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Dragon's Jazz Corner

Bert Seager (p)


*BERT SEAGER TRIO / OPEN BOOK
bert seager(p), jorge roeder(b), kazumi ikenaga(ds)
2012/Cloud /

1 Bach's Lunch
2 Bunny Dune
3 Snow Sprite
4 Everything I Love
5 Open Book
6 The Raft
7 I Loves You Porgy
8 My Funny Vlentine
9 Wisteria


ボストンのピアニスト、バート・シーガーの新譜は日本企画盤です。
バート・シーガー(p)を紹介する時には何と言ったらいいのか迷ってしまいます。
ビル・エバンス派、ただの静謐、耽美的では済まされない多くのものがあるからです。
私は今までバートのアルバムを何枚も聴いたし、ライブに何度も足を運びました。
でも、うまくその全体像を語ることは出来ません・・・
バートはそれほどに広大で深遠な世界を持っているからです。
まるで心の宇宙をさまよっているような気がします。
確固とした「自己の世界観」を持っている稀有のジャズ・ピアニストだと思います。
彼のピアノには語りかけてくるものがある・・・それが聴く人の胸にビンビンと響いてくるんです。
聴いているとまるで対話をしているような気持になってきます。
そしてそれはとても居心地のいいひと時を与えてくれます。
これはもう聴いてもらうしかありません・・・聴けば一目瞭然です。

池長一美(ds)さんとのコンビネーションも何かいい表現方法がないだろうかと思っていました。
解説文でいみじくも杉田宏樹さんが看破してくれました。
「ピアノの体位法的な動きがジョン・ルイスとMJQを想起させる」
ジョン・ルイスに近い・・・そうなんだよね、MJQ、室内楽的な格調の高さがあります。
このアルバムを聴いていると狭い室内で3人の会話をすぐそばで見ている自分がいます。

バート自身のオリジナル6曲にスタンダード3曲の構成もバランスがいいです。
スタンダードも超有名曲ばかりでどう表現しているのかが聴きどころになります。
バートは無駄な音は使いません・・・存在感のある一音、一音が聴けます。
「I LOVE YOU PORGY」の沁み入る美しさ、「MY FUNNY VALENTINE」には涙が出そうになった。
今作にはバートが持つ美しく清らかなクールさと、もう一方のやさしさと温もりが同居していました。
バート・シーガーの決定的な1枚になるピアノ・トリオ作品だと思います。

「EVERYTHING I LOVE」、「I LOVE YOU PORGY」、「MY FUNNY VALENTINE」

最後にもう一つ、このCDジャケットに注目しました。
高級感があって手触りも良く、シンプルなアルバム・デザインも秀逸です。
実際に手に取ってみたらそのセンスの良さに驚くと思いますよ。

「ドラ流目立たないけどいいアルバム」

(中間系)




*BERT SEAGER TRIO / LIMA BEANS
bert seager(p), jorge roeder(b), jorge perez(ds)
2009/asin/

ボストンのピアニスト、バート・シーガーは池長一美(ds)さんとの
「KJB・トリオ」で親しみのあるピアニストです。
その彼がペルーのサイド・マンを起用した珍しいトリオを組みました。
ラテン系のバックがどうであれ彼のスタイルは変わりません。
内向的というか、心の奥深くに染み込むようなピアノです。
心の宇宙をさまよっているような、そんな感じがしますよ。
決して焦らず騒がずのマイペース。
万人向けではないけれど自己の世界を確立しています。
こういうジャズ・ピアニストはユニークな存在です。

「Everything I Love」




*KAZUMI IKENAGA & KJB TRIO/ NEAR AND FAR
池長一美(ds), john lockwood(b), bert seager(p)
2008/Invisible Music/

池長一美(ds)、ジョー・ロックウッド(b)、バート・シーガー(p)の「k・J・B・TRIO」の3枚目のアルバムです。
2年に1枚の割りでコンスタントにリリースしているのも高く評価されている証拠だと思います。
スタンダードが3曲にオリジナルが7曲の構成、基本的に静謐で耽美的な作風は変わっていません。
前2作のドラ盤入りしていますが今作もいいです。
もっと知られてもいい存在・・・なんか典型的な「目立たないけどいいアルバム」って言う感じがします。
気心の知れた3人のコンビネーションは抜群、全体的にリズム感が出てきたので一番聴き易いと思います。
スタンダードの解釈は新鮮そのもの、(1)「ONE FOR MY BABY」でグイと引き込まれてしまいました。
オリジナルの(4)「ONE NOTE WALTZ」の美しさは特筆もの。
(7)「LEARNING TO TRUST IN LOVE」のバラードもいい。
池長さんもジョンもバートも素晴らしいのでみなさんにも是非聴いてもらいたいです。
私は毎年の日本公演を楽しみにしていますが今年は10月に予定されているそうです。
このトリオが聴きたいと言うと、池長さんはロックウッドが引っ張りだこの忙しさで残念と言っていました。
上質のピアノ・トリオでお薦め。

[ ドラ流目立たないけどいいアルバム ]

(中間系)




*KAZUMI IKENAGA & KJB TRIO / A CLOSER LOOK
kazumi ikenaga(ds), john lockwood(b), bert seager(p)
2006/INVISIBLE MUSIC/

池長一美さん(ds)、ジョン・ロックウッド(b)、バート・シーガー(p)の名前を冠したKJBトリオの新譜です。
ロックウッドもシーガーも知る人ぞ知る名手、池長さんは一押しのドラマーで、その独特の感性が光ります。
前作も「ドラ流・・・」入りしましたが、今作も素晴らしいですよ。
前回と比べて今回は有名なジャズ・スタンダードが5曲入っていて、より魅力がアップしました。
「静謐、耽美的な世界」・・・一音一音が凝縮された3人の濃密なコレボレーションが聴けます。
実際、これほどのピアノ・トリオはそうそう聴かれるものではないと思っています。
このトリオは毎年日本公演をしていますが、今年は残念ながら時間が取れずに行けませんでした。
池長さんが出身の関西公演が中心で東京では1回だけ、せめて2回はやって欲しいです。

[ ドラゴン流目立たないけどいいアルバム ]

(中間系)




*KAZUMI IKENAGA & KJB TRIO / OPENINGS
kazumi ikenaga(ds), john lockwood(b), bert seager(p)
2004/INVISIBLE MUSIC/

池長一美さんのドラムス(ライブ・レポート2/18参照)に感動して直接彼から手渡しで入手したアルバムです。
今までも時々引っ張り出しては聴いていましたが今回は風邪で寝込んでいた時に何度も繰り返し聴きました。
静けさの中にも激しさを秘めているような、適度な刺激もあり、ちょうど良い按配なんです。
まるで印象派の一枚の絵を見ているような感じでした。
改めて、池長さんのメロディアスで語るドラムスは本当に魅力的で素晴らしいです。
アメリカの二人とのトリオ盤ですがまったく遜色なく、むしろピッタリとはまっているのは驚きでした。
バート・シーガーはエバンス派のリリカルでユニークなピアニスト、ジョン・ロックウッド(b)は安定感のある名手です。
このトリオのバランス感覚は抜群でそのコラボレーション、インタープレイには惚れ惚れします。
特にジュール・スタインの(4)は圧巻、ウエイン・ショーターの(6)もお気に入りです。
これほど上質のトリオ作を紹介しない手はないですね。このまま埋もれさせるには惜しいアルバムだと思います。

[ ドラゴン流目立たないけどいいアルバム ]

(中間系)




*BERT SEAGER TRIO / PIONEER
bert seager(p), masa kamaguchi(b), take toriyama(ds)
2002/Invisible Music Records/

静謐な感覚を持つアメリカのジャズ・ピアニスト。
少しづつ知名度が上がってきてそろそろブレイクするかもしれません。
池長一美(ds)さんとトリオを組んでいて、夏になると来日公演をしています。
二度ほど見ましたがいいです。
2000年代、お勧めのピアノ・トリオ