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Dragon's Jazz Corner

Hiromi Masuda 増田ひろみ(as)


*HIROMI MASUDA QUARTET / MAYBE SEPTEMBER
増田ひろみ(as),
gene dinovi(p), neil swainson(b), ernesto cervini(ds)
2010/Marshmallow/

今作はライブ会場で購入しました。
初リーダー・アルバムの共演がカナダのジーン・ディノヴィ・トリオになりました。
いきなり超ベテランの名手が相手では相当に緊張したと思います。
でも見事にそれをやり遂げたので大きな自信になったでしょうね。

演目はぶっつけ本番のスタンダードが中心です。
表題曲になったバラードの(4)「MAYBE SEPTENBER)」とラテンの(8)「TICO TICO」がこだわりか。
前者はロマンチックなスロー・バラードにおける表現力と後者はサックスでは至難の曲に挑戦しています。
私的ベストはピアノレス・トリオで演奏された(4)「WHAT IS THIS THING CALLED LOVE」でした。
抜群の緊張感でスウェインソン(b)とチェルヴィーニ(ds)のリズムがいかに素晴らしいかの証明になりました。
(2)「YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO」も負けず劣らずの内容でいいです。
こちらはリフから入る意表を突く展開になりました。
アタックの強さ、スイング感、フレーズ、伸び伸びとプレイしていて申し分ありません。
続いて前述の(8)、(4)、(9)「FLY ME TO THE MOON」、(6)「ALL THE THINGS YOUR ARE」、
(7)「THE SHADOW OF YOUR SMILE」も聴きどころがあります。
スタンダードでもアプローチの仕方によって十分刺激的になることを実感しました。

増田ひろみさんの根っこはレニー・トリスターノ(p)派のリー・コニッツ(as)だと思います。
ライブ・レポートでも書きましたが、ちょっとかすれたような独特の音色は心地良いです。
改めてこれほどクールな感覚を出せる女性プレイヤーは少ないと思いました。
楽器の音色は人の声と同じでそれぞれに好みがありますね。
増田さんの高過ぎず低過ぎずの丸みのある音色は聴いていて疲れません。
まるで歌を聴いているような気分になりました。
もう一人の主役はベーシストのニール・スウェインソンと思います。
そっと寄り添うようで刺激を与えるベース・ラインはまったく素晴らしいです。
随所で展開されるベース・ソロにも聴きどころは十分です。
ディノヴィさんは控え目でしたが(7)、(9)ではさすがのプレイを聴かせてくれました。
若手ドラマーのアーネスト・チェルヴィーニはディノヴィさんの秘蔵っ子のようです。

今作はプレイヤーの音楽性を重視した良心的な作品に仕上がっています。
もちろん、まだ荒削りですがそれをはるかに上回る魅力的なアルバムです。
初リーダー・アルバムでここまで自由にできるのはそうはないと思います。
プロデューサーの厚意を感じました。

[ ドラ流目立たないけどいいアルバム ]

(中間系)