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(660) ENRICO ZANISI TRIO / KEYWORDS
enrico zanisi(p), joe rehmer(b), alessandro paternesi(ds)j
2014/Cam Jazz/
エンリコ・ザニシは初見、ジャケ買いです。
イタリアの若手ピアノ・トリオはどんなもんか?と思って手が伸びました。
ザニシは1990年のローマ生まれというから今年で24歳ですね。
24歳にして3枚目の今作は1曲を除いて全てザニシのオリジナルです。
ザニシはきっちりとした構築力を持っているピアニストで力強いタッチを兼ね備えています。
音色の輪郭がクリアで鮮やかなのが特徴かな、トリオのバランスもいいです。
面白いのは一時期注目されたイーサン・イバーソン率いる”Bad Plus"的サウンドです。
ロックの要素を取り入れたコンテンポラリーなピアノ・トリオ・サウンド。
最初、どこかで聴いたことのある感じがしたのはこれが原因。
私にとってこの「どこかで聴いたことのある」というのが曲者なんですね。
才能や実力は認めてもどうしても新鮮味には欠けてしまうから。
もちろん、初めて聴く人には十分にインパクトがあると思います。
[ ドラ流目立たないけどいいアルバム ]
(中間系)
(659) TAKAYUKI KOIZUMI TRIO / MY MAN'S GONE NOW
小泉高之(ds)、スガダイロー(p)、是安則克(b)
2011/Koizumi/
小泉高之さんも好きなドラマーの一人です。
リズム感や疾走感は勿論だけどやわらかな音色が心地良くて私の感性に合うんですね。
このアルバムをCDショップで見つけた時に意外な感じがしました。
小泉さんとスガダイロー(p)さん、是安則克(b)さんのトリオで所沢「スワン」でのライブ盤。
ダイローさんは中央線ジャズのフリー系ピアニスト、是安さんはフリーもいける両刀遣い。
反面、小泉さんは後藤輝夫(ts)さん率いる「ごめんね」に代表されるグルービーなドラマー。
意外性のある組み合わせだったので、正直「合うのかな?」と思いました。
もっとも小泉さんがリーダーなので私の知らないところで共演も多かったかも。
結局、今作は小泉さんから手渡しで購入しました。
私:「合いますか?」・・・先ほどの疑問。
小泉さん:「ダイローにフリーじゃなくてスタンダードを弾かせたい」
「ギリギリのところが面白いかな、是非聴いてみて下さい」
今作は2011年に突然亡くなった是安則克さんの追悼盤になっています。
是安さんは多くのミュージシャンにも慕われた人気ベーシストでしたが残念です。
小泉さんの新しい一面を見ました。
フレキシブルで変幻自在に対応するドラミングが素晴らしい。
「ははぁ〜、こういうこともやりたかったのか」ってね。
たしかにフリーとのはざ間が実に刺激的で面白かったです。
(3)「My Man's Gone Now」では是安さんの達者なアルコ・ソロが聴けました。
(4)「All Blue」は圧巻のひと言。
16分超の長丁場で我慢出来なくなったダイローさんのフリー・トーンが出てくる。
ランディ・ウェストン(p)の名曲(5)「Hi Fly」はピッタリの選曲だと思います。
今作は正規な録音ではなく小泉さんの私的録音をCDにしたものです。
飾り気のないライブの雰囲気がそのまま伝わってきます。
ちなみに所沢の「スワン」は老舗ですね。
私も若い頃に何度かお邪魔したことがありますよ。
もう40年以上も前の話・・・・一緒に行った破滅的な友人はもう逝ってしまった。
(まじめ系)
(658) MASAKO KUNISADA / WONDERFUL LIFE
国貞雅子(vo)、
森下滋(p)、佐藤慎一(b)、藤井学(ds)、荻原亮(g)
2012/Urban Jazz/
国貞雅子(vo)さんのデビュー・アルバムです。
発売時に知っていましたが忘れてしまって入手が遅くなりました。
近年はこういうことが多いですが「何が何でも」という気持は薄くなりました。
”集中力”に欠けているとは思うけど・・・。
オレンジ色の鮮やかなジャケットにもインパクトがありますね。
国貞さんは何度かライブで見ています。
ライブ・ハウスでいつもの質問:「だれか、お勧めの人はいませんか?」
と聞いて名前が出てきたのがこの国貞雅子(vo)さんでした。
ミュージシャンにとっても熱烈なファンがいることは心強いですね。
そういうファンの口コミが強力な応援団になっています。
ちなみに国貞さんは私がファンの鈴木道子(vo)さんの妹分に当ります。
国貞さんがゴスペル、ソウル、ブラック・ミュージック系ということはすぐに分かります。
声質、声量、フィーリングともにその雰囲気は十分です。
オリエンタルなムードもあるし可愛らしい感じがしました。
今作は選曲も魅力で十分に練られたアルバムだと思います。
まさに満を持した作品でアレンジは佐藤慎一さんと森下滋さんが担当しています。
幅広い音楽性と抜群の歌唱力を持つ国貞さんの全貌が明らかです。
バックの好演も光る。
思っていたよりずっと完成度の高いアルバムでした。
アップ・テンポでのリズムやパンチも効いているけど、やはり聴きどころはバラードにあります。
私は(8)「For All We Know」で落とされた。
これは素晴らしいなぁ〜。
(6)「Come Rain Or Come Shine」や(4)「Body And Soul」も良かった。
(11)「Day By Day」の疾走感も聴きどころになりました。
掛け値なしに将来性十分の大型ジャズ・ヴォーカリストの登場です。
益々の精進を期待しています。
最近は名ピアニスト、大石学さんとの共演も実現しています。
ちょっと聴きたくなりました。
(中間系)
(657) FRANCESCO CAFISO & DINO RUBINO /
TRAVEL DIALOGUES
francesco cafiso(as,ss,fl), dino rubino(p,tp,flh)
2010/Jazzy/
フランチェスコ・カフィーソ(as)は収集対象の一人です。
今作は盟友ディノ・ルビノとのデュオです。
まぁ〜、余程のファンでなければ手が出ないと思います。
事実、私もそれほど期待していなかった。
でも、聴いてみると驚きの内容が詰まっていました。
これは名盤・・・素晴らしいですよ。
よく知られたスタンダード・ナンバーの間に即興演奏が収録されています。
これもまた面白い構成ですね。
いつも言っていますがルビノのトランペットはイマイチです。
ここではほぼピアノに専念していてカフィーソとのコンビネーションが聴きどころになります。
まるで間近で二人の会話を聞いているような気がします。
ゆったりとしっとりと時間が流れてゆく。
まさに「即興はジャズの生命」です。
これをBGMで流せば仕事がはかどるかな。
(中間系)
(656) JEREMY PELT / FACE FORWARD, JEREMY
jeremy pelt(tp), roxy coss(ss,ts,bcl),
david bryant(p,org, rhodes,wurlitzer), frank locrasto(rhodes),
dana hawkins(ds,ds programming)
fabiana masili(vo)(3,6), milton suggs(vo)(9),
brandee younger(harp)(6), jennfer shaw(cello)(6)
2014/High Note/
ジェレミー・ペルトのエレクトリック・サウンドを聴いてみたいと思いました。
近年またエレクトリック・ジャズに傾倒していくジャズ・メンも多い。
ジャズ・マンとしては色々とやってみたいのは分かります。
コルトレーンがフリーに、マイルスがエレクトリックにたどり着きました。」
ジャズのスタイルは一応完成されていると思います。
だから二番煎じはまぬがれません。
何か新味を付けなければいけないのが辛いですね。
ここでの味付けはやわらかな女性ヴォーカルかな。
(3)や(6)で聴けます。
演奏的には新感覚のドラムスが聴きどころになりました。
強烈な印象を残すのが(5)「Glimpse」でダナ・ホーキンスのドラムスが炸裂します。
私的ベストはこれです。
(8)「The Cecret Code」もリズムが個性的で面白い展開だと思いました。
何となくですがテレンス・ブランチャード〜ジェレミー・ペルトの流れが出来たような気がします。
ちょっと硬い感じがするので噛み砕けるかどうか・・・。
(まじめ系)
(655) EDDIE HARRIS QUARTET / THE IN SOUND
eddie harris(ts),
cedar walton(p,), ron carter(b), billy higgins(ds),
ray codrington(tp)
1965Rec/Atlantic/
今作も再発廉価盤の一枚です。
エディ・ハリスは1934年シカゴ生まれ、1996年に62歳で亡くなっています。
62歳というのも早いですね。
エディ・ハリスで最も知られているアルバムはレス・マッキャン(p,vo)との1969年、
スイス・モントリュー・ジャズ・フェスティバルにおけるライブ盤、「スイス・ムーブメント」だと思います。
全身ソウルでノリノリのパフォーマンス・・・体中が熱くなる強烈な印象を残す作品でした。
今作はソウル・ジャズの大御所のエディがストレートなジャズに挑戦した一作です。
全6曲はスタンダード4曲と自身のオリジナル2曲の構成です。
ワン・ホーン・カルテットとトランペット入りのクインテット編成の2セットが収録されています。
エディは野太いシカゴ派テナーの特徴を十分に発揮しています。
(1)「いそしぎ」における歌心溢れる演奏や(2)「Born To Be Blue」のバラード奏法、
(3)「Love For Sale」の超高速フレージングの確かさもその実力の証になります。
(4)「Cryin' Blues」はソウル・ジャズの面目躍如、(5)「'S Wonderful」はサンバのリズムが楽しいです。
特筆すべきはモダン・ジャズの名曲(6)「Freedom Jazz Dance」の初演がここで聴けることです。
先程亡くなったシダー・ウォルトンのファンキー度満点のピアノが聴けるのも貴重だと思うよ。
(くつろぎ系)
(654) TIM HEGARTY QUARTET & QUINTET / TRIBUTE
tim hegarty(ts,ss), mark sherman(vib)(2,3,4,5,6),
kenny barron(p), rufus reid(b), carl allen(ds)
2014/Miles High/
ティム・へガーティは初見、バックのメンバーを見て手が伸びました。
犬も歩けば棒に当る・・・結果は大当たりです。
ティムは独特の歌い方をするテナー奏者でクセになる味がします。
トツトツとして引っ掛かる感じが気になるんだけど、それがたまらなく魅力です。
コブシの効いた演歌的ジャズというか、近年こういうテナー奏者は珍しいと思います。
(1)「A New Blue」や(7)「Low Profile」ではその魅力が全開です。
今作は敬愛するテナー奏者のトリビュート盤になっています。
ジミー・ヒース、フランク・フォスター、ジョージ・コールマン、ジョー・ヘンダーソン、
ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、チャーリー・パーカー、デクスター・ゴードン、
ベン・ウェブスター、マイケル・ブレッカーの名前が上がっています。
特にジミー・ヒースを尊敬していて多くの教えと示唆を受けたようです。
そのヒースを4曲取り上げ、その他の作品も郷愁を感じるビ・バップの濃い味がします。
選曲、構成も良くて楽しめました。
バラード・プレイも聴きどころで(4)「Ineffable」で落とされました。
自作のバラードでは(6)「Not To Worry」ではソプラノ・サックスが聴けます。
モンクの(9)「Pannonica」やヘンダーソンの(10)「Inner Urge」も心憎い演出です。
プロデュースは本人とここでも共演しているヴァイブ奏者のマーク・シャーマン。
共演のケニー・バロン、ルーファス・リード、カール・アレンは彼の人選だそうです。
ソツがないというか、バッチリと決まった・・・さすがに素晴らしい人選だと思います。
特にルーハス・リードが良い・・・レイ・ブラウン張りのベース・プレイに注目です。
掘り出し物の1枚になりました。
(中間系)
(653) ALESSANDRO SCALA QUARTET / VIAGGIO STELLARE
alessando scala(ts,ss),
nico menci(p,rhodes), paolo ghetti(b), stefano paolini(ds),
guest : fabrizio bosso(tp,flh)(3,5,7,8,9), roberto rossi(tb)(1,4)
2013/Schema/
アレッサンドロ・スカラは初見、以前チェックしたことがあったけどその時はパスしました。
スカラはイタリアのテナー奏者・・・ここはファブリジオ・ボッソ(tp)の名前で手が伸びました。
全11曲は1曲をのぞいて自身のオリジナルです。
イタリアン・ハード・バップの一枚ですがノリが良くファンク・ジャズの味わいもあります。
リズム優先で粗さも目立つけれど、なにしろご機嫌な演奏を聴かせてくれました。
一部では多重録音もやっていますがこれはあんまり感心しません。
スカラの憧れは(2)「Dexter Blues」とあるようにデクスター・ゴードンのようですね。
(11)でも同じ曲が聴けるけど内容はまったく違います。
(2)のテナー&ピアノに対する(11)のソプラノ&ローズ・・・この聴き比べも面白かった。
トロンボーンのロベルト・ロッシは(1)「Mood」と(4)「Isola Del Sola」で聴けます。
ボッソは(3)「Viaggio Stellare」、(5)「Easy Song」、(7)「Jazz Club」など、
(8)「Lemon Funk」は8ビート、ローズ入りの典型的なファンキー・ナンバーです。
これがカッコ良かった。
スカラは中々の名手で(10)「My Sound」のオーソドックなプレイにも注目しました。
スマートなスタイルと華麗なサウンドでこちらにも魅力があります。
何曲かで聴かせるソプラノ・サックスも達者です。
(くつろぎ系)
(652) KAZUHIKO TAKEDA TRIO / I THOUGHT ABOUT YOU
竹田一彦(g)、岡田勉(b)、江藤良人(ds)
2013/Waon/
関西の重鎮ギタリスト、竹田一彦さんの作品です。
今作もまた去年のベスト3に選ばれた一枚です。
竹田さんは1936年生まれというから今年で78歳になりますね。
東京では同世代に中牟礼貞則(g)さんがいますが元気な姿を見せてくれています。
渡辺貞夫(as)さんを筆頭に70歳代でも元気に活躍してくれているのは嬉しいですね。
私が好きなヴォーカリストの鈴木道子さんが年に何回か関西ツアーに出かけます。
その時の共演者がこの竹田さんなんです。
道子さんも絶賛していて、それで是非一度聴いてみたいと思っていました。
良く知られたスタンダード作品集・・・選曲も多彩でよく考えられています。
通算3枚目のリーダー・アルバムだそうですが長いキャリアからいえば少ないかも。
使い古された言葉ですがまさに「いぶし銀の如く」の演奏を聴かせてくれました。
録音の良さかな、まるで目の前で演奏しているようです。
実に味わい深いギターで長い間熟成されてきた味がします。
奥行きがあり、しっとりとして艶やか、語りかけてくるような趣きもあります。
表題曲の(1)「I Thought About You」には参ったなぁ〜。
二人の共演者は重量級です。
岡田勉(b)さんとギタリストの相性の良さは定評のあるところです。
増尾好秋(g)さんとのコンビは忘れられません。
復活ライブでは元気な姿を見せていましたが結局帰らぬ人となりました。
これが最後のアルバムになったかもしれませんね。
江藤良人さんもまた素晴らしいドラマーです。
エルヴィン・ジョーンズ張りの豪快なドラミングを聴かせると思えば、
相手なりに合わせる柔軟性や融通性を持ち合わせ、実に繊細な感覚を持っています。
ミュージシャンの評価も高く、心酔するファンも多い。
(中間系)
(651) CHICKEN SHACK / Z
土岐英史(as), 続木徹(p), 山岸潤史(g),
鶴谷智生(ds), Fuyu(ds)(2,4), Wornell Jones(b,vo), 清水興(b)(1,6,8,9)
2013/King/
”チキンシャック”の23年振りのニュー・アルバムだそうです。
今作も2013年度のベスト3に選ばれた一枚です。
”チキンシャック”は日本を代表するフュージョン・バンドの一つです。
聴いてもらえばすぐに分かりますが洗練されたサウンドを持っています、
最大の特徴は「色気」・・・「官能的」ということだと思います。
土岐英史さんの泣きのアルトは健在、山岸潤史(g)さんの存在も大きいと思う。
フュージョン好みの曲(6)「You Make Me Feel Brand New」は懐かしい。
続木徹(p)さんの(7)「Thrill Ain't Gone」はカッコイイです。
クリスマス・ソングも2曲入っています。
以前フュージョン系もよく聴いたけれど最近はほとんどご無沙汰していました。
久々に聴いたけれどリラックスできました。
土岐さんと続木さんは主に都内のライブ・ハウスで活躍中です。
山岸さんはニューオリンズにいるとの情報を得ました。
(くつろぎ系)
(650) AARON GOLDBERG TRIO / YES !
aaron goldberg(p), omal avital(b), ali jackson(ds)
2011/Sunnyside/
アーロン・ゴールドバーグ(p)、オマー・アヴィタル(b)、アリ・ジャクソン(ds)のトリオ。
「メンバー的に面白いかも?」と思って手が伸びました。
特に存在感のあるベース・プレイを聴かせるアヴィタルに興味がありました。
ここは選曲にも一ひねりありました。
アヴィタルとジャクソンは2曲づつ提供してますが肝心のゴールドバーグは1曲もなしです。
あくまでトリオ作品で特にリーダーはいないということかもしれませんね。
まずは全体的にクールで落ち着いた仕上がりになっています。
3人のバランスが良く、コンビネーションも抜群です。
表題曲の(2)「Yes!」はオーソドックスな展開、モンクの(4)「Epistrophy」の解釈は新鮮、
(5)「El Soul」・・・一般的にドラマーの作る曲は美しいと相場が決まっています。
4ビートで演奏される(6)「Way Way Back」の心地良いスイング感。
(7)「Homeland」はどこかで聴いたことのある進行とテーマ。
あちこちでフューチュアーされる各人のソロはそれぞれの実力の証しになります。
地味な作品だけれど味わい深く、ピアノ・トリオ・ファン、通好みの作品だと思います。
(中間系)
(649) CHICK COREA TRIO / TRILOGY
chick corea(p), christian mcbride(b), brian blade(ds)
guest: jorge perdo(fl)(disk1 track5,7)
nino josele(g)(disk1 track5,7),
gayle moran corea(vo)(disk3 track3)
2013/Stretch/
チック・コリア・トリオ3枚組・・・去年のベスト3に4人の方が上げられました。
原則的に組物は買わない主義ですが、これはどうしても聴かねばなりませんね。
チックを聴いたのは久し振りです。
音が出た瞬間に「これは〜!!」と思いましたよ。
チックはやっぱり違う・・・凄い演奏が詰まっていました。
2010年〜2012年にかけての米、日、欧のライブからの抜粋です。
選りすぐりの名演・・・スタンダードが中心というのも嬉しい。
チックはまさに名刀の趣です・・・切れ味だけじゃない深味も渋みも重量感もあります。
チックは激動のジャズ・シーンを潜り抜け、なおかつトップ・グループを維持した本当の本物。
コクがあるというか、本物だけが持つ混じり気のない純粋なチック・コリアの味がします。
妥協なし、他の誰でもない真のジャズ・ピアニスト、チック・コリアがここにいました。
稀有の個性を持つジャズ・マン、チック・コリアの集大成になるアルバムだと思います。
これを聴いたらチックが70歳になるとは誰も思いませんよ。
とどまるところを知らぬ創造力・・・枯れるどころか、益々進化しています。
チック・コリアはやはり怪物だった。
これだけの名作が出来たのはメンバーが素晴らしかったからです。
クリスチャン・マクブライド(b)とブライアン・ブレイド(ds)は現在を代表するプレイヤー。
二人の特徴はフレキシブルで変化に即座に対応できるところにあります。
相性も抜群です。
マクブライドの実力はすでに知られていますね。
特にブライアン・ブレイドのピアノ・トリオものがこれほど素晴らしいとは思わなかった。
相手がチックなればこそ、先進のドラマーではあるけれど予想をはるかに上まわりました。
この二人を選んだチックの目は確かですね。
何回も聴きましたが、一番聴いたのはDisk1でした。
変化に富んでいて私的には一番好きです。
ジョー・ヘンダーソンの(2)「RECORDA ME」は何度聴いても興奮してしまった。
チックの有名曲(7)「SPAIN」での聴衆との一体感も素晴らしい。
・・・・・まさにライブの醍醐味です。
トリオで統一したDisk2、一番の長丁場のDisk3も聴きどころは十分です。
録音もクリアで素晴らしくて、チック・コリアの代表作になるのは間違いありません。
3枚組を買うのは中々むずかしいですが買った人だけが味わえる至福の時です。
・・・これを聴いていてフト思いました。
ハービー・ハンコックにもこんなアルバムが欲しいと・・・・。
(中間系)
(648) STEPHEN RILEY QUARTET / LOVER
stephen riley(ts),
peter zak(p), neal caine(b), jason marsalis(ds)
2013/SteepleChase/
ステフェン・ライリー(ts)・・・SteepleChaseの看板テナー奏者の一人です。
リーダー作を聴くのは2枚目になります。
まずは、くぐもったテナーの音色が最大の特徴でどこか懐かしいムードを持っています。
スタイルは超クールでリー・コニッツ、ウォーン・マーシュやテッド・ブラウンの
流れを汲むレニー・トリスターノ派の影響が強いと思いました。
内容はモダンで十分刺激的ですが音色が音色なのでオブラートに包まれています。
ピアノのピーター・ザックも同じトリスターノ派のサル・モスカやロニー・ボールを彷彿とさせます。
全9曲のスタンダード作品集。
ウエイン・ショーターやセロニアス・モンクの曲が入っていてソツがありません。
バラードで演奏される(2)「慕情」は大好きな曲でこの曲が入っているとつい手が伸びます。
(4)「WHEN YOUR LOVER HAS GONE」は前奏からノスタルジックな4ビートへ転調・・・。
底辺に流れる大きなスイング感が心地良かった。
新しいところではショーターの(6)「DELUGE」に注目・・・演りなれているせいか安定しています。
表題曲の(7)「LOVER」もいいですが前半はちょっと凝り過ぎかもしれません。
その他の曲もピアノレス・トリオで演奏するなど、展開に味があって聴きどころが多いです。
全体的にゆったりとして落ち着いた仕上がりで十分にリラックスできました。
いつまでもこの流れに身をゆだねていたいと思ってしまう。
ジャズって本当にいいですねぇ〜。
(中間系)
(647) DAVE HOLLAND QUARTET / PRISM
dave holland(b),
kevin eubanks(g), craig taborn(p,elp), eric harland(ds)
2013/Dare2 Records/
デイブ・ホランド(b)の作品・・・昨年のベスト3で3人の方が上げられました。
聴いてみて「なるほどなぁ〜」と思いました。
全9曲は全てメンバーのオリジナルでバランスもいいです。
ケヴィン・ユーバンクスの存在が大きいです。
ケヴィンは幅広い音楽性を持ったつかみどころがないギタリストです。
わりと何でもこなす器用なところがあります。
独特の爪弾き奏法はゴリゴリで硬質なサウンドを生み出します。
大きなうねりを持つスイング感の根っこにはウエス・モンゴメリーがいます。
個性的で中々の暴れ馬ですが性格的には案外ジミかもしれませんね。
もっと評価されてもいいですがデビューが70年代のジャズ低迷期だったのがつらいかも。
なお、兄にトロンボーンのロビン・ユーバンクス、弟にトランぺッターのデュアンがいます。
ケヴィンを乗りこなすのは難しいですかホランドは見事に成し遂げました。
インパクトのあるサウンドを上手にまとめたホランドのリーダーシップが素晴らしいです。
メンバーの個性が強く一歩間違えると突き抜ける感じがするけど一気に聴かせました。
ケヴィン・ユーバンクスの代表作にもなると思います。
私的ベストはケヴィンの(5)「THE COLOR OF IRIS」でウットリとしてしまった。
ハーランドをフューチュアーした(4)「CHOIR」も聴きどころになりました。
始まりの(1)のギターは超ホット、終わりの(9)のピアノは超クールの演出もあります。
アルバム全体を包むギターとピアノの対位法が見事です。
クレイグ・テーボーン(p)はあんまり馴染みがなかったけれど良かったです。
エリック・ハーランド(ds)の存在感はいうまでもありません。
グイグイと疾走する機関車的ドラミングの響きが心地良いです。
4人のバランスの良さは抜群でホランドの才能に舌を巻きました。
ジャケットは2種類あるようですね。
(まじめ系)
(646) GARY BARTZ QUARTET / COLTRANE RULES
Tao Of A Music Warrior
gary bartz(as,ss,bcl,vo),
barney mcall(p), james king(b), greg bandy(ds)
andy bey(vo)(3), rene mclean(fl)(3),
makea keith(vo)(10), eric rose(vo)(10), ommas keith(vo)(10)
2011(2000,2008Rec)/gary bartz/
ゲイリー・バーツ(as)の今作はいいです。
録音は2000年で、2008年(加録音)、発売は2011年です。
ここからどういうことが推測されるのか?
実際、ジャズ・シーンは私が思っている以上に厳しいのかもしれませんね。
バーツほどのミュージシャンが自主制作盤ですよ。
レコード会社は受け付けず、どうしても出したいと思えば自分で出すしかなかった。
そういえば先日紹介したハリー・アレンの「ホギー・カーマイケル特集」も自主制作盤でした。
アルバムには制作者の意図があり、一つの流れがあるのにネットでは切り売りされます。
もう少し深読みするとそれがイヤなら自主制作する形の方がいいのかも・・・。
バーツは面白いですね。
幅広い音楽性の持ち主で音色は柔軟性に富み繊細かつ艶やかです。
アルト奏者でありながらソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンのテナー奏者の影響が大きいです。
特にコルトレーンには根っから陶酔しているのが分かります。
今作は前後の2曲は1分ほどなので実質9曲ですがコルトレーンが6曲を占めています。
(2)「I CONCENTRATE ON YOU」はコルトレーンの”バラード”を
(3)「DEAR LOAD」は”&ジョニー・ハートマン”を、(10)「KINDNESS」は”至上の愛”を彷彿とさせます。
(9)「PRISTINE」は4ビートでバッチリ決めていてソツがありません。
明らかにコルトレーン・トリビュート盤ですがバーツの「コルトレーン道」の全てが詰まっていました。
バーツの足跡を辿るのには最適で、まさに感動的な一枚です。
(まじめ系)
(645) MATT DUSK / MY FUNNY VALENTINE
The Chet Baker Songbook
matt dusk(vo), orchestra, etc
guest : arturo sandval(tp)(1,2,10), emile-claire barlow(vo)(4),
edyta gorniak(vo)(6),guid basso(flh)(11),
ryan ahlwardt(vo)(12), sara gazarek(vo)(13)
2013/Rombling records/
今年の初聴きはボーカル・アルバムになりました。
マット・ダスク・・・名前は知っていましたが聴くのはこれが初めてです。
今作もチェット・ベイカーの名前に引かれました。
マット・ダスクは1978年、カナダのトロント生まれ、今年で36歳になります。
オスカー・ピーターソンに師事した正統派のジャズ・ボーカリストです。
まずは丁寧な作りのしっとりとしたアルバムに仕上がっていると思いました。
実に聴き味が良いです。
「今作はチェットの有名曲を収録することではなく、音楽に対するチェットの情熱を形にしたもの」
「ライトを薄暗くして好きな飲み物を注いでリラックスして聴いてみて下さい」
マット自身がそう言っています。
たしかにチェットの有名曲もあるけれど、それほどチェットと馴染みのない曲もありますね。
曲によってゲストを配して飽きさせない構成になっています。
ベテラン・トランペッターのアウトゥーロ・サンドバル、エミール−クレア・バーロウ(vo)など。
マットは深味のある歌声で歌も抜群に上手いです。
なんといっても原曲のイメージを崩さず丁寧に端正に歌っているのがいいと思いました。
(1)〜(12)まではオーケストラがバック、(13)〜(15)はピアノとトランペットがバックです。
ゴージャスかつ細心、安定感、安心感があるし、ノスタルジックな感覚もあります。
マットはお洒落でカッコ良いので女性はイチコロじゃないかな。
ただ、(13)〜(15)はボーナス・トラックだそうでこういうやり方はどうかと思う。
でもこの3曲がまた良いのでなんとも・・・。
年の初めに聴くには最適のアルバムでした。
(くつろぎ系)
(644) DAVID NEWMAN QUARTET / STRAIGHT AHEAD
david newman (ts,as,fl)
wynton kelly(p,), paul chambers(b), charlie pership(ds)
1960Rec/Atlantic/
今作も再発廉価盤の一枚です。
デヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンは1933年テキサス生まれ、
2009年に75歳で亡くなっています。
デヴィッド・ニューマンといえばレイ・チャールス・バンドで知られたサックス奏者ですね。
ハンク・クロフォードと双璧です。
豪快なテキサス・テナーの流れを汲んでパワフル&ソウルフルな演奏スタイルの持ち主です。
テナー、アルト、フルートを駆使するマルチ・プレイヤーでもあります。
ジャンルを問わない幅広い音楽性を持ち、ノリもいいのでオルガン奏者との共演も多い。
しかしながら「Fathead」というニック・ネームはどうなんでしょうね。
親しみを込めた呼び方だと思うけど・・・。
今作はR&B系のニューマンがストレートなジャズに挑戦した作品です。
題名の「ストレート・アヘッド」は「ファットヘッド」に引っ掛けたネーミングかな。
ここではバックのウィントン・ケリー・トリオにも魅力があります。
ドラマーがジミー・コブからチャーリー・パーシップに変わっていますが、
予想通り、素晴らしい演奏を披露してくれました。
ウィントン・ケリーは勿論ですがポール・チェンバースが凄いです。
ニューマン2枚目のリーダー・アルバムは思ったよりずっと良かった。
全6曲は自身のオリジナル3曲とその他3曲の構成です。
(3)「Night Of Nisan」とバラードの(5)「Summertime」では達者なフルートが聴けました。
これがまた上手い・・・表現力豊かで驚きましたよ。
私的ベスト・トラックは(4)「Cousin Slim」ですが(1)「Batista's Groove」も聴きどころ。
ソウルフル、グルービーな雰囲気で聴き味は最高です。
ポール・チェンバースの惚れ惚れするベース・プレイが聴けました。
スイング感溢れるウィントン・ケリーのソロやバッキングも素晴らしくて、
オスカー・ピーターソン〜ウィントン・ケリーの流れが確かに存在したことを確認しました。
(くつろぎ系)
(643) DEWEY REDMAN QUARTET / MUSICS
dewey redman(ts,musette,vo,harp),
fred shimmons(p,), mark helias(b), eddie moore(ds,per)
1978Rec/Galaxy/
今作も再発廉価盤の一枚です。
フリー系のマルチ奏者のデューイ・レッドマンの作品です。
デューイは1931年テキサス生まれ、2006年に75歳で亡くなっています。
今をときめくジョシュア・レッドマン(ts)の父親と言ったほうが馴染みがあるかもしれませんね。
デューイはオーネット・コールマンの盟友でキース・ジャレットの「アメリカン・カルテット」の一員でもありました。
豪快なテキサス・テナーの流れを汲み西部の牧歌的ブルース・フィーリングを持っています。
多くの楽器を演奏するのはオーネットの影響でしょうか。
ここでもテナー・サックス、ミュゼット、ハープを駆使してヴォイス、ヴォーカルなども聴かせています。
今作は表題に「Musics」とあるようにデューイの音楽性が良く分かる作品です。
全6曲は自身のオリジナル5曲とその他1曲の構成です。
当時リーダー作までは手が回らなかったのでゆっくり聴く機会もなかったけど改めて「いいなぁ〜」と思いました。
多分、デューイの作品としては最も聴きやすいアルバムだと思います。
ガツンときたのがミュゼットの(4)「UNKNOWN TONGUE」でアフリカ回帰のサウンドです。
ギルバート・オサリヴァンのヒット曲、(3)「ALONE AGAIN」の朗々とした歌い方にも注目しました。
ボサノバ・リズムの(1)「NEED TO BE」、ハープは(5)「ONE BEAUTIFUL DAY」で聴けます。
その他にも聴きどころが多いです。
デューイの演奏を聴いていると、迷いがなくしっかりと大地に根を下ろしている感じがする。
自分の音楽を最大限に表現する・・・何をやりたいかがハッキリしています。
だからこそ強烈なメッセージとして聞き手に伝わってきます。
こんな父親の姿を見て育ったジョシュアが一筋縄ではいかないのも当然かも・・・。
私のイメージとしてギャラクシー・レーベルはもっと軟派だと思っていたので思いを新たにしました。
(まじめ系)
(642) JIM ROTONDI AND THE LOOP / HARD HITTIN' AT THE BIRD'S EYE
jim rotondi(tp,flh), eric alexander(ts), renato chicco(org), bernd reiter(ds)
2013/Sharp Nine/
ジム・ロトンディ(tp)を見直して以来、何枚かさかのぼって聴いていました。
今作はジムの最新盤でスイスのジャズ・クラブ、「The Bird's Eye」でのライブ盤です。
盟友エリック・アレキサンダー(ts)とのフロント2管にオルガン、ドラムスとの組み合わせ。
ギターが入っていないのが新味かもしれませんね。
全6曲はメンバーのオリジナル3曲にその他3曲の構成です。
ライブということで1曲が平均10分強の長丁場になっています。
内容は推して知るべしのネオ・ハード・バップ作品でジムとエリックの金太郎飴的演奏が聴けました。
お互いのアルバムで共演、さらにスティーブ・デイビス(tb)を加えた「One For All」の作品もあります。
共演作品が多いのでどうしてもそういう傾向になるのはやむを得ません。
ジムはここで新しく「The Loop」というバンドを組んだようです。
オルガン入りジャズとしてはスマートです。
近年はピアノ・ライクなオルガン奏者が多いような気がしますね。
ピアノとオルガン、どちらもそれなりにこなす二刀流プレイヤーが多いせいかもしれません。
(4)「Cry Me A River」はアップ・テンポでイメージがちょっと違いました。
(5)「Blue Moon」はバラード・・・エリック抜きのトリオ演奏でジムが大きくフューチュアーされます。
エリックはまた一段と表現力を高めています。
(中間系)
(641) STEWY VON WATTENWYL TRIO / LIVE AT MARIANS
Featuring Eric Alexander
stewy von wattenwyl(p), reggie johnson(b), kevin chesham(ds),
eric alexander(ts)
2009/B.J.L/
スチュイ・フォン・ワッテンヴィル(p)とエリック・アレキサンダー(ts)の組み合わせ。
この組み合わせは何枚かありますがその中の1枚です。
スイスのライブ・ハウス、「Marians」におけるライブ盤です。
スチュイは1962年、スイス生まれ、強烈なスイング感を持つピアニストです。
ヨーロッパのピアニストとしては珍しいタイプかもしれません。
主流派ジャズ・テナーの先頭を走るエリックとの相性はピッタリだと思います。
近年の私はエリックにゾッコンなのでどれを聴いても「いいなぁ〜」と思ってしまう。
波長がバッチリ合うんです。
エリックが影響を受けたテナー奏者達の手になる演目も興味深いものでした。
ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、スタンリー・タレンタインが選ばれています。
コルトレーンとロリンズはもちろんですがエリックの根っこにはタレンタインもいますね。
エリックのベストはバラードの(3)「All The Way」・・・まさに堂々たる歌いっぷりです。
スチュイが選んだピアニストはビル・エバンスで(5)「Very Early」でした。
でも私のイメージはマッコイ・タイナーで(1)「Fried Pies」はその真髄が聴けました。
エリックの師匠格のハロルド・メイバーンも十分に意識している気がします。
(6)「Sonnymoon For Two」ではスチュイのブルース・フィーリングが全開です。
全8曲の多彩な選曲はどれを聴いても聴き味は十分です
アップ・テンポで突っ走り、バラードでしっとり、ブルースもフォークソングもある。
ここでのエリック・アレキサンダーもやっぱり良かった。
その自在な表現力と艶やかな音色は「素晴らしい」としか言いようがありません。
(中間系)
(640) CEDRIC CAILLAUD TRIO / SWINGIN' THE COUNT
cedric caillaud(b), alvin queen(ds), patrick cabon(p),
china moses(vo),(5)
2013/Fresh Sound/
セドリック・カイラウド(b)は初見。
ピアノ・トリオのカウント・ベイシー・トリビュート盤は珍しいので手が伸びました。
ジャケットはベイシーの有名盤「エイプリル・イン・パリス」のパクリです。
著作権は大丈夫なのかと余計な心配をしてしまいましたよ。
全12曲はニール・ヘフティ、フランク・フォスター、クインシー・ジョーンズ作が中心、
「April In Paris」、「Lil Darlin'」、「Shinny Stockings」などベイシーのヒット曲も含まれています。
(5)「Lil Darlin'」はヴォーカル入りでそつがない構成です。
共演のドラマー、アルヴィン・クイーンはアメリカ生まれですがヨーロッパに移住して活躍中です。
まずは1曲目の音が出た瞬間にそのスイング感に驚かされると思います。
「ジャズはこれだよ、やっぱりこれなんだよなぁ〜」・・・「スイングしなけりゃ意味がない」
セドリックのベースは野太く、その安定したスイング感はレイ・ブラウンを彷彿とさせます。
よく伸びて、ブンブンと鳴り響くベース・プレイはホントに素晴らしいです。
アルヴィン・クイーンとのコンビネーションは抜群で(3)「Splanky」は二人のデュオです。
惜しむらくはピアノのパトリック・カボンに力が入り過ぎているところがあります。
普通に弾けばオスカー・ピーターソン系なんだけどベイシー・スタイルに過剰反応した感じがしました。
力が抜けたバラードの(7)「For Lena & Lenne」やエレピの(10)「Rate
Race」が持ち味だと思います。
私的ベストはベースのイントロから始まる(8)「Shinny Stockings」と冒頭の「April
In Paris」、
ヴォーカルの(5)「Lil Darlin'」もシブイ。
強烈なスイング感を持つピアノ・トリオが聴けました。
(くつろぎ系)
(639) BYARD LANCASTER QUINTET / IT'S NOT UP TO US
byard lancaster(fl,as), sonny sharrock(g),
jerome hunter(b), eric gravatt(ds), kenny speller(cong)
1966-1967Rec/Vortex/
今作もCDショップの廉価盤コーナーで見つけました。
フリー系のフルート、アルト・サックス奏者のバイアード・ランカスターの作品です。
バイアードは1942年生まれ、2012年に70歳で亡くなっています。
1960年代はフリージャズの嵐が引き荒れていた。
フリー・ジャズ・ファンも多かったのでジャズ喫茶では好むと好まざるにかかわらず聴かされました。
で、バイアード・ランカスターの名前もこのアルバムの存在も知っていました。
でも積極的に聴きたいと思わなかったのでじっくりと向き合ったのは今回が初めてです。
今作は中々に面白い作品でバイアードの音楽性がよく出ています。
アフリカ的、土着的なリズムとサウンドで叙情的な味わいもありました。
コンガの存在が実に効果的です。
オリジナルの(4)「JOHN'S CHILDREN」はジョン・コルトレーン、
(5)「MR.A.A」はアルバート・アイラーの名前が上がっていて彼のルーツを探ることができます。
フリー系のフルート、アルト奏者はエリック・ドルフィやオーネット・コールマンの影響は避けられません。
オリジナルもいいけれど聴きどころは2曲のスタンダードにありました。
(3)「MISTY」と(7)「OVER THE RAINBOW」をどう料理しているか。
一ヶ所に留まらずあちこち飛び跳ねる感じ・・・個性的で面白いです。
今ならどうっていうことはないけど当時は斬新な解釈と展開だったと思います。
共演者ではやはりソニー・シャーロックのプレイに注目しました。
シャーロックはギターのセシル・テイラー(p)ともいえる存在で強烈なエネルギーを発散します。
ちょっと気になったのは録音の終わりに余韻なく、ポツンと切れてしまうことです。
アトランティック傍系のヴォルテックス・レーベルも珍しいと思う。
(まじめ系)
(638) PHILIP DIZACK QUINTET / SINGLE SOUL
philip dizack(tp), ben wendel(ts),
eden ladin(p), joe sanders(b), eric harland(ds)
2013/Criss Cross/
フィリップ・ディザック(tp)を聴くのは2枚目です。
前回は20歳時の初リーダー作の「BEYOND A DREAM」(2005/Fresh Sound)でした。
フレッシュで瑞々しく勢いがありました・・・早くも8年が過ぎているんですね。
かなりイメージが変わったので驚きました。
今作は自身のオリジナル6曲とメンバーのオリジナル2曲とその他2曲の構成です。
最初にイントロ、最後のエリントンはトランペット・ソロのパフォーマンスです。
(3)「BENNY'S TUNE」はベースとのデュオ、(7)「BOOK OF STONES」はピアノレス・トリオ、
つまり一つの流れのしてのアルバム作りを意図したものだと思います。
その狙いが何なのかは残念ながら分かりませんが・・・。
全体的にエリック・ハーランド(ds)の存在が大きいです。
ディザックは 高音から低音まで、トランペットのコントロールは上手いです。
特に野太く、くすんだ音色に特徴があります。
ベン・ウェンデル(ts)とのフロント2管は重量級のサウンドを聴かせてくれました。
バラバラのようでバラバラでなく、まとまっているようでまとまっていないトータル・サウンドが魅力。
メンバーの出入りが激しく、組み合わせやリズムが目まぐるしく変わる感じがする。
この不安定で危うげな緊張感が現代のジャズ・サウンドの最先端かもしれませんね。
私的ベストは(4)「TAKE ME WITH YOU」で各人のソロはもちろんですがハーランドのドラムスが炸裂します。
(2)「JACOB AND THE ANGEL」の美しくクールな表情も聴きどころになりました。
軽く聴き流すわけにはいかない、久々に構えて聴くアルバムに出合った。
(まじめ系)
(637) FRANCESCO CAFISO QUARTET / MOODY'N
francesco cafiso(as),
dino rubino(tp), giovanni mazzarino(p), rosario bonaccorso(b)
2011/Verve/
フランチェスコ・カフィーソ(as)は収集対象の一人です。
デビュー時には天才の誉れが高かったけどまだ十代ではただ上手いだけと思って避けていた経緯があります。
しかし2010年発売の「4 Out」を聴いてその評価が一変しました。
力強く鋭角的なアルトの音色、アタックの強さ、表現力の多様さにたまげてしまいました。
驚異的なインプロビゼーションに鳥肌が立ちましたよ。
それからしばらくの間、さかのぼってカフィーソを聴いていました。
今作は2011年の作品でドラムレス・カルテット。
全10曲は自身のオリジナル4曲とその他6曲の構成です。
敬愛するチャーリー・パーカーの3曲が目を引きます。
これを買うのにあたって実はディノ・ルビノのトランペットに一抹の不安がありました。
2008年の「PORTRAIT IN BLACK AND WHITE」で懲りたからです。
実力差があり過ぎる・・・その時にはピアノに専念して欲しいと書きました。
たしかに成長のあとは見えますがまだまだだと思います。
なぜカフィーソが共演するのか?
二人がよほど気の合う親友同士でも作品作りとしては残念です。
でも、カフィーソのプレイは相変わらず素晴らしいです。
表題曲の(3)「Moody'n」はベースとのデュオですがその迫力に圧倒されてしまいました。
溢れ出る刺激的なフレーズは力強く、破壊力のあるアルト奏法というのがぴったりです。
これがカフィーソの神髄でやはり凄いと思いました。
続く(4)「In A Ghost Way Of Love」は印象的なテーマで心に残りました。
(8)「Secret Ways Of Inviolable Beauties」はピアノ、ベースとのトリオ演奏でじっくりと聴かせてくれました。
バラードの表現力に長足の進歩が認められます。
決めどころではルビノを抜いているので、先述の実力差うんぬんは「よく分かっているんだ」と思います。
カフィーソのオリジナルはひとひねりあって中々に面白くモンクの影響が強いと思う。
カフィーソの我が道を行くというスタイルはいいですね。
やりたいようにやる・・・決して大衆に迎合していません。
これでいいと思います。
(まじめ系)
(636) JIMMY SCOTT / THE SOURCE
jimmy scott(vo),
david newman(ts), eric gale or billy butier(g),
junior mance(p), ron carter(b), bruno carr(ds), etc
1969Rec/Atrantic/
先日、CDショップの廉価盤コーナーで見つけました。
孤高のヴォーカリスト、ジミー・スコットのアルバムです。
ジミー・スコットが一大センセーションを巻き起こしたのはいつだったろうか。
2000年頃にはCDショップに特設コーナーが出来るほどの大ブームになりました。
当時、ジミーはすでに75歳になっていたけど。
もちろん、ヴォーカル・ファンには以前からよく知られた存在だったです。
最初に聴いた時にその「魂を揺さぶる歌声」にショックを受けましたよ。
一度聴いたら忘れられない歌声・・・強烈な印象というほかありません。
どこまでも深くて重たい・・・こんなヴォーカリストがいたのかと思いました。
一枚を聴き続けるがつらくなるほどの歌手ってそういるものではありませんね。
ジミーはどんな歌でも自分のものにしてしまいます。
まさに「ワン・アンド・オンリーの世界」を持つ稀有のヴォーカリストです。
今作もどれも素晴らしい出来だと思います。
(1)「EXODUS」は映画:「栄光への脱出」の主題歌、
(5)「UNCHAINED MELODY」、(6)「DAY BY DAY」などでの独特のノリは感動的です。
バックにはデヴィッド・ニューマン(ts)、ジュニア・マンス(p)、エリック・ゲイル(g)など、
ブルース色の強いプレイヤーが参加しています。
それにしてもこのジャケットはどうにかなりませんかね。
ジャケットを見ただけで買いたくなくなる・・・。
まったくの無意味というか、無感動です。
(まじめ系)
(635) THOMAS ENHCO TRIO / JACK & JOHN
thomas enhco(p), john paitucci(b), jack dejohnette(ds)
2013/Eighty Eight/
トーマス・エンコ(p)は初見、1988年生まれ、フランス出身の現在25歳です。
トーマスは天才肌のようで2009年に21歳で初リーダー・アルバム、
2010年にはフランスの「ジャンゴ賞」で最優秀新人賞を獲得しています。
今作は3枚目のリーダー・アルバムです。
全8曲はオリジナル2曲とその他6曲の構成はバランスとしてはちょうどいい感じがします。
尊敬するジャック・デジョネット(ds)にジョン・パティトゥッチ(b)との共演で張り切ったのは想像にかたくありません。
このトリオはいいですよ・・・お互いの仕掛けに相手がどう反応してくるかを楽しんでいる。
いわばベテランと若手のせめぎ合いでその緊張感が最大の魅力です。
ドラムとベースのイントロから始まる自作の(1)「Gaston」を聴けばトーマスの才能を疑わないと思います。
瑞々しく美しいタッチと若手とは思えない意表を突くフレーズ、切れ味の良いピアノ音が飛び出てきました。
(3)「Time For Love」におけるバラード表現が素晴らしく、まだ20代半ばの年齢を考えると驚きです。
デジョネットの作品(4)「Ebony」は複雑なリズム変化の曲で一番ジャズ度が高いですが3人の絡みが面白かった。
(5)「Jack & John」ではデジョネットの繊細なドラムスが聴きどころになります。
やや暗めの(7)「All Or Nothing At All」の解釈と表現力も秀逸。
そのゆったりとしたスイング感はいかにも聴き味の良いピアノ・トリオという感じがします。
モンクの(6)「Pannonica」やショパンの曲(8)「Etude」もあって飽きさせません。
トーマスの根っこにはキース・ジャレットがいますがこれからどのように成長していくのか、楽しみな逸材です。
「フランスの貴公子」と聞いて思い出すのは「北欧の貴公子」ヤン・ラングレンですね。
デビュー時の雰囲気は似ているかもしれません。
ちなみにこの夏にトーマスのライブがありましたが見逃してしまいました。
「イケメン・ピアニスト」と聞いて「人気先行じゃないの」と過小評価したのを反省しています。
(中間系)
(634) HARRY ALLEN TRIO / I WALK WITH MUSIC
harry allen(ts), rossano sportiello(p), joel forbes(b)
2013/
久々にハリー・アレンの新作を聴いてみたいと思いました。
レギュラー・クインテットからギターとドラムスを抜いたトリオでホギー・カーマイケル作品集です。
カーマイケル特集というのは案外珍しいかもしれませんね。
ところでこれが不思議なアルバムです。
レコード会社がどこにも書いてありません・・・自主制作盤みたいな感じがします。
個人的な発想の私的録音という趣です。
プロデュースは演奏者3人で解説はホギー・カーマイケルの息子さんが書いています。
ハリー・アレンがメロディを忠実に追っています。
やっぱりこういう古風な雰囲気を出すにはハリーが最適だと思います。
ゆったりとした流れの落ち着いた仕上がりになっていてハリーのテナー・サックスが満喫できました。
有名曲のほか、普段めったに聴けない曲も入っています。
バラードがいいです・・・ひそやかにささやくように、時にムードたっぷりに歌う。
(3) 「I Get Along Without You Very Well」は抜群の上手さ。
(5)「The Nearness Of You」、(10)「Georgia On My Mind」には痺れた。
不思議といえばカーマイケル作品集に「Stardust」が抜けているのも相当変ですね。
意識的だと思うのでこの意図がいまひとつ分からない。
ファンに対しては”画竜点睛を欠く”ことになったと思う。
(中間系)
(633) KOJI MORIYAMA & TSUYOSHI YAMAMOTO TRIO / SMILE
森山浩二(vo)、山本剛(p)、井野信義(b)、大隈寿男(ds)
1977Rec/three blind mice/
森山浩二(vo)さんの2枚目のアルバムです。
私が森山さんを初めて聴いたのはもう35年以上前のことになります。
当時懇意にしていたジャズ喫茶のマスターに「Night And Day」というアルバムを紹介されました。
その歌声とスタイルは一度聴いたら忘れられない強烈な個性を放っていました。
ガーンときて日本にもこんなジャズ・ボーカリストがいたんだと思いました。
ただその時はボーカルにあまり興味がなかったのでアルバムを買うまでには至りませんでした。
でも、ず〜っと「あの時なぜ買ったおかなかったのか」と後悔していました。
後年何度かまた聴いてみたいと思ったからです。
彼のようなボーカリストが歌い続けられない日本の土壌は寂しいですね。
森山さんのアルバムはたった3枚しかなく、長い間復刻されませんでした。
*KOJI MORIYAMA / NIGHT AND DAY (1975/Three Blind Mice)
*KOJI MORIYAMA / SMILE (1977/Three Blind Mice)
*KOJI MORIYAMA / LIVE AT MISTY (1979/Think ! Records)
でも今回でようやくその3枚が手元に揃いました。
日本はやはりジャズ天国だと思います。
その時は入手できなくても10年、20年のスパンでみるとほとんどが再発されますから。
焦らずにそのチャンスを待てばいいんですよ。
この森山さんのアルバムはいい例になっています。
まさか3枚が揃うとは思ってもいませんでした。
内容は推して知るべしの満足のいくものでした。
山本剛・トリオをバックに独特のパフォーマンスを発揮しています。
私的にはアップ・テンポの曲がいいかな。
(4)「AROUND THE WORLD」における抜群のスイング感が素晴らしい。
その日本人離れしたスキャットが聴きどころです。
(7)「DAY BY DAY」はボサノバのリズムに乗って軽快な仕上がり。
随所できらめく山本剛さんのピアノも最高です。
(1)「LOVER COME BACK TO ME」はドラマチックな展開、
超スローで歌われる(9)「ALL OF ME」にも注目しました。
バラードの(2)「SMILE」、(3)「WHEN JOHANNA LOVED ME」、
(5)「I ONLY HAVE EYES FOR YOU」、(6)「THE VERY THOUGHT OF YOU」、
(8)「I DON'T KNOW WHY」など、
選曲も良く森山さんの実力を十分に感じさせるものです。
寄り添うような山本さんのピアノが心に沁みます。
(中間系)
(632) RUSSELL MALONE TRIO / TRIPLE PLAY
russell malone(g), david won(b), montez coleman(ds),
2010/MAX JAZZ/
ギターを聴きたいと思い、誰かいないかと探していました。
そういえばラッセル・マローンのアルバムをしばらく買っていないと気が付きました。
それならやはりトリオが聴きたいと思った。
ラッセル・マローンを最初に聴いたのはダイアナ・クラール(vo,p)盤でした。
ベニー・グリーン(p)やロン・カーター(b)などとの共演盤も聴いてきました。
マローンは超絶技巧の持ち主で私はギターのオスカー・ピーターソンと呼びたいです。
バド・パウエルでもいいけど。
その驚異的なテクニックが独学と聞いたらもう唸るしかありませんよ。
さて、今作ですが自身のオリジナル4曲とその他7曲の構成です。
オリバー・ネルソン、クインシー・ジョーンズ、ロン・カーター、
ジョン・ヒックスなどのジャズ・メンの曲を取り上げています。
題名の「Triple Play」は野球用語で三重殺のこと・・・ワン・プレーで3人をアウトにする。
めったに出来ない非常に難しいプレイです。
つまりマローンが難しいプレイをなんなくやり遂げていることを意味しているのか・・・。
たしかに1曲1曲を聴いていると安定感は十分で悪くありません。
でも全体を通すといまひとつ私の心に訴えかけてくるものが足りないのはなぜか。
どれも平均的な仕上がりなのでメリハリがつかない・・・頭抜けた何曲かが欲しいです。
マローンは気持が実にクールだと思います。
いつでも余裕十分で、決して熱くならないような気がする。
根っこにはウエス・モンゴメリーやジョージ・ベンソンがいると思うけどなぁ〜。
もっと全速力というか、燃える姿を見せて欲しいです。
(中間系)
ちなみにユーチューブでそのクールな表情と超高速で圧倒的な演奏が聴けます。
共演はベニー・グリーン(p)とクリス・マクドナルド(b)です。
ベニー・グリーンがオスカー・ピーターソンの再来と言われた理由も分かると思います。
アドレスはココです。
(631) CECILE McLORIN SALVANT / CECILE
cecile mclorin salvant(vo),
jean-francois bonnel(ts,cl), jacqueis schneck(p),
pierre maingourd(b), sylvain gevarec(ds), enzo mucci(g)
2011/AGATE/
セシル・マクロリン・サルヴァントはフランス系アメリカ人、現在23歳。
今作は21歳時の実質的なデビュー盤です。
先日、ジャズ友の間で話題になっていたヴォーカリスト。
私も「Xactly Like You」を試聴して驚いてしまいました。
声にハリがあって可愛らしく艶やか・・・ジャズ的美声といってもいいかも知れません。
リズム感も抜群で声量豊か、コントロールも上手いし表現力もある。
それもそのはず、ジャズ新人登竜門として名高い
「セロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンペテイション」の優勝者だそうです。
選曲は1930年代〜40年代の古いスタンダード・ナンバーが中心です。
これがまたシブい曲目が並んでいます。
先述の(1)「Xactly Like You」、(7)「No Regrets」、(9)「Easy To
Love」
は特にお気に入りで何度も聴いてしまった。
(11)「Anything Goes」の絶妙なノリは痺れるほどの素晴らしさ。
その他、バラードやブルースにも聴きどころは多いです。
古き良き時代の雰囲気をこれほど出せる若手女性歌手がいたのかと脱帽しました。
これで21歳なんてまったく末恐ろしいほどの才能だと思います。
それにバックのフランス人・クインテットとの相性と絡みがまたいいです。
スイング感溢れるノスタルジックなバンドがフランスにはあるんだなぁ〜。
大人のムード満点・・・スマートで洒落ています。
セシルを聴いていて私はスコット・ハミルトン(ts)のデビュー時を思い出しました。
温故知新というか、古さと新しさの混じり具合がちょうどいい按配です。
いずれにせよ大きな可能性を秘めた有望なヴォーカリストが現れました。
(くつろぎ系)
(630) ELIANE ELIAS / I THOUGHT ABOUT YOU
A Tribute To Chet Baker
eliane elias(vo,p), marc johnson(b),
steve cardenas(g), randy brecker(tp), oscar castro-neves(g),
victor lewis(ds), rafael barats(ds), marivaldo dos santos(per)
2013/Concord/
イリアーヌ・イリアス(vo,p)の新譜はジャズ友の評判も上々で気になっていました。
「チェット・ベイカーに捧ぐ」との副題も付いているので益々聴きたくなるので商売も上手いです。
チェット・ベイカーの退廃的なムードは望むべきもありませんが中性的な声質と言えないこともない。
どちらかというとメル・トーメに近いかも・・・。
ただ、ランディ・ブレッカーのトランペットが入った(2)「There Will Never Be Another You」、
(5)「That Old Feeling」、(11)「Just Friends」の3曲にチェットの面影を見ることができます。
私はイリアーヌのアルバムをけっこう聴いている方だと思っています。
今作は選曲も良く私的好みからいうと1、2にランクされる作品です。
つまり、チェット云々ではなくてイリアーヌのスタンダード作品集ということなら凄く良かったです。
本来のイリアーヌのピアノには突っ張っていて男勝りで硬派のところがあります。
才気に溢れ、切れ味も鋭く、近寄ったらそのまま切られそうな気がします。
でも、ここではそれをグッと抑えている感じで軽い演奏スタイルが新鮮です。
気だるさはボサノバ唄法からお手のものだし、間奏のピアノもオーソドックスで素晴らしいです。
(4)「Embraceable You」、(6)「Everything Depends On You」、
(8)「Let's Get Lost」、(1)「I Thought About You」、
(9)「You Don't Know What Love Is」、(13)「Just In Time」などの仕上がりは上々、
その他どれを聴いても味がいいので感心してしまった。
いかにもレトロな雰囲気はウイスキー片手に聴いても最高だと思うよ。
それにしても前夫のランディ・ブレッカーと現夫のマーク・ジョンソンを従えるってどうなんでしょうね。
度胸があると思うし、やっぱり姐御肌なのかもしれません。
男ならとてもそんなことはできないもの。
ランディには多分、「チェットそっくりにやってね〜」って注文を付けたに違いありませんよ。
だから、トランペットが入るとグッと盛り上がります。
(5)「That Old Feeling」のランディのプレイには、いかにもそんな感じがしました。
(くつろぎ系)
(629) ERIC ALEXANDER QUARTET / TOUCHING
eric alexander(ts),
harold mabern(p), john webber(b), joe farnsworth(ds)
2013/HighNote/
エリック・アレキサンダーのレギュラー・カルテットによるバラード集です。
また同じ傾向かなと思いながら聴き始めてみると違和感がありました。
いつものエリックらしくありません。
パワフルでもエネルギッシュでもなく、艶やかさも感情移入も少ない気がする。
外向きというより内向きのアット・ホームで寛いだ感じの私的録音という趣きです。
スタンダードのバラード作品は日本企画盤に多いけどそれとは一線を画します。
思い入れが少なく感情を表に出さずに比較的あっさりと軽く歌っている感じがします。
人に聴いてもらうというより自分自身が演奏を楽しんでいる・・・まるで一人カラオケのよう。
しかしながら一見軽そうに見えて、よく聴いていると中味は濃いです。
それと日本盤と違って有名曲はやっていません。
選曲が抜群にいいのはプロデューサーの力だと思います。
美しいメロディを持つ実にいい曲を選んでます。
(2)「GONE TO SOON」〜(3)「THE WAY SHE MAKES ME FEEL」の流れはなんかホロリとなってしまった。
(4)「DINNER FOR ONE PLEASE , JAMES」はピアノとのデュオですが雰囲気あります。
私も馴染みのあるのは(6)「I'M GLAD THERE IS YOU」だけでしたが、これも良かった。
この曲は大好きなのでどうしても外すことはできません。
表題曲の(1)「TOUCHING」、コルトレーンの(5)「CENTRAL PARL WEST」、
(7)「THE SEPTEMBER OF MY YEARS」、(8)「OH GIRL」にもそれぞれ聴きどころがありました。
ハロルド・メイバーン以下のメンバーもあくまで控え目で脇役に徹しているのがいいです。
ソロがエリックとメイバーンの二人だけというのも珍しい。
メイバーンも抑え気味ですがさすがに各所でキラリと光る演奏を聴かせてくれています。
トリオのバッキングが最高なのでレギュラー・カルテットならではの安定感がある。
ここには完全なる「エリック・アレキサンダーの世界」が広がっています。
フレージングの素晴らしさには息を呑む・・・。
「いいねぇ〜」、ゆったりとしたバラード演奏はすごく落ち着きます。
じんわりと心に響いてきます。
今までエリックにはこれほど落ち着きを感じさせるアルバムはなかったと思います。
いわばエリックの異色作といえます。
(中間系)
(628) JIM ROTONDI QUINTET / 1000 RAINBOWS
jim rotondi(tp), joe locke(vib),
danny grissett(p), barak mori(b), bill stewart(ds)
2011/Positone/
ジム・ロトンディ(tp)のリーダー作を買うのは初めてです。
先日聴いたエリック・アレキサンダーの「Alexader The Great」(2000)のプレイが印象的でした。
今まではあまり印象に残っていなかったので認識を新たにしました。
もちろん名前は知っていたし、聴いたこともありますよ。
エリックやデヴィッド・ヘイゼルタイン(p)などとの「ワン・フォー・オール」のメンバーですね。
ロトンディは1962年生まれの51歳、すでにベテランの域に達しています。
ロトンディを聴くにあたってまずはワン・ホーン・アルバムを聴きたいと思いました。
それで選んだのがこのアルバムです。
ジョー・ロックのヴァイブラホンが入ったクインテットはメンバー的にも面白そうでした。
ロトンディは切れ味も鋭いハード・バッパー・・・聴いていて気持がいいです。
最大の魅力はトランペットの素直な音色だと思います。
小細工なしの爽やかで明るいトランペットが高らかに響く。
けれん味のない奏法でラッパが実によく鳴っています。
テンポの速い曲になるとよりこの奏法が生きてきます。
ジョー・ロックは案外に硬質でクールなヴァイブ奏者と思っています。
ロトンディとはいわば陽と陰、明と暗の組み合わせですがこのバランスが聴きどころになりました。
この二人がダニー・グリセット(p)、バラク・モリ(b)、ビル・ステュアート(ds)のトリオに乗る構図です。
表題曲の(4)「1000 RAINBOWS」はウエス・モンゴメリー(g)の弟のバディ・モンゴメリー(p,vib)の曲。
バディの曲を取り上げるのは珍しいですがこれはジョー・ロックの選曲でしょうね。
私的ベストトラックは(5)「CRESCENT STREET」かな。
バラク・モリの強力なウォーキング・ベースに乗ってロックとロトンディ、グリセットのソロが炸裂します。
(6)「BORN TO BE BLUE」ではたっぷりのバラード演奏が聴けました。
名義はジム・ロトンディだけど実質的にジョー・ロックとの双頭バンドだと思います。
ところでバラク・モリって武骨な感じがするけど面白いベーシストですね。
(中間系)
(627) CHARLES EARLAND TRIBUTE BAND / KEEPERS OF THE FLAME
joey defrancesco(org), eric alexander(ts), jimes rotondi(tp),
pat martino(g)(3,5,8), bob devos(1,2,4,6,7,8),
vincent egtor(ds), kevin jones(per)(3,4,6,8)
2002/High Note/
先日、エリック・アレキサンダーの作品を紹介した時にチャールス・アーランドの名前がありました。
気になって見ていたら今作品の存在を知りました。・・・チャールス・アーランド・トリビュート・バンド。
オルガンにジョーイ・デフランチェスコ、フロントにエリック・アレキサンダー(ts)とジム・ロトンディ(tp)の2管、
ギターにパット・マルティーノとボブ・デヴォスが参加しています。
アーランドを偲ぶにふさわしいソウル&ファンキー&ダンサブルな演奏を繰り広げています。
いずれもノリの良い曲で自然に身体が揺れてくる感じです。
(3)「WHAT LOVE HAS JOINED」のグルーブ感は最高!・・・続けて何回も聴いてしまった。
ジョーイ、エリック、パットは安定感十分、ジム・ロトンディのラッパの切れ味に注目しました。
ボブ・デヴォスのリズム&ブルース系のギター・プレイには色気があります。
肩の凝らない作品なのでリラックスして聴きましょう。
ルー・ドナルドソン・グループ以来、楽しませてくれたアーランドに敬意を表してのドラ盤入りです。
(くつろぎ系)
(626) HIDEKO SHIMIZU & NORIO MAEDA / MIGHT AS WELL
清水秀子(vo)、前田憲男(p,arr)、斉藤誠(b)、関根英雄(ds)
数原晋(tp)、奥村晶(tp)、鈴木正則(tp)、Neil Stalnaker(tp)
平原まこと(as)、上里稔(as)、Andy Wulf(ts)、つづらのあつし(ts)、原田忠幸(bs)、
Fred Simmons(tb)、三塚知貴(tb)、松尾直樹(tb)、堂本雅樹(tb)
2012/Dekoration/
清水秀子(vo)さんと前田憲男(p,arr)さんのコラボレーションです。
近頃、これほど豪華なCDには中々お目にかかれませんね。
全8曲はビック・バンド4曲、トリオ4曲の構成です。
清水秀子さんはマーサ三宅さんの愛弟子で正統派のジャズ・ヴォーカリストです。
抜群の歌唱力と表現力を持っているので安定感は十分、安心して聴いていられます。
端正で深く丁寧に歌うところが魅力で原曲の良さを存分に引き出す唱法が持ち味です。
声量も豊かで声質も好み、歌は上手いし味もあります。
加えてファッション・センスも素晴らしくて、ライブに行くと熱心なファンも数多いです。
多くの色んなプレイヤーと共演して益々幅を広げていると思います。
デコさんは何年か前に渋谷毅(p,arr)さんのバンドでエリントン集に客演しました。
今度は前田憲男さんのビック・バンドと共演と精力的な活動を続けています。
最近の日本ではビック・バンドをバックに歌うのは珍しいんじゃないかな。
それだけでも実に贅沢なアルバムだと思います。
ここは選曲も魅力で古き良きスタンダード・ナンバーが聴けました。
(3)「It Had To Be You」は好きな曲、(4)「It Might As Well Be Sprinng」や
(5)「I've Got The World On A String」も歌われるのは珍しいと思います。
前田さんのアレンジ、特にバックで奏でるピアノの存在感は凄いと思う。
奥行きがあって懐の深い演奏を聴かせてくれました。
ただ一つの弱点は収録時間が極端に短いことです。
もっと聴きたかったなぁ〜。
32分弱はいかにも短すぎると思います。
高齢の前田さんの体調を考えるとやむを得ない部分があったのかもしれませんね。
余談ですが、以前、この二人のライブを見たことがあります。
普通、ボーカルのバッキングは縁の下の力持ちとか、
後ろからそっと支えるというような表現をしますが前田さんは明らかに違っていました。
ボーカルと一緒にピアノもグーッと盛り上がっていくんです。
これは本当に素晴らしいことだなぁーと思いました。
アンコールに応えて、「これからみなさんの知っている曲を演奏します」と前田さんが言いました。
何だろう?・・・観客はシーン・・・始まったのは「枯葉」・・・
スーッと引きずられて取り込まれ、ポイと放され、またフッと戻るような凄い感覚の枯葉が聴けました。
天才音楽家、前田憲男がそこに居た・・・その音の魔術に心底翻弄されてしまった。
(くつろぎ系)
(625) JARED GOLD TRIO / INTUITION
jared gold(org), dave stryker(g), mcclenty hunters(ds)
2013/Positone/
ジェアド・ゴールドは初見、新進のオルガン・プレイヤーということで気になりました。
顔もちょっと濃い感じだし・・・。
全9曲はメンバーのオリジナル6曲にその他3曲の構成です。
キャロル・キングの曲が2曲含まれているのが目を引きました。
ジェアド・ゴールドは新しいタイプのオルガニストかもしれませんね。
先進のオルガン奏者はラリー・ヤング(org)の影響は避けられない。
ジェアドのオルガンはピアノ的で音使いが多彩です。
ギターとのユニゾンが新鮮でタイトなリズムに乗ったロック調の演奏を繰り広げています。
ゆったりとしたブルージーなオルガン・サウンドを期待していると肩透かしを食います。
急速調の演奏が断然いいのでオルガン・トリオのイメージが狂わされました。
オルガン、ギター、ドラムスはオルガン・トリオのオーソドックスな組み合わせです。
ギターのデイブ・ストライカーはスティープル・チェース盤で聴いたことがあるけどあんまり印象に残っていなかった。
ストライカーの向こう側にはパット・マルティーノ(g)の顔が見えます。
ストライカーの出番も多くてジェアドとの双頭バンドと言ってもいいと思います。
ベストは超高速の(3)「PRO ZECA」です。
こんなに速いオルガン・トリオの演奏は聴いたことがありません。
バックのマックレンティ・ハンターズの激しいドラミングにも驚きました。
ドラマーが前面に出てくる・・・多弁、手数の多さは現在のジャズの流行ですね。
ここにこのトリオの特徴が濃縮されていると思います。
キャロルの大ヒット曲(5)「YOU'VE GOT A FRIEND」はバラード演奏で一息入りました。
オルガン奏者は中々出てこないので貴重だと思います。
(中間系)
(624) ERIC ALEXANDER QUINTET / ALEXANDER THE GREAT
eric alexander(ts), jimes rotondi(tp),
cherles earland(org), peter bernstein(g), joe farnsworth(ds)
2000(1997Rec)/High Note/
エリック・アレキサンダーは今一番好きなテナー・サックス奏者です。
収集対象ではありますが一気に集めるということではなく、少しづつ買い足している状態です。
今作は2000年のHigh Note作品。
自身のオリジナルが2曲、その他6曲の構成。
ベテラン・オルガン奏者のチャールス・アーランドをフューチュアーしたアルバムです。
ソウルフル&ダンサブルの権化のアーランドとハード・バップの雄エリックの組み合わせ。
エリックもアーランドの作品に参加していて気心は知れています。
ここでの一番の魅力はエリックの勢いです。
この頃のエリックを聴いていると明らかに成長途上にあり、一作一作の伸びしろが凄い。
抜けるところが少なくなり確実性を増しています。
着実に力強くテナー・タイタンへの階段を上っている・・・まるでその足音が聞こえるようです。
切れ味鋭いジム・ロトンディ(tp)の好演もあってハード・バップとしては一級品です。
ロトンディのラッパがよく鳴っています。
今まではあまり印象に残っていなかったので認識を新たにしました。
ピーター・バーンステインは存在感のあるギター・プレイを展開。
ただ、オルガン・ジャズの持つソウルフルやファンクな味わいは今ひとつでした。
オルガン入りにしてはスマートな感じ・・・共演者を見てもしかたがないところかな。
見方を変えるとだからこそいいアルバムと言えるのかもしれません。
ちょっと異質かと思えるアーランドが健闘しているのはさすが。
・・・彼の演奏が聴けて良かった・・・。
多分、今作がチャールス・アーランドの最後の作品になったと思うからです。
ここでのエリックも良かった。
(中間系)
(623) KAREN SOUZA / HOTEL SOUZA
karen souza(vo)
2012/Music Brokers/
カレン・ソーザは初見、これは2枚目のアルバムだそうです。
ジャズ仲間で話題になっていて、セクシーな歌声と聞いたら是非とも聴いてみたいと思いました。
カレンはアルゼンチン出身のようですね。
最近、アルゼンチン・ジャズを聴いているところなのでちょうど良かったです。
最大の特徴はその声・・・気だるく、かすれたような声で耳元で囁かれたら参る。
ジャズやボサノバにはぴったりの声質で普通に歌えばそのままジャズやボサノバになる気がする。
今作はいかにもそんな感じで、歌い方があっさりと自然体であまり作為的でないのがいいなぁ〜。
この声であんまりディープに歌われてしまうと興醒めするから。
ということでクールでスマートなウエスト・コースト・ジャズとの相性はいいと思います。
私的ベストは(8)「I'VE GOT IT BAD」・・・バックのサウンドとの絡みがセクシーで痺れた。
ジャズ・ボッサの名曲(10)「DINDI」、洒落た味わいの(1)「PARIS」も聴きどころになります。
カレンは案外に可愛らしく、心地良く耳に響いて癒し系にもなっています。
スーッと心に入ってきた。
ジャケットは大人の女、妖艶、セクシーですが中味はまだ純なんじゃないかな。
この方向性は変わって欲しくないけど・・・・・。
鼻の下が伸びたのは近年だとカナダのソフィ・ミルマン以来です。
こういうのを聴くとジュリー・ロンドンは不滅だと思いました。
(くつろぎ系)
(622) MARIANO LOIACONO QUINTET / WHAT'S NEW ?
mariano loiacono(tp,flh), gustavo musso(ts),
francisco lo vuolo(p), jeronimo carmona(b), pepi taveira(ds),
guest: sebastian loiacono(as)(2,6,7), ramiro flores(as)(4,7)
2011/RIVO RECORDS/
先日、アルゼンチンのテナー奏者、リカルド・カヴァリを紹介しました。
今作はアルゼンチン・ジャズの第二弾ということになります。
マリアノ・ロイアコノと読むのかな・・・トランペッターの作品です。
全8曲はオリジナル1曲にその他7曲の構成です。
中々に興味深い選曲だと思います。
基本はクインテットですが曲によりゲストが入ってセクステットになります。
内容は純ハード・バップでジャム・セッションの一コマをそのまま切り取ったかのようです。
演奏を楽しんでいる・・・リラックスしてくつろいだ感じが伝わってきました。
あんまり作為を感じさせない録音でスタジオ収録とは思えない臨場感があります。
まるで目の前で演奏しているかのようなリアリティがありました。
ライブ的でいささか粗っぽい作りですが熱意と勢いを感じる作品です。
聴いていると古き良き時代を思い出す・・・往年のハード・バップの味わいが楽しめます。
アルゼンチン・タンゴで音楽の下地は十分、ジャズが盛んなのも納得できますね。
聴きどころは表題曲の(3)「What's New」と続くオリジナルの(4)「Connecting」になるかな。
前者はゆったり聴かせるバラードで後者はどこかで聴いたことのあるような軽快なブルースです。
(5)「I Fall In Love Too Easily」」のフリューゲル・ホーンやピアノ・ソロもシブい。
ホーン奏者はラテン系の熱いプレイ、ピアニストはヨーロッパ系のスマートさを持っている。
アルゼンチン・ジャズはこのバランスが絶妙といえます。
(中間系)
(621) PAUL GRABOWSKY & BERNIE McGANN / ALWAYS BALLADS
paul grabowsky(p), bernie mcgann(sax),
philip rex(b), simon barker(ds)
2006/ABC Jazz/
オーストラリア・ジャズの一枚です。
「Always Ballads」とあるようにスタンダードのバラード集です。
勉強不足で両者共に初見でしたがあまりの内容の良さに驚きました。
オーストラリアのベテラン・ピアニスト、ポール・グラボウスキーと
ベテラン・サックス奏者、バーニー・マッガンの組み合わせです。
最初にジャケットを見た時に暗い感じのデュオ・アルバムかと思いました。
それで何度か手に取ったり棚に戻したりしたんだけど買って良かったです。
聴いてみると極上のワン・ホーン・アルバムが隠れていました。
この二人のコラボレーションは本当に素晴らしいです。
ベテランのスタンダード作品集にありがちな陳腐な内容は微塵もありません。
抜群のタイミングとタイム感覚・・・その聴き味の良さについ耳を傾けてしまう。
しっとりと落ち着いた表情を見せながらも各々の演奏が個性的だからです。
心に沁みるというよりは心に響いてくるものがありました。
マッガンはリー・コニッツ風味、実にクールでモダンなアルト・サックス奏者でした。
さらにあちこちでジョニー・ホッジスやポール・デスモンドの味も感じました。
歌うように吹く・・・テクニックも抜群で時々テナー・サックスのようにも聴こえます。
グラボウスキーの美しくも切れ味鋭い、よくスイングするピアノにも魅せられました。
多分、ピアノ・トリオ・ファンにはよく知られた存在なんでしょうね。
1曲目からグイと引き込まれて、心を鷲づかみにされるのは必定です。
スタンダードが新しい感覚で蘇ってくる。
これには参ったなぁ〜。
真に「味わい深いアルバム」ってこういう作品だと思います。
(中間系)
(620) AMBROSE AKINMUSIRE QUINTET
/ WHEN THE HEART EMERGES GLISTENING
ambrose akinmusire(tp,voice), walter smith V(ts)(1,2,4,6,10,12)
gerald clayton(p), harish raghavan(b), justin brown(ds)
2011/Blue Note/
遅ればせながら、注目のアンブローズ・アキンムシーレ(tp)を聴いてみました。
最近ちょっとトランペットが聴きたい気分なんです。
今作はアンブローズの2枚目のリーダー・アルバムです。
全13曲は2曲を除いて自身のオリジナルで曲によってメンバーの組み合わせが変わります。
アンブローズはカリフォルニア州のオークランド出身の現在31歳、
この作品の吹き込み時は29歳でした。
若手ジャズ・マンの登竜門のモンク・コンペ優勝者でもあります。
つまり実力は折り紙付きです。
サウンドは一見おどろおどろした、お化けが出てきそうな感じがしました。
聴いていると何か出てくるかもしれないという不安と緊張感がありました。
アンブローズは語るように自在にトランペットを操る・・・表現力は抜群です。
1曲目の「Confessions」を聴いただけで驚きました。
強烈な印象を残す凄いトランペッターが現れました。
先進のジャズ・トランぺッターとしては久々に出現した改革派の新星かもしれませんね。
ルーツはマイルス・デイビス〜テレンス・ブランチャードでしょうか。
マイルスやテレンスに似た創造性と語りかけるようなメッセージ性を持っています。
聴いていると強いメッセージを突き付けられているような気がする。
ただ1曲のスタンダードに「What's New」を選んだのもそんな意図があると思います。
このようにメッセージ性のあるジャズを聴くのは久し振りかもしれない。
サウンドには後期マイルス・クインテットに通じる何かを感じました。
迷い、焦燥、混沌とした不安の中でギリギリ調和している感じが何とも言えません。
普通は分散と集合を繰り返しますが分散したまま終わるという感じもあって新鮮です。
メンバーそれぞれに力があってバランスもとれています。
ウォルター・スミス(ts)とジェラルド・クレイトン(p)はすでに実績も十分です。
ハリシュ・ラガバンはブンブンと鳴り響く野太いベース・プレイで迫る。
近年のサウンドの決め手はドラムスになることが多いと思っています。
ドラマーがどれだけ多弁になれるか、存在感を出せるのか、を問われています。
それによってサウンドのイメージがガラッと変わってしまいます。
ここでのジャスティン・ブラウンもその例に漏れず猛烈なドラミングを聴かせてくれました
アンブローズが持つ独自のサウンドはいわゆる玄人受けするジャズです。
多くのジャズ・ファンに受け入れられるかといえばむずかしいかもしれません。
(まじめ系)
(619) STANLEY TURRENTINE SEXTET / DON'T MESS WITH MISTER T.
stanley turrentine(ts), bob james(p,elp), eric gale(g),
richard tee(org), ron carter(b), idris muhammad(ds), plus ensemble
1973/CTI
スタンリー・タレンティン(ts)の代表作の一枚です。
何を今さらという感じですが聴きたくなって買いました。
もちろんLPでも持っていますがCDには追加収録という大きな付録が付いています。
今作は(6)、(7)、(8)がそう。
特に気になったのは(7)「MISSISSIPPI CITY STRUT」です。
ビリー・コブハム(ds)の曲を取り上げるのは珍しいから・・・お蔵入りになった理由は何か?
よく聴いてみたけどほとんど遜色なかった・・・好みか、ほんのちょっとの差なんだろうね。
全員ノリノリで楽しい演奏、リチャード・ティーのオルガンもカッコいいし・・・。
続くボブ・ジェームスのバラード、(8)「HARLEM DAWN」も良かった。
ここでのタレンティンのプレイも聴かせる。
実は私には若い頃に苦手としたテナー奏者が二人いました。
一人はデクスター・ゴードンで、もう一人がこのスタンリー・タレンタインです。
濃厚な味で、しつこいというか、くどいというか、・・・なんともまとわり付かれるようでイヤだったです。
でも、長いブランクを経て、また本格的に聴きだした50過ぎてからかな、その評価が一変しました。
特にこのタレンティンには参ったなぁ〜・・・どっぷりとハマりましたよ。
ソウル・ブルース感はもちろんですが同時にある種のスマートさもあったんですね。
若い頃はその魅力に全然気が付きませんでした。
当たり前ですが実に達者で上手いテナー奏者です。
今作はCTIにおける「シュガー」と並ぶ代表作の一枚で私はこちらの方が好きです。
ボブ・ジェームス(elp)、エリック・ゲイル(g)、リチャード・ティー(org)も聴きどころになっています。
(くつろぎ系)
(618) FERENC NEMETH QUARTET / TRIUMPH
ferenc nemeth(ds), joshua redman(ts,ss), kenny werner(p), lionel loueke(g),
barbara togander(voice), Juampi di leone(fl), carlos michelini(cl),
martin paotyrer(bcl,bs), richard nant(tp,flh), maria noel luzardo(bassoon)
2012/Dreamers Collective Records/
新感覚ドラマー、フェレンク・ネメスの新作を買ってみました。
狙いはジョシュア・レッドマン(sax)とケニー・ワーナー(p)という才人2人との共演です。
まぁ、一筋縄ではいかない作品というのは最初から分かっていました。
予想通りの個性的なサウンドで好き嫌いがハッキリと分かれる作品だと思います。
全てフェレンクのオリジナルで占められた意欲作です。
ジョシュアはともかく先進のドラマーがなぜワーナーを選んだのか?
ワーナーがそれだけの幅広い音楽性を持っている証拠ですね。
ほとんど違和感は感じられなかった。
ここでもやはりジョシュアの革新的なプレイは素晴らしいと思いました。
特に「Interlude 2」が聴きどころになります。
ギターのリオーネル・ルエケも独特の雰囲気を持っていてその存在感に注目しました。
フェレンクの目指すサウンドにはリオーネルは必要不可欠のギタリストだと思います。
フェレンクとが繰り出す多彩なリズムに乗って各人のソロが乗るという構図です。
「Interlude 1,2,3,4」はそれぞれギター、サックス、ドラムス、ピアノがフューチャーされていて、
「Hope 1,2」は組曲風でリズム感が面白いです。
現在のフェレンクの音楽性を表した作品。
コンテンポラリーなサウンドもあり色々と挑戦しています。
ただちょっと凝った内容なのですんなりと聴けるわけではありません。
聴く人を選ぶアルバムでもあります。
(まじめ系)
(617) JUNKO KOIKE QUINTET / UH HUH !
keiji matsushima(tp), yoshiyuki yamanaka(ts),
junko koike(p), koji yamashita(b), junji hirose(ds)
1999/SONOKA
小池純子・クインテット・・・今作も発売時に気になりながら忘れてしまったアルバムです。
近年こういうことが多いので困ったものです。
でも先日中古盤コーナーで見つけた時には未開封盤だったのでラッキーでした。
ここはメンバーも興味深いですね。
フロント2管が松島啓之(tp)さんと山中良之(ts)さん、ラッパ&テナーはジャズの王道、
リズム・セクションに山下弘治(b)さんと広瀬潤次(ds)さんという組み合わせです。
顔ぶれを見ただけで生粋のハード・バップ・アルバムというのが一目瞭然です。
全10曲はオリジナル4曲とその他6曲の構成です。
ジミー・ヒースが2曲とタッド・ダメロンが選ばれたところに小池さんのこだわりを感じます。
前半4曲にオリジナルを並べたのも面白い試みだと思いました。
それぞれがオトナなので安定感と安心感を感じる作品です。
とても聴きやすく心地良いノリ、特筆すべきは小池さんのブルース・フィーリングかな。
黒く粘っこいピアノ・・・小池さんの発するオーラがアルバム全体を覆っています。
ソロ・ピアノで演奏される(4)「BLUES FOR CHILDREN」は強烈な印象を残しました。
(4)「MATCHAN-NO BALLADE」では松島さんのバラード・プレイが冴える。
(中間系)
(616) ELVIN JONES QUARTET / WHEN I WAS AT ALSO MOUNTAIN
elvin jones(ds), sonny fortune(fl,ts), takehisa tanaka(p), cecil mcbee(b)
1993/enja/
今作もまた去年のベスト3に選ばれた一枚です。
田中武久さんは大阪ジャズ・ピアニスト界の重鎮です。
以前、ジャズ仲間に紹介されて1枚だけ聴いたことがあります。
*TAKEHISA TANAKA TRIO / TOO YOUNG(2008/Jewel Sound)
田中武久(p)、井上陽介(b)、大坂昌彦(ds)
そんなことでこんなアルバムがあるなら是非聴いてみたいと思いました。
田中武久さんが持つフィーリングが素晴らしいのでエルヴィン・ジョーンズも魅せられました。
それがこのアルバムを作るキッカケになったと思います。
エルヴィン名義ではあるけれど主役は明らかに田中さんです。
エルヴィン、セシル・マクビー(b)、ソニー・フォーチュン(ts,fl)は重量級プレイヤー。
それに田中さんが合うのか?・・・一抹の不安がありました。
「柔よく剛を制す」・・・聴いてみたらそんな懸念は一発で吹っ飛んでしまいましたよ。
田中さんの真髄は実は硬派にあると思った次第です。
私が特に注目したのは(3)「YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS」です。
これがまた素晴らしい出来で、ここで田中さんが醸し出す雰囲気は最高です。
田中〜セシル〜エルヴィンのトリオにフォーチュンが加わるカルテットはどれも聴き応えが十分です。
(中間系)
(615) NIKOLAJ BENTZON TRIO / TRISKELOS
nikolaj benton(p), thomas ovesen(b), jonas johansen(ds)
lisbeth diers(per)(on 10)
2013(1991Rec)/Music Mecca/
CDショップの売れ筋No.1にランクされていたので買ってみました。
イラスト・ジャケットに惹かれたのも事実ですが・・・ニコライ・ベンツォン・トリオの1991年作品。
私には初見でしたがピアノ・トリオ・ファンの間では90年代から話題になっていたようです。
聴いてみるとさすがに評判になるだけのことはあると思いました。
実に気持の良いピアノが聴けました・・・まったく世の中は広いですね。
(12)「YEAH !」はただひと言叫んでいるだけなので実質11曲、オリジナル7曲とその他4曲の構成です。
スタンダードより(3)〜(8)のオリジナルの方が伸び伸びとしていて断然いい感じです。
若さにまかせて自由自在に突っ走ってる姿が伝わってきました。
(4)「HANDCUFFED」の疾走感、(8)「FUNCUS」における強靭なタッチが聴きどころになるかな。
(9)「I GOT IT BAD」、(10)「MASSAGE IN MORSE」のバラード系も聴かせます。
(3)「THE OPTIMIST」ではフェンダー・ローズを使用してひと味違う方向性も見せてくれました。
曲想も豊かで飽きのこない構成は全体的なレベルが高い一枚です。
日本のピアノ・トリオ・ファンの見る目は確かだと思う・・・さすがだと感心しました。
(中間系)
(614) MICHAEL RODRIGUEZ QUINTET / REVERENCE
michael rodriguez(tp,flh), chris cheek(ts),
gerald clayton(p), kiyoshi kitagawa(b), rodney green(ds)
2013/Criss Cross/
マイケル・ロドリゲスはマイアミ出身の33歳になるトランペッターです。
20代前半からキャリアを重ねてきて満を持しての初リーダー・アルバムを出しました。
全7曲は自身のオリジナル5曲とその他2曲の構成です。
1曲平均8〜9分でたっぷりとそのサウンドを聴くことが出来ました。
CDショップで手に取ってすぐに買おうと思ったのはここにクリス・チーク(ts)が参加していたことにあります。
注目のジェラルド・クレイトン(p)と北川潔さん(b)、ロドニー・グリーン(ds)がバックです。
解説を見るとロドリゲスはアフロ・キューバン&アフロ・ラテン・ジャズ・シーンでの活躍が目立ちます。
最も影響を受けたトランペッターとしてディジー・ガレスピー、フレディ・ハバード、
キューバのアルトゥーロ・サンドヴァルの名前が上がっていました。
内容は今風のコンテンポラリー・ハード・バップ・サウンドです。
全体的にやや重たい感じがするけれど、完成度は高いアルバムだと思いました。
それぞれに聴きどころがありました。
私的には、より軽快なトーンを聴かせる(5)「LIKE JOE」がベスト・トラックかな。
ここでのクリス・チークもいい・・・全員がノリノリで開放的かつ突き抜けた演奏を聴かせてくれました。
じっくりと歌い上げた(6)「PORTRAIT OF JENNIE」におけるバラード・プレイにも注目です。
モンク風の独特の雰囲気を持つ(7)「YOU DID」は北川潔さんの存在感が光ります。
(まじめ系)
(613) STAN KILLIAN QUINTET / EVOKE
stan killian(ts), mike moreno(g),
benito gonzalez(p), corcoran holt(b), mcclenty hunter(ds)
2013/Sunnyside/
スタン・キリアンは初見、ニューヨークの新進テナー奏者で2枚目のリーダー・アルバムです。
全7曲は全てキリアン自身のオリジナルで作曲能力にも長けています。
ギター&ピアノの2コード楽器とギタリストにマイク・モレノということで、ある程度の予測はつきました。
思った通りの浮揚感のあるコンテンポラリー・サウンドが聴けました。
強弱と密度の濃い繊細な音使いとパルスとささざみのようなリズムにオリエンタルな香りもあります。
表題曲の(2)「EVOKE」はバラード、(3)「ECHOLALIC」や(4)「KIRBY」ではその特徴が生きました。
その他の曲も特徴的なテーマを持っていて楽しめました。
サウンドやアンサンブルは先進ではあるけれどオーソドックスな部分も残っていて聴き易いです。
都会風でスマート・・・「ちょっとオシャレか」という感じもありました。
スタン・キリアンはクールな音色と軽妙洒脱な音楽性の持ち主で面白いです。
マイク・モレノの存在感も凄い、ここのサウンドの決め手はやはりモレノにあると思います。
新進ベニト・ゴンザレスのピアノにも注目しました・・・今後の活躍は間違いないところか。
コーコラン・ホルト(b)とマクレンティ・ハンター(ds)のリズム陣も好演しています。
新感覚ジャズの掘り出し物の一枚だけど収録時間が難点かな・・・43分は短い。
若いんだからもっと詰め込んでも良かったと思うよ。
(まじめ系)
(612) HAROLD MABERN QUARTET / MR. LUCKY
harold mabern(p), eric alexander(ts), john webber(b), joe farnsworth(ds)
2012/HighNote/
ハロルド・メイバーンはやや遅れてきたハード・バッパーと言えるかもしれませんね。
1936年生まれの今年で76歳・・・バド・パウエル直系のピアニストとしては最後の年代かな。
近年の活躍には目覚しいものがあって典型的な遅咲きのプレイヤーです。
何年か前に見たライブではその強靭なタッチと切れ味に驚かされました。
実にソウルフルで抜群のスイング感を持っていました。
メイバーンに注目したのはハンク・モブレー(ts)の大ヒット作「ディッピン」や
リー・モーガン(tp)の「ジゴロ」からでした。
私は当時のリーダー作を持っていないのでほとんどノー・マークというか手が回らない存在でした。
低迷期を過ぎて90年代に入るとエリック・アレキサンダー(ts)との共演で不死鳥のように蘇ってきました。
メイバーンはエリックにとっての師匠格で、父親みたいな存在だと思います。
どれだけのジャズ・スピリッツを受け継いだものか。
内容は推して知るべしの純ハード・バップ・アルバムです。
副題には「サミー・デイビス・Jrに捧げる」とあります。
あまり馴染みのない曲が多いですがサミー・デイビスのヒット曲だと思います。
(7)「NIGHT SONG」がただ1曲のピアノ・トリオ演奏・・・ロマンティックで美しいです。
(4)「HEY THERE」のソロ・ピアノも聴きどころでメイバーンの実力をを余すところなく伝えています。
(中間系)
(611) BILLY TAYLOR TRIO / ONE FOR FUN
billy taylor(p), earl may(b), kenny dennis(ds)
1959(Rec)/Atlantic/
ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
今作はCDショップで一度手に取ったけど、また棚に戻した経緯があります。
ジャズ仲間の薦めで改めて入手しました。
ビリー・テイラーは知名度が高い割に日本での評価は低いと思います。
かくいう私もほとんどノー・マークだったピアニストです。
インテリのジャズ・マンでジャズのスポークスマンとして知られていました。
器用でソツのないプレイ・スタイルは個性に欠けるかな。
その分、ガツンとくる場面がないのでインパクトが低かったかもしれません。
そんなこともあって私の印象はいまひとつでした。
今作はそんなビリー・テイラーのオリジナル3曲を含むスタンダード作品集です。
中々に興味深い選曲ですが(7)「POINCIANA」は大好きな曲、
ベニー・カーターの(9)「WHEN LIGHT ARE LOW」もシャレています。
小粋でスマートなピアノ・プレイを聴かせてくれました。
ここで特筆すべきはベーシストのアール・メイの存在感です。
このベースが凄いんだなぁ〜・・・アルバムの価値を一層高めていると思います。
ビリー・テイラーを見直した一枚です。
(くつろぎ系)
(610) YOSHIO SUZUKI BASS TALK / DANCING LUNA
鈴木良雄(b), 野力奏一(p,key), 井上信平(fl), 岡部洋一(per)
2012/55 Records/
鈴木良雄(b)さんが率いる「ベース・トーク」の新作です。
ラテンのリズムに乗って美しいメロディとやさしい調べが伝わってきます。
聴きやすく、癒し系アルバムに最適です。
鈴木チンさんは日本を代表するベーシストで日本ジャズ界の重鎮でもあります。
「鈴木良雄・トリオ」、「ジェネレーション・ギャップ」と、この「ベース・トーク」が主な活躍場。
フルートの名手、井上信平さんをフロントにしたカルテットでもう11年も続いているそうです。
このグループは野力奏一(p)さんと岡部洋一(per)さんのコンビネーションが聴きどころになります。
ライブでもこの二人の掛け合いはスリリングで魅力に溢れています。
演目は全て鈴木さんのオリジナルでアレンジは野力さんが担当しました。
ライブを聴きに行っていつも思うのですが野力さんの才能が凄いです。
幅広い音楽性を持ち、アイデア豊富、表現力も多彩です。
フリー・トーンを含めて予想外の音やフレーズが出てくるので新鮮です。
その上、根っこにはソウルが秘められているんですからたまりませんや。
岡部さんのパーカッションには根強いファンがいます。
その呪術的なリズムには心の底を揺さぶられる感じがします。
このグループの真髄はライブにあると思っています。
是非、ライブ・ハウスに足を運んで聴いてみて下さい。
(くつろぎ系)
(609) THOMAS CLAUSEN TRIO / FOR BILL
thomas clausen(p), chuck israels(b), kresten osgood(ds)
2003Rec/Music Mecca/
今作もまた昨年のベスト3に選ばれた一枚です。
デンマーク出身のピアニスト、トーマス・クラウセンのトリオ作品。
クラウセンは独自の感性を持っていて独特の音使いとタイミングが聴きどころになります。
ここでもその個性をいかんなく発揮していてどの曲も面白い展開になっています。
変な表現ですが・・・「いかにもジャズ・ピアノだなぁ〜と」いう感じがしますよ。
私の持っている感覚とちょっとづつ外れてくるんです。
”半音ずれる”
これがなんともいえず心地良くて”いかにもジャズを聴いている感じ”になります。
みなさんも聴いてもらえばすぐに納得できるんじゃないかな。
実に良い感じ・・・こういうジャズ・ピアニストって居そうで居ないような気がします。
ただ1曲の自身のオリジナル、(9)「FOR BILL」がいいです。
題名が「For Bill」でベーシストにそのビル・エバンス・トリオのチャック・イスラエルが参加しています。
ビル・エバンスの最大の功績は三位一体のピアノ・トリオの形を完成させたことにあります。
エバンス〜スコット・ラファロ〜ポール・モチアンのトリオにはそれほどにインパクトがありました。
ラファロ亡き後、ベーシストの地位を継いだのがこのチャック・イスラエルでしたね。
(中間系)
(608) RICARDO CAVALLI QUINTET / HEART TO HEART
ricardo cavvalli(ts), george garzone(ts)((1,3,4,5,6)
guillermo romero(p), carlos alvarez(b), eloy michelini(ds)
2012/RIVO RECORDS/
アルゼンチンのテナー奏者、リカルド・カヴァリにジョージ・ガーゾーン(ts)の組み合わせ。
前回CDショップ訪問時に一度手に取って棚に戻したけれど改めて聴きたくなりました。
ジャケットを見るといかにも力強い男気のあるプレイヤーとの印象を受けました。
リカルド・カヴァリはアルゼンチンではよく知られているそうです。
そのスタイルは演目を見れば一目瞭然、サム・リバース(ts)、チャールス・ミンガス(b)、
ジョン・コルトレーン(ts)が2曲あるのは尊敬の表れだと思います。
ガーゾーンとは真っ向勝負でまったくひけを取らず、ガツン・ガツンと音がするような気がしました。
リバースの(1)「BEATRICE」は珍しく、ミンガスの(2)「PEGGY'S BLUES SKYLIGHT」はベースとのデュオです。
(5)「HEY, OPEN UP」では強烈なテナー・バトルが聴けました。
トレーンの(3)「CRESCENT」と(6)「NAIMA」は有名曲で共に演奏し慣れた安定感があります。
重量級ではあるけれどグイレルモ・ロメロのピアノが美しいので中和された感じです。
ヨーロッパ・スタイルの清冽なプレイで印象に残りました。
ボサノバの(4)「THE GIRL FROM ARGENTINA」はガーゾーンのワン・ホーンで一息入りますが、
このボサノバがまた絶品・・・なんともいえない気だるさです。
最後にスタンダードの「EASY LIVING」を持ってきたところは構成もよく考えられています。
(まじめ系)
(607) NAJPONK TRIO / THE REAL DEAL
najponk(p), jaromir honzak(b), matt fishwick(ds)
2012/Animal Music/
ナイポンクはチェコの人気ピアニストだそうです。
名前はあちこちで見聞きしていましたが聴いたのは初めてです。
去年のベスト3にも選ばれた一枚でジャズ仲間の評価も高いです。
聴いてみるとたしかに聴き味がいいですね。
メリハリのある切れ味鋭いピアノは気持いいです。
演目はスタンダード中心で聴きやすく気分爽快になりました。
ナイポンクはバド・パウエル系のジャズの王道をいくピアニストで安心感があります。
(3)「SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE」ではよく伸びるベースに支えられてその神髄が聴けました。
(4)「TOO YOUNG」、(10)「SOLITUDE」も聴きどころ、最後にポツンとあるソロ・ピアノは憎い演出です。
その他にも(5)でエディ・ハリス(ts)のゴスペル、(6)ではハンプトン・ホーズ(p)のブルースが聴けます。
全体的にベースとの相性はいいですがドラムスはややアマイところがあるかも。
ところでジャケット写真の真ん中はドラマーだったんですね。
てっきりこの人がナイポンクだと思っていました。
(中間系)
(606) MARC JOHNSON & ELIANE ELIAS / SWEPT AWAY
marc johnson(b), eliane elias(p), joey baron(ds),
joe lovano(ts)(2,4,6,7,8)
2012/ECM/
マーク・ジョンソン(b)とイリアーヌ・エリアス(p)の夫婦合作盤です。
1曲を除いて二人のオリジナルで去年のベスト3にも選ばれた一枚です。
音楽的にリードしたのはマーク・ジョンソンだと思います。
マーク・ジョンソンは幅広い音楽性を持つ静かな才人ベーシスト。
控え目・・・自己主張をしたりブンブンくるベーシストではありません。
イリアーヌは今までのイメージとはちょっと違ったのでこんな演奏もするのかと思いました。
静謐で叙情的なECMの特徴が出ています。
ゲストのジョー・ロバーノ(ts)は5曲に参加、この組み合わせは面白かったです。
いつになく、か細く囁くようにうねるテナー奏法が効果的でした。
コンテンポラリーな浮揚感を持つリズムの(3)「ONE THOUSAND AND ONE NIGHTS」、
ロバーノ入りでは(4)「WHEN THE SUN COMES UP」、(8)「SIRENS OF TITAN」、
トリオでは(5)「B IS FOR BUTTERFLY」が秀逸だと思います。
(11)「SHENANDOAH」のベース・ソロはちと辛い。
イリアーヌはやはり注目すべき女性ピアニスト・・・
魅力あるヴォーカルばかりに目を奪われると間違えるかも。
(まじめ系)
(605) CHICO HAMILTON QUINTET / A DEFFERENT JOURNEY
charles lloyd(ts,fl), george bohanon(tb),
gabor szabo(g), albert stinson(b), chico hamilton(ds)
1963Rec/reprise/
ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
チコ・ハミルトンといえば西海岸の代表的ドラマーの一人ですね。
大人気ピアノレス・ジェリー・マリガン・カルテットのオリジナル・メンバーでもありました。
映画「真夏の夜のジャズ」の”ブルー・サンズ”の強烈な印象は未だに忘れられません。
チコ・ハミルトン・グループにも魅力的なプレイヤーが在籍していました。
エリック・ドルフィーとここのチャールス・ロイドはその最右翼の人材だと思います。
ギタリストではジム・ホール、ガボール・ザボ、ラリー・コリエルなどがいました。
演目は全てチャールス・ロイドのオリジナルです。
新鮮で瑞々しいキラキラと輝くロイドの才能を感じることができました。
当時の最先端のモード・ジャズ・サウンド。
ロイドの特徴である、くねくるようなサックス奏法もすでに各所に表れています。
やっぱり変わらないですね。
ジョージ・ボハノンも地味なトロンボーン奏者ですがモダンな演奏を聴かせてくれました。
ハンガリー出身のガボール・ザボ(g)も十分に個性的です。
もちろんチコ・ハミルトンの安定感は語るまでもありませんね。
(2)「THE VULTURE」のバラードは最高・・・ロイドのソロとザボのギターがたまりません。
これだけのために買っても惜しくないと思う。
表題曲の(5)「A DEFFERENT JOURNEY」は15分強の長丁場で各人のソロが満喫できます。
ところで、リプリーズはフランク・シナトラが作ったレーベルですね。
ここにこんな良盤が隠れていたなんて驚きました。
(中間系)
(604) ENRICO PIERANUNZI TRIO / PERMUTATION
enrico pieranunzi(p), scott colley(b), antonio sanchez(ds)
2012/CamJazz/
エンリコ・ピエラヌンチ・トリオ・・・今作も去年のベスト3に上げられた1枚です。
エンリコ・ピエラヌンチも息の長いピアニストです。
長い間、第一線で活躍できる理由は何でしょうか。
あくなき探究心とチャレンジ精神のたまものかもしれませんね。
幅広い音楽性と多彩な表現力は聴く人の評価を一定化させない特徴があります。
先日亡くなった大島渚さんに「監督は分かられたら仕舞い」という名言があります。
エンリコの姿とダブります・・・つかみどころがない・・・エンリコにスタイルは存在しない。
プレイが若々しくて未だに発展途上と感じさせるところが凄いです。
今作は現在最も刺激的なドラマーのアントニオ・サンチェスとスコット・コーリー(b)の組み合わせ。
演目は全てエンリコのオリジナル・・・曲想もテンポも多彩で飽きさせません。
私が選んだのはこのメンバーならではの刺激的な展開の (1)「STRANGEST CONSEQUENCES」、
(8)「THE POINT AT ISSUE」、(2)「CRITICAL PATH」などのアップ・テンポの曲です。
表題曲の(3)「PERMUTATION」も良かった。
エンリコとアントニオの暴れっぷりとそれを支えるスコット・コーリーの構図が見えます。
(まじめ系)
(603) MEL TORME / SUNDAY IN NEW YORK
mel torme(vo), etc
1964(Rec)/Atlantic/
ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
男性ジャズ・ヴォーカルを語る上でメル・トーメも外せませんね。
メル・トーメはルイ・アームストロング、ナット・キング・コール、
フランク・シナトラ、トニー・ベネットと共に5本の指に入ると思っています。
「クリスマス・ソング」や「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」などの大ヒット曲も作っています。
とはいうものの私の持っているLPは「カミング・ホーム・ベイビー」とマーティ・ペイチとの3枚ほどです。
これだけの歌手なのにほとんど聴いていなかった。
メル・トーメは粋でスマートなヴォーカル唱法を確立した名手といえるでしょうね。
今作は「ニューヨークの休日」と銘打ったニューヨークゆかりの曲が取り上げられています。
よく耳にする馴染みの曲ばかりなので聴きやすかったです。
ソフトでポップな雰囲気もあるのでトーメの特徴がよく出ていると思います。
(3)「LULLABY OF BIRDLAND」は名唱です。
(くつろぎ系)
(602) ALEX RIEL QUARTET / FULL HOUSE
alex riel(ds),
george robert(as), dado moroni(p), jesper lungaard(b),
2012/Storyville/
アレックス・リール・カルテット・・・去年のベスト3にも選ばれたアルバムです。
アレックス・リールの70歳記念ライブ盤というべきものです。
アレックスはデンマーク出身ですがヨーロッパを代表するドラマーの一人です。
一般的に知られるようになったのはデクスター・ゴードン(ts)や
ケニー・ドリュー(p)との共演盤からだったと思います。
イェスパー・ルンゴー(b)とのコンビは定評のあるところで多くの名盤を生み出しています。
この二人に近年の活躍が目覚しいイタリアの名ピアニストのダド・モロニと
スイスの名アルト奏者のジョージ・ロバートの組み合わせです。
ジョージ・ロバートは久し振り、2000年頃にはケニー・バロンとの共演盤で大いに話題になりました。
ジョージ・ロバートはまたフィル・ウッズの愛弟子として知られていますね。
ここは選曲も魅力です。
よく知られたスタンダード・ナンバーが中心で見れば聴きたくなるジャズ・ファンも多いと思います。
内容は推して知るべしで安定感十分の見事な演奏を聴かせてくれました。
特筆すべきはジョージ・ロバートの力技・・・全体を通じて強烈なアタックに注目しました。
(3)「IMPRESSIONS」におけるダド・モロニのマッコイ・タイナー張りのピアノ・プレイも聴きどころ。
ベテラン勢がその底力を発揮した作品と言えるでしょうね。
(中間系)
(601) ERNIE WATTS QUARTET / OASIS
ernie watts(ts),
christof saenger(p), rudi engel(b), heinrich koebberling(ds),
2011/Flying Dolphin Records/
「おっ!アーニー・ワッツがある」
CDショップで珍しい名前を見つけて手が伸びました。
ワッツのリーダー作を買うのはほぼ15年振りです。
純ジャズ路線というよりフュージョン系とのはざ間にいるサックス奏者と思っています。
最初はビック・バンド畑で活躍、ボーカルのバックなどでも重宝されていました。
2000年代もコンスタントにリリースしているようなので根強い人気がある証拠ですね。
安定感抜群の実に達者なプレイヤーだと思います。
アーニー・ワッツは独特の音色と節回しの持ち主でソフトに囁くような奏法です。
それで「オアシス」という題名が付いたのかもしれませんがまさにピッタリの表現だと思います。
今作はどこまでも続く「アーニー・ワッツの世界」という感じでいいですよ。
表題曲の(2)「OASIS」は11分強の長丁場でドラマチックな展開です。
私は中近東の砂漠をイメージしました。
ルーツはやはりジョン・コルトレーンなので(6)「CRESCENT」も聴きどころです。
オリジナルの(8)「BASS GEIGE "bash guy-geh"」も面白く聴けました。
(中間系)