
2009/WJ3 RECORDS/

1 Stand !
2 Pursuit Of Peace
3 Prayer
4 Git'cha Shout On
5 Gratitude
6 You Are There
7 New Morning
8 Adoracao(Adoration)
9 Like A Thief In The Night
10 A Love Divine
11 Everything Tha Has Breath

1曲目の「To Joy」はいきなりのアルト・サックスのソロ・プレイです。
近藤さんの実力の程が明らかでクリアな音色が飛び出してきました。
バックのメンバーの好プレイと共に充実した作品です。

「レビュー時のコメント」
久し振りにこれでもか、これでもかと力で押してくるピアノ・トリオに出会いました。
このエリック・リード(p)の新作は文句なしにいいです。
テーマは”神に捧ぐ”、全曲彼自身のオリジナルで渾身のアルバムだと思います。
(1)「STAND !」や(2)「PRAYER」はマッコイ・タイナー(p)を彷彿とさせるスケールの大きさがあります。
エリックのルーツはここにあったのかとの思いを強くしました。
(4)「GIT'CHA SHOUT ON」のスピード感、(5)GRATITUDE」の美しさにはグイと引きこまれました。
(10)「EVERYTHING THAT HAS BREATH」の心地良いノリもお気に入りです。
現在のエリックの音楽性が全て網羅されているといっても過言ではないと思います。
いかにもアメリカ的でゴスペル、ブルース&ソウルが根底にあるし、最高傑作になるかもしれません。
ロドニー・ウィテカーの黒くベタベタとまとわりつくようなベースもたまりません。
プロデューサーはウィリー・ジョーンズV(ds)でエリック・リードの魅力を引き出しました。
力強く、意欲的で刺激的なピアノ・トリオ作品になっています。

(中間系)

2015/02/22



(795) KAZUHIKO KONDO QUARTET / SUBSTANCE
近藤和彦(as,ss)、
今泉正明(p), 上村信(b)、大坂昌彦(ds)、
小曽根真(P)(2,5,9,11)、岡崎好朗(tp)(6)
2009/55Records/


1 To Joy
2 From Doctone
3 Skeptical Thinking
4 Under The Dim Light
5 El Cantarro De Mallorca
6 Unexpected
7 E.Z Pass
8 Swallow's Dance
9 ADay In Delhi
10 Black Beans
11 The Sixteenth Night

1曲目の「To Joy」はいきなりのアルト・サックスのソロ・プレイです。
近藤さんの実力の程が明らかでクリアな音色が飛び出してきました。
バックのメンバーの好プレイと共に充実した作品です。

「レビュー時のコメント」
近藤和彦(as,ss)さんの初リーダー・アルバムが出ました。
近藤さんはよく知られたサックス奏者でそれこそあちこちのバンドのメンバーに名前が連なっています。
すでに何枚か出していると思っていたのでこれが初リーダー・アルバムと聞いて意外な感じがしました。
プロデュースは小曽根真(p)さんでここでも4曲に参加しています。
先日、横浜までCD発売記念ライブ(ライブ・レポート参照)に出かけたけど良かったです。
ライブ会場で購入したので近藤さんにサインをお願いしました。

メンバーも魅力的、曲目は全て彼自身のオリジナルで固めて意欲的な作品です。
何曲かスタンダードを入れるかどうか、迷ったと思いますがここにこだわりを感じました。
曲想も幅広くリズムも変化に富んでいるので現在の近藤さんの全貌を十分に伝えていると思います。
音楽性も豊かで作曲能力も非凡です。
ライブでもそうだったけどフラメンコの(5)「EL CANTARRO DE MALLORCA」が新鮮でした。
訥々とした話しっぷりでライブ会場の笑いを誘ったのは(4)「UNDER THE DIM LIGHT」のことでした。
これを聴いたある人から「平成のレフト・アローン」(↓注参照)との感想を言われたそうです。
これには共演者も苦笑、似ているので私も「なるほどなぁー」と思いました。
(2)「FROM DOCTONE」は大好きだった故ケニー・カークランド(p)に捧げた曲。
それこそ今泉正明(p)さんはピッタリの存在でしょうね。
1曲だけ岡崎好朗(tp)さんが(6)「UNEXPECTED」に参加しています。
ニューヨークの爆破テロの印象を綴ったもので最初からトランペットを意識して書いた曲だそうです。
今作品はアップ・テンポのノリもバラードの表現力も自在で近藤さんの実力がフルに発揮されています。

バックのメンバーは小曽根さんを始めとして今泉さん、上村信(b)さん、大坂昌彦(ds)です。
今泉さんのリズム感溢れる力強いタッチ、上村さんのベースは堅実で安定感十分、
大坂さんのフレキシブルでメリハリのあるドラムスはこのグループの充実度を物語っています。

注:レフト・アローン
マル・ウォルドロン(p)が不世出の歌手ビリー・ホリデイに捧げた名曲。
 ジャッキー・マクリーン(as)の切ないまでのアルト・プレイに泣けます。

(中間系)

2015/02/15



(794) MISHA PIATIGORSKY TRIO / 17 ROOMS
misha piatigorsky(p), boris kozlov(b), ari hoenig(ds)
2009/MISHAMUSIC

1 Open Window
2 17 Rooms
3 Blackfire
4 Ballade Of Edward VS .Edward Opus 23
5 Waltz For Ayelet
6 United
7 Kindred Spirit
8 Blues For Fools
9 Turkish Folk Song
10 Imagine

ミシャはテクニシャンです。
その分、弾き過ぎるところがあるのでやや情緒には欠けるかもしれません。

「レビュー時のコメント」
ミシャ・ピエティグルスキー(p)は「ドラ流目立たないけどいいアルバム」の(386)で紹介しました。
それは1997年の録音だったのでもう12年前になります。
その時は元気溌剌だったけど、現在はどんな感じになっているのか、興味深く聴いてみました。
2009年1月録音、今作も自身のレーベルなので自主制作盤です。
やっぱり12年間は長いので技術的にはもちろんのこと精神面での落ち着きが顕著です。
全10曲はじっくりと考えて取り組んだ意欲的な作品だと思います。
ボリス・コズロフ(b)とアリ・ホーニグ(ds)のメンバーも魅力です。
マーチ、バロック、フラメンコ、バラード、ワルツ、ブルース、トルコ風あり。
音楽性もリズムも実に多彩、色々な表情を見せてくれたので楽しめました。
展開が面白かったのはフラメンコ調の(3)「BLACKFIRE」で一番の長丁場の8分です。
私的には美しいメロディ・ラインを持つ曲が良かったです。
そういう意味で(4)、(5)からウェイン・ショーターの(6)への流れが気に入りました。
一枚を飽きずに聴き通せるけど反面色々やり過ぎてややまとまりを欠いた感もあります。

(中間系)

2015/02/08



(793) SATOSHI KOSUGI QUINTET / BASS ON TIMES
小杉敏(b)、
岡崎好朗(tp), 橋本信二g)、元岡一英(p)、江藤良人(ds)、
2009/Pax Box Press/


1 Monk's Dream
2 Vierd Blues
3 No Moon At All
4 Chelsea Bridge
5 The Fool On The Hill
6 The Best Thing For You Would Be Me
7 Little Journey
8 There Goes My Heart
9 P.S.I Love You
10 Filthy McNasty

つくづく面白い選曲だと思いました。
「P.S. I Love You」のシットリとした味わいが素晴らしい。
橋本信二(g)さんのオリジナル「Little Journey」は名曲です。
岡崎好朗(tp)さんと江藤良人(ds)さんの若手二人の存在感にも注目しました。

「レビュー時のコメント」
ベテラン・ベーシストの小杉敏さんの初リーダー・アルバムが出ました。
アルバムを出すと聞いた時にまずはメンバー構成に興味を持ちました。
小杉さん、橋本さん、元岡さんの団塊の世代に30代でバリバリの岡崎さん、江藤さんの組み合わせです。

収録曲は上記の通り、 まさに満を持したアルバムで選曲も実によく考えられています。
こだわりが感じられる幅広い選曲は小杉さんの音楽性を余すところなく伝えていると思います。
セロニアス・モンクやマイルス・デイビス、ビートルズも世代的には外せないところです。
(3)「No Moon At All」は憎い選曲。
唯一のオリジナル(7)「Little Journey」は盟友の橋本信二さんの作曲です。
(8)「There Gose My Heart」では小杉さんの口笛によるテーマが聴けました。
ラストのホレス・シルバーの(10)「Filthy McNasty」はドンピシャの選曲だと思います。
ノリのいいファンキー&グルービーな演奏はこのグループの大きな特徴になっています。
ただ残念だったのはボサノバがなかったことかな。
ライブではジョビンのボサノバを元岡さんとのデュオで聴かせてくれました。
これがすごく印象的だったので外れたのは惜しかったです。
重量級メンバーによる黒い演奏・・・このグループの真髄はライブ(ライブ・レポート参照)にあるかもしれませんね。

最後にもう一つ、このCDの装丁が素晴らしいんです。
こんなに丁寧に作られたCDアルバムは見たことがありません。
実際に手に取ってみたら驚くと思いますよ。

(中間系)

2015/02/01



(792) MAGNUS HJORTH TRIO / OLD NEW BORROWED BLUE
magnus hjorth(p), peter eldh(b), snorre kirk(ds)
2009/STUNT RECORDS/

1 Gloose
2 Ballroom Steps
3 Let's Face Musicx And Dance
4 Good Friday
5 The Mistress
6 Gumbo
7 Stomping At The Savoy
8 Barber Rhett
9 Sunday Service
10 Madhouse

マグナス・ヨルトの登場に驚嘆してからもう5年が過ぎてしまいました。
本当に月日の経つのが早いです。
聴き直してみてもやっぱり素晴らしいと思う。

「レビュー時のコメント」
デンマークのマグナス・ヨルト(p)とペーター・エルド(b)はライブ(ライブ・レポート参照)で見たばかりです。
このCDの存在は知っていましたがライブに行くことが決まっていたので我慢していました。
特別深い理由もないんだけど先入観なしにライブで聴いたほうがいいかなと思いました。
オリジナルはヨリスが7曲、スノーレ・キルク(ds)が1曲、その他にスタンダードが2曲という構成です。
オリジナルはもちろんいいですがスタンダードも刺激的で生き生きとした新鮮な感覚で蘇ってきました。
(1)〜(2)〜(3)の流れで一気にグイと引き込まれてしまうことは請け合います。

ライブと同様に独特の間合いとタイミングはここでも生きていて、なんかワクワクするものがありました。
テンポやリズム、フレーズを聴いていても何が出てくるか分からない、意外性があります。
こういう感じ方は大事ですね。
ヨルトは絶妙なリズム感と切れのあるタッチ、美しい音色とさらにそれを可能にするテクニックの持ち主です。
清流が流れるかの如く清冽で爽やかなフレージングが満ち溢れて心地良いです。
加えてライブではアグレッシブにグイグイと突っ走る迫力満点のプレイも聴かせてくれました。
流麗、華麗、静謐、美しいといったようなヨーロッパ・ピアノの伝統を超越したスケールの大きさを感じました。
ヨルトもエルドも25歳、多分キルク(ds)も同年代だと思います。
若さは宝もの、若さには大きな可能性を秘めているのでそれだけでも将来が楽しみです。
このトリオの怖いもなしの思いっきりのいいプレイはいかにも若さの特権でしょう。
ここしばらくはこういう感覚を忘れていたのですごく新鮮だったです。
最近は若くても老成した感じのプレイヤーが多いのでこれがもの凄い魅力になっています。

ただ、47分弱の収録時間は短いので少々物足りません。
もうあと2、3曲聴ければもっと良かったです。

(中間系)

2015/01/18



(791) RODNEY JONES QUARTET / DREAMS AND STORIES
rodney jones(g),
kenny kirkland(p), marc johnson(b), jeff"tain"watts(ds)
2005(Rec ?)/SAVANT/

1 Star Eyes
2 Leana' s Song
3 Happy Blue
4 The Song Is You
5 Blue Day's Blue Dreams
6 Five For The Duck
7 While We Dream
8 Summertime
9 Serena
10 No Time For The Blues
11 Blues When You Need Them
12 Road Song

ロドニー・ジョーンズ(g)のブルース色溢れる粘っこいギター・プレイが聴けます。
何といっても早世したケニー・カークランド(p)の参加が貴重です。
個性的で非凡な演奏・・・つくづく惜しい人材を亡くしたと思います。

「レビュー時のコメント」
先日紹介した近藤和彦(as)さんのアルバムとライブでケニー・カークランド(p)の話題が出ました。
カークランドは「DOCTONE」と呼ばれていたようですね。
それで聴きたくなって何かないかなと探して選んだのがこのアルバムです。
2005年の「みんなのベスト3」でMさんが挙げていた作品です。

以前、最初に聴いた時に「へぇー、こんな演奏が埋もれていたのか・・・」と思いました。
カークランドのピアノがいいのでここでも惜しい人を亡くしました。
今作は2005年発売ですがカークランドは1998年に亡くなっているのでその前の録音です。
でも録音データがまったく残っていなくて多分1985年頃じゃないかということです。
それもマーク・ジョンソン(b)の日記だか記憶だかの頼りない話でハッキリしたことは分かりません。
でも内容も録音もいいし、きちんと企画して収録されたものだと思います。
いずれにせよ、こうして陽の目を見たことは幸運でした。

もちろん、ここではロドニー・ジョーンズ(g)のプレイも聴きどころになります。
ロドニーは1990年代になるとソウル・ファンキー路線に行くのでまだこの頃は進路を模索中かな。
師匠はジョン・ルイス(p)で約2年間、ニューヨークでじっくりと指導してもらったとありました。
自身のオリジナルが8曲にジャズ・スタンダードが4曲の全12曲は意欲的な作品になっています。
最後にウエス・モンゴメリー(g)の曲が入っているのがミソ、心の師匠はウエスだったんでしょうね。
カークランドとの付き合いは10代からだそうです。
他のメンバーもマーク・ジョンソン(b)にジェフ・ワッツ(ds)とくれば魅力十分で絶好調のプレイを聴かせてくれました。
カークランドの参加はもちろんのこと、興味あるメンバー構成からも貴重盤の一枚といえます。

(中間系)

2015/01/11



(790) ERIC ALEXANDER QUARTET / IT'S ALL IN THE GAME
eric alexander(ts),
harold mabern(p), nat reeves(b), joe farnsworth(ds)
2006/HighNote/

1 Where Or When
2 Typhoon 11
3 Where Is The Love
4 It's All In The Game
5 Open And Shut
6 Ruby My Dear
7 Little Lucas
8 Bye Bye Baby

エリック・アレキサンダーの素晴らしい演奏が聴けます。
自作の(2)「Typhoon 11」は明らかにジョン・コルトレーンを踏襲したもの。
エリックの原点がここにあります。

「レビュー時のコメント」
このところファンク系のテナー・サックスを聴くことが多かったのでストレートなテナーが聴きたくなりました。
選んだのはエリック・アレキサンダーのこのアルバムです。
思うにエリックは損をしていると思います、あまりにあちこちに出るので粗製濫造のイメージがあります。
出れば出るほど出来不出来の可能性も高まるでしょう。
実際、今年見たライブでは期待外れでピンときませんでした。
そんなこともあって今作の存在は知っていながらジャケットとメンバーを見てなんとなくパスしていました。
ところが予想とは大違いで抜群に良かったです。
よくコントロールされた艶のある音色と魅力あるフレーズに参りました。
成長著しく以前の豪快無比から表現力のあるテナー・プレイが加わってきました。
もう怖いものなしのテナー奏者に育ちつつありますね。
コンスタントに年2枚以上のアルバムをリリースしているのも人気のほどを物語っています。

こういうのを聴くと日本制作盤とは明らかにコンセプトが違います。
日本盤の主流はスタンダード+バラードですがあまりにこれに偏重し過ぎていると思います。
スタンダードをどう料理するかはたしかに大きな魅力ではありますが・・・。
しかし、プレイヤーにしてもそれほど冒険は出来ないので中々刺激的にはなり得ません。
逆にプレイヤー本人がプロデュースすると全体的なバランスが悪くなるので案配がむずかしいです。
ここでのプロデューサーは「Todd Barkan」ですが狙いと選曲がマッチしていてとてもいいです。
だからエリックの実力を十二分に伝えていると思います。
オリジナルの(5)「OPEN AND SHUT」が印象的、コルトレーンから一歩抜け出たような気がする。
この艶はエリック独自のものでまったく素晴らしいです。
今作はバックのメンバーも好演していてエリックのベスト盤ではないでしょうか。
気心の知れた馴染みのあるメンバーだけど、思わぬところで強力な一枚に出会いました。
聴き応えありでお薦めです。

(まじめ系)

2014/12/28



(789) HITOMI NISHIYAMA TRIO / MANY SEASONS
西山瞳(p), hans backenroth(b), anders kjellberg(ds)
2007/Spice Of Life/

1 Flood
2 Many Seasons, Many Scenes, Many Sorrows
3 Sakira
4 A1
5 Before Night Falls
6 Sneaking Around
7 Loudvik
8 Waltz
9 Hermitage
10 Innertrip

西山瞳(p)さんの2枚目のアルバムです。
デビュー作と同じスウェーデンでの録音。
改めてメロディ・ラインの美しさに痺れました。

「レビュー時のコメント」
西山瞳さんのこのアルバムは発売時に話題になりました。
その時はなぜかパスしましたが改めて聴いてみるとやはりいいです。
ライブを見た時(ライブ・レポートを参照)も感じましたが、日本情緒溢れる作風で詩情豊かです。
流麗ながら切れのある力強いタッチも魅力あります。
バックがスウェーデンの二人なので和風に北欧テイストが加味されている感じがしました。
俗にいう、「ちょうどいい案配」になっています。

全9曲はオリジナルが6曲にその他3曲です。
レイ・ブライアント(p)に武満徹(comp,arr)さんにパット・メセニー(g)の選曲は面白いと思いました。
これを見ても一筋縄ではいかない中々にしたたかなピアニストです。
しかしながら出来はオリジナルのほうが断然いいと思います。
なぜなら西山さんには根底に「日本の歌心」があるのでそれが個性となって心に響くからです。
(5)「BEFORE NIGHT FALLS」や(3)「SAKIRA」は印象に残りました。

(中間系)

2014/12/21



(788) Q ISHIKAWA QUARTET / IN MY LIFE
Q 石川(ts,vo)、佐藤修弘(p)、吉田桂一(p)、
久松隆二(eb)、稲葉国光(b)、チッコ・相馬(ds)
2007/What's New Records/


1 Do You Know What It Means (To Miss New Orleans)
2 S.O.D
3 Don't Decieve Me
4 In My Life
5 When I Grow Too Old To Dream
6 All Of Me
7 Song For My Father
8 Trav'lin Light
9 Just A Closer Walk With Three
10 AllThe Way

Qさんは80歳を過ぎた今でも都内のライブ・ハウスを中心に活躍中です。
色気あるテナー・サックスの響き、(8)「Trav'lin Light」のヴォーカルもシブい。

「レビュー時のコメント」
Q・いしかわさんの前作の「Q'S GROOVE」(2003)がお気に入りになったので今作も買ってみました。
Qさんが加齢と共に活動範囲を広げているのはそれだけ人気があるということですね。
やさしくて聴きやすくて楽しい・・・それが多くのファンに支持されている理由だと思います。
刺激もなく新しいところは何もないけれどいい、聴いているとなんかホッとするんですよ。
年齢を経て、良くも悪くもこれが自分だということをよく知っているんですね。
多少変わっているけどできることをやりたいようにやる・・・確固たる自分のスタイルを確立しています。
「もう上がり目もないしなぁー、もうこれ以上はむずかしいけどなぁー、もうちっと頑張るか」てな感じ。
でもまだまだ枯れたくない・・・この哀愁が私にはよく分かります。
ここではホレス・シルバー(p)の(7)「SONG FOR MY FATHER」が一番のお気に入りです。
3曲でボーカルも披露していますがこれにもまた味わいがあります。
(5)、(8)、(10)「ALL THE WAY」もいいよ。
ライブを見て聴いてみるとその居心地の良さが分かります。

(くつろぎ系)

2014/12/14




(787) KEVIN HAYS TRIO / YOU'VE GOT A FRIEND
kevin hays(p), doug weiss(b), bill stewart(ds)
2009/Jazz Eyes/

1 You've Gat A Friend
2 Bridge Over Troubled Water
3 Fool On The Hill
4 Think Of One
5 Sweet And Lovely
6 Nothing Like You
7 Cheryl

ケヴィン・ヘイズ(p)のスタンダード作品集はひと味違います。
このトリオのライブを見たのは2009年・・・もう5年前になります。
3人のサイン入りというのも価値があるかな。

「レビュー時のコメント」
ケヴィン・ヘイズ(p)の新譜です。
ライブ(ライブ・レポート参照)を見に行った時に購入しました。
キャロル・キングやポール・サイモン、ポール・マッカトニーのヒット曲を取り上げています。
自身のオリジナルが1曲もないのが珍しいのでスタンダード作品集ということになるでしょうか。
当然ながら聴きどころはそれらの曲をどう料理しているかになります。
前3曲はけだるいような独特のリズム感はいかにも新感覚のジャズ・ピアニストだと思います。
若い頃に聴いていた馴染み深い曲でしょうがやや間延びしている感覚はまぬがれませんでした。
やはり本領発揮は後半の4曲で特にモンクの(4)「THINK OF ONE」は聴き応えがありました。
ケヴィンがいかにモンクに傾倒していたのかを物語る内容です。
トリオ全体が生き生きと躍動して(4)〜(5)「SWEET AND LOVELY」への流れは最高でした。

(まじめ系)

2014/12/07



(786) HARRY ALLEN QUARTET / HERE'S TO ZOOT
harry allen(ts),
dave mckennna(p), michael moore(b), jake hanna(ds)
1997/BGM/

1 I Cover The Waterfront
2 Star Fell On Alabama
3 Spring Is Here
4 I Cried For You
5 Grooveyard
6 I Remember You
7 Someone To Watch Over You
8 9:20 Special
9 The Way You Look Tonight
10 All My Tomorrow
11 I'll Take Romance

ハリー・アレン(ts)については多くを語ることはありません。
「素晴らしい」のひと言です。
今回のお気に入りは(6)「I Remember You」でした。

「レビュー時のコメント」
どうも私はこのハリー・アレンとエリック・アレキサンダーを1セットとして考えるフシがあるようです。
最近エリックを聴いたのでこんどはハリー聴きたくなりました。
選んだのが1997年に発売されたこのアルバムです。
この時ハリーは30歳そこそこで今作は初来日記念盤ということになっています。
BMGから立て続けに3枚出していますがこの頃すでにハリーのスタイルは完成されていたと思います。
テクニックも音色も風格十分で、そのよどみないフレーズの素晴らしさには驚くばかりです。
今作は一応ズート・シムズに捧げるという形になっていますがそれはあんまり関係ありません。
あくまでハリーのスタイルを表に出している作品です。
よく知られたスタンダード集でそれぞれいい出来ですが私は特に(5)「GROOVEYARD」が気に入っています。
このテンポでのこのノリは何回聴いてもたまりませんでした。この時期のハリー・アレンは本当にいいです。
デイブ・マッケンナ(p)、マイケル・ムーア(b)、ジェイク・ハナ(ds)のバックも一工夫あって楽しめました。

この当時、エリックがツッパリならハリーは優等生という感じで安定感、安心感はリードしていました。
ひとつ懸念されるとすれば器用貧乏におちいる可能性があったということでしょうね。
エリックはストレートなハードバップ一辺倒ですがハリーはスイングでもボサノバでも何でもできます。
それが良いか悪いかは別にして迷いがない分だけエリックの方が成長度が大きかったかもしれませんね。
10年経って聴き比べてみるとどうもそんな感じになってきたと思いますがどうでしょうか。
スポーツの世界でも完成されているより荒削りの方が魅力的だとよく言われています。
もちろん、ハリー・アレンの実力も十分なので巻き返しもあると思っています。

(くつろぎ系)

2014/11/30



(785) HELIO ALVES QUARTET / IT'S CLEAR
helio alves(p),
romero lubambo(g), scott coley(b), ernesto simpson(ds)
2009/Reservoir/

1 Sweeping The Chimney
2 Duality
3 Doce De Coco
4 Helium
5 Intro
6 It's Clear
7 Ta Boa, Santa
8 Falando De Amor
9 Coisa # 10
10 The Dolphin

ヘリオ・アルヴィスのピアノとロメロ・ルマンボのギターの絡みが素晴らしい。
透明感のあるクリアな音色が聴きどころ。
ラテン系アルバムの隠れた名盤の一枚です。

「レビュー時のコメント」
ブラジル出身のラテン系ピアニストのヘリオ・アルヴェスの新作です。
彼のアルバムを購入したのは2枚目になりますがきっかけはロメロ・ルバンボ(g)との共演にありました。
ルバンボの名前には個性があるので一度聞いたら忘れませんがこのところあちこちで名前を見ます。
特にボーカルのバックで見かけることが多いような気がしますが興味を惹かれました。
今作はラテン・アメリカン特有の派手さはなく地味ですが中身は相当に濃いです。
それぞれが達者なので驚きました。
ヘリオの美しく流麗なピアノにルボンバの生ギターがどう絡むかが聴きどころになります。
名手スコット・コーリーのベース、アーネスト・シンプソンのパーカシブなドラムが支える形。
表題曲の(6)「IT'S CLEAR」は美しいバラードでピアノ・トリオでの演奏です。
ドラマーのアーネストは初めて聞く名前ですが記憶に留めておかねばなりませんね。
ラテン系としては異色作か、珍しくBGMで気楽に聴けるというアルバムではなかったです。

(まじめ系)

2014/11/24



(784) CHARLES DAVIS QUARTET / PLAYS THE MUSIC OF BENT JAEDIG
charles davis(ts),
sam yahel(p), ben street(b), kresten osgood(ds)
2008/FRESH SOUND/

1 Atlicity
2 Drum Case
3 The red Lightning
4 Ballad For Brew
5 Rod's Shtick
6 Sizzling
7 The Strootch

チャールス・デイヴィスの素朴でゴツゴツとしたサックス・プレイは魅力あります。
(4)「Ballad For Brew」のバラードが素晴らしい。
大らかでそっと包み込まれるような気がする。

「レビュー時のコメント」
ベテランのチャールス・デイビスはマルチ・サックス奏者です。
今作は珍しい”Bent Jaedig”作品集です。
チャールス・デイビスは一般的にはバリトン・サックス奏者として知られていると思います。
地味なのであんまり目立っていませんがバリトン奏者として貴重な存在になっていました。
さて、ここではテナー・サックスを駆使して演奏を繰り広げています。
ベニー・ゴルソン・タイプか、クネクネとした骨太の一風変わったスタイルは面白いです。
さらに訥々とした大らかで素朴な感じ、ゴツゴツとした不器用な感覚もあって好感が持てます。
微妙なノリで展開される(4)「BALLAD FOR BREW」のバラード・プレイにガツンときました。
バリトン・プレイの影響が出るのか重厚な感じがします。

共演者を見ると普段はオルガン奏者として知られるサム・ヤヘルがピアノで参加しています。
ベン・ストリート(b)&クレステン・オスグッド(ds)の組み合わせも渋いです。
普段着でないチャールスのテナーとヤヘルのピアノが聴けるということで一票入れたいと思います。

(中間系)

2014/11/16



(783) MONICA BORRFORS & SWEET JAZZ TRIO/ REMENBERING BILLIE
monica borrfors(vo),
lasse tronqvist(cor), mats larsson(g), hans backenroth(b)
2004/Spice Of Life/

1 My Man
2 Them There Eyes
3 It's Easy To Remember
4 I Cover The Waterfront
5 Our Love Is Here To Stay
6 But Beautiful
7 God Bless The Child
8 I Should Care
9 Good Morning Heartache
10 The End Of A Love Affair
11 You Don't Know What Love Is
12 Lover Come Back To Me
13 You Go To My Head

モニカ・ボーフォースも好きな女性ヴォーカリストの一人です。
声質、雰囲気が私の感性にぴったりと合うんです。
スウィート・ジャズ・トリオのバッキングもまた素晴らしい。
このトリオのコルネット〜ギター〜ベースの組み合わせもユニークです。


「レビュー時のコメント」
コテコテ・ジャズが続いているのでフッと息抜きにジャズ・ボーカルを聴いています。
選んだのはモニカ・ボーフォース&スウィート・ジャズ・トリオの2枚目のアルバムです。
題名どおりのビリー・ホリディ(vo)作品集ですが趣はまったく異なっています。
こういったトリビュート盤はどこかに原作の面影を感じさせるものですがそういうものを感じさせません。
ストレートでさらりとした歌い方は自分の持ち味を生かす意味でもとても好感が持てます。
ボーカルの名曲がずらりと並んでいるのも嬉しい。
共演のスウィート・ジャズ・トリオの好演もあってしっとりと落ち着いた佳作です。

(くつろぎ系)

2014/11/09



(782) GO-MEN.NE / TOKYO NIGHT BEAT
後藤輝夫(ts,ss),
橋本信二(g)、金子雄太(org)、小泉高之(ds)、
ゲスト:六川正彦(elb)
2004/What's New Records/


1 Inner Side Blues
2 3:00 AM
3 Tokyo Night Beat
4 Fools Come Back In Town
5 That's We Thought Of Love
6 By The Time I Get To Phoenix
7 Grant Stand
8 Let's The Music Take Your Mind

「ごめんね」・・・聴き直したけどホントにカッコいい演奏を聴かせてくれました。
こういうファンキー・ムードいっぱいのバンドは貴重です。
オルガン入りレギュラー・バンドはほとんど聴くことができません。
後藤輝夫(ts)さん、橋本信二(g)さん、小泉高之(ds)さんの相性が抜群なんです。
現在新作を制作中との情報が入っています。


「レビュー時のコメント」
こちらは後藤輝夫(ts)さん率いるオルガン入りファンキー・バンド:「ごめんね」の初アルバムです。
このバンドのライブもノリノリで多いに楽しませてくれるので大好きです。
メンバーのオリジナルの他にグラント・グリーン(g)やクール&ザ・ギャングの曲もあります。
これらを見るとこのバンドの目指す方向が分かると思います。
後藤さん、橋本信二(g)さん、小泉高之(ds)さんは不動のメンバー、変わるのは若手のオルガン奏者です。
正直なところ、オルガン奏者は層が薄いので人選に苦労しているのは伺えます。
ここでのオルガンは期待の金子雄太さんなのでこの頃の「ごめんね」が一番充実していたと思います。
そういう意味でもこのアルバムは貴重なものになると思っています。
このグループの魅力は今作に集約されているのではないかな。
1曲目の「INNER SIDE BLUES」でぐいと引きつけられました。
(6)「BY THE TIME I GET TO PHOENIX」のバラードもいい。
アップ・テンポでもミディアムでもバラードでもグルービーなノリが心地良いです。
後藤さんは名手だと思う。

(くつろぎ系)

2014/11/02



(781) K J B TRIO/ NEAR AND FAR
池長一美(ds), john lockwood(b), bert seager(p)
2008/Invisible Music/

1 One For My Baby
2 Silver's Gold
3 Namely You
4 One Note Waltz
5 Falling In Love With Love
6 Wait Less
7 Leaning To Trust In Love
8 Free Play
9 Noctane
10 Re-Inventing The Wheeler

三位一体のピアノ・トリオが素晴らしい。
バート・シーガーのピアノに和みます。
ゆったりと時間が流れていく。


「レビュー時のコメント」
池長一美(ds)、ジョー・ロックウッド(b)、バート・シーガー(p)の「k・J・B・TRIO」の3枚目のアルバムです。
2年に1枚の割りでコンスタントにリリースしているのも高く評価されている証拠だと思います。
スタンダードが3曲にオリジナルが7曲の構成、基本的に静謐で耽美的な作風は変わっていません。
前2作のドラ盤入りしていますが今作もいいです。
もっと知られてもいい存在・・・なんか典型的な「目立たないけどいいアルバム」って言う感じがします。
気心の知れた3人のコンビネーションは抜群、全体的にリズム感が出てきたので一番聴き易いと思います。
スタンダードの解釈は新鮮そのもの、(1)「ONE FOR MY BABY」でグイと引き込まれてしまいました。
オリジナルの(4)「ONE NOTE WALTZ」の美しさは特筆もの。
(7)「LEARNING TO TRUST IN LOVE」のバラードもいい。
池長さんもジョンもバートも素晴らしいのでみなさんにも是非聴いてもらいたいです。
私は毎年の日本公演を楽しみにしていますが今年は10月に予定されているそうです。
このトリオが聴きたいと言うと、池長さんはロックウッドが引っ張りだこの忙しさで残念と言っていました。

(中間系)

2014/10/26



(780) TAKAKO AFUSO / MABUI NO UTA
安富祖貴子(vo),
井上陽介(b,arr)、大隈寿男(ds)、小山太郎(ds)、
安井さち子(p)、岡安芳明(g)、川嶋哲郎(ts)、
太田剣(as)、金子雄太(org)
2007/M&I JAZZ/


1 Mercy Mercy Mercy
2 Feeling Good
3 What Are You Doing The Rest Of Your Life
4 Mack The Knife
5 Besame Mucho
6 Ain't No Sunshine
7 A Lover's Concerto
8 My Way
9 Song For My Father
10 Don't Explain
11 Saving All My Love For You
12 Black Is The Color Of My True Love's Hair

久々に安富祖貴子さんを聴きました。
さすがに凄みがあります。
ここのプロデューサーは名ベーシストの井上陽介さんです。
いつ聴いても(9)「Song For My Father」には惚れ惚れします。


「レビュー時のコメント」
今作は安富祖貴子(vo)さんの2枚目のアルバムです。
安富祖さんは50年に1人の逸材との触れ込みで私のジャズ仲間の評判も上々です。
選曲もジャズにこだわらずに幅の広い構成になっています。
これは彼女の音楽性の広さを物語っていてジャンルを超えるジャズ・ヴォーカリストだと思います。
まだまだ若いのでこれから人生の経験を積んでどこまで深味を増すのか、大いに楽しみな存在です。
最大の魅力は切れ味鋭いパンチ力のある歌声にあると思います。
これは習って会得できるものでもなく、生まれ持った天性のもので彼女の貴重な財産でしょうね。
ふと、若い頃の弘田三枝子さんを思い出しました。
(1)「MERCY MERCY MERCY」、(6)「AIN'T NO SUNSHINE」、
(9)「SONG FOR MY FATHER」なんかは惚れ惚れしました。
バックのメンバーの好演も見逃せないアルバムになっています。
人気者になっても相変わらず活動の中心は沖縄にあるので人柄を表しているようです。
足が地に付いて上滑りしていないのも好感が持てますね。

(中間系)

2014/10/19



(779) MADS VINDING TRIO / BUBBLES & BALLADS
mads vinding(b), jacob karlzon(p), morten lund(ds)
2008/bro/

1 Nefertiti
2 You Don't Know What Love Is
3 All The Things You Are
4 The Summer Knows
5 Bubbles
6 Footprints
7 Misty
8 Flat Blues
9 Cesterbal
10 Yesterdays
11 On Green Dolphin Street

マッズ・ヴィンディング盤に間違いがないのは定評のあるところ。
今作もその流れを踏襲したものです。
思うに15年前にHPを開設した時、掲示板での最初の話題がマッズ・ヴィンディングでした。
ロジャー・ケラウェイ(p)との共演盤。

*MADS VINDING TRIO / DADDIO DON



mads vinding(b), roger kellaway(p), alex riel(ds)
1999/STUNTS/

「レビュー時のコメント」
マッズ・ヴィンディング&ヤコブ・カールゾン&モーティン・ルンドの組み合わせには魅力があります。
このヴィンディングが中心のスタンダード作品集は聴く前から「これはいいぞ」という予感がありました。
ウエイン・ショーター(ts)の(1)「NEFERTITI」、(6)「FOOTPRINTS」の2曲が新味です。
予想通り、久し振りに重厚で聴き応えのあるピアノ・トリオに出会ったような気がします。
このトリオは深い海のような感触でグーッと奥深く引き込まれるような感覚です。
最近思うのですがピアニストには切れと流れのどちらかを重視する傾向にあると思います。
もちろん、両方できる人が多いですがどちらかに偏っている感じがします。
二兎を追うのはむずかしいかも知れませんね。
カールゾンはどちらかというと後者でしなやかで美しい独特のタッチを持っています。
切れはあまり感じませんが音のつながりが微妙に個性的なんです。
全体を引き締めるヴィンディングのベースと好センス溢れるルンドのドラムスも聴き応えは十分です。
じっくりと聴けるピアノ・トリオでお薦めの一枚。

(まじめ系)

2014/10/12



(778) MARICA HIRAGA / MORE ROMANCE
平賀マリカ(vo),
gerald clayton(p), james genus(b)、lewis nash(ds)
chuck loeb(g), grant stewart(ts)(3,8,10)
2008/BOUNDEE/

1 Sunny
2 Moonlight Serenade
3 Don't Know Why
4 You'd Be So Nice To Come HomeTo
5 I'm In The Mood For Love
6 My Romance
7 My Love
8 Love Is Here To Stay
9 Fever
10 What's New
11 Lately
12 Everything

平賀マリカさんの上品で爽やかな歌声には癒されます。
チャック・ローブのギターが素晴らしい。

「レビュー時のコメント」
現在最も人気があると思われる平賀マリカさんのアルバムを買ってみました。
最大の魅力は包み込むようなソフト歌声にあると思いました。癒し系がぴったりの表現か。
彼女の場合は案外選曲がむずかしいのではないかと思いました。
あまり味付けを濃くしないほうがいいというか、自然にさらりと歌った曲がいいと思います。
(1)「SUNNY」とか(9)「FEVER」とかのポップスでも一ひねりある歌は多分向いていない。
スティービー・ワンダーの(11)「LATELY」は良かったけど。
ジャズ・テイストが濃すぎるのも合わないのではと思います。
ここでは(2)「MOONLIGHT SERENADE」、(5)「I'M IN THE MOOD FOR LOVE」、
(8)「LOVE IS HERE TO STAY」、(10)「WHAT'S NEW」が印象に残りました。
選んでみると軽快なスイング系のスタンダード・ナンバーが並んでいます。

前作と前々作がエリック・アレキサンダー・カルテットやマンハッタン・ジャズ・クインテットとの共演。
今作はバックのメンバーがやや小粒ですがその分リラックスした異色作になっていると思います。
多分、谷間の作品になって貴重盤になる可能性が高いです。
彼女の持つ声質や雰囲気からいって間違いなくボサノバがいいと思いました。
最新作はそのボサノバなので聴いてみたいです。

(くつろぎ系)

2014/10/05



(777) SCOTT HAMILTON & BUCKY PIZZARELLI / THE RED DOOR
...remember Zoot Sims
scott hamilton(ts), bucky pizzarelli(g)
1998/CONCORD Records/

1 It Had To Be You
2 Gee Baby, Ain't I Good To You
3 The Red Door
4 Dream Of You
5 Juyyerbug Waltz
6 Two Funky People
7 Just You , Just Me
8 In The Middle Of A Kiss
9 Morning Sun
10 It's All Right With Me

スコット・ハミルトンとバッキー・ピザレリが醸し出す雰囲気が素晴らしい。
リズム楽器としてのギターはまた格別の味があります。
表題曲の「Red Door」はズート・シムズ(ts)の代表作です。

「レビュー時のコメント」
購入のキッカケはバッキー・ピザレリ(g)にありました。
先日、ジャズ仲間のNさんがバッキーの映像を紹介してくれたのです。
女性ヴォーカルでしたがそこでのリズム・ギターが素晴らしく彼の職人芸を目の当たりにしました。
それで何かいいものはないかと探していて選んだのがこのアルバムです。
スコット・ハミルトン(ts)とのデュオ・アルバムで、これならバッキーのギターが堪能できると思いました。
思ったとおりの出来、素晴らしいアルバムに仕上がっています。
ギター一本のバックでも名人芸の域、現在これほどのリズムを刻めるギタリストはいないと思います。
ズート・シムズ(ts)を偲ぶ今作品はスタンダード作品集で文句なしの内容です。
表題曲の(3)「THE RED DOOR」や(7)「JUST YOU, JUST ME」の絶妙なスイング感が素晴らしい。
「チャッ、チャッ、チャッ」と刻むコード・ワークには惚れ惚れしました。
かのカウント・ベイシーのオール・アメリカン・リズム・セクションのフレディ・グリーン(g)を彷彿とさせるもの。
心底痺れました、今さらながらバッキーの実力を再評価した次第です。
もう一枚、そのフレディ・グリーンを偲んだ彼のアルバムがあったのでそちらも注文するつもりです。
スコット・ハミルトンにとっても代表作の一枚になると思います。

(くつろぎ系)

2014/09/27



(776) TARO KOYAMA QUARTET / DRUMGENIC
小山太郎(ds),
近藤和彦(as,ss), 田中裕士(p)、井上陽介(b)
2005/M&I JAZZ/


1 ELM
2 Tail To Nose
3 Blue Sands
4 All The Things SYou Are
5 Monsoon Messenger
6 I Love You Porgy
7 Daahoud
8 Dalarna
9 Take Five
10 The Rare Moon

小山太郎(ds)さんの好センスな一枚です。
(2)「Tail To Nose」のドライブ感は超気持イイ〜。

「レビュー時のコメント」
今作も先日のライブの時に小山太郎さんから手渡しで購入しました。
見た瞬間にまずはメンバーに注目しました。
録音時、全員が同年代でほぼ40歳前後、まさに脂が乗りきっている年頃です。
特に近藤和彦さんのワン・ホーンは魅力があります。
小山さんと井上陽介(b)さんはツー・カーの仲、共にトップ・プレイヤーに成長しています。
田中裕士さんには黒い感覚があるし幅広い音楽性を持つユニークなピアニストだと思います。

曲目構成もよく考えられていて太郎さんの全貌を網羅している感じがします。
リズム・パターンも多彩なのでこれを聴けば全てが分かる仕掛けになっています。
一番良かったのはオリジナルの(2)「TAIL TO NOSE」です。
ジャケット写真にあるように太郎さんは車好きのレース好き。
まさに疾走するレース・カーのようにドライブ感溢れる演奏が聴けました。

(中間系)

2014/09/21





(775)T M D / CRY ME A RIVER
川嶋哲郎(ts,fl)、岡安芳明(g)、上村信(b)
2006/What's New Records/


1 Cry Me A River
2 Predude To A Kiss
3 That's All
4 Soul Eyes
5 If Ever I Wonder Leave You
6 Polka Dots And Moon Beams
7 You Are My Everything
8 The Song Is You
9 You Go To My Head

東京銘曲堂のコンセプトはスタンダード演奏です。
秋の夜長に聴くにはピッタリの作品。
じんわりと心に響いてきます。

「レビュー時のコメント」
今週はライブ絡みで川嶋哲郎(sax,fl)さんを聴いていました。
川嶋さんには以前より注目していて初リーダー・アルバム以来しばらく追いかけていました。
そんなわけで日本人プレイヤーとしては”ドラ盤”入りが断トツに多いです。
もっともここのところはご無沙汰していてニュー・カルテットもまだ聴いていませんが。

さて、この東京銘曲堂も長いですね。
川嶋さん、岡安芳明(g)さん、上村信(b)さんのトリオです。
何年の付き合いになるのかな、気心も知れて馴染んでいるので深味のあるコラボレーションが聴けます。
特に川嶋=岡安のコンビネーションは最高です。上村さんの隠し味がまた効いています。
重厚なテナー・サックスの音色と美しいフルートの対比がなんとも心地良くてたまりません。
川嶋さんは一皮むけたような気がします。清冽さが加わってよりクリアな音色になりました。
バラードがいいです。スタンダードをじっくりと聴くには最適のアルバムだと思います。
心に沁み込む珠玉のスタンダード作品集でお薦めです。

(中間系)

2014/09/14



(774) DR.LONNIE SMITH QUARTET / RISE UP !
ronnie smith(org,vo),
donald harrison(as), peter bernstein(g), herlin rirey(ds),
additional : jo lawry(vo), james shipp(per), matt balitsaris(g)
2008/PALMETTO/

1 A Matterapat
2 Come Together
3 Pilgrimage
4 Dapper Dan
5 And The World Weeps
6 People Make The World Go Round
7 Tyrone
8 Sweet Dreams
9 Voodoo Doll

ロニー・スミス(org)も久し振りです。
ただただ「カッコイイ」のひと言です。
1曲目のリズムを聴いただけでぶっ飛んでしまいました。

「レビュー時のコメント」
最近のマイ・ブームのソウル、ファンク路線でロニー・スミス(org)の新譜を買ってみました。
ロニー・スミスはBNのジョージ・ベンソン(g)やルー・ドナルドソン(as)の作品で知りました。
自身名義のアルバムも5枚ほどブルー・ノートに残されています。
少し遅れてきたオルガン奏者ですが元気に活躍しているのは喜ばしい限りです。
今作はメンバー的にも面白そうな気がしました。
ピーター・バーンステイン(g)やドナルド・ハリソン(as)のプレイに興味がありました。
特にドナルド・ハリソンが久し振りでどんなプレイをしているのか、聴きたかったです。
ハリソンを聴くのは7年ぶり位か、テレンス・ブランチャード(tp)と双頭コンボはよく覚えています。
ここでは高音部を多用してファンキーに吹きまくっていました。
聴いてみるとバーンステインもハリソンもぐっとモダンな感覚ですがまったく違和感はありません。
スミスのサウンドは当時のアーシーな感覚からかなりスマートになっていると感じました。
でも根っこには生粋のソウル魂が染み込んでいます。
まだまだ伝統は生きている、懐かしさと共に嬉しく思いました。
ロニー・スミスは良き時代を知る数少ないオルガン奏者として貴重な存在になっています。

(くつろぎ系)

2014/09/07



(773) FREDDY COLE / IN THE NAME OF LOVE
freddy cole(vo),
jason miles(p,key), rometo lubambo(g), dean brown(g),
will lee(b), kelth carlock(ds), jeff mironov(g),
cassandra reed(vo), jane monheit(vo), etcl
2003/TELARC/

1 Harbor Lights
2 Just To see Her Again
3 Have I told You Lately That I Love You
4 In The Name Of Love
5 Remember Me
6 I'm Not Alone
7 Save A Little Time For Me
8 When I Rains
9 Lady Love
10 I Can't Maske You Love Me
11 I Loved You

フレディ・コール(vo,p)が新境地を開拓したアルバムです。
コールの独特の語るような歌い方は味で聴く典型的なボーカリスト。
今作はあまりの聴き味の良さにビックリしてしまいました。
プロデュース&アレンジのジェイソン・マイルス(p)の存在が大きいです。
スマートなバック・ミュージックにコールの渋い歌声が乗る。
私的フレディ・コールのベスト盤です。

「レビュー時のコメント」
フレディ・コール72歳の歌声、久々の男性ボーカリストの登場です。
あのナット・キング・コールの末弟、お兄さんに似てピアノとボーカルが達者です。
今作はあるライブ・ハウスの休憩時間にかかっていてガツンときたアルバムです。
もうね、ノリ、雰囲気共に抜群だったので「誰ですか、これ?」って聞いてしまいました。

いわゆる有名なスタンダードは1曲もありませんが実に出来の良いアルバムだと思います。
「フレディ・コールってこんなに良かったっけ」というのが正直な感想です。
男性ボーカルでこれほど気に入って連続的に聴いたアルバムはありません。
寝る前に聴いてはただただ心地良くそのまますぐに寝入ってしまいました。
1970年代に流行ったAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック」を彷彿とさせるものです。
今作の狙いもそこにあって、1曲目がその時に人気を博したボズ・スキャッグスの曲です。
ソフト&メロウな曲想とフレディのややかすれた渋い歌声がなんとも心地良くてたまりません。
都会的でスマートなアレンジが微妙にマッチして抜群の雰囲気を醸し出しています。
「サラバ、トウキョウ〜」から始まる(1)「HARBOR LIGHT」はまさしく演歌の世界です。
(2)、(3)への流れもグー、「好きだなぁー、こういうの、センスあるなぁー」と思いました。
(6)におけるギター・プレイ、(7)におけるソプラノ・サックスの調べにも痺れました、
なにしろバランス感覚が絶妙なんです、その他の曲も珠玉の名演が目白押しです。
プロデュースのジェイソン・マイルスの手腕も大したものです。要注目じゃないでしょうか。
聴けば聴くほど味が出る、極上のスルメ盤だと思います。
しかし、狙いが狙いだけに本格的なボーカル・ファンには少々甘く感じるかも知れません。

余談ですが、ドラ盤も370枚ほどになっていますがボーカルものは極端に少ないです。
特に男性ボーカルとなると「一体今までどんな歌手がが登場しているのか?」、気になりました。
「*ケビン・マホガニー、*ジミー・スコット、*ジョン・ピザレリ、*カート・エリング、*マイケル・ブーブレ、
*ピーター・フェスラー、*ジョージ・ベンソン&アル・ジャロウ、*ピーター・シンコッティ、
*森山浩二、*牧野竜太郎」の11人で今度のフレディ・コールが12人目になりました。
やっぱりというかたったの3%余りでした。女性も最近増えましたが15人だけです。
両方合わせても全体の7%余りにとどまっています。

(くつろぎ系)

2014/08/31



(772) TOSHIHIRO AKAMATSU QUARTET / STREAM OF LIFE
赤松敏弘(vib),
市川秀男(p), 村上聖(b), 大阪昌彦(ds),
後藤浩二(p), 養父貴(g), 鈴木良雄(b), マリンバ王子(marimba)
2008/VEGA/


1 Crossing Departure(T.Akamatsu)
2 Channel October(T.Akamatsu)
3 The Fellow Traveler(T.Akamatsu)
4 December(K.Goto)
5 Mystical Insights(T.Akamatsu)
6 Come Rain Or Come Shine(H.Arlen)
7 Jump Jive(T.Akamatsu)
8 Winter Love(Y.Suzuki)
9 My Man's Gone Now(G.Gershwin)
10 I Love You Porgy(G.Gershwin)

たまにヴァイブのジャズを聴きたくなります。
透明感があって爽やかな感じがします。
今年はジャズ友主催の赤松さんのライブが企画されています。
共演が市原ひかり(tp)、ハクエイ・キム(p)、生沼邦夫(b)、小山太郎(ds)
現在時間調整中。

「レビュー時のコメント」
こちらもライブ絡みで購入した赤松敏弘(vib)さんの最新作です。
ライブの時に赤松さんから手渡しで購入しました。もちろんサイン入りで。
カルテット、クインテット、デュオ、ソロまで楽しめるアルバムで構成のバランスもいいです。
ベテランと若手を配した組み合わせにも興味がありました。
市川秀男(p)さんと名古屋の逸材、後藤浩二(p)さん、鈴木良雄(b)さんには村上聖(b)さん、
大坂昌彦(ds)さんには新感覚のギタリストの養父貴さんを配しています。
そして赤松さん自身にはマリンバ王子さんです。
ということで、今作には色々な表情が詰まっています。

一番面白かったのは赤松、養父、村上、大坂の組み合わせで(2)、(3)で聴けます。
オリジナル曲ですがこれが実に刺激的でいいです。新味、新鮮な感じがしました。
養父さん、村上さんのプレイにも注目です。
全体的には養父さんのギターが良いアクセントになっていると思います。
赤松さんの師匠のゲイリー・バートンもカート・ローゼンウィンケル(g)とやってますね。
私的、赤松さんのベスト・アルバムです。

(中間系)

2014/08/24



(771) LUIS PERDOMO TRIO / PATHWAYS
luis perdomo(p), hans glawischnig(b), eric mcpherson(ds)
2008/Criss Cross/

1 Speak Low
2 Unexpected
3 Shine
4 Fuloa Chant
5 Almost Like Being In Love
6 Piensa En Mi
7 Chimanta
8 Baby Steps
9 Sunrise
10 Slap
11 Oblivion

ルイス・ペルドモ(p)の非凡な才能を感じさせる一枚です。
タッチはやさしいけれど先鋭的な内容を含んでいる。
全体を覆う地味な感覚に惑わされてはいけませんね。
聴き直してみたら十分刺激的でした。

「レビュー時のコメント」
ベネズエラ出身のルイス・ペルドモ(p)はミゲール・ゼノン(as)の作品で聴いたことがあります。
今作は何となく愛嬌のあるジャケットの写真に引かれて購入しました。
ジャケットからはもっとごつくて硬い感じがしますが持ち味は繊細かつ流麗なものです。
年齢も38歳で思ったよりも若く、失礼ながらだいぶ写真のイメージとは違っていました。
音楽性はラテン感覚が強いかといえばそうでもなく、ちょうど中間点にいるような感じがします。
オールラウンド・プレイヤー・・・若い時のチック・コリア(p)をイメージすると分かりやすいかもしれませんね。
(1)「SPEAK LOW」における前奏部から湧き上がってくるようなピアノ・プレイは聴きものです。
美しいタッチとスピード感、ペルドモの才能はここで十分に感じることが出来ると思います。
とは言うものの彼の真髄はやはりラテン系の曲にあると思いました。
ベスト・トラックは(4)「FULIA CHANT」で印象的なフレーズが満載、トリオのバランスも頭一つ抜けています。
続いて(7)「CHIMANTA」の雨が滴り落ちる風情のソロも魅力的です。
オリジナルとスタンダードの構成もいいですが個人的にはオリジナルの方が良かったです。
最後に「悪くない、手慣れている、上手いんだけどなぁー」・・・正直、もう一つ刺激が欲しい気がします。

(中間系)

2014/08/17



(770) JIMMY McGRIFF & HANK CRAWFORD QUARTET / RIGHT TURN ON BLUE
jimmy mcgriff(org), hank crawford(as), rodney jones(g), jesse hameen(ds)
1994/TELARC/

1 Next Time You See Me
2 Maggie
3 Red Top
4 Daddy's Home
5 Right Turn On Blue
6 Teach Me Tonight
7 But On The Other Hand
8 Back And The Chicken Shack

ジミー・マクグリフ(org)&ハンク・クロフォード(ts)の作品。
オルガン、ギター、ドラムスのトリオにテナー・サックスはソウル・ジャズの王道です。
BGMで流しているだけで身体が揺れてきます。

「レビュー時のコメント」
この半月ほど体調不良で好きなライブも外出も出来ずじまい。
家に篭っていたのでネット・ショッピングをしてしまいました。
久し振りにCDの爆買いをしたんだけどコテコテ系サックス奏者のアルバムです。
アーネット・コブ、ジミー・ホレスト、アイク・ケベック、ウィリス・ジャクソン、ドン・ウィルカーソン、
スタンリー・タレンタイン、メシオ・パーカー、ハンク・クロフォードといったところです。
しばらくはギンギンのソウル、ファンク、ブルース路線に浸ってみたいと思っています。
ワン・パターンなんだけど、ノリのいいこういうのを聴いているとなんか元気が出るような気がしました。

そんな中でまず気に入ったのは比較的新しいジミー・マクグリフ&ハンク・クロフォードのこのアルバムです。
レイ・チャールス・グループに在団したクロフォードはソウル系サックス奏者の見本みたいな存在です。
クロフォードは今年の1月に亡くなったばかり、74歳でした。・・・合掌。
今作はコテコテではあるけれどスマートな雰囲気を併せ持っているのが特徴です。
オルガンのマクグリフとクロフォードのコンビネーションも定評のあるところで聴き易いです。
(4)、(8)のバラードでは泣きアルト、(7)、(8)の強烈なグルーブ感が一番の聴きどころになります。
ただ、(6)「TEACH ME TONIGHT」はもっとムードが欲しかったけど。
もう一つの聴きどころはロドニー・ジョーンズのギター・プレイにあります。
彼には↓の素晴らしいアルバムがあるので是非聴いてみて下さい。
早世したケニー・カークランドの参加が貴重です。

*RODNEY JONES QUARTET / DREAM AND STORIES (Savant/2005)



rodoney jones(g), kenny kirkland(p), marc johnson(b), jeff"tain"watts(ds)

(くつろぎ系)

2014/08/10



(769) MISHA PIATIGROSKY TRIO / HAPPENIN'
misha piatigorsky(p), peter klinke(b), eric harland(ds)
2009(1997Rec)/MISHAMISIC/

1 Close Your Eyes
2 Fungii Mama
3 You And The Night And The Music
4 My Romance
5 The frog
6 Turnaround
7 The Happenin'
8 All The Things You Are

ミシャ・ピエティゴルスキー(p)の自主制作盤。
斬新なピアノ・トリオが聴けます。
久々に聴いたけれど凄いです。
(1)「Close Your Eyes」からグイと引き込まれてしまった。

「レビュー時のコメント」
ミシャ・ピエティゴルスキー(p)と読むのか、初見です。
1997年録音のミシャ自身のレーベルなので自主制作盤に近いと思われます。
購入のキッカケはエリック・ハーランド(ds)の参加にありました。
ハーランドは近年、最も注目しているドラマーでこれからもドラ盤参加は増え続くだろうと思っています。
1968年テキサス生まれで神様はエルヴィン・ジョーンズ(ds)、今作は19歳の時に録音されたものです。
ハーランドは1997年にグレグ・オズビー(as)のBNのアルバムが初レーコーディングになっています。
しかし今作は1月収録ということで、これが事実上のデビュー作になるのではと思います。
12年前の若さ溢れる元気いっぱいの溌剌としたプレイが聴けますよ。

ここではもちろん、ミシャの瑞々しいピアノも聴きものです。
1曲目からグイと引き込まれます、緩急と強弱の危ういバランスがたまりません。
同じフレーズを続けてもへ〜チャラ、若者は若者らしくドンドン暴れてもらいたいです。
奇をてらうどころか、そのまんま若さに任せて突っ走っているのが実に魅力的です。
「どうだい、これが俺たちのスタンダードだ、あんたに分かる?」っていう感じ。
こんな(3)「YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC」も初めて聴きました。
ムードもへったくれもありません・・・が・・・輝いている。
ピアノ・ソロで演奏される(8)「ALL THE THINGS YOU ARE」は新鮮、ミシャの非凡さが伺えます。
自主制作盤なればこその自由自在、若い時はやりたいようにやればいいです。
どうせ年を取れば大人しくなるんですから・・・中には大人しくならない人もいますが・・・常に例外はある。

私は今までこれほど元気になるピアノ・トリオを聴いたことがありません。
いつも聴いているスタンダードのどれとも違う解釈とプレイ・・・よく分からないけど面白くていい。
てなわけで元気になりたい人にはお薦めのピアノ・トリオ・アルバムです。
売り切れたら中々手に入らない貴重盤になると思います。
エリック・ハーランドに注目している人にも見逃せない一枚です。

(中間系)

2014/08/03



(768) JACOB YOFFEE QUARTET & QUINTET / DEAD RECKONING
jacob yoffee(ts,ss),
george colligan(p), jeff grubbs(b), james johnson V(ds),
gary thomas(fl)(4,9), sean jones(tp)(1,10), carolyn perteete(vo)(9)
2008/INNER CIRCLE MUSIC/

1 Dead Reckoning
2 Vovenant(Intro)
3 Covenant
4 Raven
5 The White Wonder-Roses
6 Aftermath
7 The Gift
8 Fallen
9 Night Of The Five moons
10 In Search Of The Question

ヤコブ・ヨフィー(ts)は今どうしているのかな?
今聴いてもまったく色あせていません。
むしろ当時のジャズの先端を行っていました。
素晴らしいと思います。
購入時より評価はぐっと上がりました。

「レビュー時のコメント」
ジェイコブ・ヨフィー(ts)は初見、名前の読み方もこれでいいのか分かりません。
初めてのプレイヤーを購入をするキッカケはどんな順番になるでしょうか。
私の場合は@共演のメンバー、A演奏曲目、Bプロデューサー&レーベル、Cジャケットの順かな。
さしずめ今作は@ジョージ・コリガン(p)、ゲイリー・トーマス(fl)、シーン・ジョーンズ(tp)に注目、
Bグレグ・オズビー(as)のプロデュースとオズビー自身のレーベルが決め手になりました。

全曲、ジェイコブのオリジナルでオーソドックスな力のあるコルトレーン派〜Mベース系の流れ、
ひとひねりあるもののコンテンポラリーな主流派ハード・バップが聴けます。
表題曲の(1)「DEAD RECKONING」ではいかにも現代風の印象的なソロを聴かせてくれました。
シーン・ジョーンズ(tp)の好演もあって出色の出来になっています。
ワン・ホーンの(8)はそのまんまコルトレーンでこれがジェイコブ・ヨフィーのルーツだと思います。
もちろん、ジョージ・コリガンのピアノとゲイリー・トーマスのフルートも聴きどころになります。
疾走感のある(6)「AFTERMATH」でコリガンとジェイコブ、(4)「RAVEN」でトーマスのプレイも光る。
(5)、(9)は和風情緒を感じさせるバラード、(7)は中近東風味のオリエンタル・サウンドです。
全体的にパタパタとしたドラムスが気になるものの張り切りようと意欲は十分に伝わってきました。
初リーダー・アルバム、これからの期待を含めて先物買いをしておこうと思います。

(中間系)

2014/07/27





(767) HIDEFUMI TOKI QUARTET / THE GOOD LIFE
土岐英史(as),
大石学(p), 坂井紅介(b), 日野元彦(ds)
1993Rec/Fun House/


1 The Good Life
2 My Funny Valentine
3 Chaka
4 After Dark
5 My One And Only Love
6 Old Friend And Dry Martini
7 In The We Small Hours Of The Morning
8 Body And Soul

なんといっても土岐英史さんの音色が素晴らしい。
「The Good Life」・・・切ないほど心に沁み入る。
最高のバラード・アルバム・・・名盤です。

「レビュー時のコメント」
土岐英史(as)さんの珠玉のバラード演奏集です。
あるCDショップの中古盤売り場で見つけました。
数年前までは中古盤売り場もけっこうマメに見ていましたが最近はすっかり根気がなくなりました。
いつもは見ないんだけど久し振りに何気なく見ていたらポツンとあったんです。
それも田村博(p)さんのアルバムと一緒に並んでいました。
最初は「一瞬、何でここにあるの?、ホントかなぁ〜」と思いましたよ。
まさかこんなところで出合うとは思わなかったですが探していたアルバムだったので嬉しかったです。
さしづめ「犬も歩けば棒にあたる」かな・・・やっぱり出歩いてみるもんですね。
改めてレコードやCD蒐集はマメに動いている人が強いと思いました。

スタンダード中心のバラード集ですがオリジナルの3曲がアクセントになっている構成もいいです。
じっくりと聴かせる土岐さんのプレイもさることながら美しく瑞々しい大石さんのピアノも光ります。
圧巻はピアノレス・トリオで演奏される(5)「MY ONE AND ONLY LOVE」で10分強の熱演。
紅介さんのベース、元彦さんのブラシのコンビネーションもよく最高の仕上がりです。
(8)「BODY AND SOUL」はベースとのデュオ、小品ですが素晴らしかった。
ゆったりとした気分で心に沁み入る演奏を聴きたいと思います。

この作品はジャズ仲間のAさんのジャズ聴きのキッカケになったアルバムだそうです。
聴けばそれも十分納得できます。
このラインにはもう一枚「イン・ナ・センチメンタル・ムード」(1992Rec)があります。
土岐英史(as,ss)、鈴木宏昌(p)、野力奏一(p)、桜井郁雄(b)、日野元彦(ds)
現在は2枚共に入手困難になっているのは残念です。
土岐さんのライブは2006年の6月に行ってますがそれ以来3年近くも見ていないのはまずいですね。
早速、機会を見つけて出かけようかと思っています。

(くつろぎ系)

2014/07/20



(766) NNENNA FREELON / LIVE
nnenna freelon(vo),
takana miyamoto(p), wayne batchelor(b), woody williams(ds),
beverly botsford(per), scott sawyer(g), brandon mccune(org)
2003/CONCORD/

1 Nothing Will Be As It Was
2 All Or Nothing At All
3 If I Only Had A Brain (Intro)
4 If I Only Had Brain
5 Meaning Of The Blues
6 Body & Soul
7 My Cherie Amour (Intro)
8 My Cherie Amour
9 The Tears Of A Clown
10 Button Up Your Overcoat
11 If I Had You
12 Circle Song

ニーナ・フリーロンのアルバムは↓の反省をふまえてしばらく我慢していたんですが・・・。
しかし・・・我慢できなくてかなりの枚数を買ってしまいました。
予想通り、今作以上の作品はなかったです。
車のHDDに入れていたこともあって、結局聴くのはこればっかりになってしまった。

「レビュー時のコメント」
ボーカルを集中的に聴き始めてから一番数多く聴いているのはニーナ・フリーロンのこのアルバムです。
もう何年も前にジャズ仲間から紹介されて入手したんですがそのままほっぽらかしにしていました。
久し振りに聴いてガーンときて1ヶ月以上毎日聴いていましたよ。
買った時には何ともなくて、あとで聴いたら物凄く良かった。・・・こういう経験はけっこう多いと思います。
これもそんな一枚ですが特に印象深いものになりました。
音楽監督はアメリカで活躍中の宮本貴奈(p)さんで、それに気が付いたのも聴き直しをしてからです。
宮本さんは去年帰国公演をしたんですが私はそれを見に行きました。
ビル・エバンスを偲ぶ、井上陽介(b)、マーティン・モレル(ds)とのトリオ・・・ライブ・レポートを参照して下さい。

これは私の感性に合ったアルバムなのでどの曲も素晴らしいと思います。
特に(5)「MEANING OF THE BLUES」は何度も繰り返し聴きました。
スティービー・ワンダーの(9)「THE TEARS OF A CLOWN」も(6)「BODY & SOUL」のアレンジも面白い。
要するにみんな良かったです。全部がいいなんていうアルバムはそうそうはありません。

ここで老婆心ながらのご忠告を一つ・・・経験者は語る、自戒の意が大きい。
気に入った作品があるとそのプレイヤーの別の作品を聴きたくなるのはジャズ・ファンの習性です。
ところが入手しても「聴くのはキッカケになったそのアルバムだけだった」というのも少なくありません。
つまりそれが琴線に触れたわけでそれ以上のアルバムには中々出会えないものなんです。
よほどこだわりがあるならともかくこの「落とし穴」には落ちないようにしたいものです。
で、ニーナ・フリーロンもこの一枚しか持っていません。・・・いつまで我慢できるか・・・。

(中間系)

2014/07/13



(765) JORIS ROELOFS QUARTET / INTRODUCING
joris roelofs(as,cl),
aaron goldberg(p), matt penman(b), ari hoenig(ds)
2008/MATERIAL RECORDS/

1 I Fall In Love Too Easily
2 Dooie Hoek
3 Sweet & Lovely
4 3/4 Space
5 Background Music
6 The Rules
7 Four Winds
8 Francisca
9 Beter !
10 Skylark

ヨリス・ルーロスは素晴らしい音色の持ち主です。
久々に聴いたけど参りました。
デビュー作があまりに良いと後が続かないの通例・・・。
で買わなかったけれど、さすがに新譜を聴いてみたくなった。

「レビュー時のコメント」
ヨリス・ルーロスは弱冠24歳のアルト・サックス奏者です。
まずはCDから流れてくる美しいアルトの音色に驚いてしまいました。
このスムーズさは完璧なフィンガリングと息使いのたまものだと思います。
末恐ろしいというか、多いに楽しみなサックス奏者が登場してきました。

ここはまたメンバーも素晴らしいです。
アーロン・ゴールドバーグ(p)、マット・ペンマン(b)、アリ・ホーニック(ds)とくれば見逃せません。
スタンダード4曲、オリジナル4曲、ワーン・マーシュ(as)とデイブ・ホランド(b)が1曲づつ入っています。
チャーリー・パーカーの影響下はもちろんのこと、マーシュの曲が一つのヒントを与えてくれています。
私はオリジナルに興味を持ちましたが他の曲もアレンジが新鮮なので聴きどころも多いです。
テンポやリズム・パターンが多様、バックの3人も生き生きと躍動していて特にアリ・ホーニックが凄い。
スタンダードなら(2)「SWEET&LOVELY」、オリジナルなら(6)「THE RULES」や(9)「BETER !」も面白かった。
ドラムとのデュオ(7)「FOUR WINDS」、ベースとのデュオの(10)「SKYLARK」もスリル満点、
(2)「DOOIE HOEK」や(8)「FRANCISCA」のクラリネットも聴きものです。
ヨリスは現代的な感覚を持っているようで曲想も変化に富んでいて飽きさせません。
このデビュー作があまりにいいのでこれからが心配になるほどです。

余談ですが「イントロデューシング・〜」というアルバムは外れが少ないような気がします。

(まじめ系)

2014/07/06



(764) AARON PARKS QUARTET / INVISIBLE CINEMA
aaron parks(p), mike moreno(g), matt penman(b), eric harland(ds)
2008/BLUE NOTE/

1 Travelers
2 Peaceful Warrior
3 Nemesis
4 Riddle Me This
5 Into The Labyrinth
6 Karma
7 Roadside Distraction
8 Harvesting Dance
9 Praise
10 Afterglow

久々に聴いたけれどやっぱり良かった。
アーロン・パークスのベスト・アルバムじゃないかな。
デビュー作が良すぎると後が辛いのも事実。

「レビュー時のコメント」
アーロン・パークス(p)は初見、現在風の静謐でクールなピアニストです。
初リーダー・アルバムが全曲オリジナルというのも珍しいですね。
それだけ彼の才能が認められているということだと思います。
聴いてみればすぐに分かると思いますが「独特の世界」を持っています。
しなやかで流れるようなタッチと共にトータルなグループ・サウンドを追求しているのが特徴です。
案外聴き易いのは和風の味付けがあるからだと感じました。
注目のマイク・モレノ(g)とマット・ペンマン(b)、エリック・ハーランド(ds)との組み合わせにも惹かれました。
(1)「TRAVELERS」〜盛り上がりみせる(2)「PEACEFUL WARRIOR」〜(3)「NEMESIS」の流れが聴きどころ。
彼らの醸し出す雰囲気は一聴しただけで「これは只者ではないなぁー」と思わせるものがあります。
好センスを感じさせる作品でコンテンポラリー路線のジャズを聴くなら見逃せない一枚です。

(まじめ系)

2014/06/29



(763) DIANNE REEVES / WHEN YOU KNOW
dianne reeves(vo),
steve wilson(as)(7), romero lubambo(g)(1-9), russell malone(g)(1-5,8,10),
billy childs(p)(1,7,9), george duke(p)(2), geoffrey keezer(p)(5,6),
dave carpenter(b)(3), reuben rogers(b)(2,5,6,8), reginald veal(b)(1,7,9,10),
antonio sanchez(ds)(1,3,7,9), oscar seaton(ds)(2), greg hutchinson(ds)(5,6,8,10),
lenny castro(per), etc
2008/BLUE NOTE/

1 Just My Imagination
2 OverThe Weekend
3 Loving You
4 I'm In Live Again
5 Midnight Sun
6 Once I Loved
7 The Windmulls Of Your Mind
8 Social Call
9 When You Knows
10 Today Will Be A Good Day

今作のプロデュースは昨年亡くなったジョージ・デュークです。
デュークの手に掛かるとまろやかなサウンドになります。
ダイアンの歌はメチャメチャに上手いです。

「レビュー時のコメント」
ダイアン・リーブスを聴くのも本当に久し振りです。
以前聴いたのは1980年代の”Mtフジ・ジャズ・フェスティバル”の時だったか。
ボーカルに関してはまったくの浦島太郎状態になっています。

ダイアン・リーブスも濃いボーカリストだったですが大分やわらかくなっていました。
洗練されたスウィート&メロウな味わいが加わって、変化してきたと思います。
生粋のジャズ・ボーカル路線では生き残るのがむずかしかったかもしれませんね。
「十分な声量と音域、美しい歌声、歌の上手さは折り紙付き」と申し分のないヴォーカリストです。
何度もグラミーを取ったようですがそれも当然でしょう。
今作のバックも豪華絢爛、1曲目の「JUST MY IMAGINATION」でグッときてしまいました。
「う〜ん、素晴らしい」・・・最もライブで見てみたいヴォーカリストです。
今までパスしてしまったのが残念だったかも・・・去年の9月にも来日していました。

(中間系)

2014/06/22



(762) JOHN BUNCH TRIO / PLAYS THE MUSIC OF IRVING BERLIN
john bunch(p), frank vignola(g), john webber(b),
guest:frank wess(fl)(2,3,5,7,9,12)
2008/ARBORS RECORDS/

1 Soft Light And Sweet Music
2 Coquette
3 How Deep Is Ocean ?
4 What'll I Do ?
5 I've Got My Love To Keep Me Warm
6 The Best Thing For You
7 I'sn't This A Lovely Day
8 I'n Putting All My Eggs In One Basket
9 They Say It's Wonderful
10 All By Myself
11 Better Luck Next Time
12 Change Partners

年齢と共に味わい深くなる。
「年を取るのも悪くないなぁ〜」と思える作品です。
癒し系・・・なによりホッとしますよ。

「レビュー時のコメント」
これはNさんのベスト3の一枚です。
ジョン・バンチ・トリオ&カルテットのアーヴィン・バーリン作品集です。
加えてフランク・ウエスがフルート1本で参加したのにも興味がありました。
ジョン・バンチ(p)が86歳、ゲストのフランク・ウエス(fl)も86歳という物凄いアルバムです。
70代ならまだしも80代半ばを過ぎてもこれだけの演奏が出来るというのはもうそれだけで賞賛に値します。
ジャズには自分の人生がそのまま出ますね。
たしかに若い時に比べれば肉体的な衰えを感じるのはやむを得ません。
ひいては肉体的な衰えは全ての衰えにも通じてきます。
ただ、その時の自分の感情をそのまま表現することに関してはまったく変わっていないんです。
いかに表現するかがジャズの重要な要素の一つです。
ここで聴く二人は年齢を重ねた分だけの深い味わいがあります。
ジョン・バンチはギター・トリオを率いてスイング感溢れるご機嫌な演奏を聴かせてくれました。
一方のフランク・ウエスは危うくてハラハラ、ドキドキしましたがスリルとサスペンスがありました。
カルテットでのベストは(9)「THEY SAY IT'S WONDERFUL」で、(7)「ISN'T THIS A LOVELY DAY ?」も良かった。
年季の入ったプレイと軽快なスイング感、それを味わってもらいたいたアルバムです。
二人に敬意を表してのドラ盤入りになりました。

(中間系)

2014/06/15



(761) CASSANDRA WILSON / LOVERLY
cassandra wilson(vo),
marvin sewell(g), jason moran(p), lonnie plaxico(b),
reginald veal(b), herlin riley(ds), lekan babalola(per), etc
2008/BLUE NOTE/

1 Lover Come Back To Me
2 Black Orpheus
3 Wouldn't It Be Loverly
4 Gone With The Wind
5 Caravan
6 Til There Was You
7 Spring Can Really Hang You Up The Most
8 Arere
9 St.James Infirmary
10 Dust My Broom
11 The Very Thought Of You
12 Sleepin Bee

久々に聴いたけどさすがのスタンダード作品集です。
カサンドラ・ウィルソンは確固たる”自己の世界”を持っている。
他の誰でもないカサンドラの世界です。
崩し具合がいかにも「ジャズだなぁ〜」と思いますよ。
そのビター&ディープな味わいがなんとも堪りません。
マーヴィン・セウエル(g)とジェイソン・モラン(p)も素晴らしい。
(5)「Caravan」は抜群のノリ、(11)「The Very Thought Of You」はベースとのデュオ。
その他にも聴きどころが多く、ジャズ・ボーカル名盤の一枚です。

「レビュー時のコメント」
今年は少しボーカルも聴こうということで選んだのがカサンドラ・ウィルソンの新譜です。
この前カサンドラの作品を買ったのは1999年の「Traveling Miles」だったか。
たしかデビュー・アルバムと2枚目も持っているはずですが、それでももう10年も前のことになります。
カサンドラはかなり濃いボーカリストなのでいかにも妥協のないジャズ・ボーカルという感じがしました。
でもこのようなスタンダード作品集なら比較的聴き易いと思います。
今作はもちろんカサンドラがスタンダードをどう料理しているかが聴きどころになります。
当然ながら一筋縄ではいきません。
鬼才ジェイソン・モラン(p)とマーヴィン・セウエル(g)のプレイも聴きものです。
マーヴィン・セウエルは以前ゲイリー・トーマス(ts)のアルバムで聴いたことがありますが雰囲気ピッタリの起用。

ただ1曲のオリジナルの(8)「ARERE」って日本語なのかな。
多分、即興演奏だと思いますがこれが出色の出来で印象に残りました。
スタンダード集の中で1曲だけ異色なんだけど、ここに収録したくなったのもよく判ります。

(まじめ系)

2014/06/08



(760) PATRICIA BARBER / THE COLE PORTER MIX
patricia barber(p,vo), chris potter(ts)(3,5,7,10,13), neal alger(g),
michael arnopol(b), eric montzka(ds), nate smith(per)(1,11,12)
2008/BLUE NOTE/

1 Easy To Love
2 Late Afternoon And You
3 I Get a Kick Out Of You
4 You're The Top
5 Just One Of Those Things
6 Snow
7 C'est Magnifioue
8 Get Out Of Town
9 I Concentrate On You
10 In The Still Of The Night
11 What Is This Thing Called Love ?
12 Miss Otis Regrets
13 The New Year's Eve Song

パトリシア・バーバーの歌には雰囲気があります。
「ナイトクラブ」っていう作品がありましたが、そのまんまの弾き語りという感じ。
声のかすれ具合もちょうどいい。
個性的かつヘタウマ風なヴォーカルとロマンチックなピアノが絶妙にマッチしています。
べたなバッキングとは一線を画すクリス・ポッターのプレイにも注目です。

「レビュー時のコメント」
このお正月はボーカルを聴く機会が多かったです。
去年は日本人プレイヤーでしたが今年はそれに加えてボーカルも聴いてみたいと思っています。
改めて感じたんですがボーカルはちょっと濃いめの味付けが私の好みのようです。

今作はピアノ&ボーカルのパトリシア・バーバーのコール・ポーター作品集です。
ディープ&ビターな世界・・・落ち着いてしっとりとした雰囲気がなんとも心地良いです。
ニール・アルガーのギターが実にいい味を出しています。
もう一つ聴きどころはもちろんクリス・ポッター(ts)のバッキングにあります。
一癖あるポッターの起用こそがこのアルバムのコンセプトと意気込みを表現していますね。
ここでも先日の越智順子さんと同様に(5)「JUST ONE OF THOSE THINGS」が素晴らしいです。
奇しくも同じ曲が続いてしまいました・・・聴き比べも面白かったです。
自作の(2)「LATE AFTERNOON AND YOU」や(7)「C'EST MAGNIFIOUE」も良かった。
その他にも魅力のある曲が目白押しで琴線に触れました。
これからも長い間愛聴できるアルバムだと思っています。

(中間系)

2014/06/01



(759) BRIAN BLADE & THE FELLOWSHIP BAND / SEASON OF CHANGES
brian blade(ds), jon cowherd(p,org), kurt rosenwinkel(g),
myron walden(as,bcl), melvin butler(ts), chris thomas(b)
2008/VERVE/

1 Rubylou's Lullaby
2 Return Of The Prodigal Son
3 Stoner Hill
4 Season Of Changes
5 Most Precious One
6 Most Precious One(Prodigy)
7 Improvisation(Jon & Myron)
8 Alpha And Omega
9 Omni

ブライアン・ブレイドは今一番旬なドラマーですね。
そんなブレイドが率いる「ザ・フェローシップ・バンド」の2008年作品。
いつまでもこのサウンドに浸っていたいと思ってしまう。
幻想的というか、なんか包まれているような気持になります。

「レビュー時のコメント」
注目すべきドラマー、ブライアン・ブレイドが率いる”Fellowship”の3枚目のアルバムです。
1枚目が1998年、2枚目が1999年なのでほぼ10年振りの新作になりました。
去年はあんまりこういったコンテンポラリー路線は聴く気にならなかったですが今年は聴きますよ。
1曲目の「RUBYLOU'S LULLABY」にこのアルバムの魅力が凝縮されていると思います。
牧歌的というか、広い大地を連想させるというか、北欧やカナダ、ECM的サウンドの影響を感じさせます。

今作の決め手はカート・ローゼンウィンケル(g)の参加にあると思います。
ローゼンウィンケルには参加するだけでサウンドががらりと変わってしまうほどの存在感があります。
ここでも独特の浮揚感とある種の気だるさを演出しています。
彼のリーダー・アルバムだとこれが濃厚に出過ぎるところがあるのでサイドのほうがいいかもしれません。
しかし、この気だるさがなんともいえず個性的で居心地がいいんです。
私はこのサウンドに浸ってはいつも眠くなってしまいます。
最後の(9)「OMNI」はジョン・コルトレーン・サウンドを彷彿とさせるもの。
コルトレーンはすでにスタンダードになっていて、みんなここを通り過ぎてきているんですね。

(まじめ系)

2014/05/25



(758) HARVIE S & KENNY BARRON / NOW WAS THE TIME
harvie s(b), kenny barron(p)
2008/SAVANT RECORDS

1 Confirmation
2 All Or Nothing At All
3 Body And Soul
4 Take Your Time
5 Darn That Dream
6 Miyako
7 Isn't It Romantic ?
8 Chelsea Bridge

久々に聴いたけどやっぱり素晴らしかった。
デュオ作品は二人のインタープレイが魅力。
濃密な時間が過ぎていきます。
この二人の続編が出ているようですね。

「レビュー時のコメント」
こちらのハービー・S(b)とケニー・バロン(p)のデュオはmiyukiさんとイムクさんのベスト3です。
ハービー・Sは初見、出自はラテン系ジャズのようです。
曲目はスタンダードからウエイン・ショーターまでの構成です。
1曲目にピアノとベースのデュオでは珍しいパーカーの「CONFIRMATION」で驚かされました。
(2)「ALL OR NOTHING AT ALL」〜(3)「BODY AND SOUL」の唄ものがいいですね。
自作の(4)「TAKE YOUR TIME」がベスト・トラックだと思います。
バラードの(6)「MIYAKO」が続くか・・・なぜショーターが選ばれたか明らかになる出来です。
ケニー・バロンは絶好調とみました・・・素晴らしいピアノ・・・文句なしの出来でしょう。
バロンが主役と思わせる部分があるけれど、それがハービー・Sの持ち味で最大の魅力なのかもしれません。
ひけらかさない控え目なベース・プレイには好感が持てます。
スイング感は十分、落ち着いていて居心地が良いアルバムなので時々は引っ張り出して聴きたくなると思う。
これからも長い間愛聴できる作品。

(中間系)

2014/05/18



(757) KENNY WERNER & JENS SONDERGAARD / A TIME FOR LOVE
kenny werner(p), jens sondergaard(as)
2008/STUNT RECORDS/

1 But Beautiful
2 'Round Midnight
3 A Time For Love
4 Lover Man
5 Over The Rainbow
6 Willow Weep For Me
7 Darn That Dream
8 Everything Happens To Me

聴き直してみても、ただただ素晴らしいと思いました。
最近、デュオ作品に耳が向いています。
今まで意識して聴いたことはなかったので新鮮です。
私が選んできたのはカルテット〜クインテット〜トリオ〜
セクステット〜デュオ〜ソロの順番でした。
気が付くのが遅いのよねぇ〜。

「レビュー時のコメント」
このケニー・ワーナー(p)とイェンス・ソンダーゴー(as)の作品はmanaさんとGAKOさんのベスト3です。
存在は知っていましたがなんとなく買わなかったアルバム。
これは見事に1本取られました。
副題に”Play Ballads”とあるようにスタンダードのバラード集なんだけど、もうね、素晴らしいの一語です。
もしもこのアルバムを聴いていたら私もベスト3入りは間違いありませんでした。
二人の緊張感溢れるコラボレーションには唸るばかり、今年どころか近年でもベスト3を争うアルバムです。

「最近の愛聴盤」↓でケニー・ワーナーはつかみどころがなくイメージがわかないと書いたばかりです。
ところがこれを聴いてワーナーは根っからのロマンチストだと思いました。
そうでなければこれほどロマンチックなピアノはとてもじゃないが弾けません。
私の好みからいえばこれがワーナーのベスト・アルバムと言えます。
イェンス・ソンダーゴーの前作は「MORE PEPPER」というライブ盤でした。
多いにアート・ペッパーを意識した作品でしたが自由に吹いているこちらのほうが断然いいです。
二人のあまりの素晴らしさに(5)「OVER THE RAINBOW」では涙が出た。

いろいろ書いたけど、本当は何も言いたくない感じがします。
ただ、聴いていたいだけです。

(中間系)

2014/05/11



(756) THE HARRY ALLEN - JOE COHN QUARTET / STOMPIN' THE BLUES
harry allen(ts), joe cohn(g), joel forbes(b), chuck riggs(ds)
guests : john allred(tb), scott hamilton(ts)(1,4,8)
2008/ARBORS/

1 You're Driving Me Crazy
2 I'll Get By
3 Stompin' The Blues
4 My Old Flame
5 Don't Want To Have To
6 But I Will
7 I Only Have Eyes For You
8 (I Would Do) Anything For You
9 Medley: It Might As Well Be Spring / Spring Is Here
10 So There

ハリー・アレン&ジョー・コーン・カルテットの一枚です。
スイング系トロンボーン奏者のジョン・オルレッドが新味。


「レビュー時のコメント」
私は最近このハリー・アレン&ジョー・コーン・カルテットにすっかりはまっています。
このカルテットは人気があるようでコンスタントにアルバムをリリースしています。
それも当然、これほど気持ち良くスイングさせてくれるグループはそうはありませんよ。
このカルテットを聴いて思い出すのはルビー・ブラフ(cl)&ジョージ・バーンズ(g)・カルテットです。
1970年代にスイング感溢れるプレイと心地良いサウンドで人気を博したのグループです
こういった聴き易くて居心地が良いジャズはいつの時代でも一定の評価を得るものですね。
ここでも抜群のスイング感でホントに気持ちがいいです。
トロンボーンの効果が抜群・・・サックス、ギターの音色が絶妙にマッチしてたまりません。
テンポのある曲はもちろんですがバラードの(4)「MY OLD FLAME」もいいです。
クインシー・ジョーンズの(7)「I ONLY HAVE EYES FOR YOU」はもう最高だった。
スコット・ハミルトン(ts)も3曲に参加しています。
”スイングがなければ意味がない”・・・自然に身体が揺れてくる感覚を楽しみましょう。

(くつろぎ系)

2014/05/04



(755) JAVON JACKSON QUARTET / ONCE UPON A MELODY
javon jackson(ts),
eric reed(p), corcoran holt(b), billy drummond(ds)
2008/PALMETTO/

1 One By One
2 Will You Still Be Mine
3 Paradox
4 Mr. Jones
5 My One And Only Love
6 Mr.Taylor
7 The In Crowd
8 Inner Glimpse
9 Like A Star

ジャヴォンの特徴は音のやわらかさ、やさしさにあると思います。
スムース・ジャズの世界でも大成したかもしれない。
最もジャズ度が高いのは自作の(4)「Mr.Jones」です。


「レビュー時のコメント」
気になるテナー・サックス奏者の一人、ジャヴォン・ジャクソンの新作です。
購入した前2作がファンク・ジャズ路線だったので久し振りのストレート・アヘッドなジャズ作品になりました。
やわらかでまろやかな音色、超クールな奏法はメロディ重視のアルバム作りだと思います。
メンバーを見るとエリック・リード(p)の起用が嬉しい、ここでも刺激的な演奏を繰り広げています。
ビリー・ドラモンド(ds)との付き合いは長く、ベースのコーコラン・ホルトは新人だと思います。
メロディ重視のコンセプトがしっかりと生かされたアルバムです。
取り上げられた曲を見ると彼の心境が手に取るように分かるような気がします。
(1)ウエイン・ショーター(ts)は彼がジャズ・メッセンジャーズ時代によく演奏したと思われます。
(3)ソニー・ロリンズ(ts)はジャヴォンの神様、(8)マッコイ・タイナー(p)は親分的な存在かな。
バラードの(5)「MY ONE AND ONLY LOVE」はテナー・サックスにはピッタリの選曲です。
(2)「WILL YOU STILL BE MINE」や(7)「THE IN CROWD」にも思い入れがあるんでしょうね。
ジャヴォンの並々ならぬ実力を現したアルバムで楽しめると思います。
特に(5)「MY ONE AND ONLY LOVE」や(9)「LIKE A STAR」のバラード表現が聴きどころ。
適度な刺激のテナーのワン・ホーン・カルテットは聴きやすく落ち着いた大人のジャズとも言えます。

(中間系)

2014/04/27



(754)AKIO SASAKI TRIO & QUINTET / FLY BY NIGHT
佐々木昭雄(org), 岡安芳明(g), 高橋徹(ds)
松島啓之(tp), 岡淳(ts)
2007/What's New Records/


1 Blue's Boogie
2 Doxy
3 Easy Living
4 But Not For Me
5 NightCap
6 Have You Met Miss Jones ?
7 Love Walked In

何度聴いても今作が醸し出す雰囲気はたまりません。
(1)「Blue's Boogie」は15分超の熱演。
(5)「Nightcap」も素晴らしい。


「レビュー時のコメント」
日本のオルガン・ジャズの決定盤です。
去年のSさんのベスト3でしたが遅ればせながら入手しました。
聞きしに優る出来栄えのアルバムです。
佐々木昭雄さんを聴いたことがなかったのでこれほどのオルガン奏者が日本にもいたのかと驚かされました。
オルガンのベーシックなフォーマットはオルガン、ギター、ドラムスのトリオですね。
ここに松島啓之(tp)さんと岡淳(ts)さんのフロント2管を配したジャズの王道クインテットです。
なんといっても素晴らしかったのは自作のブルースの(5)「NIGHTCAP」でした。
全員のソロがピタリと決まって、ブルージー&グルービーな雰囲気がもうたまりません。
正直、この1曲のために買っても惜しくないと思いました。
続く(7)「HAVE YOU MET MISS JONES ?」、(8)「LOVE WALKED IN」はトリオで演奏されますが、
ここでの佐々木さんと岡安芳明(g)さんのコンビネーションが抜群で背筋がゾクゾクっとしました。
どっしりと支える高橋徹(ds)さんもまたいいです。

(くつろぎ系)

2014/04/20



(753) SCOTT HAMILTON QUARTET / ACROSS THE TRACKS
scott hamilton(ts),
duke robillard(g), gene ludwig(org), chuck riggs(ds)
guests:doug james(bs)(2,5)
2008/Concord/

1 Deuces Wild
2 Parker's Pals
3 Save Your Love For Me
4 Cop Out
5 Intermission Riff
6 Sweet Slumber
7 Something For Red
8 Blue Turning Grey Over You
9 Memories Of You

スコット・ハミルトンの作品中、最もブルージーな味わいです。
ゲストのバリトン・サックスのダグ・ジェイムスは初見。
調べてみたらバリバリのブルース・プレイヤーだったのを思い出しました。

「レビュー時のコメント」
ハリー・アレン(ts)とエリック・アレキサンダー(ts)の話題になれば次はスコット・ハミルトンになるかな。
順当というか、実に分かり易い展開になりました。
スコット・ハミルトンはハリーやエリックとの共演盤もあって相通じることも多く、二人が受けた影響も大きいと思います。
こうしてみるとスイング系のテナー奏者としてのハミルトンが果たした役割はとても重要だったですね。
ハミルトンは1970年代の後半、フュージョンとフリージャズに行き詰まりを感じる中で颯爽とデビューしてきました。
その当時、ベン・ウエブスター系の原点回帰のスイング・テナーはとても新鮮に聴こえたものです。
停滞していた日本ジャズ界に一大センセーションを巻き起こしたのをよく覚えています。
ウイントン・マルサリス(tp)がデビューした時もそんな感じがしたのでいかに反響が大きかったか分かると思います。
以来、30年余り、終始一貫自分のスタイルを貫き通しジャズ・シーンに確固たる地位を築いています。
間違いなく「ワン・アンド・オンリーの世界」を持っているテナー・マスターの一人になりました。

ここではオルガン・トリオがバックということでよりハミルトンの魅力が増幅されたと思います。
ハミルトンは白人ですが私は黒い感覚を持っています。
ソウルフルとはまた違う、なんというかアーシーで下卑た味付けがあるというか、そういう感じがします。
表現がむずかしいけど私にとってはそれがとても魅力的なところなんです。
(9)「MEMORIES OF YOU」は別にして選曲からもそれがうかがえると思いますがいかがかな。
(3)「SAVE YOUR LOVE FOR ME」のスロー・バラードなんて涙が出そう・・・。

(くつろぎ系)

2014/04/13



(752) MONTY ALEXANDER TRIO / IN TOKYO
monty alexander(p), andy simpkins(b), frank gant(ds)
1979Rec/PABLO/

1 Broadway
2 Just In Time
3 Sweet Lady
4 Tricotism
5 Never Let Me Go
6 Montevideo
7 Pawnbroker
8 See See Rider
*9 Impressions
*10 Nature Boy
*11 St.Thomas

近年のモンティはソフト路線が多いような気がします。
よりシリアスなものも聴きたいけどね。
もっとも新作は買ってないけど・・・出てるのかな。

*印のボーナス・トラック3曲は別録音です。


「レビュー時のコメント」
モンティ・アレキサンダーは好きなピアニストです。
1979年の初来日コンサートを東京芝の郵便貯金ホールに見に行きました。
実はこのアルバムのことをジャズ仲間のNさんから聞いた時は不思議に思いました。
私はこの「In Tokyo」を持っていなかったのです。
ライブ盤ならば「見逃すはずないのになぁー、なぜだろう」とずっと考えていました。

>(「In Tokyo」はスタジオ録音なんですけど、日本でのライヴ録音は残ってるんでしょうか」)
このNさんのコメントで納得しました。
多分その時にはスタジオ盤なので急ぐことはないと思って、そのまま忘れてしまったアルバムだろうと思います。
早速、注文して入手しました。
今作は録音が個性的・・・スイング感溢れる強烈なピアノとゴツゴツとしたベース音が生々しく迫ってきます
スタジオ録音でもすぐ目の前で演奏しているような感じでまるでライブ盤のようです。
それで先日の「新作アンプ試聴会」にも持って行って聴かせてもらいました。
今作には(9)、(10)、(11)がボーナス・トラックとして追加されていて、魅力ある曲目からも見逃せないところです。

コンサートでは モンティの歌も聴きたかったけれどこの時は歌ってくれませんでした。
若い頃はジャズ・クラブで弾き語りをやっていたみたいでキングコールみたいな感じです。
来日記念盤では1曲披露してくれていたのでライブでもてっきり歌ってくれるものと思っていました。
聴けなくてガッカリしたのを今でもよく覚えています。

モンティは「Live! Montreux Alexander」(1976)で大ブレイクして一躍ジャズ・シーンの桧舞台に登場してきました。
モントリューからはミシェル・ペトルチアーニやゴンザロ・ルバルカバも同じ道を通っていますね。
カムバック派ではレイ・ブライアントがつとに有名です。

(中間系)

2014/04/06



(751) YOSUKE INOUE TRIO "Z'S" / STRAIGHT AHEAD
井上陽介(b), 多田誠司(as,ss,fl), 納谷嘉彦(p)
ゲスト:大阪昌彦(ds)(2,3,5,8,9)
2007/M&I JAZZ/


1 I've Never Been In Love Before
2 Better Get Hit In Your Soul
3 Blue Z's
4 Cry Me A River
5 My One And Only LoveS
6 Alice In Wonderland
7 Work Song
8 El Corazon Arenoso
9 Go Straight Ahead
10 L-O-V-E

2曲目の「Better Get Hit In Your Soul」はチャールス・ミンガスの作品です。
名盤「Mingus Ah Um」(1959)が初演・・・このアルバムには名曲が詰まっています。
ミンガスは井上さんの憧れのベーシストだったかもしれませんね。
最もエキサイティングな内容で4人のメンバーが炸裂しています。


「レビュー時のコメント」
井上陽介(b)さんが率いるドラムレス・トリオの「Z's」のアルバムです。
名実共に現在の日本のNO.1ベーシストにアルトの多田誠司さんとピアノの納谷嘉彦さんの組み合わせ。
曲によって大坂昌彦(ds)さんがゲスト出演していて、このトリオ編成にこだわらないのも好ましいです。
表題通り「ストレート・アヘッド」なスタンダード・ジャズが聴けます。

井上さんはあちこちのセッションに引っ張りだこなのでライブでは出会う機会が多いです。
抜群のビート感、リズム感、素早いレスポンスを可能にする驚異的なテクニックを持っています。
私はオスカー・ピーターソン・トリオの名ベーシスト、レイ・ブラウン〜ニールス・ペデルセンをイメージしています。
そういえば最近、ベーシストではこのペデルセンとロン・カーターをよく聴いています。

実力者の多田さん、納谷さんも好演していて安定感のある仕上がりになっています。
日本のジャズのレベルの高さを実感できる一枚です。

(中間系)

2014/03/30



(750) FRANCO CERRI QUARTET
/ E VENIA DA CAMPI CHE DI CERRI SENTIA
franco cerri(g),
alberto gurrisi(org), mattia magatelli(b), riccardo tosi(ds)
2008/RED RECORDS/

1 E venia da campi che di Cerri sentia
2 Brasil
3 Fine & Dandy
4 All The Way
5 S.O.S
6 But Not For Me
7 It Could Happen To You
8 Look For The Silver Lining
9 The Day Of Wine And Roses
10 WhenThe Saints Go Marchin' In
11 Sultry Serenade

イタリアの大ベテラン、フランコ・セリ(g)の作品。
穏やかでスマート・・・一味違うオルガン入りカルテットが聴けました。


「レビュー時のコメント」
秋も深まるなんとなく物悲しい季節には落ち着いた雰囲気のジャズが聴きたくなります。
こちらはイタリア・ジャズ界の重鎮、フランコ・セリ(g)の新作です。
いぶし銀の如くの味わい深いプレイはこの時期にはぴったりだと思います。
バックにオルガンを起用しているので心地良いグルーブ感もあります。
このオルガンは面白いと思いました。
ソウルフルなアメリカのそれとは一線を画した薄味のスマートな演奏で新鮮です。
ジャズ・スタンダード中心の選曲、ちょうどいい案配なのでゆったりと浸ることが出来ます。

(くつろぎ系)

2014/03/23



(749) ALEX RIEL QUARTET / LIVE AT STARS
alex riel(ds),
charlie mariano(as), jakob karlzon(p), jesper lundgaard(b),
2008/Cowbell Music/

1 Black Orpheus
2 My Foolish Heart
3 All The Things You Are
4 Prelude To A Kiss
5 Speak By Charlie Mariano
6 Nigh And Day
7 Like Someone In Love
8 Sweet Georgia Brown

アレックス・リール・カルテットによるスタンダード作品集です。
久々に聴いたけど83歳のマリアーノが凄い。
やや感情過多なのはご愛嬌。
超スロー・バラードにおけるテンポのキープ力は驚異的です。

なおマリアーノは2009年に85歳で亡くなっています。


「レビュー時のコメント」
ここでの興味はチャーリー・マリアーノ(as)とヤコブ・カールソン(p)にありました。
マリアーノはなんと録音時は83歳ですよ。
とても信じられないほどの溌剌としたプレイを展開しています。
微妙に音をずらすところに独特の表現力を感じました。
加齢と共に益々尖がって刺激的、挑戦的になったきたのではないかと思います。
80を過ぎてからの精力的な活動には凄いとしか言いようがありません。
マリアーノは20歳でデビュー、27歳で初リーダー・アルバムを吹き込んでいます。
以来、65年間の長きに渡り第一線で活躍していることになります。
アルト奏者ではリー・コニッツ(81歳)、フィル・ウッズ(77歳)、フランク・モーガン(75歳)と続いています。
コニッツより年上だったとはちょっと驚きました。

アレックス・リール(ds)とイェスパー・ルンゴー(b)はヨーロッパを代表するリズム・セクションです。
加えてヤコブ・カールソンがまた素晴らしいです。
このピアノ・トリオの魅力は(3)「All The Things You Are」で十分に堪能することができました。
選曲はお馴染みのスタンダードばかりですが甘さは控え目、極上のジャズ・アルバムに仕上がっています。

(中間系)

2014/03/15




(748) J. A. M TRIO / JUST A MAESTRO
丈青(p), 秋田ゴールドマン(b), みどりん(ds)
guest : Jose James(vo)(7)
2008/Victor/

丈青さんは久々に聴いたけど面白かったです。
多彩なドラミングを見せるみどりんさんとのコンビネーションが聴きどころ。


「レビュー時のコメント」
注目している丈青さん率いるJ・A・M・トリオのアルバムです。
このトリオは人気バンドの「SOIL&"PIMP"SESSIONS」からの選抜メンバーになります。
純ジャズ路線ではないですがコンテンポラリーでユニークなサウンドを持つピアノ・トリオです。
私が知る限りでは日本にこういう傾向のピアノ・トリオはないと思います。
2曲を除いてはオリジナルで占められていますが私はジョージ・ケイブルス(p)の(2)「QUIET FIRE」と
これは珍しいロイ・エアーズ(vib)の(9)「ROY'S SCAT」が聴きどころになりました。
異彩を放つ丈青の強力なピアノ・タッチとスピード感はここでも十分に感じることができます。
しかしながら、好みや評価が分かれる作品であることは確かです。

(中間系)

2014/03/09



(747) DENIS DEBLASIO QUINTET / WHERE THE JADE BUDDHA LIVES
denis diblasio(bs,fl), jim mcfalls(tb),
ron thomas(p), paul klinefelter(b), joe mullen(ds)
2007/Art Of Life/

キッチリとした構成とアレンジで実に完成度の高い作品です。
掛け値なしに「目立たないけどいいアルバム」です。
聴き直してみて、改めてそう思いました。


「レビュー時のコメント」
デニス・ディブラシオは初見、バリトン・サックス・クインテットに惹かれました。
それもバリトン&トロンボーンの組み合わせならそのままジェリー・マリガン&ボブ・ブルックマイヤーですね。
マリガン&ブルックマイヤーならピアノレスですがここではピアノが加わっているので一味も二味も違います。
デニスは2006年に亡くなったメイナード・ファーガソン・ビック・バンドに在団、作編曲も提供していたようです。
そのせいか、オリジナルも凝っていてサウンドもハーモニーも興味深いものでした。
クールながら最先端のジャズ・スタイルでそれもバリトン絡みだけに実に新鮮です。
オリジナルが中心でジャズ・スタンダードといえるのは(5)「SONG OF INDIA」だけです。
ここではフルートを聴かせてくれますがエキゾチックなオリエンタル・ムードで面白かったです。
ロン・トーマス(p)はパット・マルティーノ(g)のグループで活躍していましたが彼の美しいピアノも聴きどころ。

(まじめ系)

2014/03/02



(746) Q ISHIKAWA QUARTET / Q'S GROOVE
Q いしかわ(ts,vo),
清水絵理子(p), 岡田勉(b), 井川晃(ds)
2003/What's New Records/


Q・いしかわさんは80歳を過ぎても現役で活躍する驚異的な人です。
今でも都内を中心に元気にライブ活動をしています。
まずは日本最年長のプロ・テナー・サックス奏者といえるのではないかな。
毎日、厳しい練習を課していると聞いています。

Qさんはリズム&ブルース出身の日本では珍しいタイプのサックス奏者です。
米軍キャンプで鍛えた実戦派で歌も上手い。
穏やかで暖かい雰囲気とユーモアたっぷりのお話はとても楽しいです。
機会があったら是非聴いてみて下さい。


「レビュー時のコメント」
深まる秋、久し振りにワン・ホーンのテナー・サックスが聴きたくなったのでQ いしかわさんを選びました。
Qさんは今年で77歳、ライブ・ハウスを中心に根強い人気を持つベテラン・テナー奏者です。
これがねぇー、なんともいえず味わい深い作品で実にいい感じなんですよ。
ファンキーでソウルフルでグルービーでカッコイイ、私はどっぷりと浸かってしまいました。
アーネット・コブ(ts)、ジミー・ホレスト(ts)、スタンリー・タレンタイン(ts)、
アイク・ケベック(ts)といったソウル・ジャズのラインが好きならバッチリです。
特に(2)、(3)のオルガン奏者の作品や(5)「EVERYTHING HAPPENS TO ME」のバラード・プレイが聴きどころ。
「WHAT IS THIS THING CALLED LOVE」では渋いヴォーカルと管楽器奏者ならではの抜群のスキャットが聴けます。
日本にもこんなテナー奏者がいるんですよ、このノリ、雰囲気はたまりません。
ベテラン・ベーシストの岡田勉さんを起用、清水絵理子さんは超売れっ子ピアニストに成長しています。
中堅ドラマーの井川さんは浅草でジャズ・バーを開いたとの情報が入っています。
楽しいアルバムです。是非、お試しあれ。

(くつろぎ系)

2014/02/23



(745) HENRIK GUNDE TRIO / COMES LOVE
henrik gunde(p), jesper bodilsen(b), mortien lund(ds)
2008/Marshmallow/

バックは先週のオリヴィエ・アントゥネスと同メンバー。
持ち味が違うので面白かったです。
以前2人の競演ライブを見に行ったのを思い出しました。


「レビュー時のコメント」
ヘンリック・グンテを最初に聴いたのはアルド・ロマーノ(ds)のジャズパー受賞記念コンサートのライブ盤です。
「ALDO ROMANO QUINTET / THE JAZZPAR PRIZE」(2004年)。
そのスイング感溢れる強力なタッチはヨーロッパのピアニストとしては珍しいタイプです。
彼の持つ明るい雰囲気はいいですね、ライブを見てもなんとなく明るくなって楽しくなってきました。
これがグンテの最大の持ち味であまりシリアスなものには目を向けずそのままを押し通して欲しいです。
乗りの良いリズミカルなピアノ・プレイにはたくさんの元気がもらえると思います。
ここでもイェスパー・ボディルセン(b)とモーティン・ルンド(ds)のコンビが素晴らしいです。

(中間系)

2014/02/16



(744) OLIVIER ANTUNES TRIO / ALICE IN WONDERLAND
olivier antunes(p), jesper bodilsen(b), morten lund(ds)
2008/Marshmallow/

聴き直してみても素晴らしかった。
申し分のないピアノ・トリオです。


「レビュー時のコメント」
オリヴィエ・アントゥネスは現在35歳、最初に知ったのはベテラン・テナー奏者のイエスパー・ティロのアルバムです。
「THIS IS UNCLE AL」(2001年)でイェスパー・ルンゴー(b)とアルヴィン・クイーン(ds)のリズム・セクションでした。
その後、2003年にマシュマロ・レーベルから自己名義の「Introducing」が発売されて以来注目していました。
この時のバックもマッズ・ヴィンディング(b)にアレックス・リール(ds)という強力なメンバーです。
私はかなり早い時期から知っていたことになります。
ヨーロッパ・ピアノの伝統を継ぐ美しく透明感のある音色、叙情的かつ静謐なムードはもちろん持っています。
今回彼のライブを見て切れのある強靭なタッチ、抜群のスイング感、アグレッシブなプレイを目のあたりにしました。
歌心も申し分なく、なんというか、天性のもの、天才的なものがあると感じました。
共演のイェスパー・ボデルセン(b)とモーティン・ルンド(ds)も共に30代の上り調子、屈指の組み合わせと言えます。
スタンダード作品集、3人の相性とコンビネーションも抜群で三位一体の素晴らしいピアノ・トリオが聴けます。
ピアノ・トリオ名盤の一枚です。

(中間系)

2014/02/09



(743) MIKE LeDONNE QUINTET / FIVE LIVE
eric alexander(ts), jeremy pelt(tp),
mike ledonne(p), john webber(b), joe farnsworth(ds)
2008/SAVANT/

中堅ピアニスト&オルガニスト、マイク・ルドンのライブ盤です。
エリック・アレキサンダーとジェレミー・ペルトの組み合わせは珍しいと思う。


「レビュー時のコメント」
マイク・ルドン・クインテットのライブ盤は生きのいいハード・バップが聴けます。
ここの興味はジェレミー・ペルト(tp)とエリック・アレキサンダー(ts)の組み合わせにありました。
結果はエリックの大差勝ちです。
このアルバムではエリックが圧倒的な存在感で一番の聴きどころになりました。
主流派テナー奏者としてテナー・マスターへの道を順調に歩んでいると思います。
多くのアルバムに参加してタフネスぶりが目立ちましたが他流試合が財産として生きてきました。
惜しくも亡くなったマイケル・ブレッカーを継ぐ存在になりつつあります。
反面、ジェレミー・ペルトはこじんまりとまとまってしまったような感じがします。
デビュー時のはつらつとしたプレイは影を潜めてしまいました。
安全志向はまだまだ早いと思いますが・・・良くも悪くももっと暴れたほうがいいです。
リーダーのマイク・ルドンは安定感のあるプレイで好演しています。

(中間系)

2014/02/02



(742) ARI HOENIG TRIO & QUARTET / BERT'S PLAYGROUND
ari hoenig(ds), jonathan kreisberg(g), matt penman(b),
criss potter(ts)(1,4,9), will vinson(as)(3,7),
gilad hekselman(g)(2,10), orlando lefleming(b)(2,6,8.,10)
2008/DREYFUS/

今聴いても十分に刺激的なアルバムです。
コルトレーンの(1)「Moment's Notice」は10分を超える熱演。


「レビュー時のコメント」
アリ・ホーニグ(ds)を最初に注目したのはお気に入りのピアニストのケニー・ワーナー・トリオでした。
ずいぶんと刺激的なドラムを叩くなぁーというのが最初の印象です。
その後、自己のトリオや、ジャン・ミシェル・ピルク(p)・トリオ、リチャード・ボナ(b)のアルバムでも聴きました。
最先端の感覚を持つドラマーの一人として注目しています。
自身のオリジナルが5曲とモンク、コルトレーン、ショーター各1とスタンダードが2曲の好バランスの構成です。
トリオとカルテットが半々なのもよく考えられています。
聴きどころはやはりクリス・ポッター(ts)が参加の「1、4、9」だと思います。
ジョナサン・クライスバーグ(g)、マット・ペンマン(b)、ホーニグのリズム・セクションとの絡みが魅力的です。
スリルと刺激に富んだコンテンポラリーなサウンドが聴けます。
アルト・サックスのウィル・ヴィンソンは初見ですがサウンド的にピッタリとマッチしていて好演しています。
ただ、ドラム・ソロで演奏される(5)「'ROUND MIDNIGHT」はまったく分からなかった。

共演のクライスバーグとペンマンの二人は2006年の来日公演で見ています。
その時の印象はこうでした。
『クライスバーグはパット・メセニー級のテクニシャンでなめらかなギター、超高速フレーズには目を見張るばかりです。
ペンマンはすごく大きな手をしていて、まるでメロディー楽器のように軽々とベースを駆使し、
今までこのようなタイプのベーシストは見たことがありません。』

今が旬の最先端のジャズが聴ける好盤でお薦めの一枚です。

(まじめ系)

2014/01/26



(741) RYUICHIRO TONOZUKA QUARTET / TOP GEAR
土濃塚隆一郎(flh),
中村新史(p,key,org)、高道晴久(b)、ジーン重村(ds)、
佐藤春樹(tb)、加藤景子(p,org,elp)、紺野智之(ds,per),
板垣光弘(p)、河上修(b)、宇山満隆(ds)、天野正道(orc)
2008/KINGSONE FRECORDS/


土濃塚さんの最大の魅力はパワフルな疾走感です。
フレディ・ハバードの3曲には彼の思い入れが感じられます。


「レビュー時のコメント」
好漢、土濃塚隆一郎さんの新譜です。
フリューゲル・ホーンが炸裂、相変わらずラッパがよく鳴っています。
この爽快な疾走感とドライブ感は土濃塚さんならではのものでしょうね。
オリジナルの4曲を含む幅広い選曲が魅力、私はなぜか「CALLING YOU」が意外でした。
フレディ・ハバードの3曲は体調がイマイチと聞くハバードに対するオマージュだと思います。
ジャズ・ロックにフュージョン・テイストが加味されて土濃塚ワールド一段と広がってきました。
今作は多分にライブを意識したアルバム構成になっています。
「BROWN SUGAR」ではDJ風なメンバー紹介があって、まるでアンコールのようにバラードでお仕舞いになります。
自作の「寺泊」、「篝火」のバラードが素晴らしいです、上記の「CALLING YOU」も印象に残りました。
バラード表現に長足の進歩・・・やはり年齢の積み重ねが大事だと思います。
たまにライブにも行きますがいつも全力投球のプレイを聴かせてくれます。
パワフルで音圧も凄い、河上修さんとのコンビネーションも楽しみの一つです。
ちなみに今年聴いた最高のライブは土濃塚さんだったです・・・ライブ・レポートをどうぞ。

(中間系)

2014/01/19



(740) THE JOHN HICKS LEGACY BAND / MIND WINE
elise wood-hicks(fl), graig handy(ts,ss), eddie henderson(tp),
larry willis(p), curtis lundy(b), steve williams(ds)
2008/SAVANT/

ジョン・ヒックスが亡くなったのは2006年、もう8年が過ぎようとしています。
ラリー・ウィリスは見事・・・ここにはヒックスの音楽が詰まっていました。


「レビュー時のコメント」
2年ほど前に亡くなったジョン・ヒックス(p)のレガシー・バンドの作品です。
ジョン・ヒックスを初めて知ったのは60年代のジャズ・メッセンジャーズの作品です。
当時としてはやや遅咲き、遅れてきたジャズ・ピアニストと言えると思います。
チャールス・トリバー(tp)、ソニー・フォーチュン(as)、チコ・フリーマン(ts)、デビッド・マレイ(ts),
アーサー・ブライス(as)、ファラオ・サンダース(ts)といった一癖あるミュージシャン達と共演。
私はこの頃のヒックスが一番刺激的で好きだったです。
90年代になるとメインストリーマーとしてあちこちに引っ張りだこの人気ピアニストになりました。

これはヒックスの作品を演奏したアルバムでヒックスゆかりのメンバーが集まっています。
グレイグ・ハンディ(as)、エディ・ヘンダーソン(tp)、カーティス・ランディ(b)、
ラリー・ウイリス(p)は言われてみればヒックスに一番近いピアニストかもしれませんね。
ヒックスの奥さんがフルート奏者だったとは知りませんでした。
こういうバンドができること自体がヒックスの人柄を偲ばせるものですね。
やさしいサウンドなのでこれからの秋の夜長に聴くには最適のアルバムかもしれませんよ。

(中間系)

2014/01/12



(739) ALEX GRAHAM SEXTET / BRAND NEW
alex graham(as), jim rotondi(tp), steve davis(tb),
david hazeltine(p), rodney whitaker(b), carl allen(ds)
2008/ORIGIN/

聴き直して改めていいアルバムだと思いました。
ジャケットで引かなくて良かったです。
(9)「SKYLARK」でピアノとデュオ、自作の(2)、(7)はワン・ホーン・カルテットで演奏されます。
カール・アレンの華麗なドラミングも聴きどころになりました。
トニー・ウィリアムス〜ジャック・ディジョネット〜カール・アレンの流れが確かにあります。


「レビュー時のコメント」
ジャケットがジャケットなので一瞬引きましたが中身はハード・バップ・テイストが詰まっていました。
アレックス・グラハム(as)は初見ですが共演者を見たら入手せざるを得ません。
ジム・ロトンディ(tp)、スティーヴ・デイビス(tb)、デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、
ロドニー・ウィテカー(b)、カール・アレン(ds)という生唾ものの組み合わせです。
このメンバーによるスタンダード・ナンバーが聴けるのは魅力十分です。
フロント3管の美しいアンサンブルとハーモニー、ゆったりとした自然体のアルバム作りに好感を持ちました。
一番の聴きどころは(9)「SKYLARK」でピアノとデュオで演奏されるバラードです。
キャノンボール・アダレイを彷彿とさせるところに彼が只者ものではないことの証明になります。
自作の(2)「PIG PIG」はジャズロック調のテーマをもつカルテット演奏で面白かったです。
スタンダードでは(3)「ALL THE THINGS YOU ARE」〜(4)「WHERE OR WHEN」〜
(5)「FOR THE LOVE OF YOU」〜(6)「JUST YOU, JUST ME」が続きますがこれが実に心地良い流れです。
アレックス・グラハムの今後の成長を期待したいと思います。
共演者ではジム・ロトンディ、デヴィッド・ヘイゼルタイン、カール・アレンが好調とみました。

(中間系)

2014/01/05



(738) KOJI GOTO TRIO / HOPE
後藤浩二(p), ラリー・グレナディア(b), ハーヴィー・メイソン(ds)
2007/VideoArts/



後藤浩二さんは素晴らしいです。
表題曲の(4)「Hope」を聴いたらそのセンスを疑わないと思います。
ジンワリと心に沁み入るピアノです。


「レビュー時のコメント」
今作はジャズ仲間のMさんの紹介で知りました。
実は何年か前に名古屋に凄いピアニストがいるとの噂を聞いたことがありました。
それが後藤浩二さんでしたがそれっきりになっていたんです。

まずは聞きしに優る仕上がりで驚きました。
ブラッド・メルドウ・トリオでお馴染みのナンバー・ワン・ベーシストのラリー・グレナディアと
多彩なベテラン・ドラマーのハーヴィー・メイソンと組み合わせは興味津々でした。
後藤さんはがっぷり四つの互角以上に渡り合っています。
オリジナルを多く取り入れた構成も成功していて、自分の世界観を創り出しています。
美しく繊細なタッチ、絶妙の間合いが素晴らしいです。
初めての顔合わせでもこれほどしっくりいくのかと改めて世界のジャズメンの底力を感じました。
後藤さんとグレナディアの共演を考えた人は凄いですね。
メイソンがプロデューサーに名前を連ねているのは後藤さんの実力を認めたからに相違ありません。
ミシェル・ペトルチアーニの曲が2曲含まれているのは今の後藤さんの心境を表しているのかな。
日本発ピアノ・トリオの好盤。是非聴いて欲しい一枚です。

(中間系)

2013/12/29



(737) HIGH FIVE QUINTET / FIVE FOR FUN
fabrizio bosso(tp), daniele scannapieco(ts),
luca mannutza(p), pietro ciancaglini(b), lprenzo tucci(ds)
2008/BLUE NOTE/

何も言うことはありません。
イタリアの伊達男達の演奏は実にカッコいいです。
(6)「Estudio Misterioso」のボッソに痺れた。


「レビュー時のコメント」
ハイ・ファイブはイタリア発のストレート・アヘッドなハード・バップ・グループです。
ファブリッツオ・ボッソ(tp)とダニエル・スカナピエコ(ts)のフロント2管が魅力。
両者共に個人的にも大活躍しています。
ハイ・ファイブを買ったのはこれで3枚目になります。
2002年、2004年、今回が2008年なので少なくても6年以上の歴史があります。
人気急上昇ということでメジャーのブルー・ノート・レーベルから発売されることになりました。
前回とメンバーも変わっていないのでこれからも長期に渡って活躍するグループになりそうですね。
2曲を除いてはメンバーのオリジナルが中心。
ここでも相変わらずのご機嫌で切れの良いハード・バップ・ジャズを聴かせてくれました。
表題曲の「FIVE FOR FUN」はホレス・シルバー・クインテットを彷彿とさせるファンキーな曲調を持っています。
全員が生き生きとした演奏を繰り広げていて気分爽快、文句なしに楽しめるアルバムです。

2008年11月に来日公演が行なわれその評判は上々でした。

(中間系)

2013/12/22



(736) RYUTARO MAKINO / RM
牧野竜太郎(vo),
椎名豊(p), 楠直孝(p), 塩田哲嗣(b), ユージン・ジャクソン(ds),
島裕介(tp), 太田剣(as), 中路英明(tb), etc
2008/ATOSS BROADCASTING/


久々に聴きましたが瑞々しく新鮮です
バラードがいいなぁ〜。
(2)「La.La.La.」、(8)「君の青」など、オリジナルが素晴らしい。
ヴォーカリストは年齢と共に深くなるのでその成長が楽しみです。


「レビュー時のコメント」
牧野竜太郎さん、日本の若手男性ヴォーカリストを紹介するのは久し振りになります。
前回は小林桂さんだったのでほぼ10年ぶりか。
牧野さんの出自はジャズのようですがそれではとても納まらないと思います。
選曲のラインナップを見てもそれは一目瞭然です。
日本の男性ヴォーカルはあまり聴く機会がないので分かりませんが久し振りに現れた大物かもしれません。
しなやか、まろやか、ソフト、メロウな歌声を持ち、シンガー・ソング・ライターとしての才能もあります。
幅広くスケールが大きい歌手です。
(1)「デイ・バイ・デイ」のジャズ・フィーリング、(2)「LA,LA,LA」の大きなノリに魅力、持ち味が詰まっています。
多分、ジャズ以外の方向でも人気が高まっていくのではないかと予想しています。
なにしろ、オリジナルにおけるメッセージとメロディがとても心地良いです。

(くつろぎ系)

2013/12/15



(735) TOM HARRELL QUINTET / LIGHT ON
tom harrell(tp), wayne escoffery(ts),
danny grissett(p), ugonna okegwo(b), johnathan blake(ds)
2007/HIGH NOTE/

トム・ハレルは実に真面目な性格です。
いつ聴いてもカチッとした端正なジャズを聴かせてくれます。


「レビュー時のコメント」
トム・ハレル・クインテットのアメリカ発のハード・バップの好盤です。
全曲、ハレルのオリジナルですが変化に富んでいて飽きさせません。
改めて彼の作編曲能力の高さを感じました。
もう少し遊び心があってもいいのではと思いますが真摯な姿勢は彼の持ち味なのでしょうがないかな。
トランペット&テナーのモダン・ジャズの王道フロント2管、クールなペットにホットなテナーが絡みます。
アメリカ盤としては久々に聴き応えのある先進のハード・バップが聴けました。
共演陣ではまずダニー・グリセット(p)が挙げられます。
注目のピアニストで2枚のリーダー・アルバムも好評でした。
ウエイン・イスコフェリーもコルトレーン&ロリンズ&デックスをミックスした主流派テナー奏者です。
ウゴンナ・オケグウォは中堅ベーシスト、ドラムのジョナサン・ブレイクは初見なので新人だと思います。
このメンバーは9月に来日公演が予定されています。
時間が取れれば是非見ておきたいものです。

(まじめ系)

2013/12/08



(734) TAIHEI ASAKAWA TRIO / TAIHEI ASAKAWA
浅川太平(p), 鉄井孝司(b), 鈴木カオル(ds)
2007/Roving Spirits/


浅川太平((p)さんのこのトリオは素晴らしい。
CDをトレイに乗せて音が出てきた瞬間にその才能を疑わないと思います。
テクニックはもちろんですが強烈なオーラを放つピアニストで熱狂的なファンも多い。
デビュー盤としてはこれ以上は望めない仕上がり・・・完成度は高いです。
プロデューサーはベーシストの加藤真一さんです。


「レビュー時のコメント」
お気に入りのベーシストの鉄井孝司さんつながりで購入しました。
これは文句なしにいいです。
想像以上の出来で私は一発で参ってしまいました。
なにより若さの勢いを感じます。若い時は荒削りでもいいから突っ走って欲しいです。
その点、このアルバムは申し分ありません。
新鮮で瑞々しく、ケレン味のない溌剌としたプレイが好感が持てます。
デビュー作にしては全曲オリジナルというのもむずかしい選択だと思いましたが潔くていいですね。
1曲目を聴いてもらえば全てが納得できると思います。
超高速フレーズの驚くべきテクニックと強力な左手の動きは驚嘆しました。
先行き、どんなピアニストに育っていくのか、本当に楽しみな逸材です。
浅川太平・・・・・まさに未完の大器という表現がピッタリです。
共演の鉄井孝司さん、鈴木カオルさんの好演も見逃せません。
オリジナル中心、それも一筋縄ではいかない曲調で変拍子も数多く登場します。
なんなく演奏してしまうところに確かな実力の裏付けを感じました。
このトリオは魅力があります。

(中間系)

2013/12/01



(733) TOSHIO OSUMI TRIO & QUARTET & QUINTET / NEW DEAL
大隈寿男(ds), 納谷嘉彦(p), 井上陽介(b),
秋田慎治(p), 安ヵ川大樹(b), 太田剣(as), 近藤和彦(as)
2007/M&I JAZZ/


彼は学生JazzBand時代の後輩だから無理言ってライブに付き合って貰ってるんだ。
スノッブになりがちなJazzをエンターテイメントに仕上げていく大隈の手腕は、ホントにSwingするなぁ〜。
(宇崎竜童)

聴き味最高・・・選曲良し、このノリ、このスイング感は気分爽快になります。


「レビュー時のコメント」
ベテラン・ドラマーの大隈寿男さんのアルバムです。
ドラムを楽しませてくれる親分肌のアート・ブレイキー的なドラマーも少なくなってきました。
ここはメンバーの組み合わせと幅広い選曲が最大の魅力です。
オスカー・ぺティフォードからジョン・レノンまでトリオ、カルテット、クインテットで楽しませてくれました。
注目の納谷嘉彦さんと秋田慎治さんの2組のピアノ・トリオの競演、
現在最も脂がのっている井上陽介さんと安ヵ川大樹さんの二人のベーシストも聴けます。
(1)、(5)はアルト・サックスの太田剣さん、近藤和彦さんのバトルが聴きものです。
聴きどころ満載の作品でお勧め。

(中間系)

2013/11/24



(732) SHUNSUKE UMINO QUARTET / BEAUTIFUL FRIENDSHIP
海野俊輔(ds), 植松孝夫(ts),
海野雅威(p), 野本晴美(p), 安東昇(b)

2008/Musical Dog Records/

海野俊輔(ds)さんの初リーダー作はスタジオ・ライブ盤という珍しい録音です。
もちろん一発勝負で録り直しは出来ません。
その意気込みが伝わってくるような熱い演奏が繰り広げられています。
何度聴き直しても(5)「パッション・ダンス」は凄いよ。
その他の曲もライブの臨場感が伝わってくる名演です。

「レビュー時のコメント」
最近、テナー・サックス奏者をよく聴いています。
日本のテナーでは誰だろうかと考えた時に思い出したのは植松孝夫さんでした。
早速聴いてみたいと思って探したところ、この海野俊輔さんのアルバムを見つけました。
俊輔さんを最初に見たのは鈴木良雄・トリオだったか、すぐに植松孝夫・カルテット、
注目の海野雅威・トリオと立て続けに見ました。
今作は俊輔さんの初リーダー・アルバムで選曲も魅力、フレッシュで瑞々しいドラムスが聴けます。
共演は師匠格の植松さん、ピアノには海野雅威さんと野本晴美さんの売れっ子二人の豪華盤です。
「BEAUTIFUL FRIENDSHIP」は植松さんの愛奏曲、ハイライトはマッコイの「PASSION DANCE」。
ここでの野本さんのプレイは凄いですね、強力なタッチ、ノリにノリました。
強烈にプッシュ・アップする俊輔さん、安東さんのリズム・セクションも聴きもので印象に残りました。
植松さんのテナーはやっぱりいいです、自由自在の展開はアイデア豊富で凄みがあります。
今度また見に行こうかと思っています。

(中間系)

2013/11/17



(731) CLAUDIO RODITI QUINTET / IMPRESSIONS
claudio roditi(tp), idriss boudrioua(as,ss),
dario galante(p), sergio barroso(b), pascoal mereilles(ds)
2008/Groovin' high/

クラウディオ・ロディテイ(tp)のソフトで繊細な音色は聴いていて疲れません。
アレンジも新鮮で微妙にタイミングを外すところなど、独特の枯れた味わいです。

「レビュー時のコメント」
ラテン系のベテラン・トランペッターのクラウディオ・ロディティのアルバムです。
トランペッターのジョン・コルトレーン・トリビュート・アルバムは珍しいので面白い企画だと思いました。
最初はどうってことない内容と思っていましたが聴いているうちに段々良くなってきました。
それはなぜか?。
コルトレーン作品集はこういうものと私のイメージが固まっていたせいだと思います。
もっとコルトレーンライクな重厚な演奏を聴かせるものとばかり思っていました。
ところが、ロディティはそれを意識することなくストレートに自分らしく表現しています。
コルトレーンの名曲が軽快な演奏に乗って新鮮な感覚で蘇ってきたのでとても好ましく思えました。
演奏曲目のバランスも良く、idriss boudrioua(as,ss)、dario galante(p)も好演しています。
やはり表題曲の「IMPRESSIONS」が印象に残りました。

(くつろぎ系)

2013/11/10



(730) HIROSHI MINANI TRIO / LIKE SOMEONE IN LOVE
南 博(p), 鈴木正人(b), 芳垣安洋(ds)
2008/ewe records/

南博(p)さんのライブは演奏だけでなくお話も面白いです。
最近、南さんの名前を見ないけどどうしているのかな。

「レビュー時のコメント」
先日、南博・トリオのライブに行った時にこのニュー・アルバムを入手しました。
南さんの初のスタンダード作品集だそうです。
良く知られた曲ばかりですがさすがに一筋縄ではいきません。
独特の間合いとタッチが素晴らしい、研ぎ澄まされた感性はここでも生きています。
1曲目の「MY FOOLISH HEART」の一音を聴いただけでグイと引き込まれてしまいました。
続く表題曲の「LIKE SOMEONE IN LOVE」はどうか・・・このタメとノリはたまらないです。
(3)「SOLAR」は3者が一丸となったドライブ感が聴きどころです。
スティーブ・スワロウ(b)の(6)「EIDERDOWN」が新鮮、鈴木さんがフューチャーされています。
惜しむらくは収録時間の43分というのはいかにも短く物足りなく感じました。
心地良い時間を演出・・・もっと聴いていたいと思ったのであと2曲ぐらいは入れて欲しかったです。
お勧めのピアノ・トリオ盤ですが、加えて、このトリオの真髄はやはりライブにあると思いました。
対話型のトリオにとってはそれが一番スリリングで刺激的です。
ライブではそのままのトリオだったのでサインをお願いしました。

(中間系)

2013/11/03



(729)JIMMY HEATH QUARTET / YOU OR ME
jimmy heath(ts),
tony purrone(g), kiyoshi kitagawa(b), albert tootie heath(ds)
1995/SteepleChase/

ジミー・ヒース(ts)は1926年生まれの現在87歳、ジャズ最盛期を知るミュージシャンの一人です。
3年前の84歳時にライブを見る機会を得ましたが小柄だけど間違いなく「リトル・ジャイアント」の一人でした。
ライブの帰り際にジミー・ヒースとアル・ヒースに挨拶して握手してもらったのが嬉しかった。
大感激・・・ふっくらとしてやわらかな温かい手でした。
それにしても弟のアルは大きいけど兄のジミーは小柄な凸凹兄弟で微笑ましいです。
ジャズの黄金時代を飾ったジャズ・メンに会えて本当に良かったと思いました。

「レビュー時のコメント」
ジュニア・クック(ts)を聴いていて何の脈絡もなくジミー・ヒース(ts)が聴いてみたくなりました。
それも1990年代のアルバム・・・ということで購入したアルバムがこれです。
ギター・トリオをバックにワン・ホーンでじっくりと聴かせるというものです。
ベースには小曽根真・トリオを経て現在大活躍中の北川潔さんが加わっています。
ジミー・ヒースはジャズ界ではよく知られたパーシー(b)、アル(ds)のヒース3兄弟の真ん中です。
弟のアルバート・ヒースはここでも共演しています。
演奏もさることながら作曲者、コンポーザーとしての才能も非凡なものを持っていますね。
私は以前からジョニー・グリフィン(ts)と同様に、ジミーはもう一人の「Little Giant」と思っていました。
過去にアルバム・タイトルになったこともある(1)「THE QUOTA」を初めとしてオリジナルが4曲、
あとはデューク・ピアソン、ブルー・ミッチェル、タッド・ダメロン、エリントンと選曲も凝っています。
ベスト・プレイはスムーズなフレージングと自在な展開の(4)「IS THAT SO?」かな。
ユーモアのセンスもあるし楽しい演奏を聴かせてくれました。
録音時の1995年は69歳ですが、全然年齢を感じさせない若々しいプレイで驚きました。
推薦盤。

(中間系)

2013/10/27



(728) DANIELE SCANNAPIECO SEXTET / LIFE TIME
daniele scannapieco(ts), stefano di battista(ss,as), flavio boltro(tp,fhn)
julian o mazzariello(p), dario rosciglione(b), andre' ceccarelli(ds)
2008/PICANTO RECORDS/

ハイ・ファイブ・クインテットでお馴染みのダニール・スカナピエコ(ts)の作品。
ファブリジオ・ボッソ(tp)の人気が先行していましたがこちらの実力も相当なものです。
改めてイタリアの伊達男達の演奏はカッコいいと思う。

「レビュー時のコメント」
イタリアから粋でおしゃれなハード・バップ・アルバムが飛び込んできました。
なんといってもフロント3管の組み合わせが素晴らしいです。
ダニール・スカナピエコ(ts)、ステファノ・ディ・バティスタ(ss、as)、フラビオ・ボルトロ(tp)ですよ。
バックのピアノ・トリオがまたいい、つくづくイタリア・ジャズ界の底力を感じてしまいました。
1曲を除いてメンバーのオリジナルで占められており新鮮、実にカッコイイ演奏が聴けます。
その魅力は1曲目の「LIFE TIME」に集約されているのではないかな。
気合の入ったソロの応酬に圧倒され、後半、ミディアムな4ビートに転調させるところにも痺れました。
アルバム・タイトルになるのも十分にうなずける出来になっています。
もちろん、その他の曲にも聴きどころが多く、「上半期のベスト3」候補の一枚です。

(中間系)

2013/10/20



(727) WHAT'S UP ?/ LOST & FOUND
田中洋一(tp), 河村英樹(ts),
堀秀彰(p), 増原巌(b), 安藤正則(ds
2008/COMMODO DEPOT/


最近、「What's Up」の名前も聴かないけどまだ活動しているのかな。
聴き直しても(3)「THAT'S NOT COOL AT ALL」が抜群に良かった。

「レビュー時のコメント」
注目のグループ"What's Up ?"の2枚目のアルバムです。
どこか郷愁を誘う懐かしいサウンドを聴かせてくれました。
CDショップで流れていた時に「これはいいなぁー」・・・人気盤になるとの予感がしました。
ゆったりとした4ビートが心地良く、アップテンポでは疾走するモダン・ジャズが聴けます。
増原さんのオリジナルが中心、(3)「THAT'S NOT COOL AT ALL」は雰囲気抜群でお気に入り。
(6)「VANITY」では一味違うコルトレーン・ライクな演奏も聴かせてくれています。
トランペット&テナー・サックスはモダン・ジャズの王道の組み合わせで私は一番好きです。
表題の「LOST&FOUND」がこのアルバムの特徴をズバリと表現しています。
聴いてもらえば一目瞭然、多くの説明はいらないんじゃないかと思いました。
ダスコ・ゴイコヴィッチ・クインテットやIDEA6に通じる日本発好感度ジャズ・クインテットです。

(くつろぎ系)

2013/10/13



(726) JUNIOR COOK QUARTET / ON A MISTY NIGHT
junior cook(ts),
mickey tucker(p), walter booker(b), leroy willams(ds)
1990/SteepleChase/

ジュニア・クック(ts)のホレス・シルバー・クインテットでの活躍はご存知の通りです。
5年以上も在団して名盤も多い・・・それほどにシルバーもその実力を評価していた。
今作は何度聴いても素晴らしいと思います。

「レビュー時のコメント」
近頃これほど琴線に触れたアルバムは稀です。
なんか、あまりにしっくりとくるので久し振りに背筋がゾクゾクとしました。
同時にこれほどイメージが狂わされたのも珍しいです。
ジュニア・クック(ts)が話題になることはほとんどないので私も忘れていたんですが、
最近、ジャズ・メッセンジャーズやホレス・シルバー・クインテットを聴き直す機会がありました。
ちょうどそんな時にCDショップの中古品コーナーで偶然このアルバムを見つけたんです。
今までメッセンジャーズに比べてシルバー・クインテットのフロントは小粒などと解釈していました。
”リー・モーガン&ウエイン・ショーター”に対する”ブルー・ミッチェル&ジュニア・クック”。
ジャズ・メッセンジャーズはより自由度が高く、シルバー・クインテットはシルバー色の強いサウンド重視。
プレイヤーの個性発揮という点ではメッセンジャーズが優っていたと思います。
それでシルバーの元ではクックのこともちょっと野暮ったいかと思っていたんです。
だからあえてリーダー作も持っていなかった。
ところが、これを聴いてとんでもない間違いということに気が付きました。
「ジュニア・クックってこんなにモダンでスマートだったっけ」というのが正直な感想です。
クックはウエイン・ショーターとは同年代、ジョン・コルトレーンより8歳も年下です。
当然、コルトレーンの影響下にあります、その点まったくショーターと変わりないわけです。
もう少し下にはジョー・ヘンダーソンがいるので地味なクックは埋もれた感じがします。
テナーの音色はいいし、トーン・コントロールもうまい、私はジュニア・クックを再評価しました。
全体を通して心地良いスイング感に溢れ、 (5)「MAKE THE GIRL LOVE ME」のバラードも秀逸。
続く(6)「MY SWEET PUMPKIN」がベスト・トラックで、ここではミッキー・タッカーが素晴らしいプレイを聴かせます。
バックのメンバーも好演、特にミッキー・タッカー(p)がシブいです。
録音もいいのでお勧め。

(中間系)

2013/10/06



(725) ROB SCHNEIDERMAN QUARTET / GLASS ENCLOSURE
rob schneiderman(p), todd coolman(b), leroy williams(ds)
charles mcpherson(as)
2008/Reservoir/

秋の深まる季節。
ロブ・シュナイダーマン(p)にチャールス・マクファーソン(as)。
こういうアルバムをのんびりと聴くのもいいと思います。
「Enbraceable You」、「Yardbird Suite」、「Social Call」、etc

「レビュー時のコメント」
ロブ・シュナイダーマン・トリオにチャールス・マクファーソン(as)の組み合わせです。
シュナイダーマンの名前は聞いていましたが聴くのは今回が初めてになります。
バド・パウエル系のオーソドックスなスタイルで聴きやすく人気があるのもうなずけました。
リーダー・アルバムが”Reservoir”のみというのも律儀といえば律儀な性格ですね。
ゲストがマクファーソンならそのままバド・パウエルにチャーリー・パーカーの気分です。
パウエルが2曲、パーカーが1曲と選曲にもそつがありません。
仕上がりはほぼ予想されますが実に気持がいいアルバムです。
両者共にリラックスして楽しんでいる様子がうかがえます。
マクファーソンの調子も上々だと思いました。
チャールス・マクファーソンもそろそろ70歳に手が届こうとしています。
チャーリー・パーカーから直接薫陶を受けたプレイヤーの最後の年代でしょうね。
チャールス・ミンガス・グループでの活躍、エリック・ドルフィも吸収して自己のスタイルを確立しました。
以来、マクファーソンは好きなのでずっと注目してきましたがこれからも元気に演奏し続けて欲しいです。

(中間系)

2013/09/29



(724) IGNAZ DINNE QUARTET / THE NEXT LEVEL
ignaz dinne(as),
pete rende(p), ron carter(b), jochen rueckert(ds)
2008/DOUBLE MOON/

聴き直してみても実にクールでスマートです。
もうちょっと荒々しい部分が欲しいような気がします。

「レビュー時のコメント」
イグナス・ディンは初見、ユニークなアルトの音色とスタイルを持っています。
トリスターノ派のリー・コニッツとエリック・ドルフィを消化吸収して実にクールな感触です。
最近のヨーロッパの若手アルト奏者にはこういう感じも増えてきました。
この個性は何なんだろうと考えるにアルトがまるでテナー・サックスのようだと気が付きました。
ゆったりとしたスイング感、感情を抑え気味にして低音部を上手に使います。
元々アルト・サックスは高音部に魅力があるのでその逆をいく感じです。
セロニアス・モンクの曲が2曲、バークリーではモンク研究をしていたようなので魅力があります。
(5)「ASK ME NOW」〜(6)「I'LL BEE SEEING YOU」〜(7)「PANNONICA」
と続く展開が一番の聴きどころだと思いました。
大御所のロン・カーター(b)がここに参加しているのは彼を買っている証拠になるかもしれません。
じっくりと聴きたい方にお勧め。

(まじめ系)

2013/09/22



(723) MARCUS PRINTUP & EMIL VIKLICKY TRIO
marcus printup(tp)
emil viklicky(p), frantisek uhlir(b), laco tropp(ds)
2007/Multisonic/

この頃はエミール・ヴィクリッキー(p)もそれほど知られてなかったような気がします。
今作はマーカス・プリンタップ(tp)の評価を高めた作品です。

「レビュー時のコメント」
チェコ盤を入手したのは初めてじゃないかと思います。
大きなコンサート・ホールのようでまるでクラシックのライブを聴いているような気分になりました。
チェコのピアノ・トリオにマーカス・プリンタップの組み合わせです。
バックのピアノ・トリオは端正で美しく、しっかりとした実力の裏付けがあるのを感じます。
テンポ、ピッチ共に完璧、これほどのピアノ・トリオはそうは聴けないので驚いてしまいました。
クラシックで培われた力は本物、アメリカン・ジャズとのぶつかり合いが最大の聴きどころです。
マーカス・プリンタップはフレディ・ハバード直系のトランペッターでハバードが不調の今は貴重な存在です。
マーカスはこれが底力なんでしょうね。堂々たるプレイ振りで驚かされました。
改めてアメリカの一流ジャズ・ミュージシャンの底力を思い知らされました。
恐るべし、マーカス・プリンタップ。
マーカスにとっては異色のアルバム、代表作の一枚になるのは間違いないありません。
クラシック・ファンにもお勧めできます。

(まじめ系)

2013/09/15



(722) KOJI MORIYAMA / LIVE AT MISTY
森山浩二(vo)
弘勢憲二(p,elp), 森泰人(b), 渡辺毅(ds)
高柳昌行(g)

2007(1979Rec)/Think ! Records/

最近、森山浩二さんの3枚のリーダー・アルバムが揃いました。
それで森山さんを聴くことも多いです。
彼の持つジャズ・フィーリングは最高です。
なんというか、日本人のジャズそのままという気がする。
高柳さんのクールなギター・プレイにも注目です。

「レビュー時のコメント」
私が森山浩二さんを初めて聴いたのはもう30年ほど前のことになります。
当時懇意にしていたジャズ喫茶のマスターに「Night And Day」というアルバムを紹介されました。
その歌声とスタイルは一度聴いたら忘れられない強烈な個性を放っていました。
ガーンときて日本にもこんなジャズ・ボーカリストがいたんだと思いました。
ただその時はボーカルにあまり興味がなかったのでアルバムを買うまでには至りませんでした。
ていうか、手元不如意でその余裕がなかったというのが正直なところです。
でも、今ではなぜ買ったおかなかったのかと後悔しています。
それがどこか頭の片隅に引っかかっていて、後年何度かまた聴いてみたいと思ったからです。
そんな彼の3枚目のアルバムが復刻されたというので早速購入しました。
森山さんのアルバムはたった3枚しかなく、これは六本木のミスティでのライブ盤。
ちょっと粗さも目立ちますが彼の生のステージを十二分に表現しています。
もうずっと前に引退したようですが、彼のようなボーカリストが歌い続けられない日本の土壌は寂しいですね。

このアルバムのもうひとつの魅力はバック・ミュージシャンにあります。
なんと高柳昌行(g)さんと現在スカンジナビア・コネクションで大活躍の森泰人(b)さんの参加です。
高柳さんのボーカルのバッキングはそれだけで価値があります。

(くつろぎ系)

2013/09/08



(721) FRANCO AMBROSETTI & URI CAINE TRIO / THE WIND
franco ambrosetti(tp)
uri caine(p), drew grtess(b), clarence penn(ds)
2007/Enja/

フランコ・アンブロゼッティ(tp)とユリ・ケイン(p)・トリオの組み合わせ。
聴きなおしてみたけどやっぱり良かったです。
印象的なジャケットと相まって2000年代名盤の一枚です。

「レビュー時のコメント」
これはジャズ仲間のGさんが紹介してくれたアルバムです。
スイスの重鎮、フランコ・アンブロゼッテイ(tp)と多才なユリ・ケイン(p)の組み合わせは魅力があります。
アンブロゼッテイのちょっとくぐもった温かでやわらかい音色は彼独特の個性です。
ユリ・ケインはアヴァンギャルドからフュージョンまでの幅広い音楽性の持ち主ですが私は前衛のイメージが強かった.。
ユリ・ケインが切れています、(4)「STILETTO」のドライブ感溢れる演奏は素晴らしい。
ドリュー・グレス(b)、クラレンス・ペン(ds)もフューチャーされていて、これが私的ベスト・トラックです。
バックのトリオも文句なし、トランペットのワン・ホーン・アルバムとしては出色の出来だと思います。
欲を言えば48分の収録時間がやや短いかな。

(中間系)

2013/09/01



(720) FRANCOIS DE RIBAUPIERRE TRIO & QUARTET
/ SHADES OF SILENCE
francois de ribaupierre(ts,ss,cl),
colker heinze(b), marcus rieck(ds), matthias bergmann(tp,flh)
2007/TCB/

ピアノレス・トリオは飛び跳ねるような特徴的な奏法が面白いです。
カルテットではラッパとの絡みが聴きどころ。
Francois de Ribaupierre
名前の読み方が分からないけどマリア・シュナイダーのバンドに在籍していたらしい。
影響を受けたテナー奏者としてラッキー・トンプソン、ポール・ゴンザルベス、
ローランド・アレキサンダーといったところのシブい名前が上がっていました。

「レビュー時のコメント」
Francois De Ribaupierreは初見。
ピアノレスのサックス・トリオというとちょっと硬いような気がしますが聴いてみるとこれが心地良いです。
音色はまろやか、跳ね上がるような微妙なスイング感で心に響いてきました。
全曲、自身のオリジナルですがテナー・サックス、ソプラノ・サックス、クラリネットを持ち替え、
さらにトランペットが加わったカルテット演奏があるので飽きさせません。
じっくり聴いても良し、BGMで流しても良し、楽しめるアルバムだと思います。
掘り出し物の一枚です。

(中間系)


2013/08/25



(719) SUMI TONOOKA TRIO / LONG AGO TODAY
sumi tonooka(p), rufus reid(b), bob braye(ds)
2005/ARC/

スミ・トノオカさんはお母さんが日本人でお父さんがアメリカ人の日系二世です。
女性らしくやさしくやわらかで繊細なピアノ・タッチが持ち味です。

「レビュー時のコメント」
スミ・トノオカ(p)は初見、明らかに日系ですね。
これを聴いた時、いささかショックを受けてしまいました。
このピアノ・トリオが思いのほかに素晴らしかったからです。
実に新鮮、これほどの女性ピアニストがいたのかと思うと世の中は本当に広いです。
一般的に知られているのはベースのルーファス・リードだけ、ピアノとドラムスの知名度は低いと思います。
ところがこの二人が強力、3人のコンビネーションも抜群なのでご機嫌なアルバムに仕上がっています。
1曲を除いては全て彼女のオリジナルですが、私は一気に聴いてしまいました。
曲想も変化に富み、(4)では日本的情緒のアプローチもあって飽きさせません。
近年、私が聴いた中で断トツの女性ピアニストじゃないかと思います。
それほどガツンときました。
タッチやフレーズ、リズム感が琴線に触れたというか、好みのピアノというか、感性が合いました。
但し、やや多弁に思えるこのドラムスは好みが分かれるんじゃないかと思っています。

(中間系)


2013/08/18



(718) AHMAD JAMAL QUARTET / IT'S MAGIC
ahmad jamal(p), idris muhammad(b), james cammack(ds)
manolo badrena(per)
2008/DREYFUS/

アーマッド・ジャマルには根強いファンが多い。
80歳を過ぎても精力的に活躍する怪物ジャズ・マンの一人です。

「レビュー時のコメント」
マイルス・デイビスにも大きな影響を与えたと言われるアーマッド・ジャマルが元気なのは嬉しいです。
ジャマルはワン・アンド・オンリーの世界を持っているので日本でも人気は高いと思います。
タッチは重厚で力強く、さすがにその存在感は抜群です。
ここではパーカッションを加えたカルテットで一味違う演奏を繰り広げています。
このパーカッションとのコラボレーションが最大の聴きどころです。
御大に敬意を表してのドラ流入りです。いです。

(中間系)


2013/08/11



(717) MIKIO ISHIDA TRIO / TURKISH MAMBO
mikio ishida(p), mattias svensson(b), tamaya honda(ds)
2008/FIVE STARS RECORDS/


才能溢れるピアノ・トリオ。
やはり石田幹雄さんは刺激的です。
強烈な印象を残すアルバムです。

「レビュー時のコメント」
先日、石田幹雄さん(p)のソロ・ライブに行ってきました。
その時に新しいCDが出たばかりということで入手したのがこのアルバムです。
石田さんは2005年横濱ジャズ・プロムナードのグランプリ受賞者で将来が嘱望されています。
マティアス・スベンソン(b)と本田珠也さん(ds)との興味深いトリオです。
ライブではエネルギッシュでパワフルな演奏を聴かせてくれました。
フリー・ジャズに通じる激しいプレイが目立ちますが私はその反対側にある静に魅力を感じました。
石田さんは「動と静」、「熱と冷」の二面性が最大の持ち味だと思います。
そこで今作のレニー・トリスターノ(p)の2曲で「ハハー、なるほどなー」と納得しました。
彼のルーツはトリスターノ〜ビル・エバンスの流れだな思いました。
その他もよく考えられた選曲が並んでいて、石田さんの幅広い音楽性が垣間見えます。
スウェーデンのマティアス・スベンソンはヤン・ラングレン・トリオで知られていますが、これがいいです。
まったく別人のような刺激的なプレイで迫ってきました。
本田さんもこのトリオなら生き生きしていて、水を得た魚のようです。
三位一体のスリリングでユニークな展開を見せる魅力的なトリオでお勧めできます。

余談になりますが私が見た中で、海野雅威さん、佐藤丈青さん、とこの石田幹雄さんは面白いです。
それぞれの持ち味は違いますがこれからも注目していきたいと思っています。

(まじめ系)


2013/08/04



(716) ENRICO PIERANUNZI QUARTET / AS NEVER BEFORE
enrico pieranunzi(p), marc johnson(b), joey baron(ds)
kenny wheeler(tp)
2008/CAM JAZZ/

エンリコ・ピエラヌンチを表現するいい言葉がないかと考えていた。
カメレオン奏法というのはどうだろうか。

「レビュー時のコメント」
エンリコ・ピエラヌンチ・トリオにケニー・ホイーラーの組み合わせに興味を持ちました。
全曲、ピエラヌンチのオリジナルですが、聴いてみるとこれは完全にケニー・ホイーラーの世界です。
広い空間に音の広がりを感じさせるやわらかくクールなサウンドです。
ピエラヌンチにとっては未知の世界、異色作といえると思います。
ここでの新しい挑戦は新鮮で面白かったのではないでしょうか。
ピエラヌンチの他人の土俵でも軽々と勝負できてしまう才能と実力にも驚かされました。

(中間系)


2013/07/28



(715) 五人の女 / BODY & SOUL
(1,2)伊藤君子(vo)
大石学(p), 安カ川大樹(b), 大島洋(ds)
(3,4)リレット(vo)
秋田慎治(p), 吉田豊(b), 大島洋(ds)
(5,6)鈴木道子(vo)
鈴木良雄(b), 海野雅威(p), セシル・モンロー(ds)
(7,8)チャリート(vo)
市川秀男(p), 井上陽介(b), 大島洋(ds)
(9,10)WOONG SAN(vo)
秋田慎治(p), 安カ川大樹(b), 小山太郎(ds)
2007/BODY&SOUL/

やっぱり大のお徳用盤でした。
近年はボディにもすっかりご無沙汰しています。

「レビュー時のコメント」
興味あるアルバムを見つけました。
南青山のライブ・ハウス、「ボデイ・アンド・ソウル」の企画、5人の女性ヴォーカルの競演です。
伊藤君子さん、鈴木道子さん、チャリートさんの3人は見たことがあります。
あとのリレットさんとWOONG・SANさんは初見です。
ここに出演したプレイヤーのお約束の「BODY&SOUL」は面白く聴くことができました。
同じ歌の競演は非常に珍しい、こういうのはここならでは企画でしょうね。
もう1曲はそれぞれの歌手が好きな、あるいは得意な歌で決めていますが聴き応えがありました。
ライブ・ハウスの雰囲気や熱気も伝わってきます。
5人の女性ヴォーカルをいっぺんに聴けるお徳用盤なんてそうはありません。
それだけでも価値ある1枚で加えてバックのメンバーにも魅力があります。
バッキングには定評のあるピアニストが揃いました。
大石学さん、海野雅威さん、市川秀男さんは見たことがあります。
秋田慎治さんは幅広い音楽性を持つピアニストのようなのでもっと聴いてみたいと思いました。
私も「BODY&SOUL」には時々お邪魔して楽しませてもらっています。

(中間系)


2013/07/21



(714) CHARLES LLOYD QUARTET / RABO DE NUDE
charles lloyd(ts,fl)
jason moran(p), reuben rogers(b), eric harland(ds)
2008/ECM RECORDS

ちょうどブログの紹介でチャールス・ロイドを集中的に聴いていました。
やっぱり「独自の世界」を持っているプレイヤーは違います。
何を聴いてもロイドそのものの味がします。

「レビュー時のコメント」
チャールス・ロイド(ts,fl)・カルテットのライブ盤は全てロイドのオリジナルです。
ここはバックのメンバーが最大の魅力。
ジェイソン・モラン(p)、リューベン・ロジャース(b)、エリック・ハーランド(ds)ときたら1も2もなく飛びつきました。
若手3人のトリオには、やっぱりロイド・クラスの重しが必要だと思いました。
3人だけだと収拾がつかなくなり、どこか遠くの方に素っ飛んでいく感じがします。
しかし、主役はあくまで若手の3人、特にジェイソン・モランとエリック・ハーランドが素晴らしい。
モランのユニークなタッチとコードワークは魅力十分、ハーランドが叩き出すリズムと共に聴き応えがあります。
ブルー・ノートのモランは難解でしんどいですが、ここでは比較的ストレートに演奏していて聴き易い、
まさにキラキラと輝くピアノが聴けます。
アメリカの先進のピアノ・トリオを聴いた思いがしました。
ここでのロイドは脇役だと思いますが、さすがに曲作りは上手く、曲想もリズムもバランス良く配置されています。
この手の演奏に慣れていない方は最初少し音量を絞って聴くのがコツです。
「ほー、これは・・・」というメロディやフレーズやリズムが気になったらしめたもの、もう大きくしても大丈夫です。
ベースを除く3人は近日中に日本公演が予定されています。

(まじめ系)


2013/07/14



(713) PIERRICK PEDRON QUARTET / DEEP IN A DREAM
pierrick pedron(as)
mulgrew miller(p), thomas bramerie(b), lewis nash(ds)
2006/NOCTURNE/

ピーリック・ペドロンの素晴らしいアルト・プレイが聴けます。
ホーン名盤の影に名ピアニストあり。
ブログの更新で好きなアルバムのバックにマルグリュー・ミラーが多いことに気付いた。
50〜60年代はトミー・フラナガンがつとに有名ですが、このマルグリューにも注目したい。

「レビュー時のコメント」
フランスのピエーリック・ペドロン(as)を聴くのは2回目になります。
前回はゴードン・ベック(p)のアルバムでした。
この人は間違いなく掘り出しものというか素晴らしいですよ。
最初は共演のメンバーに惹かれて購入したのですが、聴いた途端にそんなことは吹っ飛んでしまいました。
なめらかな音色、卓越したテクニック、よどみないフレーズ、その存在感は申し分ありません。
コメントではジェリー・バーゴンジ(sax)が絶賛、アレンジャーとしてリック・マルギッツア(sax)が参加していて、
期待の大きさがうかがえます。オーソドックスなメインストリーマーとして頭角を現すのは間違いありません。
チャーリー・パーカー〜ジャッキー・マクリーン〜ケニー・ギャレットの流れか。
メンバーもバッキングには定評のあるマルグリュー・ミラー(p)とルイス・ナッシュ(ds)とくれば鉄板でしょう。
オリジナルが2曲、スタンダードが7曲と構成もバランスが取れています。
但し、5曲目の終わりがプツンと切れていてスムーズでないのが残念でした。
バラードが好きなら名曲、(6)「A NIGHTINGALE SANG IN BERKELEY SQUARE」と(9)をどうぞ。
彼の実力を認めてか、サックス製造のセルマーとリード制作のヴァンドレンが協賛しているみたいです。
ジャケットにセルマーのマークがあるでしょう、裏にはヴァンドレンも。
こんなのは見たことがないので珍しいと思います。

(中間系)


2013/07/07



(712) TOM SCOTT / CANNON DE LOADED
All Star Celebration Of Cannonball Adderley

tom scott(as) terence blanchard(tp) george duke(p,rhodes)
marcus miller(b) steve gadd(ds) larry goldings(org)
dave carpenter(b)(8,10), nancy wilson(vo)(4,9)
2008/CONCORD/

中々に楽しいアルバムです。
気楽に聴けるのもいいなぁ〜。
「I SHOULD CARE」と「STARS FELL ON ALABAMA」は名演。

「レビュー時のコメント」
トム・スコット(as)のプロデュースによるキャノンボール・アダレイ・トリビュート盤です。
往年のフュージョン・メンバーに加えてテレンス・ブランチャード(tp)とラリー・ゴールディングス(org)、
スペシャル・ゲストとしてナンシー・ウィルソン(vo)が2曲に参加しています。
ファンキー&ソウルなキャノンボールの大ヒット作がずらりと並んで壮観です。
イメージは狂ったけどそれぞれがスマートなフュージョン・ナンバーにアレンジされていて面白かったです。
特筆すべきは純ジャズ路線で演奏される(8)、(10)のバラード2曲です。
「I SHOULD CARE」ではブランチャードとジョージ・デューク(p)がフューチャーされていて鳥肌ものの素晴らしさ。
「STARS FELL ON ALABAMA」はキャノンボールも良かったけれどトム・スコットも面目躍如たるものがありました。
デュークのこういう改まったピアノも聴いたことがなかったのでとても新鮮、美しかったです。
結局、この2曲が決め手になってドラ流入りが確定しました。

(くつろぎ系)


2013/06/30



(711) HERBIE HANCOCK / RIVER the joni letters
herbie hancock(p), wayne shorter(ts,ss), dave holland(b),
vinnie colaiuta(ds), lionel loueke(g), norah jones(vo),
tina turner(vo),corinne bailey rae(vo), joni mitchell(vo),
luciana souza(vo), leonard cohen(vo)
2007/VERVE/

ジワーっと心に沁み入るヴォーカルとピアノです。
ジョニ・ミッチェルの「この素晴らしき世界」をどうぞ。

「レビュー時のコメント」
ハービー・ハンコックは今回フォークを中心に絶大な人気を誇るジョニ・ミッチェルを取り上げました。
(7)、(9)のエリントンとショーターの作品を除いては全てミッチェルの手になるものです。
ミッチェルの幅広い音楽性はクロスオーバー、フュージョン系のプレイヤーに与えた影響は大きく、
彼らのジャズ・アルバムにも彼女の曲が数多く演奏されています。
独特の節回しと土の香りは多くのジャズ・ミュージシャンが好きなんだろうと思います。
今をときめくノラ・ジョーンズもデビュー時にはミッチェルの影響を強く受けていると感じたものです。
ここではそのノラ・ジョーンズやティナ・ターナーを始めとして6人の歌手が起用されています。
(6)ではジョニ・ミッチェル自身も参加しているという豪華な顔ぶれです。
それぞれがミッチェルのディープな世界を展開させていてその世界を堪能することができます。
いずれの曲も心に沁みてくる素晴らしい出来栄えで私はぐっと引き込まれてしまいました。
リリカルではあるけれどリズムにはラテンも、ハービー・ハンコックの才能を感じる秀作です。

(中間系)


2013/06/23



(710) PETER CINCOTTI / EAST OF ANGEL TOWN
peter cincotti(vo,p), etc
2007/WARNER BROS/

たまにはこういうヴォーカルを聴くのもいいですね。
リラックスできました。

「レビュー時のコメント」
ピーター・シンコッティ(vo,p)は19歳でデビュー、現在24歳の天才肌のシンガー・ソング・ライターです。
今作はメジャー・レーベルのワーナー移籍第一弾ということで世界を目指した意欲作になっています。
これは80年前後でしたか、一世を風靡したAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)路線を踏襲、
久し振りに現れたクロス・オーバー、コンテンポラリー・シーンの大物歌手じゃないかと思います。
この系統ではバニー・マニロウ、ボス・スキャッグス、マイケル・フランクス、クリストファー・クリス、
ビリー・ジョエル、ボビー・コールドウェル、ジェームス・テイラーなどを思い出しました。
全13曲はピーターのオリジナルで声質、テクニック共に申し分ありません。
ファルセットの多用で聴かせるところはいかにも今風のヴォーカリストだと思います。
(2)の「GOODBYE PHILADELPHIA」は全世界でヒット中とのことですがいかにもという気がしました。
バック・ミュージシャンとしてディーン・パークス(g)、ネイザン・イースト(b)、
今作のプロデューサーでもあるデヴィッド・フォスター(org)などの顔が見えます。

あまり男性ヴォーカルを紹介する機会がありませんが何枚目だろうかと気になって調べてみました。
「ドラ流・・・」に入っているのは全部で7枚でした。
「ケヴィン・マホガニー」、「ジミー・スコット」(2)、「ジョン・ピザレリ」、
「カート・エリング」、「ピーター・フェスラー」、「ジョージ・ベンソン&アル・ジャロウ」です。

(くつろぎ系)


2013/06/16



(709) ASEN DOYKIN TRIO / MEANDERING ROAD
asen doykin(p) peter slavov(b) kendrick scott(ds)
2007/DOYKINMUSIC/

叙情的なヨーロッパ系ピアノが聴けます。
特にソロ・ピアノが良くて、確かな実力を感じることが出来ました。

「レビュー時のコメント」
Asen Doykin(p)は初見、今作は自主制作盤だと思われます。
(4)のブルガリアン・トラッド・ソングを見るとブルガリア出身のようですね。
その曲を除いては全て彼自身のオリジナルで占められており美しいピアノ・トリオが聴けます。
叙情的ではあるけれど独特のメロディ・ラインとリズム感を持っていて味わい深いものがあります。
注目のドラマーのケンドリック・スコットが参加しているのも興味深いです。

(中間系)


2013/06/09



(708) KIYOSHI KITAGAWA TRIO / I'M STILL HERE
kiyoshi kitagawa(b), danny grissett(p), brian blade(ds)
2007/ATELIER SAWANO/

久々に聴いたけどやっぱり良かったです。
重厚かつスイング感溢れる演奏は実に心地良く響いてきます。
刺激的なピアノ・トリオが聴けました。

「レビュー時のコメント」
2008年の最初の愛聴盤は日本人ベーシストのリーダー・アルバムになりました。
北川潔さんは小曽根真トリオで一気に知名度が上がったと思っています。
澤野工房から出した前2作のピアニストはベテランのケニー・バロンでした。
今作は若手のダニー・グリセットということで初めてやりたいことができたような気がします。
ブライアン・ブレイドは3枚目で相性が良く、気心も知れてきたのでコンビネーションは抜群です。
全7曲は自身のオリジナルで占められ曲想豊か、リズムも多彩なので飽きさせません。
1曲目からスーッと入っていって後半になるほど、よりスリリングな展開になってきます。
よく伸びる強靭なベースの音が前面に出てくるので重量感のあるピアノ・トリオが聴けます。

(中間系)


2013/06/02



(707) BOB DEVOS TRIO & QUARTET / PLAYING FOR KEEPS
bod devos(g), steve johns(org), dan kostelnik(ds)
eric alexander(ts)(1,5,8,10)
2007/SAVANT RECORDS/

ボブ・デヴォス(g)の今作は2008年のベスト3に選びました。
それほどに印象深いアルバムでした。
1曲目のギターとサックスのユニゾンにガツンときました。
この頃のエリック・アレキサンダー(ts)は一つの頂点を迎えていたと思います。

「レビュー時のコメント」
ボブ・デヴォス(g)は初見、オルガン・トリオを率いているので出自はR&Bだろうと推測しました。
思ったとおりのブルース・フィーリングの強い印象的なギター・プレイを聴かせてくれました。
こういう系統のジャズ・ギタリストは最近あんまり見かけなくなりました。
オリジナル4曲、スタンダード2曲、ジャズの名曲が4曲と選曲のバランスも取れています。
ソウル・ジャズとハード・バップのちょうど中間に位置する感じでしょうか。
ハード・バップとして聴くとオルガンとドラムがやや物足りなく聞え、ソウル・ジャズよりは洗練されています。
そして、なんとここにもエリック・アレキサンダー(ts)が4曲にゲスト参加していました。
伸び伸び、溌剌とした演奏でやはりリーダー作より数段いいなと思いました。
というわけで両者がスリリングな展開をみせる(8)、(10)が聴きどころで、ブルースの(3)も良いです。
ジャケット写真の雰囲気も良くお洒落、デヴォスは確固たる自己のスタイルを持っていると思います。
彼の作品はR&B・ファン、ジャズ・ファンの両方に受け入れられるのではないかな。

(中間系)


2013/05/26



(706) OVE INGEMARSSON QUARTET / HEART OF THE MATTER
ove ingemarsson(ts)
lars jansson(p) lars danielsson(b) adam nussbaum(ds)
1995/IMOGENA/

オーベ・イングマールソンはコルトレーン〜ブレッカーの流れを汲むテナー奏者。
聴き直してみると年齢の割りに少し重たいかもしれませんね。
やはりラース・ヤンソン(p)にも耳が向きました。

「レビュー時のコメント」
ここで目を引いたのはラース・ヤンソン(p)の存在です。
強靭なタッチと力強いピアノの音色はもう一方のラース・ヤンソンを見た思いがしました。
12年前のプレイは今をときめくラースとは別人の感があります。
内容はストレート・アヘッドなテナー・サックスのワン・ホーン・アルバムで申し分のない出来です。
オリジナルでも変化に富んでいて十分に楽しむことができました。
スウェーデン発の名盤の1枚。

(中間系)


2013/05/19



(705) MICHAEL COCHRANE TRIO / RIGHT NOW
michael cochrane(p), calvin hill(b), jeff hirshfield(ds)
2007/STEEPLECHASE/

マイケル・コクラン・・・落ち着いた感覚のピアノ・トリオが聴けます。
真夜中にひっそりと聴いたり、ながら族のBGMにはピッタリです。
今も聴きながらこれを書いていました。

「レビュー時のコメント」
ヨーロッパ流のスマートなピアノを聴いているとたまには粘っこいピアノ・トリオが聴きたくなります。
それでこのマイケル・コクランの作品を選んでみました。
デビュー時はもっと突っ張っていたピアニストだと思いますがオーソドックスなスタイルに戻っています。
元々がこういう感覚を持つプレイヤーだったんでしょうね。
全曲、自身のオリジナルになる意欲作は親しみやすいテーマが並び作曲能力も非凡です。
一般的には2、3曲のスタンダードを入れる構成が普通なので異色作とも言えます。
買うほうにとってもまったく知らない曲ばかりではちょっと考えてしまうところがあるけど。
私は特に(6)「BALLAD FOR OLD TIMES SAKE」と(8)「REVELATION」が印象に残りました。
但しこれは異名同曲、別テイクを違う題名で入れるのは珍しいのでよほどのお気に入りだと思います。
バップ、ブルース、バラード、ラテンとコクランの音楽性をさぐるには最適なアルバムです。
しかし、ホッとするアルバムではあるけれどガツンとくる感じではありません。
通好みというか、いかにも地味な人柄を偲ばせる落ち着いたトリオ作品に仕上がっています。

(中間系)


2013/05/12



(704) AKEMI OHTA QUARTET / RISK FACTOR
太田朱美(fl,afl) 石田衛(p) 織原良次(fletless b) 橋本学(ds)
大儀見元(per)
  Phonolite Ensemble
松本治(tb) 松風鉱一(reed) 竹野昌邦(reed) 橋本歩(vln)
平山織絵(vln) 水谷浩章(b,arr)
2007/EWE. RECORDS/


実は昨夜も太田朱美さんと従姉妹の松本茜(p)さんのライブを見てきました。
益々表現力も豊かになり鋭さを増しています。
その幅広い音楽性はジャズの範疇に収まらないスケールの大きさを感じる。

「レビュー時のコメント」
太田朱美さん(fl)のライブで先行発売されていたCDを早速購入してきました。
もちろん、メンバー4人のサインも入っています。
11月発売予定と聞いていましたが正式なCD発売は来年の1月中旬に延びたようです。
ダブルの紙ジャケで装飾も綺麗、デビュー・アルバムとしては立派なものです。
太田さんは「最初がこんなにいいと次がコワイ」と言っていました。
これは現在の彼女の正直な気持だと思います。
プロデュースは水谷浩章さん(b)でアレンジとバックのアンサンブルが広がりと深味を演出。
太田さんが7曲、織原さんが2曲のオリジナルを提供しています。
純ジャズ路線を期待するとはぐらかされる感じがしますがこれが彼女の求めているサウンド。
全部がオリジナルということで太田さんにとってはやりたいことが出来た意欲作だと思います。
彼女の持つ個性的な感覚と幅広い音楽性を感じることが出来ました。
女性フルート奏者の新星として注目を集めていてすでにあちこちから声が掛かっているようです。
幅広い音楽性を持っているだけに一方に偏らず可能性は大きく広がっています。
ライブでの話も面白くてなかなかにユニークなキャラクターの持ち主だと思いました。
これから益々人気が出るのは間違いのないところで大いなる飛躍を期待しましょう。

(中間系)


2013/05/05



(703)ANDREAS GIDLUND QUARTET / PRESS PLAY PLEASE
andreas gidlund(ts,bs)
fabian kallerdahl(p,rhodes), mattias gronroos(b), lars kallfelt(ds)
2007/IMOGENA RECORDS/

若いだけに瑞々しくクリアで清冽な音色、勢いも感じる。
いいアルバムだと思います。
アンドリアス・ギドルンドという読みでいいのかな。

「レビュー時のコメント」
Andreas Gidlund(ts)は初見、これは面白いアルバムだと思いました。
ハード・バップとコンテンポラリー・ジャズの味付けが上手くミックスされていて楽しめました。
3曲を提供しているFabian Kallerdahlがピアノとローズを駆使してサウンドに変化を持たせています。
彼の参加がここでの決め手、実質的には二人の双頭バンドと言えると思います。
最後の「IN A SENTIMENTAL MOOD」ではオーソドックスなサックス奏者の表情も見せてくれました。
現在の若いジャズ・メンにはこのように幅広い音楽性を持つプレイヤーも多いですね。
当然、ジャズの歴史や奏法については勉強済みで加えて色々なジャンルの音楽を聴いてきています。
情報社会ではワールド・ワイドな音楽情報を瞬時にして受け取ること事が出来ますから。
どこで誰がどんなことをやっているかも一目瞭然なので吸収するのも早いです。
映像の情報も早いのでビジュアル的な影響も大きいでしょうね。
新しいジャズのスタイルを模索するのはいつの時代でも大切なことだと思っています。
そういった意味でもお勧めの作品になります。
なお、ジャケットが折り込み式になっていて目新しく、これも新鮮な感覚です。

(中間系)


2013/04/28



(702) KAREL BOEHLEE TRIO / AT THE BEAUFORTHUIS
karel boehlee(p) hein van de geyn(b) hans van oosterhout(ds)
2007/CHALLENGE RECORDS/

カレル・ボエリー・トリオは美しい。
美しいけれど同じような傾向の曲を聴き続けるのはキツイです。

「レビュー時のコメント」
元ヨーロピアン・ジャズ・トリオの初代ピアニスト、カレル・ボエリーの新譜です。
なぜ退団したのか定かではありませんが、もっとやりたいことがいっぱいあったと思っています。
日本で絶大な人気を誇るE・J・Tでは企画や演奏内容がかなり限定されてきますからね。
メンバーは以前「ドラ流・・・」にもした「DEAR OLD STOCKHOLM」(M&I/2004)と同じです。
ただし、今回は全て彼のオリジナルで占められていて、これは初めての試みかもしれません。
トリオのバランスは抜群、深いリリシズムと美しい旋律、彼の求めるサウンドにまた一歩近づいたか。
惜しむらくは曲想がどれも同じようなので起伏や変化に欠けるところがあります。
成熟したピアノ・トリオ作品ではありますがこのシリアスな調子を聴き続けるのは少々辛いです。
クラシックも聴くジャズ・ファンなら評価は高いと思われます。

(中間系)


2013/04/21



(701) STEFANO DI BATTISTA QUARTET / TROUBLE SHOOTIN'
stefano di battista(as,ss) baptiste trotignon(org) eric harland(ds)
russell malone(g)(1,5,6,7,11) fabrizio bosso(tp)(2,4,5,8,9,10)
nicola stilo(fl)(3,6), eric legnini(p)(11)
2007/BLUE NOTE RECORDS/

ステファノ・ディ・バティスタ(as)も久し振りです。
バティスタのオルガン・ソウル・ジャズ・・・今作は中々に楽しいアルバムです。
バプティスト・トロティニョンのオルガンとエリック・ハーランドのドラム。
ゲストにラッセル・マローン(g)、ファブリジオ・ボッソ(tp)とメンバーも揃いました。
ケニー・バレル(g)の「Midnight Blue」、ホレス・シルバー(p)の「The Jody Grind」、
ボビー・ティモンズ(p)の「This Here」など極め付けが演奏されているのも嬉しい。

「レビュー時のコメント」
久し振りにステファノ・ディ・バティスタ(as)のアルバムを購入しました。
バティスタは「ドラ流演奏者リスト」のアルト奏者のトップにランクされている好みのプレイヤーです。
ここのところなぜか触手の伸びる作品ががなく、しばらくご無沙汰していました。
今回はオルガン・ジャズということでグイと興味を引かれました。
その上、ラッセル・マローン(g)やファブリジオ・ボッソ(tp)との共演となれば見逃すわけにはいきません。
オリジナルが8曲にその他3曲の構成です。
その3曲がケニー・バレル(g)の「MIDNIGHT BLUE」、ホレス・シルバー(p)の「THE JODY GRIND」、
ボビー・ティモンズ(p)の「THIS HERE」とくれば興味津々で聴いてみたくなります。
いずれもソウル・ファンキー・ナンバーとしてよく知られている曲ばかりです。
もちろんオリジナルもいいのですがこちらは耳に馴染んでいる分だけ聴きやすく評価もしやすいです。
一般的にオルガン・ジャズはソウル・ジャズと表現されると同時にある種のけだるさが特徴だと思っています。
グラント・グリーン(g)の作品に「IDLE MOMENTS」がありますがちょうどそんな時間を演出してくれます。
アメリカのジャズ・メンにとっては日本の演歌の感覚かな・・・リラックスした時の鼻歌にはよく出てくるようです。
しかし、ヨーロッパのオルガン・ジャズは明らかにアメリカのそれとは一線を画します。
リラックスして楽しみながら演奏しているのは感じますが、よりストレートでスマートな趣を持っています。
アメリカ発とは違うヨーロッパ感覚のオルガン・サウンドを聴くことができました。

(中間系)


2013/04/14