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Dragon's Jazz Corner

今週のジャケットのコメント3


NO.601〜以降。

*10周年を記念したNO.442以降のドラ盤紹介ではジャケットも掲載しています。(2008/03/30)




(700) WILL BOULWARE TRIO & QARTET/ SUMMERTIME
will boulware(p) richard bona(b) billy kilson(ds)
eric alexander(ts)(3,5,7)
2007/EIGHTY-EIGHTS/

ウィル・ブールウエアは聴かせどころを心得た達者なピアニストだと思います。
リチャード・ボナ(b)&ビリー・キルソン(ds)とのコンビネーションもいいです。

「レビュー時のコメント」
ウィル・ブールウエア(p)の新譜が巷での評判が良いので入手してみました。
ブールウエアの名前を聞くのは久し振りでメシオ・パーカー(as)のアルバム以来です。
私の興味はどちらかというとカメルーン出身のリチャード・ボナ(b)にありました。
数年前にデヴィッド・サンボーン(as)のバックで見ましたが、彼の存在感は抜群で印象に残っています。
その時にはもう若いファンの支持は絶大なものがありました。
ドラムのビリー・キルソンも「ドラ流・・・」でもすでに3枚紹介しています。
ブールウエアはフュージョン畑出身ながらR&Bやソウルなどもこなすオールラウンド・プレイヤーです。
フュージョンの一派は元々何でも出来るスタジオ・ミュージシャンが中心だったので彼もその一人。
メシオ・パーカー盤ではオルガンを駆使していたし、シンセサイザーなども達者です。
豊かな経験を生かしてツボを得た演奏はさすがで、オリジナルとスタンダードのバランスも良く飽きさせません。
もう一人の注目はゲストのタフガイのエリック・アレキサンダー(ts)です。
ブールウエア・トリオの軽快でしなやかなリズムに乗って艶のあるやわらかいプレイを展開しています。
これを聴いているとアレキサンダーはぐっと幅が広がって、表現力に格段の進歩が認められます。
テナー奏者のメインストリーマーとして大きく飛躍しそうな感じがしました。
デビュー時からのパワフルで豪快なプレイは健在で、重厚な音色にも定評がありました。
これに落ち着いた大人の艶やかさが加われば一皮むけていわゆる大化けの可能性を秘めていると思います。
ただちょっと出突っ張りの多作に過ぎる傾向があるので玉石混交の作品は選ばなければなりません。

(中間系)


2013/04/07




(699) DAVID SILLS SEXTET / GREEN
david sills(ts,fl) gary foster(as) larry koonse(g)
michael kanan(p) putter smith(b) tim preasant(ds)
2007/ORIGIN RECORDS/

印象的なジャケット写真と共に爽やかな後味を残す作品です。
オーソドックスながら十分に刺激的です。

「レビュー時のコメント」
デヴィッド・シルズ(ts)は初見、オーソドックスなメインストリーム・ジャズを目指しているようです。
安心して聴けるので、こういった回顧主義的なサウンドはいつの時代でも一定の支持を得るものです。
もっとも懐かしい感じのサウンドとはいっても新しい感覚が加味され録音も違うので新鮮に聴くことができます。
日本で言う、いわゆる「温故知新」ですね。
この作品を印象付ける自作の(1)「MELON HEAD」、スタンダードの(3)「PRELUDE TO A KISS」、
フルートで演奏されるラテン風味の(5)「MOON AND SAND」など、聴きどころも多いです。
フロントが3人になるとアンサンブルの妙が楽しめ、シルズの音楽監督としての力量も問われます。
「最近購入したアルバム」で紹介したジェーン・モンハイト盤に参加していたマイケル・カナン(p)や
ギターのラリー・クーンズが注目を集めそうです。
若手に混じってベテランのゲイリー・フォスター(as)が参加してしているのが一工夫されているところで
これは嬉しかったです。ただ、78分超の録音時間はちょっと長いか。
ところでこのジャケットですが写真の感じが似ているのでこのサーフ・ライダーはシルズ本人かも知れません。
だとするとこちらも相当な腕前でプロ級と言えます。

(中間系)


2013/03/31




(698) ANTONIO SANCHEZ / MIGRATION
antonio sanchez(ds)
chris potter(ts,ss) david sanchez(ts) scott colley(b)
chick corea(p)(1,8) pat metheny(g)(3,9)
2007/CAM JAZZ/

今をときめくドラマー、アントニオ・サンチェスの初リーダー・アルバムです。
そうそうたるメンバーが参加しています。
内容も濃いです。

「レビュー時のコメント」
注目のドラマー、アントニオ・サンチェスの初リーダー・アルバムです。
今までにも何度か聴く機会があったのですがこれほどのドラマーとは気が付きませんでした。
これは幅広い音楽性で色々なところに出没していたのが災いしたと思っています。
それほどこのアルバムでのアントニオ・サンチェスは素晴らしいです。
1974年生まれの現在33歳なのでこれからの活躍が本当に楽しみです。
パット・メセニー・グループに参加してから知られるようになりました。
パット・メセニーが絶賛していてチック・コリアにもその実力を認められることになりました。
早速、チック・コリア・トリオの一員としてこの9月には来日公演が予定されています。
いずれにしてもドラムだけを聴いていても面白い作品なんてそうあるものではありません。
作曲能力も非凡、彼の持つ多彩な表現力と幅広く奥深い音楽性のたまものでしょう。
スコット・コーリー(b)にもスポット・ライトが当てられているのは好感が持てます。
この二人のコンビは↓の(694)「Manuel Rocheman Trio / Dance Cactus」でも聴くことができます。
クリス・ポッターとデヴィッド・サンチェスの2テナーも聴きもので(2)(4)(6)(7)の4曲で聴けます。
特にラテン・ジャズ・シーンで活躍中のデヴィッド・サンチェスの純ジャズ路線も興味深いところです。
輸入盤ではメセニーが(3)(9)の2曲、チックが(1)の1曲だけ、
日本盤にはボーナス・トラックとしてチックの(8)が追加されています。
チック参加のトリオの出来が良いので私は日本盤がお得だと思います。
最後に入っているメセニーとのデュオ、「Solar」も凄い。

(まじめ系)


2013/03/24




(697) IDEA 6/ STEPPIN' OUT
gianni basso(ts) guido pistocchi(tp) dino piano(tb)
riccardo fioravanti(b) angrea pozza(p) stefano bagnoli(ds)
francesca sortino(vo)(1,4,10) annibale modoni(vib)(4,9,10)
2007/DEJAVU RECORDS & COMMODO DEPOT/

イデア6はイタリアのディノ・ピアナ(tb)、ジャンニ・バッソ(ts)が率いるバンドです。
これはいい・・・雰囲気抜群、掛け値なしの好盤です。

「レビュー時のコメント」
聴いた途端に「これはいいなぁ」と思いました、60年代前半にタイム・スリップした感じです。
アート・ファーマー(tp)の”ジャズテット”や”ジャズ・メッセンジャーズ”の3管サウンドを思い出しました。
でもそれよりは軽快でスマートなのでウエスト・コースト・テイストが加味されていると言えるでしょうか。
馴染みのある名前はジャンニ・バッソ(ts)だけでしたが、若手ピアノ・トリオにベテランが乗る構図です。
分厚い3管アンサンブルを聴いていると決め手はトロンボーンだったのだなと改めて再認識しました。
上記の二つのグループに参加していたカーティス・フラー(tb)を聴いてみたくなりました。
オリジナル中心ですがピアノのポッザが良く聴きもの、ヴォーカルのフランチェスカもいい味を出しています。
このイタリア盤は雰囲気があって意外に新鮮、掘り出し物の大穴といえるかもしれない好盤です。
CD10曲にDVD3曲(1,2,4)がセットされているのでお徳用です。
DVDではイタリア・ジャズの歴史が語られていますがこの話も貴重なものでした。

(中間系)


2013/03/17




(696) DAG ARNESEN TRIO / NORWEGIAN SONG
dag arnesen(p) terje gewelt(b) pal thowsen(ds)
2007/RESONANT MUSIC/

ダグ・アーネセンの美しいピアノが聴けます。
究極の癒し系アルバムの一枚です。

「レビュー時のコメント」
ダグ・アーネセン・トリオのノルウェーの曲の作品集です。
長い間、歌い続け演奏され続けてきた曲なのでやさしくてやわらかなメロディ・ラインを持っています。
疲れている時やホッとしたい時に聴くには最適なアルバムだと思います。
派手さはありませんがほのぼのとするので時々思い出しては長く聴けるような気がしています。
以前、ヤン・ラングレン(p)がスウェーデン作品集を出しましたがこれも素晴らしかったです。
ひっそりとして目立たない・・・案外こういう癒しの作品が得てして愛聴盤になるのかもしれません。

(くつろぎ系)


2013/03/10




(695) KALMAN OLAH TRIO / ALWAYS
kalman olah(p) ron mcclure(b) jack dejohnette(ds)
2007/MERLESS RECORDS/

カルマン・オラー(p)は独特のスイング感を持っています。
民俗音楽・・・ジプシーの血が流れているのか。
面白いピアニストなので新譜が出ているようなら聴いてみたいです。

「レビュー時のコメント」
リーダーが初見の場合、共演者から探るという方法もありますね。
それがロン・マクルーア(b)にジャック・デジョネット(ds)の超重量級とくれば申し分ありません。
多くの人がちょっと聴いてみたいと思うのではないでしょうか。
それもモンク・コンペテイションの優勝者ともなるといやが上にも期待は膨らんでしまいます。
さて、そのカルマン・オラーはハンガリー出身の典型的なヨーロッパ・スタイルのピアニストです。
しかし、今作はいま一つ食い足りない面が残りました。
期待が大きかった分だけまだちょっと硬いかなあーという部分があります。
無難な展開ではなくもっとグイグイと突っ走って欲しかったと思います。
そう考えるとバックの二人がちょっと重たかったのかもしれませんね。
今度は自己のトリオでもう一度聴いてみたい気がしています。
(7)「STELLA BY STARLIGHT」の(6)「INTRODUCTION」はソロ・ピアノで演奏されます。
これを聴くと只者ではないなという印象を持ちました。
大物感の雰囲気は漂っているのでこれから大きく飛躍する可能性を秘めていると思います。
ちなみにモンク・コンペで演奏した曲は「ALWAYS」だそうです。
カルマン・オラーの名前は忘れないようにしましょう。

(中間系)


2013/03/03



(694) MANUEL ROCHEMAN TRIO / DANCE CACTUS
manuel rocheman(p) scott colly(b) antonio sanchez(ds)
2007/NOCTURNE/

マヌエル・ロシェマン(p)は聴き直してみても中々いいです。
スコット・コーリー(b)&アントニオ・サンチェス(ds)のバックは
先日「最近の愛聴盤」で紹介したエンリコ・ピエラヌンチ(p)の作品と同じです。

「レビュー時のコメント」
マヌエル・ロシェマン(p)は初見、最初の一音でグイと引き込まれてしまいました。
オリジナルの1曲ですが抜群のノリはこのトリオの魅力が全開です。
アルバムの評価の仕方は人それぞれだと思いますが私は第1曲目を最重要視しています。
作る側の立場からするとまずは第1曲目で聴く者を惹きつけたいと思うのが普通でしょうね。
それだけに1曲目に何を持ってくるかは大問題で「始め良ければ全て良し」とも言えます。
2番目が表題曲の出来がどうか・・・これも表題にするくらいなら良いと思うのが普通だからです。
3番目が好きな曲や知った曲を聴いてみて吟味するという順番です。
全12曲中、オリジナルが5曲、その他が7曲の構成です。
ビル・エバンス(p)とキース・ジャレット(p)の曲が入っているので二人に影響を受けたのは一目瞭然です。
スコット・コーリー(b)とアントニオ・サンチェス(ds)の強力なバックにも魅力があります。
相性がピッタリとはいきませんが初顔合わせのスリルもあるし興味深い組み合わせだと思います。
”NOCTURNE”レーベルはフランス盤、また強力なピアニストが登場しました。

(中間系)


2013/02/24



(693) GEORGE GARZONE & TRIO DA PAZ
/ NIGHT OF MY BELOVED
george garzone(ts) kenny werner(p)
romero lubambo(g) nilson matta(b) duduka da fonseca(ds)
2007/VENUS RECORDS/

野武士のジョージ・ガーゾーン(ts)がボサノバを演奏するとこうなります。
興味深いアルバムです。

「レビュー時のコメント」
夏にはやはりボサノバが聴きたいということでこのアルバムを購入してみました。
それもジョージ・ガーゾーン(ts)とケニー・ワーナー(p)とは・・・こういう企画は面白いでしょうね。
二人共に一筋縄ではいかない好みのプレイヤーなんです。
ガーゾーンはゲッツの音色+コルトレーンのスタイルで、両者の長所を上手にミックスしています。
現在のテナー奏者にはこれを目指す人も多いのではないでしょうか。
バックはブラジル出身のギター・トリオで、ジョビンの曲が4曲、オリジナルが2曲取り上げられています。
スタン・ゲッツ(ts)やハリー・アレン(ts)のようなスマートなスムーズさはありませんが、
一味違うボサノバ・アルバムでトツトツとして歌う骨太、硬派のテナー奏者の面目は保たれています。
私的なベスト・トラックは(3)、「NIGHT OF MY BELOVED」と副題の付いた表題曲の(6)、(5)も秀逸。
「GENTLE RAIN」や「THE SHADOW OF YOUR SMILE」も耳触りがいいです。
バークリーなどで教鞭を取っているようですが、ある意味模範的な演奏と言えるのかもしれません。
もう1人のケニー・ワーナーも興味深いピアニストです。
多彩で多才?・・・この人の頭の中はどういう具合になっているのか未だに分かりませんよ。
ヴォーカルのバックやこのアルバムでの流麗なプレイと複雑な自己の作品とのギャップが埋まらないです。
ワーナーの参加アルバムを見てもその多様性には驚かされてしまいます。
チャーリー・ミンガス、アーチー・シェップ、メル・ルイス、ジョー・ロバーノ、リー・コニッツなど、経歴は一線級、
ロザンナ・ヴィトロ(vo)を売り出したことでも知られ、鈴木重子(vo)さんのバックも努めています。
いずれにせよ、意表を突いた企画であることは間違いありません。
ジョージ・ガーゾーンとケニー・ワーナーのボサノバ・アルバムは新鮮です。

(くつろぎ系)


2013/02/17



(692) MARIANO DIAZ QUARTET / PLAN B
mariano diaz(p)
perico sambeat(as,ss) mario rossy(b) marc miralta(ds)
2007/NUBA RECORDS/

マリアノ・ディアズ(p)とペリコ・サンビエト(as)、
久々に聴いたけどやっぱり良かったです。
ビートルズの「And I Love Her」はしっとりと演奏しています。
刺激的なので新譜が出ているようならを聴いてみたいと思いました。

「レビュー時のコメント」
マリアノ・ディアズ(p)は初見、私の狙いはペリコ・サンビエト(as)にありました。
ブラッド・メルドー(p)やカート・ローゼンウィンケル(g)、ジェフ・バラード(ds)といった
時代の最先端を行くジャズ・プレイヤーと共演、互角に渡り合っています。
そんなわけでペリコには以前から注目していて来日公演も見に行っています。
2005年の愛知万博のスペイン館の演奏で初来日、その時に1回だけ東京で公演したのです。
「これは見逃せないなあー」と思って、何とか時間をやりくりして見に行ったのを覚えています。
紹介ではペリコ・サンビートではなくてペリコ・サンビエトと発音していました。
↓のフレドリクと比較すると面白かったです・・・フレドリクが剛ならペリコは柔。
しなやかでやわらかい音色ながらアイデア、テクニック共に卓越していて独特のノリを持っています。
マリアノ・ディアズはスペイン系としてはしっとりと落ち着いたタイプのピアニストです。
バックのメンバーも含めて自然体で無駄な力を感じさせないのが好ましいです。
スペインのプレイヤーは一般的にクールな中にも情熱を秘めているのでまだ分からない部分はあります
いずれにしてもスペイン期待の若手ピアニストの一人というところでしょうか。

(中間系)


2013/02/10



(691) YOSHIO SUZUKI TRIO / FOR YOU
yoshio"chin"suzuki(b) tadataka unno(p) cecil monroe(ds)
2007/ONE JASRAC/

海野雅威(p)さんは現在ニューヨークで修行中です。
セシル・モンロー(ds)さんは亡くなってしまいました。
貴重なピアノ・トリオ・・・やさしい調べのバラード演奏をどうぞ。

「レビュー時のコメント」
先日、鈴木良雄トリオを見に行った時に購入してきたアルバムです。
ライブでの演奏もほとんどこの中からの選曲だったので今でも記憶に残っています。
鈴木さんは何度も海野さんを紹介していたので、いかに期待して可愛がっているかが分かりました。
やはり、ここでの聴きどころも海野雅威(p)さんになるでしょうね。
鈴木さんとセシル・モンロー(ds)のベテラン二人がサポートしてご機嫌なアルバムに仕上がりました。
表題曲のオリジナル・バラードの「FOR YOU」はピアノとベースのデュオでじっくりと聴かせます。
海野さんの絶妙なタッチとしなやかで美しい音色、スイング感溢れる演奏を楽しむことができます。
これからの日本のジャズ・ピアノ界を担う若手の1人なのでこれからも注目していきたいと思っています。
ただピアニストにアタックの力強さや鋭さを求める人には少々物足りなく感じるかもしれませんね。

(くつろぎ系)


2013/02/03



(690) FREDRIK KRONKVIST QUARTET / IGNITION
fredrik kronkvist(as)
kasper villaume(p) martin sjostedt(b) daniel fredriksson(ds)
2007/CONNECTIVE RECORDS/

若さにまかせて突っ走るスピード感溢れる演奏が聴けます。
切れ味鋭く、近づいたら傷付くような気がする。
これはいいです。

「レビュー時のコメント」
スウェーデンのアルト・サックス奏者のフレドリク・クロンクビストの新作です。
前回聴いたのは「ALTITUDE」(Sittel/2003)でピアノを除いては同じメンバーでした。
何と表現したらいいのか・・・ジョン・コルトレーン・カルテットのアルト・サックス版といえば分かりやすいかな。
気合乗りと心構えは十分、最大の魅力はガツンとくるそのパワフルな音色にあります。
アルト・サックスのワン・ホーン・アルバムとしては久し振りに腰の入った存在感のある音を聴かせてもらいました。
感覚的にはジャッキー・マクリーン(as)以来かもしれません。
ストレートでオーソドックス、主流派ハード・バップの流れを汲むアルバムで新鮮な感覚で聴くことができました。
加えてリズム・セクションの3人が素晴らしい・・・特にキャスパー・ヴィヨーム(p)の参加に価値があります。
このキャスパー・ヴィヨーム(p)のマッコイ・タイナー(p)張りのプレイに注目、
マーティン・スヨステットの強力なベース・ワーク、ダニエル・フレドリクソンのドラムスも凄い。
全曲、フレドリクのオリジナルで(4)「ORIENTAL COLORS」、(6)「TOKYO BLOSSOM」は来日時の印象か。
(3)「BLACKBIRD MORNINGS」のバラードは美しいですが10年後にもう一度聴いてみたいです。
ちなみに彼を見出したのはヤン・ラングレン(p)だそうです。

(まじめ系)


2013/01/27



(689) STEVE KUHN TRIO / LIVE AT BIRDLAND
steve kuhn(p) ron carter(b) al foster(ds)
2007/BLUE NOTE/

渋い大人のピアノ・トリオです。
この安定感と安心感が大きいと思います。

「レビュー時のコメント」
スティーヴ・キューン(p)の新譜はライブ盤です。
キューン、ロン・カーター(b)、アル・フォスター(ds)のベテラン3人が集えば悪かろうはずがありません。
やはり安心感、安定感のある落ち着いたプレイを展開しています。
キューンはスタン・ゲッツ(ts)、ケニー・ドーハム(tp)、アート・ファーマー(tp)などのグループに参加しました。
その頃からビル・エバンス(p)派の逸材として将来を嘱望されていました。
ヨーロッパに渡ってからの深いリリシズムや退廃的、耽美的な演奏は好みが分かれるところではあります。
80年代の後半からはよりオーソドックスなスタイルに戻って魅力的なピアニストの1人になりました。
ピアノの音色も美しくタッチも自在、色々な経験を踏まえているので表現力が多彩で興味深い存在です。
ドーハムの「LOTUS BLOSSOM」は大のお気に入りのようでライブではよく演奏しているようです。
キューンの特徴の一つにワルツを得意としているのでここでも2曲披露してくれています。
圧巻はヘンリー・マンシーニの美しい曲、(8)「SLOW HOT WIND」です。
4ビートのこのノリ、この心地良さはベテラン・トリオならではの味わいです。
親しみのある「LOTUS BLOSSOM」と共に何度聴いても「いいなあー」と思いました。
興味があれば是非ご一聴あれ。

(中間系)


2013/01/20



(688) MICHAEL BRECKER QUINTET / PILGRIMAGE
michael brecker(ts) pat metheny(g) herbie hancock(p)(1,5,8,9)
brad mehldau(p)(2,3,4,6,7) john patitucci(b) jack dejohnette(ds)
2007/WA RECORDS/

やっぱり今作は凄いと思います。
マイケル・ブレッカー(ts)の最後の正規盤リーダー・アルバムです。
次世代をリードしているパット・メセニー(g)とブラッド・メルドー(p)がここにいます。
色々考えるとつい感傷的になってしまった。

「レビュー時のコメント」
マイケル・ブレッカー(ts)の2006年録音の遺作です。
このアルバムは今年の上半期の最大の話題作になるのは間違いないでしょうね。
全9曲はブレッカーのオリジナルで、ブレッカーの全てが注ぎ込まれているといっても過言ではありません。
ハービー・ハンコックとブラッド・メルドーの持ち味の違う二人のピアニストを起用したのも成功しています。
ハンコック参加の(1)、(5)、(8)、(9)はジャズ・テイストが濃くハード・コアな内容で素晴らしいです。
メルドー参加の(2)、(3)、(4)、(6)、(7)はよりマイルドな印象で泣きのサックスも聴けます。
最もブレッカーらしいサウンドを聴かせてくれた(4)「TUMBLEWEED」が私的なベスト・トラックです。
望み得る最高の共演者に囲まれて、各人の好演と相まって貴重なアルバムになっています。
ブレッカーが病魔に侵されていたことを考えるとこれほどの出来になるとは到底信じられません。
私はここに次世代をリードするブラッド・メルドー(p)が参加していることに何かの因縁を感じました。
ブレッカー、メセニー、ハンコック、メルドー、パティトゥッチ、デジョネット、
これを聴かずして現在のジャズは語れない・・・なんか全てに信じがたい驚異的なアルバムです。
多分、今年はこれ以上のアルバムは出てこないと思います。

(まじめ系)


2013/01/13



(687) AVISHAI COHEN TRIO + 2 / AS IS...LIVE AT THE BLUE NOTE
avishai cohen(b,elb) sam barsh(p,key) mark guilliana(ds)
jimmy greene(sax) diego urcola(tp)
2007/HALF NOTE/

アヴィシャイ・コーエンは同姓同名のトランペッターがいます。
紛らわしいですが私はこちらのベーシストに馴染みがあります。
聴き直してみても十分刺激的でした。
それにしてもCD&DVDの2枚セットはいいね。

「レビュー時のコメント」
チック・コリア&オリジンで名前を上げたイスラエル出身のアヴィシャイ・コーエン(b)の新譜です。
(7)の「CARAVAN」を除いては自身のオリジナル、CD&DVDの2枚セットは大徳用盤です。
パワフルでエネルギッシュ、その強靭なベース・プレイは当代随一と言っても過言ではないと思います。
中近東の香りを強く滲ませた個性的なサウンドはズシンと重たく響いてきます。
加えてエレキ・ベースのコンテンポラリーで濃い味付けは独自の音の世界を持っています。
この重厚さが今の私にはちょっとしんどいですが個性が強いだけにどっぷりとハマる人もいるでしょうね。
そんなわけで私はDVDの方が良かった・・・映像を見ながらの演奏でないと身が持ちません。
今作はアヴィシャイ・トリオにホーン奏者がゲスト出演するという形式です。
期待のサックス奏者のジミー・グリーンのソプラノ・サックスも満喫出来ます。

(まじめ系)


2013/01/06



(686) LARRY HAM TRIO / CAROUSEL
larry ham(p) lee hudson(b) tom melito(ds)
2007/WEST VILLAGE MUSIC

実にやさしい音色の持ち主です。
典型的なレア盤の一枚だと思います。

「レビュー時のコメント」
ラリー・ハム(p)は初見、やわらかく包み込むようなピアノの音色、
ベテランらしくリラックスしたくつろいだ、いぶし銀の如くのピアノを聴かせてくれました。
どうも自主制作盤のようですが白黒のジャケットの写真も悪くありませんが惜しむらくは録音がイマイチです。
オリジナル7曲にスタンダード5曲の構成、オリジナルの曲もいいです。
(3)、(5)、(7)、(12)はピアノソロで、(6)の美しくも軽快で抜群のノリはベスト・トラックだと思いました。
1曲、1曲は比較的短いですが珠玉の名演です、何よりホッとさせてくれるのがいいです。
(12)「MY FUNNY VALENTINE」は一日の終わりに聴きたい、これでゆっくりと眠りにつくことができるでしょう。
知名度は低くてもジャズ界には数多くの名手が存在します。
ラリー・ハムもそんな中の1人です。

(くつろぎ系)


2012/12/30



(685) BILL CHARLAP TRIO / LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD
bill charlap(p) peter washington(b) kenny washington(ds)
2007/BLUE NOTE RECORDS/

ビル・チャーラップ(p)を聴くのも久し振りでした。
一時期はよく聴いていたんだけどねぇ〜。
オーソドックスで典型的なジャズ・ピアノ・トリオが聴けます。。

「レビュー時のコメント」
今やこのビル・チャーラップ・トリオも世界を代表するピアノ・トリオの一つでしょうね。
これはヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤ですが緊張感が漂っているところに独特の雰囲気を感じます
観客の期待度と共に「さあー、聴くぞ」という姿勢が伝わってくるようです。
聴けば聴くほど味わい深く、格調高く上品で、バランス、コンビネーション共に抜群です。
このトリオはスタンダードを演奏することが多いですが、スタンダードの名曲が
瑞々しい感覚と共に新しい息吹を吹き込まれているような感じがします。
(1)「ROCKER」は見い出してくれた恩師、ジェリー・マリガン(bs)の曲です。
マイルス・デイビス(tp)の名盤、「Birth Of The Cool」の中で演奏されたのが知られています。
マリガン・ファンの私としては、一番目に収録してくれたのは嬉しい限りです。

(中間系)


2012/12/23



(684) MARTIN BEJERANO TRIO / EVOLUTION/REVOLUTION
martin bejerano(p) edward perez(b) ludwig afonso(ds)
2006/RESERVOIR/

このマーティン・ベジェラーノ(p)も凄いです。
今、聴き直しても強烈な印象を残しました。

「レビュー時のコメント」
注目すべきピアニストのマーティン・ベジェラーノの初リーダー・アルバムです。
彼を最初に知ったのは1昨年のベスト3に選んだロイ・ヘインズの「Fountain Of Youth」(2004)でした。
このロイ・ヘインズ・カルテット↓はメンバーにも恵まれて素晴らしかったです。
ヘインズの晩年の代表作になるのは間違いありません。
さて、この新作ですが若者らしいスイング感溢れる元気溌剌としたプレイが聴けます。
構成もオリジナルが4曲にスタンダードが2曲、ジャズの名曲が3曲とバランスが取れています。
ここは”荒削り”が最大の魅力・・・味わい深さなんて吹っ飛ばしてグイグイと突っ走ってくれています。
最近は若くても大人しく老成した感じのピアニストが多いですがそんなことは微塵も感じさせません。
将来性を考えたらこの初リーダー・アルバムは逃さない方がいいでしょうね。
近年、ベジェラーノはロイ・ヘインズ(ds)とラッセル・マローン(g)↓のグループで活躍しています。
ちょうどこれから夏にかけてこの両グループで来日公演をするとの情報を得ています。
ちょっと見てみたい気もしますね。

■ROY HAYNES / Fountain Of Youth (2004)
■RUSSELL MALONE / Playground (2004)

(中間系)


2012/12/16



(683) ZSOLT KALTENECKER TRIO / WINTER'S TALE
zsolt kaltenecker(p) viktor hars(b) gergo borlai(ds)
2007/R & V RECORDS/

ソルト・カルトネッカーも強力なピアニストの一人です。
これも愛聴盤の1枚。
車のHDに入れて今でもよく聴いています。

「レビュー時のコメント」
ハンガリー出身の俊才、ソルト・カルトネッカー(p)の15枚目のリーダー・アルバムです。
カルトネッカーは「ガッツ・プロダクション」が紹介した最高のピアニストということになるでしょうか。
2001年発売の「Rainy Films」は素晴らしかったです、私は一発で虜になりましたよ。
しばらくの間はエレクトリック路線に興味がいったようなので私は聴いていません。
久し振りのアコースティック・ピアノ・トリオの作品ということでワクワクして聴きました。
演奏良し、バランス良し、録音良し・・・・・期待にたがわぬ上々の出来栄え。
斬新で魅力的なフレーズ、強力で切れ味鋭いタッチは”凄い”の一言です。
メンバーのオリジナルで固められ、日本の印象を綴った「LIGHT OF SHINJUKU」なんて曲もあります。
特に(4)「PASOLINI'S DREAM」における類い稀なる表現力はカルトネッカーの高い才能を示すものです。
ピアノ・トリオの一級品でお薦め・・・まだ未聴の方は是非一度聴いてみて下さい。

(中間系)


2012/12/09



(682) ANDY MARTIN-JAN LUNDGREN QUARTET
/ HOW ABOUT YOU ?
andy martin(tb)
jan lundgren(p) chuck berghofer(b) joe la barbera(ds)
2006/FRESH SOUND RECORDS/

今作はミュージカル、映画音楽の作品集です。
トロンボーンのやさしくやわらかな音色を楽しむことができました。
やはりヤン・ラングレン(p)の参加が貴重だと思います。

「レビュー時のコメント」
思うにトロンボーンのワン・ホーン・アルバムを買ったのは何年ぶりになるでしょうか。
前回は何だったか、全然思い出せないほどです。
このアルバムに惹かれたのも当然ながらヤン・ラングレン・トリオの方でした。
アンディ・マーティン(tb)はベテランのようですが初見、スタンダード作品集で安心して聴くことができます。
でも、やっぱり、主役はヤン・ラングレンだと思いました。
スーッと心に響いてくる心地良いタッチとセンスは只者ではありません。
彼はすでに独自の世界を持っています。

(くつろぎ系)


2012/12/02



(681) FRANK MORGAN QUARTET / A NIGHT IN THE LIFE
frank morgan(as)
george cables(p) curtis lundy(b) billy hart(ds)
2007/HIGHNOTE RECORDS/

フランク・モーガンは2007年に亡くなっています。
今作は亡くなった年に出たアルバムなんですね。
チャーリー・パーカー直系のアルト奏者も少なくなってきました。
存分にバップ・テイストを味わえる作品です。

「レビュー時のコメント」
フランク・モーガン(as)・カルテットの”JAZZ STANDARD”におけるライブ盤の第3弾です。
2003年の11月に録音されたものですがほぼ2年ごとにリリースされています。
どれもスタンダード・ナンバーで出色の出来ですが、今作は比較的長い曲が集められています。
その分、ベテラン・カルテットの演奏を十分に堪能することが出来ました。
中々に3連作は買いにくいものですが、スタンダード作品集として非常に魅力的だと思います。
モーガンの演奏が素晴らしい・・・時代を越えた名曲の数々がジャズの魂と共に現代に蘇ってきました。
50年代にはチャーリー・パーカーの直系として期待され、その後の消息は不明になり、
80年代になって突然復活してきたモーガンの真髄を聴く意味でも貴重な作品集になりました。
バックのジョージ・ケイブルス(p)、カーティス・ランディ(b)、ビリー・ハート(ds)も好サポート、
彼らにとっても印象に残る共演になったのではないでしょうか。
1枚だけならやはりVOL.1をお勧めします。

(中間系)


2012/11/25



(680) HAL GALPER TRIO / FURIOUS RUBATO
hal galper(p) jeff johnson(b) john bishop(ds)
2007/ORIGIN RECORDS/

美しく聴き易いピアノ・トリオばかりだと刺激がありません。
で、たまにこういうのを聴くと実に刺激的なんです。
力強いタッチと独特のリズム感はこちらの予想と少しづつずれています。
これがまたたまらなくいいんだなぁ〜。

「レビュー時のコメント」
ベテラン・ジャズ・ピアニストのハル・ギャルパーはさすがに一筋縄ではいきません。
サム・リバース(ts)、チェット・ベイカー(tp)、キャノンボール・アダレイ(as)、
リー・コニッツ(as)、フィル・ウッズ(as)等々とそのキャリアをたどれば一目瞭然です。
みなさんがよくご存知の「MILESTONES」、「NAIMA」、「MILES AHEAD」の原曲のイメージはほとんどありません。
ギャルパー流に演奏するとこうなる・・・それだけギャルパーの解釈と展開がユニークだと言えます。
単純ではないだけに誰でもにお勧めするとはいきませんが個性的なピアノ・トリオならここにあります。
好きな人にはたまらないでしょう。

(まじめ系)


2012/11/18



(679) BRUCE JACKSON TRIO / DON'T SLEEP ON YOUR DREAMS
bob himmelberger(p) nicolas bayak(b) bruce jackson(ds)
2006/SOUTHPAW/

明るくて軽い感じのピアノ・トリオが聴けます。
評価はやや甘かったかもしれませんがレア盤であることはたしかです。

「レビュー時のコメント」
ブルース・ジャクソン(ds)は初見、純ジャズ路線とはちょっと違うような気がします。
変な言い方かもしれませんがヨーロッパの洗練された感覚とアメリカの野暮ったさが
微妙にマッチして独特なトリオの雰囲気を出していると思います。
このアルバムにはそこに最大の魅力を感じました。
曲目はウエイン・ショーター(ts)、セロニアス・モンク(p)、ラリー・ヤング(org)と
デイブ・リーブマン(ts)は珍しく、加えてスタンダードが演奏されていて盛りだくさん。
ショーターの「FOOTPRINTS」はマイルス・デイビスの「マイルス・スマイルズ」で演奏されたものですが、
最近のジャズ・メンにも数多く取り上げられていてモダン・ジャズの名曲になりました。
今や最も旬な曲はショーターの作曲といっても差し支えないでしょう。
そういえば先日の「CD聴きの会」で聴いたのも「ブラック・ナイル」と「アナ・マリア」のショーターの曲でした。
最後にひっそりと入っている「MY SHIP」がなかなかいいです。

(中間系)


2012/11/11



(678) ROBERT GLASPER TRIO / IN MY ELEMENT
robert grasper(p) vicente archer(b) damion reid(ds)
2007/BLUE NOTE/

ロバート・グラスパーは独特の感性を持つピアニストです。
「これはちょっと違うぞ」と思わせる何かがあります。
ヒップ・ホップやクラブ系に人気があるのも分かります。

「レビュー時のコメント」
私がロバート・グラスパー(p)を初めて知ったのは3年ほど前の2004年の夏でした。
拙ホーム・ページの読者から「凄いピアニストがいるので是非聴いてみて下さい」とのメールが来ました。
グラスパーはブラッド・メルドー(p)に続く次世代を担う逸材だという触れ込みでした。
それで早速購入したのがスペインから出ていた■「Mood」(Fresh Sound N.T/2003)(ドラ盤150)です。
聴いてみますとたしかにスケールの大きさを感じさせ、大物感を漂わせていると思いました。
次に出た■「Canvas」(Blue Note/2005)(ドラ盤201)も当然ドラ盤入りを果たしました。

今作が3枚目のリーダー・アルバムになります。
サム・リバース(ts)とハービー・ハンコック(p)の2曲を除いては全て自身のオリジナルです。
先日紹介したチャールス・トリバー(tp)盤↓にも起用されていたので驚いたばかりです。
思ったよりもずっと幅広く、奥行きがあるピアニストかもしれませんね。
今のところはどこに向かうのか、どうにも掴みどころがないというのが最大の魅力でしょうか。
ところで、大柄のグラスパーは誰かに雰囲気が似ているなーと思ってずっと考えていました。
何か気になっていたのですが昨日の夜、ベットの中でふと思い付きました。
「そうだ!ランディ・ウエストン(p)だった」・・・というわけで昨日はグッスリと眠られました。
2003年にはすでに初来日しているようなので日本のジャズ・ファンの目ざとさにはつくづく感心します。

(まじめ系)


2012/11/04



(677) MICHEL BISCEGLIA TRIO / INNER YOU
michel bisceglia(p) werner lauscher(b) marc lehan(ds)
2007/PROVA/

Michel Bisceglia (ミシェル・ビスチェリア)はベルギーのピアニストです。
ピアノ・トリオ・ファンは早くから注目していたようです。
ヨーロッパ・ピアノの静謐かつ深遠な世界を味わえますよ。

「レビュー時のコメント」
久し振りに印象に残るユーロピアン・ピアノ・トリオを聴いた気がします。
ミシェル・ビスセグリア(p)は初見、名前からはフランス人のようですが・・・。
ベルギー人でした。
このCDも自己名義のレーベルなのでひょっとすると自己製作盤かもしれませんね。
しかし、内容は素晴らしいと思いました。
ヨーロッパ・ピアノらしい繊細で華麗、しっとりと落ち着いた実に良いアルバムです。
チャーリー・ヘイデン(b)やチャーリー・パーカー(as)の曲、スタンダードも1曲入っています。
曲想の構成もよく考えられていて、トリオのバランスもいいのでお勧めします。
ここで逃すと入手困難になるのは確実な状況だと思われます。

(中間系)


2012/10/28



(676) ADAM ROGERS TRIO / TIME AND THE INFINITE
adam rogers(g) scott colley(b) bill stewart(ds)
2007/CRISS CROSS/

アダム・ロジャース(g)のスタンダードが聴きどころになるかな。
いわゆる新感覚派のギタリストの一人。
「Night And Day」、「Without A Song」、「I Love You ,Porgy」などが選ばれました。

「レビュー時のコメント」
アダム・ロジャース(g)のリーダー・アルバムは初見、評判が高いので購入してみました。
彼はフュージョンから先鋭のジャズ路線までの幅広い音楽性の持ち主です。
雰囲気的にはパット・マルティーノ(g)のラインかな・・・。
注目のスコット・コーリー(b)とビル・スチュアート(ds)のバックにも魅力がありますね。
5曲のスタンダードと4曲のオリジナルの構成ですが曲想が変化に富んでいるので飽きさせません。
気負わず淡々とした3人のインター・プレイも聴きどころで、しっとりと落ち着きのある好作品です。
メンバーのバランスも良くギター・トリオとしては一級品だと思います。

私がアダム・ロジャースを聴くのはこれが4枚目になります。
■BILL EVANS(ts) / TOUCH / (1999 Zebra)
■JACKY TERRASSON(p) / WHAT IS IT / (1999 Blue Note)
■CHRIS POTTER(ts) / TRAVELING MERCIES / (2002 Verve)

(中間系)


2012/10/21



(675) JOE LA BARBERA QUINTET / NATIVE LAND
joe la barbera(ds)
clay jenkins(tp) bob sheppard(ts,ss) alan pasqua(p) tom warrington(b)
aaron serfaty(per)(3,5)
2005/APHRODITE RECORDS/

中々に聴きごたえのある重量級のハード・バップ盤です。

訂正
ジョー・ラ・バーベラ(ds)はアメリカ人でした。
なぜか私の頭にはカナダ出身と刷り込まれていました。
70年代からずっとアメリカ西海岸で活躍しているとのことです。
レコード会社もカリフォルニアで西海岸を代表するテナー・奏者のボブ・シェパードや
名ピアニストのアラン・パスクァの共演も納得です。
ただ内容はウエスト・コーストらしくない重量級になっています。
ちなみに弟のテナー奏者のパット・ラ・バーベラはカナダに帰化しているそうです。
ジャズ仲間が教えてくれました。
どうもありがとうね。

「レビュー時のコメント」
これはジョー・ラ・バーベラ(ds)が率いるベテラン・クインテットです。
先週に引き続きカナダ発ですがこちらは一味濃いハード・バップ盤。
ジョー・ラ・バーベラを紹介するには晩年のビル・エバンス・トリオのドラマーということが付いて回ります。
本人はもううんざりかも知れませんがこれが一番分かり易いのでしょうがないかと思っています。
そんなわけでカナダ出身のドラマーとしては知名度も高く、あちこちで引っ張りダコの大活躍です。
今作は自身のオリジナル5曲を含む多彩な構成で意欲的な作品になっています。
ハード・バップではあるけれど中味はかなり濃い味付けなのでじっくりと味わいたい作品です。
特にアラン・パスクァ(p)の参加が貴重で、彼の純ハード・バップ・アルバムは珍しいと思います。

(まじめ系)


2012/10/14



(674) PAT METHENY & BRAD MEHLDAU / QUARTET
pat metheny(g) brad mehldau(p)
larry grenadier(b) jeff ballard(ds)
metheny/mehldau duets (2,4,6,11)
2007/NONSUCH RECORDS/

言わずと知れた現代ジャズの最高峰です。
ポップな感覚もあってやっぱり素晴らしいと思いました。

「レビュー時のコメント」
去年の「メセニー&メルドー」の続編です。
メンバーも同じ、同日録音なので悪かろうはずがない。
が、しかし、現実的で迷う問題にぶち当たります・・・「もう1枚買う必要があるかどうか?」です。
結局、2枚買っても聴くのはどちらか1枚になるのは今までの経験則から分かっています。
前作はデュオが中心でカルテットが2曲、今作はカルテットが中心でデュオが4曲の構成。
混ざっているからなおさら悩む・・・「さあー、どうしますか?、お客さん」。

結論から言えば、やはりこれは買って良かったと思いました。
最初から2枚出す予定でいたようだし、それぞれのコンセプトは考えられていたのでしょうね。
デュオ中心ならしっとり系、こちらのカルテット中心はより弾けている感じがしました。
なにしろメセニーが凄い、空間にこれだけ音の広がりを感じさせるギター奏者はいません。
自在な表現力と創造力で小宇宙を形成する・・・稀代の名手、パット・メセニーがここにいます。
これほどのギタリストを現在進行形で聴けるのは幸せだと思っています。

(中間系)


2012/10/07



(673) CHANO DOMINGUEZ QUARTET / ACERCATE MAS
chano dominguez(p)
george mraz(b) guillermo mcgill(ds) anga(per,conga)
mario rossi(b)(8) pirana(cajon)(8)
2006/KARONTE DISTRIBUCIONES/

スペインの人気ピアニストのチャノ・ドミンゲスは強力です。
強靭なタッチながら音色は美しくロマンチックりです。
低辺にはフラメンコの情熱が秘められている。
(1)「ANA MARIA」はウエイン・ショーターの名曲でライブで演奏されることも多い。
2000年代、ピアノ・トリオの名盤の一枚です。

「レビュー時のコメント」
スペインの名手、チャノ・ドミンゲス(p)の新作です。
今ちょうどラテン系のジャズ・ピアノを聴きたいと思っていたのでぴったりのタイミングでした。
ラテン系と言っても聴きたかったのはボサノバではなくてサンバ、ルンバ、タンゴの系統です。
それもゆったりと流れるような美しいメロディなら最高だと思っていました。
このアルバムはその条件にほぼ沿うものになりました。
バックでパーカッションやコンガがチャカポコと響くリズムが心地良い。
(2)「ACERCATE MAS」や(4)「CUANDO VUELVA A TU LADO」のラテンの名曲は美しいです。
しっとりとした(7)「SKYLARK」も良かった。
やはりラテンの名曲を表現するにはラテンの血が入っていないとこの味と雰囲気は出ません。
ただ、(6)「AFROBLUES」だけはもっと泥臭くないとしっくりきませんでした。

(くつろぎ系)


2012/09/30



(672) WYNTON MARSALIS SEXTET / LIVE AT THE HOUSE OF TRIBES
wynton marsalis(tp)
wessell "warmdaddy" anderson(as) eric lewis(p) kengo nakamura(b)
joe farnsworth(ds) orlando q. rodriguez(per)(1,2,5,6) robert rucker(tb)(6)
2005/BLUE NOTE RECORDS/

聴きなおしてみてもやっぱり良かったです。
ライブの熱気が伝わってきます。
中村健吾さん(b)とジョー・ファーンズワーズ(ds)もいいよ。

「レビュー時のコメント」
久し振りにウイントン・マルサリス(tp)を聴いてみました。
この作品はまずプレイヤーと聴衆の一体感が素晴らしいです。
これぞライブ・ハウスの醍醐味の一つと言えます。
日本では残念ながら中々こういう雰囲気にはなりませんね。
(1)「GREEN CHIMNEYS」から(2)「JUST FRIENDS」に入る間がたまりませんでした。
マルサリスのプレイも最高潮、一人二人と加わってきて徐々に盛り上がっていきます。
ウイントンを聴くのも久し振りですがこれほどストレートに演奏するジャズ・アルバムも珍しいのではないでしょうか。
中村健吾さん(b)とジョー・ファーンズワーズ(ds)の起用が効いていると思いました。
1曲、1曲が長いけれどその分ウイントンの演奏を存分に満喫することができます。
彼は回顧主義、伝承派、伝統と現代性を掛け合わせ新人発掘に尽力し、ジャズの発展に貢献しています。
誰でもができるはずもなく、それはそれで立派なことだと思っています。

(中間系)


2012/09/23



(671) CHARLES TOLLIVER BIG BAND / WITH LOVE
charles tolliver(tp)
david guy(tp) chris albert(tp) keyon harrold(tp)(1,3,7) david weiss(tp)
james zollar(tp)(2,4,5,6) joe fiedler(tb)(3) clark gayton(tb) stafford hunter(tb)
jason jackson(tb) aaron johnson(btb) todd bashore(as) jimmy cozier(as)(5)
craig handy(as,ss,cl,fl) billy harper(ts) bill saxton(ts,cl) howard johnson(bs,bcl)
stanley cowell(p)(2,3,4) robert glasper(p)(1,5,6,7) cecil mcbee(b) victor lewis(ds)
ched tolliver(g)(6)
2006/BLUE NOTE/MOSAIC RECORDS/

チャールス・トリバー・ビック・バンド・・・やや粗い作りですが圧倒的な迫力で迫ってきます。
ここはメンバーも魅力です。
今や純ジャズ路線から離れてしまった感のあるロバート・グラスパー(p)の強烈なプレイが聴けますよ。

「レビュー時のコメント」
先週のアンドリュー・ヒルで久々に聴いたチャールス・トリバー(tp)はやっぱり良かったです。
多分、同じ思いをした人もたくさんいたんでしょうね。
早速、トリバーをリーダーとしたビック・バンドのアルバムが登場してきました。
モンクの1曲を除いてはトリバーのオリジナル、コンダクターとしての才能もあると再評価しました。
メンバーには往年の仲間達、ビリー・ハーパー(ts)、スタンリー・カウエル(p)、
セシル・マクビー(b)、ビクター・ルイス(ds)などの顔が見えます。
特筆すべきは期待のピアニスト、ロバート・グラスパーが起用されていることです。
ハービー・ハンコック派とみていましたが、こうなってくるともっと幅広く、奥行きがあるかも知れませんね。
分厚いアンサンブルとハーモニーをバックに各自のソロが展開され刺激的な内容になっています。
出来れば大音量で聴いてもらいたいです。

(まじめ系)


2012/09/16



(670) SERGI SIRVENT & SANTI CARETA / ANACRONICS
sergi sirvent(p,vo), santi careta(g)
2006/FRESH SOUND NEW TALENT/

実に刺激的なデュオが聴けます。
2000年代、名盤の1枚です。

「レビュー時のコメント」
これは懇意のジャズ・クラブで知り合いになったジャズ・ファンに教えてもらったものです。
彼曰く、去年のベスト3の1枚でセルジ・サーベントは今一押しのピアニストだそうです。
13曲中3曲を除いてはスタンダード作品で占めらています。
たしかに1曲、1曲の解釈が新鮮で、スタンダードが瑞々しい感覚で現在に蘇ってきました。
私は(1)「YOU DO SOMETHING TO ME」の出だしの音を聴いてドキッとしましたよ。
(2)「SOUL EYES」では邦楽、日本の琴を思わせるフレーズが出てきて、これもまた新味。
サーベントもサンティ・カレタ(g)も幅広い表現力を持っているので聴き応えは十分です。
存分に二人のコラボレーションが楽しめるし、デュオ・アルバムとしても一級品だと思います。
スペインの”Fresh Sound New Talent”は新人発掘に力を入れているので目が離せません。

(まじめ系)


2012/09/09



(669) ALAN BARNES & SCOTT HAMILTON WITH THE DAVID NEWTON TRIO
/ ZOOTCASE
alan barnes(as,bs) scott hamilton(ts)
david newton(p) matt miles(b) steve brown(ds)
2006/WOODVILLE RECORDS/

スタンダード・ナンバー集・・・気持良いサックス・バトルが聴けます。
疲れた時にはちょうどいいです。

「レビュー時のコメント」
アラン・バーンズは初見、アルト・サックスとバリトン・サックスを両刀遣いのようです。
バリトンだけならもっと早くチェックできていたと思います。
デヴィッド・ニュートン(p)は何枚かサイドで聴いたことがあります。
このアルバムの購入のきっかけは当然ながらスコット・ハミルトン(ts)です。
それで「今週のジャケット」にもハミルトンを採用したというわけです。
曲目構成は馴染みのあるスタンダードにズート・シムズ(ts)とコールマン・ホーキンス(ts)が2曲、
これは明らかにハミルトンを意識した選曲だと思います。
コールマン・ホーキンス〜ベン・ウエブスターともう一方はレスター・ヤング〜ズート・シムズ、
この二つのラインを融合させてやや下卑た?味付けをするとハミルトンのスタイルになります。
好きも嫌いも、良くも悪くも独自のスタイルを確立したと言えます。
案外目立たないけど彼はワン・アンド・オンリーの世界を持っていると思っています。
内容は推して知るべし、誰でもが予想する通りのサウンドです。
近年日本盤ではエディ・ヒギンス(p)と共演することが多く、新作ではケン・ぺプロフスキー(ts)とも競演。
どちらかというと日本ではバランスを重視するけれど欧米はずっとストレートな作風です。
ジャム・セッションやバトル・セッションの歴史も長く、やはり欧米盤は一味違います。
ちょっと粗い作りだと思いますが、スイング感や真っ向勝負のぶつかり合いの醍醐味はより刺激的です。
日本の「和の世界」と欧米の「主張の世界」の違いがここでも生きている感じがしました。

(くつろぎ系)


2012/09/02



(668) ANDREW HILL QUINTET / TIME LINES
andrew hill(p)
greg tardy(ts,cl,bcl) charles tolliver(tp) john hebert(b) eric mcpherson(ds)
2006/BLUE NOTE RECORDS/

孤高のピアニスト、アンドリュー・ヒルの晩年の作品です。
ここでも強烈な個性を発揮しています。

「レビュー時のコメント」
アンドリュー・ヒル(p)の新譜は当然ながら全曲彼のオリジナルです。
知名度の高いピアニストにしては寡作のプレイヤーだと思います。
流行に惑わされない、大衆に迎合しない孤高のピアニストの一人だと思っています。
わが道を行くヒルの作品は軽く聞き流すってわけにはいきません。
ここでも小編成とは思えない分厚いアンサンブルとハーモニーを聴かせてくれました。
若手を従えたヒルは貫禄十分でじっくりと聴かせる重厚なサウンドを演出しています。
グレッグ・ターディ(ts)はヒルに認められたとなると見直さなければいけませんね。
今まではいまひとつピンと来なかったのは目指す音楽じゃなかったのかも。
ここでは水を得た魚のように伸び伸びと意欲的なプレイを展開しています。
久々に聴くチャールス・トリバー(tp)は存在感十分でやっぱりいいです。

(まじめ系)


2012/08/26



(667) EDWARD SIMON TRIO / UNICITY
edward simon(p) john patitucci(b,elb) brian blade(ds)
2006/C.A.M/

クールで爽やかなピアノ・トリオは今の時期にピッタリです。

「レビュー時のコメント」
エドワード・サイモン(p)のトリオものは初めてですが、これはいいです。
瑞々しいタッチと美しい音色、主流派のジャズ・ピアノ・トリオが聴けます。
気負うところがまったく感じられず、ごく自然体なのも好感が持てます。
ジョン・パテトゥッチ(b)とブライアン・ブレイド(ds)とのコンビネーションも抜群です。
特に(2)「THE MESSENGER」の4ビートは心地良く、私はこれでグッと引き込まれてしまいました。
スタンダード作品集なので聴きやすく、あとは一気に聴かされることになりました。
パテトゥッチのエレキ・ベースも自然に耳に入ってきました、これも変化があっていいです。

私がエドワード・サイモンを聴くのはこれが5枚目になります。
■BOBBY WATSON(as) / HORIZON REASSEMBLED / (1995 atlantic)
■MARK TURNER(ts) / MARK TURNER / (1995 DIW)
■TERENCE BLANCHARD(tp) / LET'S GET LOST / (2001 sony)(ドラ盤70)
■TERENCE BLANCHARD(tp) / WANDERING MOON / (2003 maxjazz)
自己名義では[criss cross]から2枚出ているようです。

(中間系)


2012/08/19



(666) DONAVAN & MURADIAN QUINTET / DMQ LIVE
jeff donavan(ds) larry muradian(b)
eye falmer(tp) chuck manning(sax) curtis brengle(p)
2006/LIVE TWO 2 TRACK RECORDS/

寝苦しい夏の夜は軽快なジャズが聴きたくなります。
そんな時にはピッタリのアルバムです。

「レビュー時のコメント」
今週紹介した2枚は図らずも米欧のハード・バップ・グループのアルバムになりました。
どちらが「最近の愛聴盤」になっても良かったのですが、気楽に聴けるということでこちらにしました。
カリフォルニアのパサディナを中心に活動しているローカルなバップ・グループだそうです。
ドラムとベース奏者の双頭バンドも珍しいのではないでしょうか。
初見ですが写真を見る限りでは相応のベテラン揃い、コンビネーションも良く手慣れたものです。
スタンダードの他にウエイン・ショーター、ベニー・ゴルソン、ジョン・コルトレーンの曲目を取り入れています。
幕開けの「BLACK NILE」から「WHISPER NOT」〜「LOCOMOTION」と一気に聴いてしまいました。
観客の受けも上々のようで、ライブ・ハウスでの寛いだノリノリの雰囲気が伝わってきます。
聴いていて気持いいのが一番の魅力です。

(中間系)


2012/08/12



(665) BOB MINTZER QUARTET / IN THE MOMENT
bob mintzer(ts,bcl)
phil markowitz(p) jay anderson(b) john riley(ds)
2006/ART OF LIFE RECORDS/

ここでのボブ・ミンツァーの音色はやわらかくロマンチックです。
リラックスできる癒し系のアルバムに仕上がっています。

「レビュー時のコメント」
多彩な音楽性を持つボブ・ミンツァー(ts)のストレイト・アヘッドなジャズ・アルバムです。
彼は「イエロージャケッツ」のサックス奏者として知られていて、ビックバンド畑にも強い。
作編曲者としての能力も高いです。
でも、時々はこういうアルバムも作りたくなるんでしょうね。
(1)「STRAIGHT AHEAD」はそのものズバリの曲名、(3)「TIME AFTER TIME」がただ1曲のスタンダード。
(2)「LISTEN HERE」ではエディ・ハリス(ts)の曲を取り上げています。
ミンツァーのR&Bやソウル・ジャズの原点がここいら辺にあるのかと思い、興味深かったです。
それだけにこの曲でのプレイが聴きものか。
その他のオリジナルもストレートな表現で聴き易くリラックスできます。

(中間系)


2012/08/05



(664) SEBASTIEN JARROUSSE & OLIVIER ROBIN QUINTET
/ TRIBULATION
sebastien jarrousse(ts,ss) olivier robin(ds)
olivier boge(as) jean-daniel botta(b) emil spanyi(p)
2005/APHRODITE RECORDS/

現代版熱いハード・バップ・アルバムです。
夏バテには刺激的なものに効果あり。

「レビュー時のコメント」
こちらはサックスとドラム奏者を中心にしたフランスのハード・バップ・グループです。
演奏曲目は全てオリジナルで占められ、じっくりと聴きたい方にはこちらをお勧めします。
聴き応えは十分、よりコンテンポラリーな現代風ハード・バップ・ジャズが聴けます。
中味も相当に濃いので聴き込めば聴き込むほど味が出てくると思います。
こういうのを聴くとつくづくフランス・ジャズ界の層の厚さを感じさせられました。
本当に「目立たないけどいいアルバム」・・・今年の一押しのアルバムです。

(まじめ系)


2012/07/29



(663) DAVE HOLLAND QUINTET / CRITICAL MASS
dave holland(b)
chris potter(ts ss) robin eubanks(tb) steve nelson(vib) nate smith(ds)
2006/DARE 2 RECORDS/

スティーブ・ネルソンのヴァイブが実に効果的。
極上のサウンドが聴けます。

「レビュー時のコメント」
これもまた「ベスト3」に挙がった1枚です。
デイブ・ホランドのオリジナルが4曲、メンバーもそれぞれ1曲づつを提供しています。
ここは楽器の組み合わせの妙に最大の関心がありました。
テナー・サックス、トロンボーン、ヴァイブの組み合わせは案外珍しいのではないでしょうか。
このアンサンブルとハーモニーが聴きもの、
ポッターの(3)、中近東風味の(5)、(6)のインタープレイなどが聴きどころになりました。
ベースとドラムスの安定した強力なリズムセクションに支えられて伸び伸びとプレイしています。
前作のビックバンドの「Overtime」↓も評判になったけれど今度もいいです。
ホランドには独自の音楽空間を創り出していく手腕の確かさを感じました。
今作もバランスの取れたハイクオリティのジャズ・アルバムに仕上がっています。

[DAVE HOLLAND BIG BAND/ OVERTIME]
antonio hart(as,ss,fl),mark gross(as),gary smulyan(bs),chris potter(ts),
robin eubanks(tb),jonathan arons(tb),josh roseman(tb),taylor haskins(tp),
alex sisiagin(tp),duane eubanks(fhn,tp),steve nelson(vib,marimba),billy kilson(ds),
2005/Emarcy

(中間系)


2012/07/22



(662) THE GREAT JAZZ TRIO HANK JONES
/ STELLA BY STARLIGHT
hank jones(p) john patitucci(b) omar hakim(ds)
special guest sadao watanabe(as)(2,3,6,8)
2006/VILLAGE MUSIC eighty-eight's/

聴きなおしてみてもハンク・ジョーンズはやっぱり凄いです。
当時88歳とはとても思えませんよ。
渡辺貞夫さんも切れています。

「レビュー時のコメント」
これはベスト3にも挙がった1枚です。
2006年の「東京JAZZ」フェスティバルでこのGJTと渡辺貞夫さんは共演したそうです。
評判は上々、それが今回の共演のリハーサルだったのだと思います。
GJTと渡辺さんの共演はこれが3枚目だそうですが、最初の「I'M OLD FASHIONED」は
「今週のジャケット」で紹介したことがありました。
初代GJT(ザ・グレイト・ジャズ・トリオ)のメンバーはロン・カーター(b)とトニー・ウイリアムス(ds)です。

ハンク・ジョーンズは88歳、メンバーの選び方を見ているとまだまだ枯れていません。
何より私はジョン・パティトゥッチ(b)、オマー・ハキム(ds)のバックのメンバーに興味を惹かれました。
ジョンはともかくオマーはどうなんだろうか?と・・・。
結果は吉、月並みですが、やはり刺激的という表現が一番合っていました。
両者の競演はスリル満点でハンク・ジョーンズの意欲は十分に買いたいです。
トリオにおけるハキムのドラムはピアニストの新しい一面を演出していると思います。
思えばエバンス系のドン・フリードマンとの相性も案外良かったです。
カルテットではより生き生き、4曲に参加した渡辺さんもリラックスした演奏を繰り広げています。
(3)「OLD FOLKS」はしんみりと心に沁みました。
ジャズ界の怪物はこのハンク・ジョーンズとロイ・ヘインズ(ds)の二人ですね。


(中間系)


2012/07/15




(661)GEORGE BENSON & AL JARREAU / GIVIN' IT UP
george benson(g,vo) al jarreau(vo)
lally williams(key) a,ray"the weeper"fuller(g) dean parks(g)
abraham laboriel(elb) vinnie colaiuta(ds) paulinho da costa(per)
marion meadows(sax) herbie hancock(p) patrice rushen(key)
marcus miller(b) michael white(ds) jill scott(vo)
rex rideout(p) michael broening(prog,key) freddie fox(g)
mel brown(b) chris botti(tp) barry eastmond(key)
stanley clarke(b) patti austin(vo) paul mccartney(vo) etc
2006/CONCORD RECORDS/

思うにジョージ・ベンソンもアル・ジャロウも久し振りです。
こういうリズミックなアルバムを聴くと元気が出ますよ。
ジル・スコット、パティ・オースティン、ポール・マッカートニーがゲスト出演しています。

「レビュー時のコメント」
去年もフュージョン、スムース・ジャス系のアルバムはほとんど買いませんでした。
それでも見た瞬間に欲しいと思ったのはやはりこのアルバムです。
ジョージ・ベンソンとアル・ジャロウの組み合わせ、加えて”BREEZIN'"とくれば外せません。
メンバーも往年のオールスター・キャスト+ニュー・スターが並んでいて楽しみでした。
雰囲気抜群、期待通りの出来で年末からお正月にかけてよく聴きました。
特に食べ疲れ、聴き疲れの時は最適で、これを聴いていると気分快適でホッとしたものです。
ベスト3にも挙がっているし、候補に挙げた人もいるのは「さもありなん」と思います。

(くつろぎ系)


2012/07/08



(660) DAVID BINNEY QUINTET / CITIES AND DESIRE
david binney(as) mark turner(ts)
craig taborn(p) thomas morgan(b) dan weiss(ds)
2006/CRISS CROSS/

デヴィッド・ビニー(as)の世界の都市の印象を綴ったアルバムです。
「リスボン」、「ロンドン」、「トロント」、「ロサンジェルス」「カーピンテリア」、
「ローマ」、「モントリオール」、「マイアミ」、「ニューヨーク」など。
浮揚感のあるクールな作品に仕上がっています。

「レビュー時のコメント」
新進アルト・サックス奏者、デヴィッド・ビネイの作品です。
全曲、都市の印象を綴ったオリジナルで占められ、相手にマーク・ターナー(ts)を迎えた意欲作です。
マーク・ターナーが入ると曲調が一気に先進のジャズ・シーンになってしまいます。
このサウンドは多くの若いジャズ・メンが目指すところでもあるのでしょう。
「ひさしを貸して母屋を取られる」感がないでもありませんが、成長過程ではやむを得ません。
作りはかなり凝っていて、全員が活躍の場を与えられていて十分に楽しめました。
もっとも、リスナーの誰でもがすんなり受け入れられるというものでもありません。
ところで「CARPINTERIA」って何処って調べてみました。
カリフォルニア州のサーフィンで有名なビーチを持つということでした。
日本の地名がないのがちょっと寂しいですね。

(まじめ系)


2012/07/01



(659) 大野 えり / SWEET LOVE
eri ohno(vo)
george colligan(p) james genus(b) clarence penn(ds) shunzo ohno(tp)
2006/PACIFIC HOUSE SOUND/

スケールの大きさは群を抜いています。
しなやか・・・ただただ素晴らしい・・・名盤です。

「レビュー時のコメント」
大野えりさんにとってこのアルバムが21年振りとはどうしても信じられません。
聴くたびに”どうして”と思う・・・それほどに出来栄えが良いです。
ニューヨークに乗り込んでの録音、バックの人選も俊英を揃えてよく考えられています。
ジョージ・コリガン(p)、ジェームス・ジェナス(b)、クラレンス・ペン(ds)、それに大野俊三(tp)さん。
歌は上手いし、オリジナルを含めて選曲も意欲的、満を持して出した自信作だと言えます。
私は聴いた瞬間から彼女の世界に引き込まれてしまいました。
お久し振りですが「以前のように」と彼女のメッセージが込められた(3)「HELLO LIKE BEFORE」の美しさ、
(5)「BYE BYE BLACKBIRD」では抜群のジャズ・フィーリングを味わうことが出来ます。
日本語で歌われる(6)「BA RA」(薔薇)は感動的ですらあります。
ライブでもその素晴らしさを肌で感じることが出来ました。
ジャズの範疇ではとてもくくれないと思うけれど、日本人ジャズ・ヴォーカルの可能性を示した作品です。
より多くの音楽ファンに聴いてもらいたいアルバムです。

(中間系)


2012/06/24



(658) JED LEVY QUARTET / GATEWAY
jed levy(ts)
george colligan(p) ugonna okegwo(b) billy drummond(ds)
2006/STEEPLE CHASE/

癒し系音色を持つジェド・レヴィ(ts)の作品です。
メインストリームなジャズはホッとします。

「レビュー時のコメント」
ジェド・レヴィのワン・ホーン・カルテットの新作です。
オリジナルが中心ですが、選曲も練られていて意欲的な作品になっています。
(3)[GATEWAY]〜(4)[LOST APRIL]〜(5)[POSITIVITY]〜(6)[CHORALE]と続くあたりが聴きどころか。
ピアノレスのトリオで演奏される(7)[HOW AM I TO KNOW]も面白いです。
焦らず騒がず、肩の力を抜いて淡々と吹くクールな表現力が最大の魅力です。
ミディアム・テンポに持ち味を十分に発揮しています。
加えて今作はジョージ・コリガン(p)、ウゴンナ・オケグウォ(b)、ビリー・ドラモンド(ds)にも注目しました。
特に近年の活躍が目覚しい今が旬と思われるコリガンの存在が大きいです。

(中間系)


2012/06/17



(657) DANNY GRISSETT TRIO / PROMISE
danny grissett(p) vicente archer(b) kendrick scott(ds)
2006/CRISS CROSS/

ダニー・グリセット(p)の初リーダー・アルバムです。
起伏に富んだ物語性のあるピアノが聴けます。
ケンドリック・スコットのドラムスにも注目しました。
2000年代、ピアノ・トリオ名盤の1枚です。

「レビュー時のコメント」
将来性のあるプレイヤーは何か人とは違う感性を持っていると思います。
聴いている人に訴えかける何かを・・・このダニー・グリセット(p)もそうだと思いました。
美しく繊細、しなやかなで瑞々しいタッチと音色は魅力に溢れています。
極々自然に流れるような、ストレートでオーソドックスなスタイルの持ち主です。
目立たないけど渋いアルバム、聴いた瞬間、私は「ああー、いいなあー」と思いました。
トリオの雰囲気が良いので、スーッと彼らの世界に引き込まれる感じですね。
久し振りにアメリカから現れた楽しみなピアニストだと思います。

(中間系)


2012/06/10



(656) BRANFORD MARSALIS QUARTET / BRAGGTOWN
branford marsalis(ts,ss)
 joey calderazzo(p) eric revis(b) jeff "tain" watts(ds)
2006/MARSALIS MUSIC/

2曲目「HOPE」、3曲目「FATE」が心に沁みた。
ブランフォードのソプラノはもちろん、ジョーイ・カルデラッツォのピアノが素晴らしい。

「レビュー時のコメント」
ブランフォード・マルサリス(ts)はこのところコンスタントにアルバムをリリースしています。
自己のレコード会社を持ったせいか、自分の演りたいことが出来ている感じです。
聴いていて思い浮かべるのは”ジョン・コルトレーン・カルテット”そのものです。
ブランフォードが思い描いた通りの道を進む「Giant Steps」が始まっています。
聴いてもらえば一目瞭然、多くを語る必要はありません。
心に沁みてくる・・・しばらくは黙って聴いていたい・・・そんな感じの作品です。

(まじめ系)


2012/06/03



(655) JOE LOCKE & GEOFFREY KEEZER QUARTET
/ LIVE IN SEATTLE
joe locke(vib) geoffrey keezer(p,key)
mike pope(b,elb) terreon gully(ds)
2006/ORIGIN RECORDS/

ジョー・ロック(vib)とジェフ・キーザー(p)の組み合わせはいいです。
スリル満点のライブ盤・・・テリオン・ガリーのドラミングをどうぞ。

「レビュー時のコメント」
意気投合して新グループを結成したジョー・ロック(vib)とジェフ・キーザー(p)のライブ盤です。
2004年に↓に紹介したアルバムではこんなコメントを書きました。

「この組み合わせではジョン・ルイス(p)とミルト・ジャクソン(vib)のモダン・ジャズ・カルテットが
あまりにも有名で、洗練された美しいサウンドとして定型化してしまった感があります。
ボビー・ハッチャーソン(vib)+ハービー・ハンコック(p)の名盤、「ハプニングス」もそうでした。
デュオではゲイリー・バートン(vib)とチック・コリア(p)の「クリスタル・サイレンス」が知られています。
だからでしょうね、最初は正直異質な感じがしましたよ、ドラムがかなりうるさいと感じました。
私の頭の中ではヴァイブ+ピアノのカルテットのイメージが固まっていたからです。
しかし何回か聴いているうちにこれがこのグループの良さだと気が付いたのです。
この作品でキーになっているのは間違いなくテリオン・ガリーのドラムスだと思います。
煽るような強力なリズムが大人しくなりがちなサウンドに刺激を与えています。
この太鼓をどう感じるかが評価の分かれ目になります。」

[THE NEW SOUND QUARTET / SUMMER KNOWS]
joe locke(vib)  geoffrey keezer(p)
ed howard(b)  terreon gully(ds)
2004/EIGHTY-EIGHT'S/VRCL-18821

今でもその印象は変わっていません。
”ヴァイブとピアノは静”の常識を覆した激しくエネルギッシュな演奏が聴けます。
まさにこの演奏こそがこのグループの持ち味、テリオン・ガリー(ds)の存在感が光ります。

(中間系)


2012/05/27



(654) DAVID KIKOSKI QUARTET / LIMITS
david kikoski(p)
seamus blake(ts) larry grenadier(b) bill stewart(ds)
2006/CRISS CROSS/

デヴィッド・キコスキ(p)はシーマス・ブレイク(ts)のライブで見ました。
思っていたよりずっと明るくやんちゃな感じで意外性がありました。
思うにこのジャケット・スタイルも相当に飛んでますね。
中々に面白いキャラクターの持ち主です。

「レビュー時のコメント」
デヴィッド・キコスキ(p)とシーマス・ブレイク(ts)の組み合わせは↓のアルバムでいいなと思っていました。
今作品はそれに加えてバックのラリー・グレナディア(b)、ビル・スチュワート(ds)にも魅力があります。
今や中堅どころの脂の乗り切った旬のメンバーをじっくりと聴くには最適の作品です。
前作と同様に全曲キコスキのオリジナルで意欲的、気合が入っています。
前作と比べると両者共に明らかに表現力が進化しています、切れ味に増して、野太く、逞しくなりました。
甘さを廃した真摯なプレイで聴きどころは多いですが、10分強の最長曲の(3)はお気に入りです。
興味があれば、より繊細で美しい↓と聴き比べてみるのもまた一興だと思います。

[DAVID KIKOSKI QUARTET / THE MAZE]
david kikoski(p)
seamus blake(ts) scott colley(b) jeff 'tain' watts(ds)
1998/CRISS CROSS/

(まじめ系)


2012/05/20



(653) CHRISTIAN McBRIDE QUARTET / NEW YORK TIME
christian mcbride(b)
javon jackson(ts) jimmy cobb(ds) cedar walton(p)
2006/CHESKY RECORDS/

ホッとするアルバムです。
シダー・ウォルトン(p)、ジャヴォン・ジャクソン(ts)がいいです。

「レビュー時のコメント」
この作品はメンバー構成からみてもオーソドックスなジャズが聴けるのではと思いました。
結果は予想通りの仕上がり、ジャヴォン・ジャクソン(ts)の参加も興味を引きました。
(3)「My Shining Hour」、(6)「Naima」、(8)「Whisper Not」、(10)「Mode For Joe」などがよく知られている曲です。
マクブライド(b)のリーダーアルバムですが、黒幕は4曲を提供したシダー・ウォルトン(p)でしょうか。
もう1人の主役はジャヴォン・ジャクソンで、このテナーが聴きどころになります。
ジャヴォンは音量豊かで音色もまろやか、印象に残りました。
メインストリームでストレートなテナー奏者としては貴重な存在だと思います。
色々と迷いもあるようですが、是非このラインで演っていって欲しいです。

(中間系)


2012/05/13



(652) HANK JONES & FRANK WESS / HANK & FRANK
hank jones(p) frank wess(ts,fl)
micky roker(ds) john webber(b) ilya lushtak(g)
2006/LINEAGE RECORDS/

ハンク・ジョーンズ(p)は2010年の5月に91歳で亡くなりました。
フランク・ウェス(ts,fl)は現在90歳ですが健在のようです。
時は流れていく。

「レビュー時のコメント」
ジャズ界の生き字引的存在のハンク・ジョーンズとフランク・ウエスの共演盤です。
先日のルイス・ナッシュ・ジャズ・オールスターズのライブ会場で購入しました。
録音時の2003年はハンクは85歳、ウエスは81歳なのにこれだけの演奏を聴かせるのは驚異的です。
さすがにベテランの枯れた味わい、安定感は十分で安心して聴いていられます。
長時間聴いていても疲れないのがいいです、まさに究極の癒しのくつろぎ系ジャズがここにはあります。
ちなみにこのCDはウエスがわざわざアメリカから持ってきたそうです。
大ベテランは商売熱心、ここいらへんにもソツがありませんね。(^_^)
敬意を表しての「ドラ流・・・」入りです。

(くつろぎ系)


2012/05/06



(651) BILLY HART QUARTET / QUARTET
billy hart(ds)
mark turner(ts) ethan iverson(b) ben street(b)
2006/HIGHNOTE/

2006年のベスト3に選んだ1枚です。
聴き直してもやっぱり良かった。

「レビュー時のコメント」
これは久方振りに背筋がゾクゾクとしたアルバムです。
個性派のマーク・ターナー(ts)とイーザン・イバーソン(p)が実に伸び伸びと演奏しています。
ビリー・ハート(ds)がどっしりと構えていて、安定感は抜群、全て手の内に入れているという感じです。
ベン・ストリート(b)の絡みも秀逸、さすがに実力派のベテラン・ドラマーは一味も二味も違います。
オリジナルが中心とはいえ、曲想も変化に富んでいて飽きさせません。
最初はとっつきにくいかも知れませんが、好きな人にはたまらないサウンドです。
有名なチャーリー・パーカー(as)の「CONFIRMATION」がどう展開されているか、是非聴いて欲しいです。
(3)「CHARVEZ」、(7)のバラード、「LULLABY FOR IMKE」におけるターナーの表現力も聴きどころ。
ここでのマーク・ターナーは絶好調、先進のテナー奏者としての面目躍如たるものがあります。
ワン・ホーンのターナー節を満喫できるので、最近のベスト・プレイだと思います。
比較的オーソドックスなHIGHNOTEレーベルにしては、このような作品は珍しいのではないでしょうか。
2006年のベスト3の1枚になりました。

(まじめ系)


2012/04/29



(650) FIVE PLAY / FIVE PLAY ... PLUS
sherrie maricle(ds)
anat cohen(ts cl) karoline strassmayer(as,fl) tomoko ohno(ds) noriko ueda(b) 
jami dauber(tp,fhn)(3,7,10) barbara laronga(tp,fhn)(8,9,10)
2004/ARBORS RECORDS/

実力を伴った女性・ジャズ・バンドというのが新味です。
日本からはアメリカで活躍中の大野智子(p)さんと稙田典子(b)さんが参加しています。

「レビュー時のコメント」
先日、ライブで見た「ファイヴブ・プレイ」の作品です、ライブ会場で購入しました。
アルト・サックスとトランペットを除いては来日メンバーと同じです。
注目はアナ・コーエン(ts、cl)と大野智子さん(p)になるでしょうか。
選曲も変化に富んでいて中々面白いラインナップだと思います。
(2)の「THAT OLD FEELING」におけるアナのクラリネット・プレイは一聴の価値があります。
(4)「CRAZY, HE CALLS ME」や(7)「PURE IMAGINATION」も雰囲気があって良かったです。
どことなくソフトなムードを漂わせて、やはり、女性特有のしなやかさや繊細さを感じます。
ライブで一番印象に残ったのは植田典子さん(b)だったですが、頭角を現してくるのは間違いありません。

(中間系)


2012/04/22



(649) SONNY FORTUNE QUINTET / GREAT FRIENDS
sonny fortune(as) billy harper(ts)
stanley cowell(p)  reggie workman(b) billy hart(ds)
2003(1986)/EVIDENCE MUSIC/

ソニー・フォーチュン、ビリー・ハーパー、スタンリー・カウエル、レジー・ワークマン、ビリー・ハート。
メンバーの名前を眺めるだけでもウキウキしてくるアルバムです。
二度とないと思える貴重盤かな。
いずれも現在70歳前後ですが健在です。

「レビュー時のコメント」
たまには重量級のガツンと聴き応えのあるものをと思ってこれを購入しました。
1986年のパリ録音ですが、このメンバーならまずは間違いがないところです。
特別なリーダーはいない企画盤のようで、全曲、メンバーのオリジナルで占められています。
ほぼぶっつけ本番でもビシッと決めてしまう力量はさすがに大したものだと思います。
私はビリー・ハーパー(ts)の参加が貴重だと思いました。
これにソニー・フォーチュンが刺激され、全員が「一丁、やってやろうか!」と気合が入った感じです。
期待にたがわぬ強力で重厚な演奏内容、やっぱりこれだけのメンバーが揃うと「凄い」と再認識しました。
”違いが分かる大人のジャズ”です。

(まじめ系)


2012/04/15



(648) BOB REYNOLDS QUARTET & QUINTET/ CAN'T WAIT FOR PERFECT
bob reynolds(ts)
aaron goldberg(p) reuben rogers(b) eric harland(ds)
mike moreno(g)(1,4,5) david soler(g)(2,8)
2006/FRESH SOUND NEW TALENT/

ボブ・レイノルズ(ts)のこの作品も久し振りに聴きました。
やっぱり中々面白かったです。
どっちつかずの印象は変わりませんがそれがまたいいのかもしれませんね。

「レビュー時のコメント」
先週、「最近の愛聴盤」で紹介したRALE MICIC盤に参加していたボブ・レイノルズ(ts)を見つけました。
多分、これが初リーダー・アルバムだと思いますが、全曲彼のオリジナルで気合が入っています。
スタイルとしてはどうなんでしょうか、ストレートながら改革派、守旧派、どちらにも属さない中間派かな。
音色は力強く合格点、フュージョン〜スムース・ジャズ系の影響もかなり見受けられます。
表題曲の(3)「CAN'T WAIT FOR PERFECT」はファンク・ナンバーでグローバー・ワシントン・JRを彷彿とさせます。
今後はこちらの方向に進む可能性もあり、本人自身も分からない状態ではないかと思います。
現在の彼の音楽性を表した作品で、中途半端になるのか、個性になるのか、今後の展開が楽しみです。
いつもとはちょっと違ったプレイを聴かせるバックの改革派に属する3人も聴きものですよ。
アーロン・ゴールドバーグ(p)、リューベン・ロジャース(b)、エリック・ハーランド(ds)にとっては異色作、
曲によっては恐る恐る、手探り状態を感じさせますが、そんなところがまた興味深いと思いました。
先物買いをしておきたいテナー奏者ではあります。

(中間系)


2012/04/08



(647) OMER AVITAL QUINTET / THE ANCIENT ART OF GIVING
omer avital(b)
mark turner(ts) avishai cohen(tp)  aaron goldberg(p) ali jackson(ds)
2006/SMOLLS RECORDS

先日、オマー・アヴィタル(b)のライブ盤の紹介をしたばかりです。
ここではマーク・ターナー(ts)とアヴィシャイ・コーエン(tp)のフロント2管、
ピアノがアーロン・ゴールドバーグにアリ・ジャクソンのドラムスというメンバーです。
悪かろうはずがありませんよ。

「レビュー時のコメント」
オマー・アヴィタル(b)は名前から推測するとイスラエル出身でしょうか。
アヴィシャイ・コーエン(tp)もそうですが、同名異人の強力なベーシストがいるので間違えやすいです。
全7曲は全てオマー自身のオリジナルでほのかに中近東の香りが漂っています。
比較的オーソドックスな曲が並んでいますが、中味は充実していて、ネオ・ハード・バップの好盤です。
注目はマーク・ターナー(ts)と新進トランペッターのアヴィシャイ・コーエンのフロントでしたが、
コンビネーションはバッチリ、これほどの相性の良さとは思いませんでした。
特に(4)の「ARRIVAL」におけるマークとアヴィシャイの掛け合いも聴きものです。
アヴィシャイは(7)の「YES !」でもその実力の程が探れます。
バックのアーロン・ゴールドバーグ(p)とアリ・ジャクソン(ds)の好調さも目立ちます。
前半(1)「HOMELAND」、(2)「NIGHT SONG」、(3)「RAS ABU-GALUM」ではこの二人が主役。
リーダーのオマー・アヴィタルは控え目な性格のようで、騒がず目立たず、これも印象に残りました。

(まじめ系)


2012/04/01



(646) RALE MICIC QUINTET / SERBIA
rale micic(g)
tom harrell(tp,fhn) bob reynolds(ts) sean conly(b) gregory hutchinson(ds)
2006/CTA RECORDS

レイル・ミミックはきっちりとしたギタリストです。
トム・ハレルも久し振りに聴きました。
ここにもグレゴリー・ハッチンソン(ds)がいましたね。

「レビュー時のコメント」
レイル・ミシック(g)は初見ですがセルビアの出身のようです。
私のここでの興味はトム・ハレル(tp)にありました・・・ハレルを聴くのも久し振りです。
全10曲は2曲を除いてミシック自身のオリジナル、アコースティック・ギターの演奏もあって楽しめます。
曲想や構成も変化に富んでいて、至極丁寧に作られたアルバムということが分かります。
ジャズに”真面目も端正もあるのか”と問われれば困りますが、これは”真面目で端正”なジャズ・アルバムです。
元々、トム・ハレルはある種のひたむきな特性を持っているので、こういう作品にはぴったりだと思いました。
安定感があり、多彩な表現力を持つ深く奥行きのあるミシックのギター・プレイもいいです。
テナー奏者のボブ・レイノルズも案外の掘り出し物かも知れません。
今のところはまだまだ硬いですが、こなれてくれば面白い存在になるのではと思っています。

(中間系)


2012/03/25



(645) EDDIE HENDERSON QUARTET / PRECIOUS MOMENT
eddie henderson(tp)
kevin hays(p) ed howard(b) billy hart(ds)
2006/KIND OF BLUE RECORDS/

これから後の情報でエディ・ヘンダーソンの奥さんは日本女性だそうです。
関西出身とのことでヘンダーソンもしょっちゅう日本に来ているらしい。
ストレートなケヴィン・ヘイズのピアノも聴きどころでトランペット・ワン・ホーンの好盤です。

「レビュー時のコメント」
エディ・ヘンダーソン(tp)はモダン・ジャズ黄金期からはちょっと遅れて来たプレイヤーです。
しかし、70年代から現在まで、その幅広い音楽性から息の長い活躍を続けています。
実際これは「渋〜い」アルバムです・・・噛めば噛むほど味が出ると言ったら良いでしょうか。
最初は”ちょっと物足りないか”と思っていたのですが、聴いているうちに徐々に心に沁みてきました。
感情をグイと抑えたクールなトランペットの響きとリリカルなケヴィン・ヘイズのピアノがマッチしています。
ここでのヘイズもいいです、なんか、一皮も二皮もむけた感じがします。
伸びる時には一気に伸びるものだなあーと再認識しました・・・これは色々な場面で出くわしますね。
ところで、表題曲の作者の「Natsuko Henderson」はヘンダーソンの奥さんでしょうか。
だとすれば相当の愛妻家、日本通でもあることが想像されます。

(中間系)


2012/03/18



(644) MATT PENMAN QUINTET / THE UNQUIET
matt penman(b)
chris cheek(ts) kurt rosenwinkel(g) aaron goldberg(p) jeff ballard(ds)
2002/FRESH SOUND NEW TALENT/

メンバーを見てもらえば何も言うことはありません。

「レビュー時のコメント」
気になっていながら買いそびれていた1枚ですが、ようやく入手出来ました。
全曲、マット・ペンマン(b)のオリジナルで新感覚のジャズが聴けます。
やっぱりいいですね・・・私はこの浮揚感のある独特で気だるげなサウンドが大好きです。
キー・マンはカート・ローゼンウィンケル(g)で、彼は今までにはいないタイプのギタリストです。
すでに多くのギタリストに影響を与えているようであちこちで似たようなサウンドが聴かれるようになりました。
クリス・チーク(ts)は言うに及ばず、アーロン・ゴールドバーグ(p)、ジェフ・バラード(ds)のプレイも素晴らしい。
マット・ペンマンのライブで見た鮮やかなプレイ振りが蘇ってきます。
旬のクリス・チークはどうしても見てみたいと思っていますが来日の予定はないものでしょうか。
情報を持っている方がいれば是非教えて下さい。

(中間系)


2012/03/11



(643) MARCUS STRICKLAND QUARTETS / TWI - LIFE
DISK 1
marcus strickland(ts,ss) 
robert glasper(p) visente archer(b) E..J strickland(ds)
DISK 2
marcus strickland(ts) 
lage lund(g) brad jones(elb) E..J strickland(ds)
2006/STRICK MUZIK/

マーカス・ストリックランドの2枚組の意欲作です。
ここは共演者のロバート・グラスパー(p)とラーゲ・ルンド(g)も魅力。

「レビュー時のコメント」
マーカス・ストリックランド・・・この注目の若手サックス奏者は自己のレーベルを持ったようです。
その”STRICK MUZIK”レーベルからの第一弾になります。
少々荒削りなところも見受けられますが、若さ溢れるプレイで実に意欲的な作品だと思います。
2曲以外は全て自身のオリジナルで、編成を変えての2枚組もその意気込みの現れでしょうね。
現在の彼の音楽性が全て表現されていると言っても過言ではないでしょう。
DISK 1ではこれまた強力なピアニストのロバート・グラスパーを起用していて今までの延長線上の演奏。
バックのヴィンセント・アーチャー(b)とE.Jは先日のジョージ・コリガン(p)のライブで見たばかりです。
E.J.ストリックランドは双子の兄弟になるそうです。
DISK 2ではギターとエレクトリック・ベースを従えての新味のカルテットです。
Lage Lund(g)とBrad Jones(elb)は初見ですが、新感覚ジャズを目指していますね。
マーク・ターナー(ts)やクリス・チーク(ts)、カート・ローゼンウィンケル(g)らの影響がうかがえます。

私はどちらかというと後者のサウンドが好きですが、さてみなさんはどうでしょうか。
現在のマーカス・ストリックランドの真価を問う作品になりました、この2枚組はお徳用だと思います。

(まじめ系)


2012/03/04



(642) MARIELLE KOEMAN & JOS VAN BEEST/ BETWEEN YOU AND ME
marielle koeman(vo)
jos van beest(p) evert j. woud(b) klaas balijon(ds)
giovanni mastrandrea(ds,per)(2,5,7,9) douwe t'reve(g)(2,5,7,9)
2004/ATELIER SAWANO/

あるライブハウスの休憩時間に聴いたアルバムで心に沁みました。
真夜中のヴォーカルにぴったりかな。
秘蔵盤というか、今でもよく聴くヴォーカル愛聴盤の1枚です。

「レビュー時のコメント」
マリエル・コーマンとヨス・ヴァン・ビースト・トリオとの共演盤です。
夫婦の共演はこれが2枚目になりますが、前作は持っていません。
こちらは「Soft & Lovely」な感覚で前者とは対照的な声質を持っています。
マリエルに絡むビーストのピアノがもう最高、癒し系ヴォーカル盤としては極上の1枚です。

(中間系)


2012/02/26



(641) MICHIKO SUZUKI / SWEET & BITTER
鈴木道子(vo)
元岡一英(p) 小杉敏(b) 渡辺文男(ds)

frank wess(ts)(2,4,7) waltinho anastacio(per)(1,5) 白崎彩子(p)(6)
2004/WHAT'SNEW RECORDS/

病み上がりに聴いた鈴木道子さんの歌声にガツンときました。
たくさんの元気をもらった・・・歌にはそういう力があります。

「レビュー時のコメント」
「最近の愛聴盤」でヴォーカルものを紹介するのは久し振りになります。
2枚共にゆったりとした夜を過ごすにはピッタリ、しっとりと落ち着いてリラックスできると思います。
曲目については良く知られたスタンダードがずらりと並んでいて、これだけでも十分に楽しめます。
次の(243)と順繰りに聴くのがお勧めで、私はそのまま心地良い眠りにつくことが出来ました。

鈴木道子さんは”Deep & Bitter”な声質ながらあっさりとした歌い方は好みです。
先日、ライブで見た時もとても良かったです。
今作の録音はニューヨークに出向いたもので入魂の一作、バックのトリオも好演しています。
ゲストにはフランク・ウェスのテナー・サックス、注目の白崎彩子さん(p)も参加しています。

(中間系)


2012/02/19



(640) PIM JACOBS TRIO FEATURING RUUD BRINK / JUST FRIENDS
pim jacobs(p) wim overgaauw(g) ?(b)
ruud brink(ts) 
2006(1990)/PINK RECORDS/

究極の癒し系アルバムです。
リズム・ギターが絶妙な味わいを出しています。

「レビュー時のコメント」
オランダの最も知名度の高いピアニストといえばこのピム・ヤコブスになるでしょうか。
飛行機ジャケの「Come Fly With Me」はつとに有名で、名盤としての評価も高いです。

さて、この作品は1990年の録音なので再発盤だと思いますが、内容は実に素晴らしいです。
フューチャーされているルード・ブリンク(ts)は初見ですがこれが大当たりでした。
スタイルはクールなスタン・ゲッツ派です・・・私はその音色と雰囲気に惚れ惚れしてしまいましたよ。
まろやかなサウンドは聴き心地最高、ピム・ヤコブスのドラムレス・トリオをバックに語りかけてきます。
いやー、実際、こんなテナーを聴かされたらたまりませんよ。
これほどのテナー奏者がいたのかと驚かされるとともに、つくづく世界は広いと再認識させられました。
ピム・ヤコブス・トリオのスイング感も抜群で、心地良い音楽空間を味合わせてくれます。
全12曲のスタンダード・ナンバーはまさに珠玉の名演と呼ぶにふさわしいです。
このアルバムは究極のくつろぎ、癒し系のジャズの傑作ではないかと思います。
珍しいレーベルなのですでに入手困難になっている可能性があります。
見かけたらすぐに買っておくことをお勧めしたいです。なお、ベーシストはノー・クレジットでした。

(くつろぎ系)


2012/02/12



(639) AVISHAI CHOEN / CONTINUO
avishai cohen(b)  sam barsh(p)  mark guiliana(ds)
amos hoffman(oud)
2006/NOCTURNE/

アヴィシャイ・コーエンの強力なベースも久し振りに聴きました。
スパイスが効いた一味違う個性的なピアノ・トリオが聴けますよ。

「レビュー時のコメント」
”チック・コリア&オリジン”で強烈で印象深いベース・プレイを聴かせてくれたアビシャイ・コーエンの新譜です。
全10曲は全てアビシャイのオリジナルで占められていて、地域性に富んだ音楽を楽しみ事が出来ます。
アビシャイはイスラエル出身のベーシストなので中近東のリズムやサウンドを特徴としています。
今回は"ウード”という楽器を前面に押し出して新たな展開を試みてきました。
珍しい音色と雰囲気なのでワールド・ミュージック・ファンや新しいもの好きのジャズ・ファンには最適です。
個性的で私もなかなか面白いと思いました、最初にインドのシタールを聴いた時と同じ感覚です。
もちろん、ビンビンと響いてくるアビシャイの強力で強靭なベース奏法にも聴きどころがあります。

(中間系)


2012/02/05



(638) BRAD MEHLDAU TRIO / HOUSE ON HILL
brad mehldau(p) larry grenadier(b) jorge rossy(ds) 
2006/NONSUCH/

ブラッド・メルドーの素晴らしさは言わずもがなですね。

「レビュー時のコメント」
一発目の音の出だしを聴いただけでブラッド・メルドーと分かります。
その点でも自己の個性を確立しつつあると思います。
この新譜は新録音ではなくて、2曲を除いては「Anything Goes」(2004発売)↓の同日録音のようです。
「Anything Goes」がスタンダード作品集なら、こちらはオリジナルが中心になっています。
スタンダードでも独特の世界を聴かせてくれますが、彼本来の味を味わうにはオリジナルの方が良いかもしれません。
この瑞々しいタッチと存在感はどうでしょうか・・・まったく素晴らしいです。
個性的で独自の表現力は現在のピアニストでは頭一つ抜けていると思います。
いつまでもこの”メルドーの世界”に浸かっていたいと思うのは私だけではないでしょう。

(中間系)


2012/01/29



(637) KEVIN HAYS TRIO / FOR HERVEN'S SAKE
kevin hays(p) doug weiss(b) bill stewart(ds) 
2006/JAZZ EYES/

ケヴィン・ヘイズの珍しいスタンダード&ジャズ曲作品集です。
これはいいですよ。
ケヴィン・ヘイズはイマイチと思っている方は是非聴いてみて下さい。
ピアノ・トリオ名盤の1枚。

「レビュー時のコメント」
このアルバムは文句なしに良いです。
ケヴィン・ヘイズ(p)を最初に聴いたのはジョシュア・レッドマン(ts)の「Joshua Redman」(1993)でした。
その時はまだ20歳半ば、一般的なジャズ・ファンに知られたのはこのアルバムだったと思います。
それでも20代にして認知されたのはかなりの才能を持つピアニストだったと言えます。
そうでなければ当時の若手サックス奏者の大注目株だったジョシュアに起用されるわけがありません。
今回それが図らずも証明された結果になりました。
つい最近まで私の知る限りではバップ・テイストの強い普通のピアニストの範囲内にあると思っていました。
事実、サイドマンとしての力量はともかく自己のアルバムでは私の評価もそれほど高いものではありませんでした。
それがクリス・ポッター(ts)のライブ盤「LIFT」におけるエネルギッシュで刺激的なプレイで一気に見直しました。
2004年度の私の選んだ「みんなのベスト3」の1枚です。
加えて今回のケヴィン・ヘイズの新譜はさらに今までのイメージを一新するものでした。
リリカルな味を前面に押し出してきて、彼としては今までとは感覚が違う異質なアルバムになったと思います。
こんなプレイが出来るとなるとまだまだ奥が深いピアニストとして考えを新たにしなければなりません。
思ったよりもずっと多様性を持つフレキシブルなプレイヤーで、やはり相当な器のピアニストです。
ヨーロッパ系ピアニストのリリカルな特徴を取り込んで新たな方向を模索しているのかも知れませんね。
ヨーロッパ・ピアノと一味違う絶妙なスイング感と微妙にバップ・テイストを感じさせるところにも特徴があります。
ビル・スチュワート(ds)の存在が大きくて、この二人のコラボレーションも聴きどころの一つです。
ベースのダグ・ウエイスも地味ですが安定感があり、これは魅力的なピアノ・トリオだと思いました。
私の今年のピアノ・トリオ・アルバムの上位にランクされるのは間違いありません。

(中間系)


2012/01/22



(636) JERRY BERGONZI QUARTET / TENOR OF THE TIMES
jerry bergonzi(ts)
renato chicco(p) dave santoro(b) andrea michelutti(ds) 
2006/SAVANT/

ジェリー・バーゴンジ(ts)は聴きなおしてみてもやっぱり良かった。
刺激的なサックスが聴けます。
ピアノのレナト・チッコにも注目しました。

「レビュー時のコメント」
ジェリー・バーゴンジ(ts)の新譜は全7曲、スタンダードは1曲だけであとは自身のオリジナルです。
野太い音色、刺激的なフレーズ、このバーゴンジには根強いファンも多いでしょうね。
一癖あるプレイヤーは聴けば聴くほど面白いので、バーゴンジ・ファンには「さすが〜」と言いたいです。
バーゴンジにはジョージ・ガーゾーン(ts)やジョー・ロバーノ(ts)辺りが同類項になるかと思います。
共にソニー・ロリンズ(ts)とジョン・コルトレーン(ts)のミックス・タイプでそれぞれに個性を持っています。
ここでの唯一のスタンダードの「YOU'RE MY EVERYTHING」なんかは素晴らしいですよ。
もちろん、オリジナルにも聴きどころが多いです。
あと1、2曲のスタンダードを収録してくれたら大満足でしたが、出来が良くなかったのかもしれませんね。
なぜなら、録音時間がたった49分なのでかなりの不満を感じたからです。
70分は長く、50分は短く感じるので、やはり60分くらいが適当だと思っています。

(中間系)


2012/01/15



(635) HELGE LIEN TRIO / TO THE LITTLE RADIO
helge lien(p) frode berg(b) knut aalefjaer(ds) 
2006/DIW RECORDS/

下記のレビューを読んでみると面白かったです。
ブラッド・メルドーやカーステン・ダールの名前が挙がっている。
当時期待していたピアニストの中にこのヘルゲ・リエンもいました。

「レビュー時のコメント」
ヘルゲ・リエン(p)・・・どうすればこういう演奏ができるのか?
たぐい稀なる感性と才能を持っていると思います。
キース・ジャレット(p)やスタンリー・カウエル(p)の影響も感じますが、より叙情的というか、
退廃的なイメージも沸いてきます。
単なるリリシズムでは片付けられない何かを持つ、真に個性的なピアニストだと思います。
リエンを聴いて、以前私は暗い空から雨がポツンポツンと落ちてくるような感じがすると書きましたが、
今でもその印象は変わっていません。独特のタイム感やタッチに何とも不思議な感覚が残ります。
後ろ髪を引かれるというか、今までにないタイプなので是非キースやカウエルに続いて欲しいです。

ピアニストは人材豊富とはいえ世界的に影響を与えるピアニストとなるとぐんと限られてきます。
ブラッド・メルドーの名前が挙がるのは当然と思う人も多いでしょうね。
このヘルゲ・リエンもその可能性があります。
もう一人挙げるとすれば、テテ・モントリュー〜ミシェル・ペトルチアーニの後継者足り得るプレイヤーか。
このヨーロッパ・ピアノの伝統を継ぐのは、カーステン・ダールが最も近いかも知れないとみていますが・・・。

(中間系)


2012/01/08



(634) YOSHITO ETOH TRIO+2 / RAY
江藤良人(ds) 竹内直(fl,sax) 井上陽介(b)
yosvany terry cabrera(sax) pedo martines(conga)
2005/EWE RECORDS/

江藤良人さんの豪快かつ繊細なドラミングは定評のあるところです。
ピアノレスがより刺激的な展開になっています。

「レビュー時のコメント」
近年の私は年のせいか比較的あっさりとした味付けの日本食が好みです。
もちろん、若い頃はコテコテの脂っこいものも大好きでしたよ。
ジャズ聴きにもこれと似たようなことが言えますね。
軟らかいジャズが中心といっても時には歯ごたえのあるジャズが聴きたくなります。
今がちょうどそんな時期にあたるでしょうか。
そこで今週はピアノレスのサックス入りの2枚になりました。

これは熱狂的なファンを持つ江藤良人さん(ds)の新作です。
尊敬するエルヴィン・ジョーンズ(ds)に捧げたトリビュート盤になっています。
聴けばすぐに分かると思いますがエルヴィンを彷彿とさせるドラミングはエネルギッシュで凄みがあります。
井上陽介さん(b)との強力なリズムセクションに支えられて竹内直さんとヨスヴァニー・テリーのプレイが冴えます。
ピアノレスはプレイヤー同士のより濃密なコラボレーションが聴けるところに最大の魅力があります。
しかし歯ごたえがあるといってもスイング感に溢れているのでむずかしいとか聴きにくいとかは決してありませんよ。
むしろピアノレスの濃密なコラボレーションを味わうには格好のアルバムだと思います。
選曲も変化に富んでいてバランスがいいです。
ゲストがキューバ出身の二人ということでアフロな感覚も加味されました。
(2)のサンバのリズム、(7)の竹内さんのフルートも聴きものです。
江藤さんと竹内さんとの掛け合いは今年の1月のライブで堪能しましたが、また見たいと思っています。

(まじめ系)

2011/12/25



(633) DON FRIEDMAN TRIO & QUARTET / MY FOOLISH HEART
don friedman(p)
jed levy(ts) tim ferguson(b) tony jefferson(ds)
2003/STEEPLECHASE/

ドン・フリードマン(p)の今作は心底やさしいアルバムでした。
ホッとしたいコーヒー・タイム、癒しの時間にピッタリです。

「レビュー時のコメント」
久し振りに中古盤コーナーを覘いていて、ふと目に止まった1枚です。
2003年発売と新しく、状態も新品同様、それが半値近くで入手できました。
私はちょっとしたことで幸せな気分になれる男です。(^_^)
ずばり、疲れた時やホッとしたい時に聴くアルバムとしては最適です。
心地良いテナーの響き、しみじみと聴かせるピアノの調べ、サウンドがまろやかでとても優しいです。
トリオで聴かせる「MY FOOLISH HEART」や「BYE BYE BLACKBIRD」などはベテランならではの味わいです。
ドン・フリードマン(p)の近年の活躍には目を見張るものがありますね。
80年代は一時期低迷していましたが、90年代から復活してきて、その評価も上がっています。
日本では「サークル・ワルツ」が余りにも有名ですが、いつまでもこれだけでは寂しいと思っていました。

(くつろぎ系)


2011/12/18



(632) MACIEJ SIKAFA QUARTET / ANOTHER ONE FOR ...
maciej sikafa(ts,ss)
cezary paciorek(p), piotr lemanczyk(b), tomasz sowinski(ds)
2003/BCD RECORDS/

ポーランド・ジャズが注目されてから久しいですがこの頃はまだ情報が少なかった。
そんな中で聴いたこのアルバムにはガツンときました。
聴き直しても本当に素晴らしいです。
ちなみに読み方はマシー・シカラ(maciej sikala)のようです。

「レビュー時のコメント」
ポーランド・ジャズの実力を知らしめる1枚です。
全8曲の演目は全てマシー・シカファ?(maciej sikafa)(sax)のオリジナルで占められています。
(4)は奥さん、(6)は娘さんに捧げられた美しいバラード。
一言で表現するとジョン・コルトレーン・カルテットの小粒盤、ぐっとスマートにした感じです。
すっきりとした粒立ちの良い音が出てきて、心地良いジャズの世界に引き込んでくれました。
サックスのみならずピアニストのcezary paciorekがまた素晴らしいです。
長年のクラシックに培われたピアニストのこれはもうヨーロッパの伝統ですね。
ポーリッシュ・ジャズの逸品、落ち着いていてバランスの良いワン・ホーン・カルテットが聴けます。

(中間系)


2011/12/11



(631) BOB ROCKWELL QUARTET / BLACK JACK
bob rockwell(ts)
kasper villaume(p) shigeo aramaki(b) masahiko ohsaka(ds)
2006/MARSHMALLOW EXPORT/

ボブ・ロックウェル(ts)も一時期追いかけて聴いていたことがあります。
ライブにも行ったし、豪快なプレイぶりを見せてくれました。

「レビュー時のコメント」
実はこのボブ・ロックウェルも好みのテナー奏者の一人でして、私はかなりのCDを持っています。
特にSteepleChase盤のピアノレスやドラムレスのトリオはよく聴いていました。

このアルバムは一昨年の2004年に来日した時の横浜の「ドルフィー」で録音されたライブ盤です。
確かこの時はロックウェルとキャスパー・ヴィヨーム(p)のデュオの公演もありました。
荒巻さんと大坂さんを加えたこのカルテットは、ほぼぶっつけ本番の組み合わせであったと思います。
最初はやや手探り状態にあったことは想像に難くありません。
いわゆるジャムセッションに近いですが、一期一会的発想はジャズのもう一つの醍醐味でもあります。
グループとしてのバランスやまとまりよりもプレイヤーの力量や自由度を重視するやり方です。
それだけにスリリングで面白く、それぞれが白熱したエキサイティングなプレイを繰り広げています。
ここでの最大の聴きどころはロックウェルと大坂昌彦さん(ds)のぶつかり合いでしょうか。
惜しむらくはヴィヨームですが、この時はまだ発展途上、才能を感じさせながらも物足りなさも残りました。
彼はこの1年余りの間にその才能を開花させ長足の進歩を遂げています。
(中間系)


2011/12/04



(630) RYAN KISOR SEXTET / ON THE ONE

ryan kisor(tp)
mulgrew miller(p) chris mcbride(b) lewis nash(ds)
chris potter(as) mark turner(ts) david sanchez(ts)
1993/SONY/

最近、ライアン・カイザーの名前もまったく見かけません。
今作は若さ溢れる鋭角的なトランペットの響きが魅力です。
ここのバックも凄いメンバーですよ。
クリス・ポッターがアルト・サックスで参加、テナーはマーク・ターナーとデヴィッド・サンチェス、
加えてベースがクリスチャン・マクブライドという豪華版です。

「レビュー時のコメント」
ライアン・カイザー(tp)はこれが2枚目のリーダー・アルバムになります。
ここで興味深いのはクリス・ポッター(as)とマーク・ターナー(ts)が共演していることです。
ラテン・ジャズに向かったデヴィッド・サンチェス(ts)のハード・バップが聴けるのも今となっては貴重です。
プロデュースはボビー・ワトソン(as)で、表題曲を含めて2曲を提供しています。
私はライアン・カイザーの最高傑作ではないかと思っています。

(中間系)


2011/11/27



(629) RALPH MOORE SEXTET / 'ROUND TRIP
ralph moore(ts) brian lynch(tp) kevin eubanks(g)
benny green(p) rufus reid(b) kenny washington(ds)
1985/RESERVOIR/

最近、ラルフ・ムーアの名前をまったく見かけません。
いったいどうしているのかな。
本作はテナー&トランペットの2管主流派ハード・バップが聴けます。

「レビュー時のコメント」
今週は新譜を購入しませんでした。
どうも触手が動く作品がないというか、買い意欲に欠けているようです。
バイオリズム的にも下がってきているのかもしれませんね。

さて、今週は先日行われたオフ会、「CD聴きの会」に持っていったハード・バップ・アルバムの2枚です。
参加者の自作真空管アンプの試聴会も兼ねていたので内容のみならず録音にも多少気を使いました。
前者はルディ・ヴァン・ゲルター、後者はジム・アンダーソンが録音技師です。

■ラルフ・ムーア(ts)はコルトレーン系の主流派の逸材で野太いテナーの音色が魅力です。
ブライアン・リンチ(tp)とのコンビネーションが聴きもの、ベニー・グリーン(p)の参加も嬉しいですね。

(中間系)


2011/11/20



(628) BUNKEY GREEN QUARTET / ANOTHER PLACE
bunkey green(as)
jason moran(p) lonnie plaxiico(b) nasheet waits(ds) 
2006/LABEL BLUE/

バンキー・グリーンの素晴らしさはもちろんですがここはバックも聴きどころになります。
ジェイソン・モラン(p)、ロニー・プラキシコ(b)、ナシート・ウエイツ(ds)も魅力十分。
200年代名盤の1枚です。

「レビュー時のコメント」
バンキー・グリーン(as)の懐かしい名前を見つけました。
久しく耳にしなかったので忘れていましたが、後進の指導、教育者の道を歩んでいたそうです。
ルーツはチャーリー・パーカー(as)ですが、ジョン・コルトレーン(ts)やオーネット・コールマン(as)
の影響を受けつつそれを消化して、独自のスタイルを築いたと言えます。
信奉者の筆頭がこの作品をプロデュースしたジョージ・コールマン(as,ts)です。
その他にもグレッグ・オズビー(as)などの、いわゆる”M−base”派に与えた影響は大きいようです。
ここで共演しているジェイソン・モラン(p)やナシート・ウエイツ(ds)もその一派ですね。
録音時は69歳、そんな懸念はどこへやら、熱気溢れる演奏には年齢からくる衰えをまったく感じさせません。
久々の録音で大張り切り、エキセントリックなプレイ、意外な展開と音使いは刺激的でゾクゾクっとしました。
フランク・モーガン(as)に続いてパーカー直系のアルト奏者の元気な姿を見るのは嬉しい限りです。
まだまだ”パーカー伝説”は生きています。

(中間系)


2011/11/13



(627) HELEN SUNG TRIO / HELENISTIQUE
helen sung(p), derrick hodge(b), lewis nash(ds) 
2005/FRESH SOUND NEW TALENT/

先取りの1枚でしたがヘレン・スン(p)は順調に活躍の場を広げているようです。
それにしても彼女のジャケット写真は違いが激しいね。

「レビュー時のコメント」
ヘレン・スン(p)はアメリカのヒューストン出身の韓国系アメリカ人ということになるでしょうか。
スペインの「Fresh Sound New Talent」盤は多くの新人の登竜門になっています。
基本的に全てお任せの姿勢を貫いているのでそのプレイヤーの音楽性や本質が出ます。
新人に好き勝手に演らせるレーベルはそうないのでそれだけでも貴重だと思っています。
ここでの彼女はオリジナルは1曲だけであとは主にスタンダード作品で勝負しています。
スタンダードは多くの人が取り上げるので、独自の解釈で聴かせるのは案外むずかしいです。
それだけ自信を持っているという見方も出来ますね。
女性ならではの繊細な表現力で興味深く聴くことができました。
ルーツはやはりセロニアス・モンク&ビル・エバンスのミックスタイプで現在のピアニストの主流派です。
ベテランのルイス・ナッシュ(ds)を起用して安定感を増す狙いも成功しています。
インパクトはやや軽めですが、将来性に期待して「ドラ流・・・」にしました。

(中間系)


2011/11/06



(626) KELLY JOHNSON / MUSIC IS THE MAGIC
kelley johnson(vo)
brian lynch(tp)(1,5,6,9,10)  geoffrey keezer(p)(1,2,7,8,10)  john hansen(p)(3-6,9)
steve wilson(sax)  essie essiet(b)  jon wikan(ds)
renato thomas(per)
2005/SAPPHIRE/

聴き直してみてもやっぱり良かった。
表題曲(7)のジェフリー・キーザー(p)が凄い。

「レビュー時のコメント」
これは先日の「CD聴きの会」で参加者の一人が聴かせてくれたものです。
私はヴォーカルには疎く、時々ポツンポツンと購入する程度の知識しかありません。
このケリー・ジョンソン(vo)も、もちろん初見でしたが、一聴した途端、これは好みの声質だと申告しました。
スタンダードが中心の選曲ですが、バックのメンバーにも恵まれてどれも聴きどころが多いです。
しかし、なんと言っても表題曲の(7)「MUSIC IS THE MAGIC」が素晴らしかったです。
極端に言えばこの1曲のためだけにこのアルバムを買っても惜しくないと思いました。
ケリーとジェフ・キーザー(p)の掛け合いが最大の聴きもの、私は一発でノックアウトされましたよ。
プロデュースはここにも参加しているブライアン・リンチ(tp)です。
久し振りに大当たりのヴォーカル盤です。

(中間系)


2011/10/30



(625) CARLO MILANSESE TRIO / INTERMISSION
carlo milanese(ds) andrea pozza(p) liciano milanese(b) 
cario atti(sax)(1,2)
2005/MUSIC CENTER/

一般的にドラマーのリーダー・アルバムは良いものが多いです。
全体を見回すことができるからでしょうか。
今作もその例に漏れません。

「レビュー時のコメント」
一口に言うとハイ・センス、ハイ・クオリティの好盤です。
全10曲は全てメンバーのオリジナルで占められていますが、曲想が良いので安心して聴けます。
スタンダード曲なしでこれだけの演奏を聴かせるアルバムはそうはないでしょうね。
まずは1曲目、出てくるテナーの音色の素晴らしさ、絶妙なスイング感はたまりません。
3曲目以降はトリオ演奏になりますが、これがまた抜群にいいです。
私はグイグイと引き込まれてしまいました。
全体的にちょうどいい案配で居心地が良いというか、適度な刺激と落ち着いた雰囲気が漂っています。
グラスを片手に、あるいはコーヒー・タイムに極上のひと時を演出してくれると思います。
こういうのを聴くとつくづくイタリア・ジャズ界の層の厚さを感じさせられました。

(中間系)


2011/10/23



(624) GEOFF KEEZER TRIO / TRIO
geoff keezer(p)  steve nelson(vib)  neils swainson(b)
1993/SACKVILLE/

もう18年前の演奏なのかと思います。
私も年を取るわけだね。
この頃はまだ景気も良かったし、肩で風を切って歩いていたなぁ〜。

「レビュー時のコメント」
ジェフ・キーザーことジェフリー・キーザー(p)の近年の活躍も目覚しいものがあります。
アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの最後のピアニストとして知られていますが、
ジャズの歴史そのもののブレイキーのソウルを身を持って体験した最後のピアニストでもあります。
それを踏まえて1曲目の「RELAXIN' AT CAMARILLO」を聴くとこれが凄かったです。
バド・パウエル(p)直系のピアニストかと思えるほどのバップ・テイストを持っています。
加えて、オスカー・ピーターソン(p)を彷彿とさせる流麗なテクニックも楽しむことが出来ます。
天才肌のピアニスト、ジェフ・キーザーの面目躍如たる演奏を聴かせてくれました。
録音時の1993年はまだ弱冠23歳、若さ一杯のストレートなピアノ、これが天才の天才たる所以ですね。
スティーヴ・ネルソン(vib)もスピード感溢れるダイナミックなプレイで対抗、
両者のぶつかり合いには聴き応えがあります
「TRIO」と銘打っているように三位一体で、エキサイティングな演奏を繰り広げています。
ニールス・スワインソン(b)も好演、カナダのライブ盤ですが掘り出し物の1枚でした。

(中間系)


2011/10/16



(623) MICHAEL CARVIN QUARTET / MARSALIS MUSIC HONORS SERIES
michael carvin(ds)
carlton holmes(p) dezron douglas(b) marcus strickland(sax)
branford marsalis(sax)(3)
2006/MARSALIS MUSIC/

この作品は2006年の「みんなのベスト3」で私が選んだ1枚です。
スタンダード集ですがマイケル・カーヴィン(ds)のセンスを感じる。
久し振りに聴いたけどやっぱり良かったです。

「レビュー時のコメント」
先週、「最近購入したアルバム」で紹介した”Marsalis Music Honors Series”の1枚です。
よく知られているジミー・コブ(ds)はともかく、このマイケル・カーヴィン(ds)は意外な人選だったです。
知る人ぞ知るのドラマーでほとんど知られていないのではないでしょうか。
私が持っている資料を見ると自己のクインテットの「ザ・キャメル」とジャッキー・マクリーンとの共演盤が載っています。
共に70年代のsteeplechase盤で、前者にはセシル・ブリッジウォーター(tp)、ソニー・フォーチュン(as)が参加。
私としてはまったくのノーマークでしたが、名前を見た時になぜか「これはいいぞ」と直感しました。
サックスは注目のマーカス・ストリックランドを起用、プロデューサーのブランフォード・マルサリスも1曲参加しています。
選曲も変化に富んでいて面白いし、しっとりとしたリズム・セクションに支えられたサックスの響きが心地良いです。
パタパタとしたドラムの音色に意外な存在感があり、アナログ的な現実味を感じました。
(3)の”PRISONER OF LOVE/BODY AND SOUL”、(5)のチャールス・ロイド(ts)の”FOREST FLOWER”、
(7)のスロー・バラードが聴きもの、特にこの”YOU GO TO MY HEAD”は素晴らしいです。
マルサリスはもちろん、ストリックランドが好演、全体的に落ち着いた雰囲気を持つ実にいいアルバムだと思います。
ピアニストのカールトン・ホルムズにも注目しました。
さて、このシリーズですが、次に誰が登場してくるのか興味津々、楽しみにしています。

(中間系)


2011/10/09



(622) BARBARA CARROLL TRIO / SENTIMENTAL MOOD
barbara carroll(p) jay leonhart(b) joe cocuzzo(ds)
2006/VENUS RECORDS/

この作品が良かったのでしばらくさかのぼって聴いていた思い出があります。
大人の色気を感じるピアノです。

「レビュー時のコメント」
バーバラ・キャロルは齢80にも届く超ベテランのようですが、私は初めて聴きました。
クラシカルなタッチで人気を博したようで、純ジャズ路線からはちょっとずれていたようです。
よく知られたスタンダードの名曲がずらりと並んでいて、ベテランらしく味わい深い演奏を繰り広げています。
曲の解釈や展開が見事で私はゾクゾクとしました、年齢なんてものは微塵も感じさせません。
特にややアップ・テンポで演奏される「YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO」は素晴らしかったです。
2曲では達者なヴォーカルも披露していますが、これまた変化があって良いです。
これはヴィーナス・レーベルの大ヒットではないでしょうか。
それほど話題になっていないのが不思議に思うほど、出来が良くてお薦めのピアノ・トリオ・アルバムです。

(中間系)


2011/10/02



(621) ANTONIO FARAO TRIO / TAKES ON PASOLINI
antonio farao(p) miroslav vitous(b) daniel humair(ds)
2005/CAMJAZZ/

トリオとは思えない音の広がりで迫力があります。
ミロスラフ・ヴィトウス(b)、ダニエル・ユメール(ds)も強烈です。

「レビュー時のコメント」
このアントニオ・ファラオの新譜は今年になって一番注目されたピアノ・トリオ盤ではないでしょうか。
ミロスラフ・ヴィトウス(b)とダニエル・ユメール(ds)の両ベテランとの共演。
魅力的なメンバーの組み合わせから見ても、誰しも聴いてみたいと思うのは当然ですね。
同じ曲を趣を変えて演奏しているのも興味深いところです。
ファラオはイタリア系ピアニストではステファノ・ボラーニ、ジョヴァンニ・ミラバッシと並ぶ注目の逸材です。
流麗華麗で美しくメロディアス、予想通りというか、ここでもひと味違う演奏を繰り広げていました。
ヴィトウス、ユメールも好演、3人のインタープレイはスリリングで刺激的な内容に溢れています。
現在までの今年のベストのピアノ・トリオ・アルバムです。

(中間系)


2011/09/25



(620) VICTOR GOINES QUARTET / NEW ADVENTURES
victor goines(ts,ss,cl)
peter martin(p) carlos henriquez(b) greg hutchinson(ds)
2006/CRISS CROSS/

ヴィクター・ゴイネスは軽快でスマートな感覚を持っています。
特にクラリネットがお薦めです。
(7)で演奏される「Petite Fleur」(邦題:可愛い花)はザ・ピーナッツのデビュー曲でした。

「レビュー時のコメント」
ヴィクター・ゴイネス(ts、cl)もなぜが気になるプレイヤーとして目を付けていた一人です。
ゴイネスはニューオーリンズ出身でウィントン・マルサリス(tp)の門下生の一人です。
最近はご無沙汰していましたが、前のリーダー作の2枚も持っています。
久し振りに聴いたこのワン・ホーン・アルバムはなかなかに良い出来だと思いました。
最初から最後まで一気に聴かせる変化に富んだ選曲の構成で、作曲能力にも十分に非凡さを感じさせます。
オリジナル良し、スタンダード良し、演奏内容も良し、私が知る限りでは彼のベスト・アルバムだと思います。
彼は古き良き伝統に根ざした味わいが持ち味です。
レスター・ヤング(ts)、ベン・ウエブスター(ts)、ラッキー・トンプソン(ts)の名前が挙げられています。
特にお薦めしたいのがどこか郷愁を誘うクラリネットの響きです。
(2)、(6)、(7)で印象的なクラリネット・プレイを聴くことができます。

(中間系)


2011/09/18



(619) KLEMENS MARKTL QUARTET / OCEAN AVENUE
klemens marktl(ds)
chris cheek(ts,ss) aaron goldberg(p) matt penman(b)
2005/FRESH SOUND NEW TALENT/

素晴らしいメンバーによるテナー・サックスのワン・ホーン・アルバムです。
悪かろうはずがありません。

「レビュー時のコメント」
ここはメンバーの組み合わせに魅力があります。
リーダーのクレメンス・マークトル(ds)はオーソドックスなドラマーですが、クリス・チーク(ts)、
アーロン・ゴールドバーグ(p)、マット・ペンマン(b)の人選が見事に成功しています。
特にゴールドバーグのプレイが強く印象に残りました。
美しく華麗、ユニークな展開、これからの活躍が約束される注目すべきピアニストだと思います。
クリス・チークのいつもとはひと味違った熱い演奏を繰り広げているのも聴きどころです。
テナー・サックスではホット、ソプラノ・サックスではクール、彼のルーツはコルトレーンであることが分かります。
ペンマンはライブで見たばかり、あの大きな手でグイグイときているかと思うとライブの興奮が蘇ってきます。
全7曲はクレメンスのオリジナルですが、曲想が変化に富んでいて飽きさせません。
作曲能力にも優れていると思います。
新人発掘に力を入れる”FRESH SOUND NEW TALENT盤”の中でも完成度が高いアルバムです。

(中間系)


2011/09/11



(618) RANDY BRECKER & MICHAEL BRECKER
/ SOME SKUNK FUNK
randy brecker(tp)  michael brecker(ts) jim beard(key)
will lee(b) peter erskine(ds) marcio doctor(per)
the wdr big band koln conducted by vince mendoza
2005/BHM/

聴いてもらえば一目瞭然です。
1曲目の「SOME SKUNK FUNK」でぶっ飛びました。

「レビュー時のコメント」
ブレッカー・ブラザーズの結成30周年特別企画と銘打ってありました。
2003年のドイツのジャズ・コンサートで録音されたものですが、これは文句なしに凄いアルバムです。
まずは1曲目の「SOME SKUNK FUNK」の圧倒的な迫力に驚かされました。
全体を通して特にマイケル・ブレッカー(ts)の全身全霊を傾けた鬼気迫るプレイには、背筋が寒くなるほどの気迫を感じました。
まるで病魔に倒れるのを予知していたかのような、すさまじいソロです。
聴いていて私はジョン・コルトレーン(ts)に相通じるものを感じました。
コルトレーンのライブを見た時、いつもこんなに激しいプレイをしていたら病気になってしまうのではと懸念したからです。
もちろん中心になっているランディ・ブレッカー(tp)もベテランらしく安定したプレイで好演しています。
ジム・ベアード(key)、ウィル・リー(b)、ピーター・アースキン(ds)、マルシオ・ドクター(per)のまとまりも申し分ありません。
アースキンのいつになく多弁なドラミングにも注目しました、フレキシブル、しなやかという表現がぴったりです。
バックが素晴らしく、その上、ヴィンス・メンドーサ率いるオーケストラの分厚いアンサンブルが加わる強力盤です。
フュージョン・シーンの名コンボの一つだったブレッカー・ブラザーズの曲が次々と演奏されます。
現代を代表するテナー奏者の一人、マイケル・ブレッカーの真の姿がここにありました。
マイケルが病気を克服してカムバックしてくれるのを祈るのみです。
私は白熱のライブ盤として歴史に残る1枚になると思っています。

(中間系)


2011/09/04



(617) FERNANDO HUERGO QUINTET / JAZZ ARGENTINO
fernando huergo(b)  chris cheek(ts,ss) bruce barth(p)
jeff ballard(ds) franco pinna(bomgo)
2002/FRESH SOUND WORLD JAZZ/

アルゼンチン・ジャズの好盤です。
共演のクリス・チーク(sax)、ブルース・バース(p)、ジェフ・バラード(ds)にも注目。

「レビュー時のコメント」
アルゼンチンの若手ベーシストのフェルナンド・ヒューゴの2002年の作品です。
近年、アルゼンチン・ジャズが注目されていますが、彼の影響もあるでしょうか。
アルゼンチンはアルゼンチン・タンゴの国、それこそタンゴのリズムが身体に沁み込んでいます。
美しくも情熱的で、これが聴く者に新しい感動を与えてくれます。
全10曲中、1曲を除いてはフェルナンドのオリジナルで作曲能力にも秀でていると思います。
フェルナンドのエレクトリック・ベースとジェフ・バラードのリズムに触発されて、
ここでもクリス・チークの切ないソプラノ・サックスが冴えます。
またそれ以上にブルース・バースのピアノが素晴らしいと思いました。
今までは勉強不足でこの人のピアノがこんなにいいとは思っていなかったので驚きでした。
ちょっと変わった雰囲気を持つジャズ・アルバムで新鮮味に溢れていて面白かったです。

(中間系)


2011/08/21



(616) KASPER VILLAUME QUARTET / HANDS
kasper villaume(p)  chris minh doky(b) ali jackson(ds)
chris potter(ts)
2005/STUNT RECORDS/

現段階でキャスパー・ヴィヨーム(p)のベスト・アルバムじゃないかと思います。
クリス・ポッター(ts)の参加もあって貴重な一枚です。

「レビュー時のコメント」
キャスパー・ビヨーム(p)のこの新譜を聴いた時、「ついに来たか」という感じがしました。
待ちに待った瞬間というか、未完の大器、キャスパー・ビヨームの真髄が聴けます。
ボブ・ロックウェル(ts)との共演を聴いて以来注目していたピアニストです。
最初は一癖あるクリス・ポッター(ts)との共演はどうかなと思ったのですが、
そんな心配はあっという間にすぐにどこかに吹っ飛んでしまいました。
パワフルでエネルギッシュ、強烈なドライブ感とスイング感、文句なしのテクニック、恐るべしビヨーム。
スケールの大きさを感じさせ、真にミシェル・ペトルチアーニ(p)の後継者に成り得るヨーロッパ・ピアノの逸材です。
私はクリス・ポッターのファンでけっこうアルバムも持っている方ですが、ポッターもベスト・プレイで迫ります。
クリス・ミン・ドーキー(b)とアリ・ジャクソン(ds)のコンビも強力なリズムを押し出してきていいですよ。
まずは1曲目、ユニークな曲調を持つモンクの「GREEN CHIMNEYS」でガツンときました。
あとは最終曲まで一気に聴かせてくれます、時間が短く感じたのも久し振りです。
直球勝負の王道を行くモダン・ジャズ・カルテットで今年のベスト3候補の1枚です。

(中間系)


2011/08/07



(615) RICK GERMANSON TRIO / YOU TELL ME
rick germanson(p)  gerald cannon(b)  ralph peterson(ds)
2005/FRESH SOUND NEW TALENT

アメリカのリック・ジャーマンソン(p)の2枚目のリーダー・アルバムです。
聴き直しましたが切れ味とドライブ感は抜群です。
実に気持ちの良いピアノ・トリオが聴けました。


「レビュー時のコメント」
スペインの「Fresh Sound New Talent」盤からはそれこそ次々と新人のリーダー作が紹介されています。
このリック・ジャーマンソンもその一人でこれが2枚目のリーダー・アルバムになります。
私はルイス・ヘイス(ds)のTCB盤(スイス)”Dreamin'Of Cannonball”
とジェレミー・ペルト(tp)のCRISS CROSS盤(オランダ)”Insight”で彼のプレイを聴いています。
2枚共にギンギンのハード・バップでした。
今作は同時にラルフ・ピーターソン(ds)のトリオものは珍しいのではと興味を引きました。
全9曲はオリジナルが5曲、スタンダード3曲と惜しくも亡くなったジェームス・ウイリアムスの曲を取り上げています。
オリジナルに聴きどころが多く、ベースとのデュオで聴かせる(5)、ウイリアムスの(7)にも注目しました。
パワフルで硬質なスタイルを持つピアニストでカチッとしたプレイを聴かせてくれました。
やや硬さを感じますが、ドライブ感、スイング感は十分で最近では珍しい個性派と言えるかもしれません。
ラルフ・ピーターソンの勢いに負けないピアニストと言ったら分かりやすいでしょうか。
そういった意味でソフトで甘さを感じさせるピアニストとは一線を画します。

(中間系)


2011/07/31



(614) GORDON BECK QUARTET / SEVEN STEP TO HEAVEN
gordon beck(p)  bruno rousselet(b) philippe soirat(ds)
pierrick pedron(as)(2,3,6,7)
2005/ART OF LIFE RECORDS/

ゴードン・ベック(p)のフランスでのライブ盤です。
ストレート・アヘッドな演奏が聴けます。
ピーリック・ペドロン(as)のプレイにも注目しました。

「レビュー時のコメント」
これはいいです、私は出だしの一音でグイと引き込まれてしまいました。
持っている雰囲気が抜群で、「あー、ジャズだなあー」と思いました。
イギリス出身のゴードン・ベックの名前をご存知の方も多いと思います。
そう、あの”フィル・ウッズ&ヨーロピアン・リズム・マシーン”で活躍していましたね。
フランクフルトでの「フリーダム・ジャズ・ダンス」が忘れられないファンも多いことでしょう。
これは多くを語る必要はありませんね、聴いてもらえればその良さは一目瞭然です。
選曲良し、内容良しのお薦めのフランス盤です。

(中間系)


2011/07/24



(613) CHRIS CHEEK QUARTET / BLUES CRUISE
chris cheek(ts,ss)
brad mehldau(p,fender rhodes)  larry grenadier(b) jorge rossy(ds)
2005/FRESH SOUND NEW TALENT/

クリス・チークの夏向きのジャケットです。
バックはブラッド・メルドー・トリオでここはメンバーも素晴らしい。

「レビュー時のコメント」
クリス・チーク(ts)の新譜はブラッド・メルドー・トリオをバックに迎えての豪華盤です。
メルドーはすでに世界的、チークはまだマイナーな存在だと思うのでよほど強固な結び付きがあります。
音楽性が似かよっていたのが、先にメルドーが世の中に出たという感じでしょうか。
全9曲はオリジナル5曲、その他4曲で曲想が変化に富んでいるので飽きさせません。
メルドーもフェンダー・ローズを駆使してその変化に一役買っています。
チークの物憂げで気だるい表現力は独特の光を放っていると思います。
メロディ・ラインの美しいスロー、ミディアムテンポな曲ではその個性が一段と輝きを増してきます。
ここでもエリントンの(2)、表題曲の(7)、マンシーニの(9)などでチークの真髄が聴けます。
特に(2)の「LOW KEY LIGHTLY」は雰囲気バッチリで素晴らしいです。
私は何度も繰り返し聴いてしまいました。
ジャズ・ファンには好きなプレイヤーに特別の思い入れがありますね。
他人の評価は関係なくて、相性がいいとか、感性が合うというのは理屈では言い表せません。
私にとってはクリス・チークはそんなサックス奏者の一人です。
時代を担うテナー奏者としてこれからも注目していきたいと思っています。

(中間系)


2011/07/17



(612) GIOVANNI MIRABASSI TRIO / PRIMA O POI
giovanni mirabassi(p)  gildas bocle(b) louis moutin(ds)
flavio boltro(tp)(3)(7)(10)
2005/ATELIER SAWANO/

ジョバンニ・ミラバッシ(p)もよく知られる存在になりました。
フラビオ・ボルトロ(tp)の参加も嬉しい。

「レビュー時のコメント」
澤野工房も多くのピアニストを紹介していますね。
私のベスト3はウラジミール・シャフラノフとヨス・ヴァン・ビーストにこのジョバンニ・ミラバッシです。
ミラバッシは信じられられないほどの美しいフレーズをつむぎ出してきます。
ここでもその魅力が十分に堪能できますよ。
オリジナルが8曲、その他2曲の構成で、オリジナルも良いけれどあとの2曲の選曲がまた絶妙です。
特に(5)の「THEME FROM HOWL'S MOVING CASTLE」は美しく感動的、思わずほろりとしました。
話題のフラビオ・ボルトロ(tp)が3曲にゲストに加わっているのも変化があっていいです。
これもまた素晴らしくて、(7)、(10)ではそのフラビオの実力を知らしめる美しいバラードが聴けます。

(中間系)


2011/07/10



(611) KIYOSHI KITAGAWA TRIO / PRAYER
kiyoshi kitagawa(b)  kenny barron(p) braian blade(ds)
2005/ATELIER SAWANO/

ピアノ・トリオでもちょっと熱いピアノ・トリオが聴けます。
最近、北川さんはどうしているのかな。

「レビュー時のコメント」
北川潔(b)さんは日本が世界に誇る小曽根真トリオのメンバーとして知られています。
2004年に澤野工房から初リーダーアルバムを出して注目を集めました。
共演がケニー・バロン(p)とブライアン・ブレイド(ds)というのも興味を引くには十分なメンバーでしたね。
これは同じメンバーによる第2弾、前作の傾向をそのまま踏襲したものです。
まずは1曲目でグイと引き込まれ、音が前面に出てくる感じは澤野工房としては珍しいかもしれません。
よく伸びる強靭なベースと多彩なリズムを繰り出すドラムスに支えられてバロンのピアノも好調です。
まさに”スイングがなければ意味がない”を地で行くアルバムです。
重厚でどっしりとした安定感のあるピアノ・トリオが聴けます。
最近は洗練された軽快なピアノ・トリオも多いので、これだけ重量感のあるピアノ・トリオは案外珍しいです。
コツはちょっと大きめの音で鳴らしてやることかな、迫力のあるサウンドが楽しめます。
ストレートでパワフル、誰にでも安心してお薦めできるピアノ・トリオの決定盤と言えます。
それが日本人名義だというのも嬉しいですね。

(中間系)


2011/07/03



(610) GERALD WILSON ORCHESTRA / IN MY TIME
gerald wilson(con,arr)
jon faddis(tp)  frank greene(tp) jimmy owens(tp) jeremy pelt(tp)(1,6,7,10)
eddie henderson(tp)(1-5,8,9) mike rodrigues(tp)(6,7,10) sean jones(tp)(2,5,8,9)
benny powell(tb)  dennis wilson(tb) douglas purviance(btb) luis bonnila(tp)(1,6,7,10)
kamasi washington(ts) gary smulyan(bs) ron blake(ts,fl)
sreve wilson(as,fl)  jerry dodgion(as,ss,fl) dustin cicero(as) russell malone(g)
renee rosnes(p) peter washington(b) lewis nash(ds)
2005/MACK AVENUE/

ビック・バンドを久し振りに聴きました。
熱いジャズを聴いて汗をいっぱいかいた後はさっぱりします。
逆療法・・・これもまた一服の清涼剤になりました。

「レビュー時のコメント」
ジェラルド・ウィルソンのアルバムを購入したのは実に40年ぶりになるでしょうか。
私はほとんどビック・バンド・ジャズを聴かないのでノーマークでしたが、
未だに現役で頑張っているとはまったく大したものです。調べたら86歳でした。
2曲を除いてはオリジナルで(2)、(3)、(4)は「The Diminished Triangle」の副題で組曲になっています。
解説にはウエスト・コーストの味にニューヨークのスパイスが効いているとありました。
知っているところではジョン・ファディス(tp)、エディ・ヘンダーソン(tp)、ジミー・オーエンス(tp)、
スティーブ・ウィルソン(as)、ゲイリー・スムリアン(bs)のベテラン、
他にもジェレミー・ペルト(tp)、シーン・ジョーンズ(tp)、ロン・ブレイク(ts)などの注目の若手が目白押しです。
ラッセル・マローン(g)、リニー・ロスネス(p)、ピーター・ワシントン(b)、ルイス・ナッシュ(ds)
のリズム・セクションも新鮮ですね。
近年はクレイトン・ハミルトン・オーケストラに代表されるように洗練されたオシャレなサウンドが主流です。
このような本格的なジャズ・ビック・バンドは少ないのではないでしょうか。
まずは(1)の「SAX CHASE」での圧倒的な迫力に度肝を抜かれます。
サックス・バトルの後に入るラッセル・マローンのギターがまたたまりません。
少し大きめの音量で鳴らすと凝縮された濃厚なサウンドがスピーカーから飛び出してきます。
これぞビック・バンド・ジャズ、たまにはガーンと一発いくのもいいと思いますよ、頭の中がすっきりしました。

(中間系)


2011/06/26



(609) PETER FESSLER / LOVERS, FOOLS & DREAMERS
peter fessler(vo,g)
christian von kaphengst(b,elp,synth)  alfonso garrido(per) ferix astor(brushes)
joo kraus(tp)  peter weniger(ts)
2004/SKIP RECORDS/

このゆったり、のんびりとした感覚がいいね。
慌しい毎日の一服の清涼剤になる。

「レビュー時のコメント」
久し振りにフラリと立ち寄った近所のCD屋さんでふと目に留まったアルバムです。
ドイツのピーター・フェスラーのスタンダード作品集です。
私はまったく知りませんでしたが独自の感性を持つシンガーソングライターとして有名だそうです。
たしかに魅力的な雰囲気とミラクルボイスを持ったスケールの大きいプレイヤーですね。
クラシックに培われた抜群の上手さ、ジャズ、ブラジル音楽、特にボサノバの影響も大きいと思いました。
ある種のけだるさを感じさせるゆったりとした大きなノリは心地良く何とも言えない素晴らしさです。
私のお勧めは(8)の「I REMEMBER YOU」と(10)の「POINCIANA」、(3)、(9)などもお気に入りです。
ただ上手いだけではありません、聴くたびに深く心に響いてくる珠玉のボーカルが聴けます。
苦労人らしく凄く優しい語り口です、「こんな歌手がいたのか」と驚き、感心した次第です。
歌はその人の人生を表しますね、ビリー・ホリデイしかり、ジミー・スコットしかり、彼も似ているところがありますよ。

(くつろぎ系)


2011/06/19



(608) YOKO MIWA TRIO / CANOPY OF STARS
yoko miwa(p)  scott goulding(ds) massimo biolcati(b) 
bronek suchanek(b)(3,8)
2005/POLYSTAR/

アメリカに腰を据えて活躍する日本人ジャズ・ミュージシャンも多いです。
ボストン在住の三輪洋子さんもそんな中の一人です。

「レビュー時のコメント」
三輪洋子さんは兵庫県神戸市の出身、私が注目しているピアニストの一人です。
バークリー音楽大学を卒業後はアメリカのボストンに在住して活躍しています。
収録された11曲は全て自身のオリジナルで勝負、安易にスタンダードを演らないのも意欲的です。
先日の帰国公演ではこのアルバムからの選曲が中心になっていました。
ワルツ、タンゴ、ブルース、変拍子、フリー・トーンを含めて色々な表情を見せてくれています。
バラードにおける瑞々しい透明感のあるタッチに加えてアグレッシブな激しい一面を聴くことが出来ました。
今までの叙情的で美しいメロディ・ライン重視とはやや趣を変えて彼女の音楽性を探るには最適の作品です。
このアルバムが3枚目になりますが、間違いなく彼女のベスト・アルバムだと思います。
今年聴いたピアノ・トリオ盤では上位にランクされるお薦めの一枚です。
ライブ・ハウスでは少しですがお話しもさせてもらいました、ライブ・レポートを参照して下さい。

(中間系)


2011/06/12



(607) SONNY ROLLINS SEXTET / WITHOUT A SONG
sonny rollins(ts)  clifton anderson(tb)  stephen scott(p)
bob cranshaw(b)  perry wilson(ds)  kimati dinizulu(per)
2005/MILESTONE/

ほかでもない私にとってソニー・ロリンズはジャズそのものの存在です。
そこに居るだけでジャズを感じる。
かっこいいねぇ〜。

「レビュー時のコメント」
名実共にモダン・ジャズの巨人、ソニー・ロリンズ(ts)の2001年のライブ盤です。
齢70を越えてもそのパワフルでエネルギッシュな演奏には頭が下がる思いがします。
もちろん、往年のような圧倒的な迫力は望むべきもありませんがその挑戦的な姿勢には感動しました。
さすがに存在感は十分で、当然ながら観客の反応や盛り上がりも凄いです。
ジャズ・ファンならあのロリンズと同じ空間にいるというだけでワクワク、ドキドキするでしょうね。
お得意のカリプソのリズムで始まる(1)「WITHOUT SONG」やバラードの(4)「A NIGHTINGALE〜」、
往年の凄みを垣間見せる16分強の長丁場の(5)「WHY WAS I BORN ?]などは聴き応えがあります。
付き合いの長いお馴染みのボブ・クランショウ(b)を除いては若手のメンバーで周りを固めています。
その若手が気合の入った素晴らしい演奏を繰り広げているので熟年ロリンズながらも十分におつりがくる内容です。
特にステフェン・スコット(p)やクリフトン・アンダーソン(tb)に注目、リズムセクションもグイグイと迫ってきます。
一枚を通してリズム感溢れる演奏を大いに楽しむことが出来ますよ。
ロリンズのライブ盤では”ビレッジ・バンガード”がつとに有名ですが、私のお勧めは「THE CUTTING EDGE」です。
1974年の作品、ここでの「To A Wild Rose」(邦題:野ばらによせて)は絶品、まさに感動ものです。
まだお聴きでない方は是非聴いてみて下さい。

(中間系)


2011/06/05



(606) MARC JOHNSON SEXTET / SHADES OF JADE
marc johnson(b)  joe lovano(ts)  john scofield(g)
eliane elias(p)  joey baron(ds)  alain mallet(org)
2005/ECM/

ECMサウンドはなぜか梅雨時が一番似合うような気がします。
どこか物憂げだけどしっとりと落ち着いた感覚があります。
改めてイリアーヌのピアノがいいです。

「レビュー時のコメント」
マーク・ジョンソン(b)はビル・エバンス・トリオの最後のベーシストとして知られています。
このマーク・ジョンソンの新譜は組み合わせの妙に興味を持ちました。
マークとジョーイ・バロン(ds)はともかく、ジョー・ロバーノ(ts)、ジョン・スコフィールド(g)、
イリアーヌ・イリアス(p)はECMのサウンドには馴染まないのではと思ったからです。
しかし聴いてみると案外に面白かったです・・・ちゃんとECMの音作りにマッチしていました。
それぞれがグッと抑制したプレイを聴かせてくれていてこれがとても新鮮に聴こえました。
普段はゴリゴリとしたプレイを聴かせるロバーノやスコフィールドが打って変わってクールなプレイを繰り広げ、
明るく爽やかなイメージを持つイリアーヌが美しく叙情的なピアノを聴かせてくれています。
それでもECMでありながら(5)、(8)などは多少尖がった部分もあるので新鮮な感覚で聴くことが出来ます。
曲想がバラエティに富んでいるので飽きずに一枚を聴き通せるアルバムです。
先日、イリアーヌはマーク・ジョンソンと再婚したとの情報を得ました。
どうりでマークとイリアーヌは夫婦ということで息もピッタリ、1曲を除いて二人のオリジナルになっています。
特に最近丸くなりつつあるロバーノとエバンス的なイリアーヌのバラード・プレイは聴きものです。
ゆったりと時が流れていくような心地良さです。
先週のメルドーに続いて好アルバムに巡り会いました。

(中間系)


2011/05/29



(605) BRAD MEHLDAU TRIO / DAY IS DONE
brad mehldau(p)  larry grenadier(b)  jeff ballard(ds)
2005/NONESUCH/

ブラッド・メルドウは一時期よく聴いていました。
でもこの5年ほどはリーダー作を買っていません。
久し振りに聴いてみようかと思っています。
今作も新鮮な味で未だに色褪せていない。

「レビュー時のコメント」
やっぱりブラッド・メルドー(p)は素晴らしいと思います。
独特の感性と音使いで背筋がゾクゾクとするというか、解釈が新鮮で次の展開にワクワクします。
バカラックやレノン&マッカートニーのメロディアスな曲を取り上げているのでその才能がひときわ目立ちます。
ドラムスが交代してもトリオとしてのバランスやコンビネーションも良く完成度も高いです。
今までの抑制されたポジションと違って今回はグイと前面に出てきたような感じがしました。
ドラムスがホルヘ・ロッシからジェフ・バラードに代わったことの効果が現れているようです。
現在のジャズ・ピアニストでは頭ひとつ抜けている存在であることは間違いないでしょう。
バド・パウエルとセロニアス・モンクは別格として、
レニー・トリスターノ〜ビル・エバンス〜キース・ジャレット〜ミシェル・ペトルチアーニ〜ブラッド・メルドー
の流れが現代ジャズ・ピアノ界の主流派でしょうか。
もちろん、マッコイ・タイナー、チック・コリア、ハービー・ハンコックの存在も忘れるわけにはいきません。
今年聴いたピアノ・トリオ盤ではベスト・アルバムです。
メルドーのニュー・トリオには魅力が満載、この居心地の良いサウンドにはずっと浸っていたいと思いました。

(中間系)


2011/05/22



(604) ROBERT GLASPER TRIO / CANVAS
robert glasper(p,fender rhodes,kalimba)  vincente archer(b)  damion reid(ds)
mark turner(ts)(2,8)  bilal(vo)(7,10)
2005/BLUE NOTE/

ロバート・グラスパーも毎年来日していますがまだ見ていません。
どうもタイミングが合わないのです。
どんなサウンドに進化しているのか・・・興味があります。
CDでは分からない部分も多い。

「レビュー時のコメント」
大物の風格を感じさせるロバート・グラスパー(p)のメジャー第一弾・ブルーノートからの新作です。
私は2003年のスペインのニュー・タレント盤で注目しました。
一聴すれば瑞々しくキラリと輝きを見せるピアニストだということがすぐに分かると思います。
ゴスペルやヒップ・ホップの影響も感じさせるので、幅広い音楽性の持ち主です。
そういった意味ではハービー・ハンコック(p)に共通するところがあり、彼が尊敬しているのも当然ですね。
ハンコック派というのは珍しいので純ジャズ路線からはちょっと外れるかもしれません。
ここでもフェンダー・ローズなどを駆使しています、ファンの好みや評価が分かれるところでしょうか。
しかし大きな可能性を秘めている逸材です。
1曲を除いて全て自身のオリジナルで勝負、今はまだバラードよりはアップ・テンポに魅力を感じています。
注目のマーク・ターナー(ts)が2曲にゲスト参加しているのも興味がありました。

(中間系)


2011/05/15



(603) JIMMY HALPERIN TRIO / EAST OF THE SUN
jimmy halperin(ts)  axel hagen(g)  thomas w. andersen(b)
2005/BLUE JACK/

ジミー・ハルペリン(ts)は少々ねじれていますが刺激的な演奏が聴けます。
この傾向が好きなジャズ・ファンも多いんじゃないかな。

「レビュー時のコメント」
このオランダ盤に興味を持ったのは組み合わせの面白さです。
ドラムレスのテナー・サックス、ギター、ベースでどんなサウンドを聴かせてくれるか興味がありました。
曲名を見ていてサル・モスカ(p)の曲が2曲あるということでハーッと思い当たりました。
ピンときた人も多いかも知れませんね。
サル・モスカと言えばリー・コニッツやウォーン・マーシュでお馴染みのレニー・トリスターノ派の優等生です。
やはり、リーダーのジミー・ハルペリンはトリスターノやモスカについて勉強したとありました。
音楽性はクールそのものでトリスターノ派の特徴をそのまま受け継いだものです。
落ち着いたクール・ジャズの好盤、こういうアルバムを聴いているとなんかホッとしますよ。
特に(2)、(3)、(5)、(8)のスタンダードには癒されました。

(中間系)


2011/05/08



(602) ERIC ALEXANDER & VINCENT HERRING
/ THE BATTLE Live At Smoke
eric alexander(ts)  vincent herring(as)
mike ledonne(p)  john webber(b)  carl allen(ds)
2005/HIGHNOTE/

疲れた時に聴くストレートなジャズには癒されます。
その点、エリック・アレキサンダーなら間違いありません。
ヴィンセント・ハーリングとの突っ走るサックス・バトルが聴きどころ。

「レビュー時のコメント」
エリック・アレキサンダーは近年世界一多忙なテナー・サックス奏者で驚くほどの多作家です。
正直なところ少々食傷気味でこのアルバムの入手が遅れました。
ヴィンセント・ハーリングは現在では珍しいストリート・ミュージシャン出身でキャノンボール・アダレイ
の流れを汲むアルト・サックス奏者です。
題名は「THE BATTLE」ですが、火の出るような仁義なき大ブロウ大会を期待すると肩透かしを食うかもしれません。
何回かの共演もあり、思ったより二人のコンビネーションとバランスが良いのでスンナリと入っていくことが出来ます。
私が想像していたよりもずっと落ち着いたプレイぶりでした。
二人が中心であることは間違いありませんが、マイク・ルドン(p)の活躍の場も十分に与えられています。
ウエス・モンゴメリー(g)のアルバムで大ヒットした(2)「ROAD SONG」は懐かしかったです。
ルドンの(5)「SHIRLEY'S SONG」も気に入りました。
スリル溢れるエキサイティングな演奏はジャズの醍醐味の一つ、文句なしに楽しめる一枚だと思います。

(中間系)


2011/05/01



(601) AD COLEN QUARTET / BITTER BUT SWEET
ad colen(ts,ss)
rob van bavel(p)  erik robaard(b)  jasper van hulten(ds)
2005/SWEET BRIAR MUSIC/

アド・コーレン(ts,ss)も久しくご無沙汰ですがどうしているでしょうか。
ロブ・ヴァン・バベルのピアノもいいです。
白地にイラスト・ジャケも気に入っています。


「レビュー時のコメント」
オランダの注目すべきサックス奏者のアド・コーレンを聴くのはこれが2枚目になります。
前作の「EYES WIDE OPEN」の出来も良くてジャケットも印象深いものでした。
ユニークな音色と音楽性を持っているので何か良い表現はないものかと考えていました。
ところがピッタリなものがあったのです。
題名の「BITTER BUT SWEET」がそのものなので私は嬉しくなってしまいましたよ。
「苦いけれど甘い」・・・ちょうどそんな表現がピッタリです。
前作の感想に”後期のスタン・ゲッツ(ts)にウェイン・ショーター(ts)をミックスした感じかな。”
”クールな中に激しい感情を包み込むような奏法です。”と書きました。
どうです、ドンピシャだとは思いませんか。
ロブ・ヴァン・バベルの素晴らしいピアノ・プレイも聴けます。

(中間系)


2011/04/24