[トップページ]



Dragon's Jazz Corner

Magnus Hjorth (p)


*MAGNUS HJORTH TRIO / PLASTIC MOON
magnus hjorth(p), petter eldh(b), kazumi ikenaga(ds)
2010/Cloud/

1 Play The Game
2 Pure Concept
3 Lacrima Lake
4 Shiny Stockings
5 Bullpen 6 Hot Corner
7 Leia
8 I Remember You
9 Jogen-Plasic Moon


マグナス・ヨルト・トリオの新譜です。
マグナス・ヨルト(p)とペーター・エルドはデンマークの新進気鋭のジャズ・マンです。
この二人に日本の池長一美(ds)を配したトリオはすでに2度の来日公演を果たしています。
その時のライブ盤で昨年出た「SOMEDAY.Live in Japan」は好評を博しました。

そのトリオの第二弾はじっくりと取り組んだスタジオ録音盤です。
音が流れた途端、その美しいピアノ音に驚かされると思います。
クリアでピュアなピアノの音が流れてきて、どこまでも美しく透明な世界が広がっていました。
北欧独特の静謐で冷徹な雰囲気も持っています。
ただトリオのまとまりはいいけれどスリルやサスペンスにはやや欠けたかもしれません。
マグナス&ペーターの最大の魅力は形にとらわれない自由奔放さにあると思っています。

やはりオリジナルだけでは厳しかったと思うので2曲のスタンダードを入れた構成は良かったです。
特に(4)「シャイニー・ストッキングス」には新たな息吹が吹き込まれたと思います。
カウント・ベイシー楽団のイメージが強すぎたので、こんなにロマンチックな曲だったのかと思いました。
オリジナルでは(6)「HOT CORNER」が大のお気に入りです。
池長さんのパーカッシブなドラムとマグナスのリズムの絶妙な絡み合いが聴きどころになります。
(7)「LEIA」はテーマが印象的、美しさの中に力強さが感じられる演奏でピーターのベース・ソロも秀逸です。
たしかライブでもやったような気がするのでこなれていました。

今作はデンマークのスタント・レーベルから世界に発信されたと聞いています。
日本人プロデューサーが見出したこのトリオが世界に羽ばたいてくれると嬉しいですね。

「ドラ流目立たないけどいいアルバム」

(中間系)




*MAGNUS HJORTH TRIO / SOMEDAY.Live in Japan
magnus hiorth(p), petter eldh(b), 池長一美(ds)
2010/Cloud/

マグナス・ヨルト(p)、ペーター・エルド(b)、池長一美(ds)のライブ盤が出ました。
(2009年ライブ・レポート参照)

これほど緊張感のある刺激的な演奏はそうそう聴けないと思います。
ライブを重ねるごとに気心が知れて親密さを増すのは自然の理です。
そういった意味では最終日が一番まとまったと思います。
しかし、収録されたこの3日間のライブを聴いてみるとそれぞれに良さがありました。
特に圧巻なのはやはり初日でしょうね。
ぶっつけ本番の緊張感が伝わってきてよりスリリングな内容になりました。
私は(5)「MILESTONES」にガツンときてしまいました・・・これはいいです。
グイグイと突っ走るマグナスとペーターのフレッシュで瑞々しいプレイはどうでしょう。
それに反応しようとする池長さんの心の昂ぶりと息使いが聞えました。
プレイヤーの思いがそのまま伝わってくるような気がします。
最初は手探りで始まって互いの反応を見ながら徐々に盛り上がっていく、
どんな展開になるのかまったく先が見えない、
プレイヤーも観客も一体になって作り上げていく臨場感がありました。
こういうライブ盤は数が少ないと思います。
CD化までは未定だったと思うのでプレイヤーにとっても自由度が大きかったこともあるでしょうね。
だからこそプレイヤーのそのまんまの姿を切り取ったライブ盤になったのかもしれません。
録音はたった2本のマイクだけでワンポイント収録という珍しいものだそうです。
聴いてもらえば分かりますが信じられない音の良さです。
この録音方式はオーディオ・ファンからも注目されるのではないかな。

思えばこれはプロデューサーのYさんの思い入れから始まりました。
デンマークで聴いたマグナスに惚れ込み、日本の池長一美と共演させたいという思い。
それが日本でのライブにつながり、このCD発売にもつながりました。
お気に入りのミュージシャンを全力で応援する・・・ジャズ・ファンの究極の望みを実現した形になりますね。
CDに入れる選曲も紆余曲折があったと聞いています。
出来上がってみると見事にジャズ・ファンの願いを結実させたと思います。
この5月にはCD発売記念ライブが予定されているし、デンマークでのCD制作も決まっているとのこと。
マグナス・ヨルト・トリオはこの日本で認められて世界に飛躍することになりそうです。

なお、私にマグナスを紹介してくれたジャズ友のmanaさんがCDに渾身のライナー・ノーツを書いているのも嬉しい。

「ドラ流目立たないけどいいアルバム」

(中間系)




*MAGNUS HJORTH TRIO / OLD NEW BORROWED BLUE
magnus hjorth(p), peter eldh(b), snorre kirk(ds)
2009/STUNT RECORDS/

デンマークのマグナス・ヨルト(p)とペーター・エルド(b)はライブ(ライブ・レポート参照)で見たばかりです。
このCDの存在は知っていましたがライブに行くことが決まっていたので我慢していました。
特別深い理由もないんだけど先入観なしにライブで聴いたほうがいいかなと思いました。
オリジナルはヨリスが7曲、スノーレ・キルク(ds)が1曲、その他にスタンダードが2曲という構成です。
オリジナルはもちろんいいですがスタンダードも刺激的で生き生きとした新鮮な感覚で蘇ってきました。
(1)〜(2)〜(3)の流れで一気にグイと引き込まれてしまうことは請け合います。

ライブと同様に独特の間合いとタイミングはここでも生きていて、なんかワクワクするものがありました。
テンポやリズム、フレーズを聴いていても何が出てくるか分からない、意外性があります。
こういう感じ方は大事ですね。
ヨルトは絶妙なリズム感と切れのあるタッチ、美しい音色とさらにそれを可能にするテクニックの持ち主です。
清流が流れるかの如く清冽で爽やかなフレージングが満ち溢れて心地良いです。
加えてライブではアグレッシブにグイグイと突っ走る迫力満点のプレイも聴かせてくれました。
流麗、華麗、静謐、美しいといったようなヨーロッパ・ピアノの伝統を超越したスケールの大きさを感じました。
ヨルトもエルドも25歳、多分キルク(ds)も同年代だと思います。
若さは宝もの、若さには大きな可能性を秘めているのでそれだけでも将来が楽しみです。
このトリオの怖いもなしの思いっきりのいいプレイはいかにも若さの特権でしょう。
ここしばらくはこういう感覚を忘れていたのですごく新鮮だったです。
最近は若くても老成した感じのプレイヤーが多いのでこれがもの凄い魅力になっています。

ただ、47分弱の収録時間は短いので少々物足りません。
もうあと2、3曲聴ければもっと良かったです。

「ドラ流目立たないけどいいアルバム」

(中間系)