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ジャズのよもやま話



(31)ウェス・モンゴメリーのこと

キャノンボール・アダレイの紹介でリバーサイド・レーベルへ録音します。
それから一般的に知られるようになりました。
その時にはすでに30才を越えていましたから大分遅いスタートですね。
完成されたオクターヴ奏法と独特のスイング感が魅力でした。

現在ではとても考えられないことですが、彼ほどレコードを入手するのに苦労させられた人はいません。
一時期リバーサイドは日本のレコード会社に版権がなく、輸入盤しかないのに人気も高くて、ほとんど出回っていませんでした。
そして、ないとなるとどうしてもほしくなるのが、ジャズ・ファンの習性です。
私は西ドイツのリバーサイドから購入したこともあります。
ああそれなのに、その後すぐに日本盤が出ました。あわてる乞食はなんとやら。

「ハーフ・ノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー」、や「フル・ハウス」のライヴものが愛聴盤でしたね。

フュージョンのはしりになる「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」や「ロード・ソング」はイージー・リスニング・ジャズの大ヒットになりました。
フリー系のジャズにやや食傷ぎみでしたので、結構印象に残っています。


(32)ジミー・スミスのこと

オルガンはアメリカと比較して日本での人気は今ひとつだと思います。
映画などでは教会の場面によく出てきますし、R&Bには欠かせない楽器です。
ジミー・スミスはオルガンの第一人者で、ブルー・ノートの1500番台に13枚のアルバムがあります。4000番台にも15枚位あるかな、
ヴァーヴ・レーベルにもかなりの数を録音しています。

私はオルガンのジャズも結構好きで、ブルー・ノートやプレステイジのオルガン・ミュージシャンは良く聴きました。

ジャズ・フェスティバルなどで、ジミー・スミスが演奏を始めますと、ステージ・サイドで他のミュージシャンが踊りだすという場面がよくあります。
みんなオルガンがとても好きなんだあと思いました。
ジャズ・ミュージシャンがよく鼻歌で歌うのが「モータウン・サウンズ」らしいです。
マービン・ゲイやスティービーが多かったと聞いていますがさだかではありません。

私が好きなのは「ザ・サーモン」、「ザ・オルガン・グラインダー・スイングス」あたり。
他のオルガン奏者ではラリー・ヤングがおすすめです。


(33)オスカー・ピーターソンのこと

名手オスカー・ピーターソンとしては、日本での評価はイマイチ盛り上がりません。
ジャズ・ファンの中でもその評価は微妙に分散しているように思われます。
なぜなんでしょうかね。私にも良く分かりません。
技術的にはみなさんもご存知のように物凄い実力の持ち主です。
誰にでも聴き易くて、ジャズとしてはやや刺激に欠ける点はありますが、
上手すぎて面白味がないというのもヘンな話ですし、うまく説明できません。

彼の作品が自己のトリオ中心だというのはどうでしょうか。
特に管楽器奏者との共演は、彼のキャリアからすれば極端に少ないですよね。
もっと色々なジャズ・マスターと演奏してくれれば、評価が上がることは確実です。
本人がいやなのか、共演する方がいやなのか、それともその両方なのか。
疑問はつきません。誰か教えて下さい。

「ウエスト・サイド物語」や「ナイト・トレイン」が好きですけれど、やっぱりジャズとしては少々物足りない感じがします。



(34)新宿ジャズ・レコード店訪問記

ある方に教えられたCDの日本盤が入手出来ないことになったので、久し振りにそのCDを探しに新宿まで出掛けることにしました。なんと2年振りの新宿です。
南口の駅前はすっかり変わっていましたが、昔は良く行きましたので、D・ユニオンはすぐに分かりました。駅から5分位かな。

まずは目的のマッズ・ビンディング(b)の「DADDIO DON」を探しました。
すぐに見つかりまして、やっぱり新宿だぁと思い感心しました。
もう一枚のハバード(tp)の「ブルース・フォー・マイルス」は見つかりませんでした。

次に一応、リー・モーガン(tp)の棚を見てみますと、なんと見たことがないアルバムが3枚もありました。超マイナー・レーベルのスイス盤です。
これは買うべきかどうか本当に迷ってしまいました。
「モーガン・ファンとしては買っておくべきだ」というのと、「持っているだけでは、どうしょうもないだろう」という心の葛藤です。
結局、ジャケットが安っぽく、内容も良く分からないのでやめましたが、家に帰ってきてからもウジウジしています。
(今まで人にはCDは見つけた時に買えなどと、エラそうに言っていますから)

次にトニー・ウイリアムス(ds)の棚をのぞいて見ました。
めぼしいものはありません。あーぁ良かった、なぜかそう思いました。
それからジェリー・マリガン(bs)の棚、ここで掘り出し物を一枚見つけました。
これはすごく嬉しかったですね。
あとは適当に見回して、ジョン・ハンディ(as)の再販盤を一枚ゲット。

その後は入口の新譜とお勧めのコーナーを見ました。
これがまた全然知らない人ばかりで、内心かなり焦ってしまいました。
私はすでに浦島太郎的な存在になっており、愕然としました。
能書きを見るとみんないいようなことが書いてあって、もしこれが本当なら何十枚も買わなければなりませんよ。
宣伝文句でアルバムを買うほどヤワではないし、お金もない。
やっぱりヤーメタ。

そこを出てから次にV・メガストアに向かいました。すぐ近くです。
まずハバードを探す、ここにもなかったので、もうハバードはあきらめました。
ちょいと見て回りましたが、余りに大量で、何から見ていいのか全然分からない。
それではというので、若手?で成長株と思われるアントニオ・ハート(as)とジャボン・ジャクソン(ts)、エリック・アレキサンダー(ts)、ダビッド・サンチェス(ts)の4人のサックス奏者のCDを購入しました。

さ〜て本日の感想ですが、以前よりもジャズCDは圧倒的に多いです。
以前なら話題にもならなかったものが、たくさんCD化されています。
内容はともかく、ただ珍しいだけのものも多いです。
それでも選択の幅が広がったことは良いことですが、必要以上にジャズ・ファンの所有欲を刺激するのはどうかと思いました。
まぁー、あちらも商売ですから、それも仕方がないことかな。
危うく私もそのドロ沼に落ちそうになりましたが、ギリギリ踏み止まりました。
この辺は亀の甲より年の功ですな。
それでもたった一時間程で購入したCDは7枚になりました。
これじゃ新宿にはなるべく近寄らない方がいいに決まっています。
私には近くのCDショップで、マイペースで買うのが分相応だと思いました。
しかし、質と量はさすがに新宿なんですよね。どうすれば良いのか迷います。

終りに今回の実績ですが、幸運なことに7枚とも水準以上の出来で満足しています。
「ドラゴン流目立たないけどいいアルバム」も何枚かありそうですが、これはもっと聴き込んでから報告したいと思います。
やっぱり人混みは疲れました。



(35)ケニー・バレルのこと

私が一番好きなジャズ・ギター奏者です。
ジャズ・ギター界においては、50年代から現在までズーッと第一線で活躍してきた奇跡的な存在です。

ケニーは若い時にすでに自己のスタイルを確立していましたので、どんな時でも大体マイペースで演奏します。
それがここまで長続きした理由だろうと考えています。
ですから、ある人がケニーの参加アルバムを集め始めたらあっという間に300枚以上になったというのも十分うなずける話ですね。

若い人達にはちょっと物足りないでしょうが、ある程度の年齢になりますとケニーほど味のあるギターはないです。
かの寺島靖国氏は「ギターはケニー・バレルしかいない」とまで言い切っています。
もちろんこれは彼独特の極端な表現方法ですけれど、それくらい魅力があるということは私も認めます。

おすすめはやはり初期のブルー・ノート盤でしょうが、最近のものでも十分楽しめると思いますよ。


(36)マッコイ・タイナーのこと

1938年生、この人も現在では、最も重要なジャズ・ピアニストの一人です。
師匠はリッチー・パウエル(パド・パウエルの弟、惜しくもクリフォードと共に事故死)。
一般に知られるようになったのは、ベニー・ゴルソンのジャズテットに入ってからです。

ここに半年間在団した頃、ジョン・コルトレーンに誘われます。
それからの破竹の進撃はみなさんが良くご存知の通りです。
1959年から1965年まで、コルトレーンと行動を共にしました。
この時にキチッとした自己のスタイルを確立しています。

最近の若手ピアニスト達に最も影響を与えているのが、マッコイ・タイナーとビル・エバンスだと思います。
この二人は、ほとんど自分のスタイルを変えないところが共通しています。
性格的に生真面目なんだろうと推測していますが、反面不器用とも言います。

こういう人ですから、エバンス同様その作品にハズレはないです。
強いてあげれば「リアル・マッコイ」、「サハラ」、あたりがおすすめかなあ。



(37)トミー・フラナガンのこと

ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」やコルトレーンの「ジャイアント・ステップス」の名サイド・マンとしての方が知られていました。
彼が表舞台に飛び出してきたのは、幻の名盤、「オーバー・シーズ」の一発でしたね。
SJ誌選定「ゴールド・ディスク」の記念すべき第1号でしたが、これには本当に驚かされました。

それ以降のファンには信じられないでしょうが、本当に超幻の名盤として有名だったんですよ。
当時のジャズ・ファンの間では、良く話題になったものです。
真偽のほどは分かりませんが、10万円以上の値がついたと噂になりましたし、まさに垂涎の的ですね。なにしろ聴いたことがないので、期待は膨らむ一方でした。

G・Dの第一弾として発売された時には、ジャズとしては破格の売上枚数を記録したはずです。
多分、この記録は今でも破られていないと思いますよ。
そしてこの時には、なぜかオリジナル・ジャケットは使われませんでした。
内容はと言えば、幻の名盤に恥じない、素晴らしいものでしたね。


2000/8/20





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