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(600) ERIC ALEXANDER QUARTET / GENTLE BALLADS X

eric alexander(ts),
george cables(p), nat reeves(b), joe farnswarth(ds),

2011/Venus/


2013年の初聴きはエリック・アレキサンダー(ts)ということになりました。
ジェントル・バラッズ・シリーズの第5弾です。
まぁね、よほどのファンでなければ5枚までは買わないと思います。
このシリーズのピアニストはマイク・ルドン〜ハロルド・メイバーン〜ジョージ・ケイブルスに、
ベーシストはジョン・ウィーバー〜ナット・リーヴスに変わってきています。
個人的には今作のケイブルス&リーヴスのラインが一番好きです。

エリックについては多くを語ることはありません。
実際、あまりに多くのところに出没しているので食傷気味の方も多いでしょうね
ただ、バラードをこれだけ上手に吹けるテナー奏者はそうはいないと思います。
実にオーソドックスで聴き易いけどただそれだけではありません。
艶のある音色と魅力的なフレーズに満ち溢れていて十分刺激的です。
だから今の私には一番しっくりとくるんです。
あまり演奏されることがない(1)「THE THRILL IS GONE」や
(4)「FROM THIS MOMENT ON
」が聴きどころになりました。
もちろん、その他にも有名曲が目白押しで楽しめます。

(くつろぎ系)




(599) SHUN SAKAI 酒井俊 / SHUN

酒井俊(vo)、渋谷毅(p,arr)、川端民生(b)、宮沢昭一(ds)、
宮沢昭(ts,fl)、中牟礼貞則(g)、向井滋春(tb)、吉田憲司(tp)、
大口純一郎(p)、石山実(cong)

1977/Vivid/


ユニークなヴォーカリスト、酒井俊さんの1977年のデビュー作です。
2000年に復刻発売された時に買おうと思ってそのまま忘れていました。
久し振り(半年振り位かな)に中古盤コーナーを見ていて見つけました。
実はその日はその他にも何枚か見つけたので実にラッキーな一日でした。
「犬も歩けば棒に当る」ですね。

有名スタンダード作品集ですが独特の感性で歌い上げています。
酒井俊は独自の世界を持っている。
聴けば誰でもが「只者ではないなぁ〜」と思うはずです。
歌声が案外可愛らしくて色気もあるんだけど凄みも隠されています。
ちょっとコワイか、と思わせるところがある。

俊さんのライブにも何度か足を運んだけれど劇場型のヴォーカリストです。
ジャズの範疇にはとても収まりきれないスケールの大きさがあります。
心を突き刺す何かを持っています・・・強いブルース・フィーリングかな。
この心を突き刺される感じの歌手はそう多くはいません。
与世山澄子、浅川マキ、この酒井俊、最近では安富祖貴子に感じるものがあった。

バックのメンバーも豪華ですがもう35年も前になるのでみんな若くてピュアでキラメク演奏です。
特筆したいのは渋谷毅さん・・・アレンジとピアノが冴え渡っていて凄い才能を感じさせます。
どれを聴いても瑞々しく新鮮ですが特に私は(7)「I FALL IN LOVE TOO EASILY」に参った。
(9)「TAKE THE A TRAIN」では先述の劇場型歌手の一端が聴けます。
ここでは渋谷さんのピアノも素晴らしくて二人のコラボレーションに注目しました。
(4)「DAY BY DAY」、小品のひっそりとした(10)「LITTLE GIRL BLUE」も良かった。
聴く人それぞれが好きな歌を見つけられたらいいと思います。

個性的で万人向けとはいかないけれど、日本人ジャズ・ヴォーカルの名盤の一枚です。

(中間系)




(598) CHICO FREEMAN QUARTET / ELVIN

chico freeman(ts),
george cables(p), lonnie plaxico(b), winard harper(ds),
guest:joe lovano(ts)(1,7), martin fuss(ts,bs,fl)(4)

2012/Jive Music/


チコ・フリーマン(ts)を聴くのも何年振りになるかな・・・いや10年振り以上かもしれません。
年を取ったら軽いものがいいなんて言いながら、たまには重量級も聴きたくなってしまいます。
故エルヴィン・ジョーンズ(ds)を偲ぶ今作は選曲も面白いと思いました。
縁の深いジョン・コルトレーン(ts)、ウエイン・ショーター(ts)、ジョー・ヘンダーソン(ts)など。
ジョージ・ケイブルス(p)、ロニー・プラシキコ(b)、ウィナード・ハーパー(ds)のトリオがバック、
2曲にジョー・ロバーノ(ts)がゲスト出演しています。
オーストリア盤というのも珍しいかもしれませんね。

やっぱりというか、音が出た途端に存在感が違うと思いましたよ。
深味のあるグサッとくる音色です。
ヘンダーソンの(2)「INNER URGE」が一番の聴きどころになりました。
イントロはドラムスとのデュオで入ってテーマを挟んで中間はピアノレスのトリオ演奏です。
ショーターの(6)「NIGHT DREAMER」もチコ流のユニークな展開です。
手数の多いハーパーのドラムスとプラキシコの強烈なベース・プレイも聴けました。
バラードではコルトレーンの(8)「LONNIE'S LAMENT」
がいい感じ。
ここではジョージ・ケイブルスのプレイに注目、彼の張り切りようも十分にうかがえます。
ジョー・ロバーノが入る(1)「ELVIN」と(7)「THINK ON ME」が意外にオーソドックスな演奏。
ここでホッとする時間がありました。

ちなみにチコ・フリーマンはシカゴ派の大物テナー奏者のヴォン・フリーマンの息子です。

(まじめ系)




(597) GRAHAM DECHTER QUARTET / TAKIN' IT THERE

graham dechter(g),
tamir hendelman(p), john clayton(b), jeff hamilton(ds)

2012/Capri Records/


グラハム・デクター(g)は初見、今作は2枚目のリーダー・アルバムです。
グラハムは西海岸を中心に活動しているようでクレイトン・ハミルトン・ジャズ・オーケストラや
マイケル・ブーブレ(vo)などとの共演もあります。

演目を見た時、中々に面白そうな選曲だと思いました。
ウェス・モンゴメリーにバーニー・ケッセル系のギタリストということはすぐに分かりますね。
ジョビンのボサノバ、ジョージ・コールマン(ts)とリー・モーガン(tp)のバップ曲が含まれ、
スタンダードはハロルド・アーレンとコール・ポーターです。

グラハムのギター・プレイは端正でストレート・・・実にオーソドックスでした。
上品で美しい音色はクセがなく聴き易いです・・・テクニックも申し分ありません。
注目したのはジョージ・コールマンの(6)「FATHER」です。
コールマンの作品が選ばれること自体が珍しいのでどんなものかと思いました。
やっぱりというか、予想通りというか・・・これが一番の聴きどころだったです。
スイング感溢れる素晴らしいギターの4ビート・ジャズが聴けました。
モーガンの(8)「HOCUS POCUS」では早弾きプレイ、
(9)「COME RAIN OR COME SHINE」ではブルージーなギター・プレイが聴けます。
バラードの(10)「AMANDA/EVERY TIME WE SAY GOODBYE」もニクイ演出で閉じる


(くつろぎ系)




(596) BRAD MEHLDAU TRIO / WHERE DO YOU START

brad mehldau(p), larry grenadier(b), jeff ballard(ds)

2012/Nonesuch/


ブラッド・メルドー(p)のトリオ盤を買ったのは久し振りです。
なんとメルドーの純粋なピアノ・トリオを聴いたのは6年振りでしたよ。
今作は自己のオリジナルは1曲だけ、選曲も中々に凝っていて面白かったです。
2008年11月と2011年4月録音の集成盤です。
プロデュースはメルドー自身ですがこの選び方とか並べ方は面白かったんじゃないかな。

久々に聴くメルドー・トリオはやっぱり断トツに素晴らしいと思いました。
メルドーの独特のノリとスイング感と和音の遣い方がたまりませんよ。
波に揺られているように心地良くて、いつまでも聴いていたいと思ってしまった。
ソニー・ロリンズの有名曲(5)「エアジン」における解釈と展開は斬新でした。
やっぱり凄い才能の持ち主ですね。
エルヴィス・カステロのバラード(4)「BABY PLAYS AROUND」は10分強の演奏です。
やさしくて美しいバラード・プレイが聴けました・・・スーッと吸い込まれそうになった。
ほんわりとした(7)のサンバのリズム〜自作の(8)「JAM」における盛り上がりも聴きどころ。

バックのラリー・グレナディア(b)とジェフ・バラード(ds)も最高です。
なんていうのか・・・まったく無駄のない動きで自然体、素晴らしいコンビネーションを発揮しています。
三位一体だけでは物足りない何かがあります。(上手く表現できないのがもどかしいけれど)
3者の絶妙な間合いがある。
主張し、存在感を感じさせながら、でも3人が寄り添うように音楽を構築していきます。

今回のように少し間を開けるのもいいかなぁ〜と思っています。
私自身がとても新鮮だったし、メルドー・トリオの良さが際立ちました。
やはり現在のピアノ・トリオの最高峰だと思う。

(まじめ系)




(595) MICHEL & TONY PETRUCCIANI / CONVERSATION

michel petrucciani(p), tony petrucciani(g)

2001/Dreyfus/


ミシェル&トニー・ペトルチアーニ親子の共演ライブ盤です。
私はかなりのペト・ファンですがこの度ようやく入手しました。
まぁ〜、のんびりしたものですよ・・・つくづくコンプリートを目指す根性が薄いと思う。
もちろんこのアルバムの存在は知っていました。
でも私は親子の共演盤は後回しにしてしまう傾向があります。
なぜでしょうかね?
「何を今さら」・・・なんとなく照れくさく恥ずかしい感じがするからかもしれません。

で、実はあんまり期待していませんでした。
でも聴いてみたら思っていたよりずっと良かったです。
理由はハッキリしています・・・父親の実力が十分ミシェルに見合うものだったからです。
リズム感が抜群でリズム楽器としてのギター奏法をマスターしています。
1曲目の「SUMMERTIME」のバッキングを聴いてもらえば一発で納得です。
ソロ・スペースも十二分に満足するものでした。

ミシェルの力強く疾走感のあるピアノとトニーのスイング感溢れるギターが素晴らしい。
二人の思いが絡まってまさに対話している感じが伝わってきました。
会場の聴衆も大興奮です。

(くつろぎ系)


同時期にもう1枚買いそびれていた身内アルバム↓を買いました。
こちらは兄弟のルイス(b)が加わったトリオ・ペトルチアーニでスタンダード作品集です。
ルイスのベースも基本がしっかりしているので安定感がありました。
音楽一家はまさに父親の存在が大きいと思います。

*TRIO PETRUCCIANI / DARN THAT DREAM (2006/Dreyfus)



(594) CHANO DOMINGUEZ TRIO / FLAMENCO SKETCHES

chano dminguez(p), mario rossy(b), israel"pirana"suarez(per),
blas"kejio"cordoba(vo,palmas), tomas2tomacito"moreno(palmas)

2012/Blue Note/


CDの聴き直しをしていて気になったのがこのチャノ・ドミンゲス(p)でした。
スペイン出身のピアニストなのでフラメンコとは切っても切れない縁ですね。
そのフラメンコ・ジャズ・ピアノなるものを聴きたいと思いました。
全7曲中5曲はマイルス・デイビス(tp)の超名盤「Kind Of Blue」からの選曲です。
そんなこともあってとっつき易いのも事実ですが中味は相当に濃い仕上がりになっています。

最大の聴きものは16分にも及ぶ(1)「FLAMENCO SKETCHES」です。
静かに始まって段々熱を帯びてくるのは、まるで情熱的なフラメンコの踊りをみているようです。
チャノの強力なタッチと抜群のリズム感は共に素晴らしいと思いました。
フラメンコ流「Blue In Green」、「So What」、「All Blues」、「Nardis」にも注目しました。
フラメンコには欠かせないパルマ(手拍子)がこんなに効果的だったとは驚きです。
興奮を盛り上げる効果と絡みつくような粘っこさがありますね。

ユニークなフラメンコ・ジャズ・ピアノ・トリオは会場の熱気も伝わってくる第一級のライブ盤です。

(まじめ系)




(593) HARRY CONNICK.JR / YOUR SONGS

harry connick jr(vo,p)
solo:branford marsalis(ts)(1), wynton marsalis(tp)(3,12),
leroy jones(tp)(5), jerry welden(ts)(14)

2009/Sony/


先々週にマイケル・ブーブレを聴いて良かったので今度はハリー・コニック・Jrです。
ハリー・コニックを買うのも2枚目ですがなんと10年以上も間が空いてしまいました。
デビューからコンスタントにアルバムをリリースしているので根強い人気があるのだと思います。

今作はビック・バンドをバックにしたラブ・ソング集です。
17曲が網羅されていて(15)〜(17)は日本盤のみのボーナス・トラックだそうです。
(よくあることですがこういう売り方はあまり感心しません)
スタンダードと比較的新しいポップス系の曲がバランス良く配合されていました。

ハリーがフランク・シナトラを意識しているのは間違いありません。
たしかにそれは感じます・・・でも彼の魅力は別のところにあるのではないかな。
声がとてもやわらかいです・・・ペリー・コモやアンディ・ウィリアムスを思い浮かべました。
この耳にやさしい歌声が最大の特徴で、聴いていてまったくストレスを感じません。
ヴォーカルの場合は特に「この疲れない」ということはとても大事なことだと思います。
人の声は直接耳に入ってきて人にはそれぞれ好みの声というものがあるからです。

ビリー・ジョエルの(2)「JUST THE WAY YOU ARE」、ビートルズの(4)「AND I LOVE HER」、
バート・バカラックの(5)「CLOSE TO YOU」、エルトン・ジョンの(9)「YOUR SONG」、
ドン・マクリーンの(11)「AND I LOVE YOU SO」などが新鮮でした。
なお、ブランフォード&ウィントンのマルサリス兄弟がソロで参加しています。

(くつろぎ系)




(592) BERT SEAGER TRIO / OPEN BOOK

bert seager(p), jorge roeder(b), kazumi ikenaga(ds)
2012/Cloud /


ボストンのピアニスト、バート・シーガーの新譜は日本企画盤です。
バート・シーガー(p)を紹介する時には何と言ったらいいのか迷ってしまいます。
ビル・エバンス派、ただの静謐、耽美的では済まされない多くのものがあるからです。
私は今までバートのアルバムを何枚も聴いたし、ライブに何度も足を運びました。
でも、うまくその全体像を語ることは出来ません・・・
バートはそれほどに広大で深遠な世界を持っているからです。
まるで心の宇宙をさまよっているような気がします。
確固とした「自己の世界観」を持っている稀有のジャズ・ピアニストだと思います。
彼のピアノには語りかけてくるものがある・・・それが聴く人の胸にビンビンと響いてくるんです。
聴いているとまるで対話をしているような気持になってきます。
そしてそれはとても居心地のいいひと時を与えてくれます。
これはもう聴いてもらうしかありません・・・聴けば一目瞭然です。

池長一美(ds)さんとのコンビネーションも何かいい表現方法がないだろうかと思っていました。
解説文でいみじくも杉田宏樹さんが看破してくれました。
「ピアノの体位法的な動きがジョン・ルイスとMJQを想起させる」
ジョン・ルイスに近い・・・そうなんだよね、MJQ、室内楽的な格調の高さがあります。
このアルバムを聴いていると狭い室内で3人の会話をすぐそばで見ている自分がいます。

バート自身のオリジナル6曲にスタンダード3曲の構成もバランスがいいです。
スタンダードも超有名曲ばかりでどう表現しているのかが聴きどころになります。
バートは無駄な音は使いません・・・存在感のある一音、一音が聴けます。
「I LOVE YOU PORGY」の沁み入る美しさ、「MY FUNNY VALENTINE」には涙が出そうになった。
今作にはバートが持つ美しく清らかなクールさと、もう一方のやさしさと温もりが同居していました。
バート・シーガーの決定的な1枚になるピアノ・トリオ作品だと思います。

「EVERYTHING I LOVE」、「I LOVE YOU PORGY」、「MY FUNNY VALENTINE」

最後にもう一つ、このCDジャケットに注目しました。
高級感があって手触りも良く、シンプルなアルバム・デザインも秀逸です。
実際に手に取ってみたらそのセンスの良さに驚くと思いますよ。

(中間系)




(591) JIMMY GIUFFRE 3 / TRAV'LIN' LIGHT

jimmy giuffre(cl,ts,bs), bob brookmeyer(tb), jim hall(g)
1958Rec/Atlantic/


ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
”ジミージェフリー・スリー”といえば映画「真夏の夜のジャズ」の冒頭シーンが忘れられません。
実にカッコ良かった・・・飛び跳ねるようなユニークなリズムには驚かされました。

これはジェフリーが才人ボブ・ブルックメイヤー(tb)とジム・ホール(g)と組んだグループです。
楽器の組み合わせもサウンドも全てユニークのひと言です。
カントリー&ウェスタン、牧歌的な香りをプンプンとさせます。
のんびりとした癒し系・・・でも間違いなくジャズなんです。
どこからこういう発想が湧いてくるんでしょうね。
こういうのを聴くとジャズって本当に面白いと思いますよ。
誰がリーダーというわけでもなく3人が対等に共同で曲を織り上げていく感じがします。
ビリー・ホリディの歌で有名な「(1)「TRAV'LIN LIGHT」もいい曲です。
ちなみに今作は日本初CD化だそうです。


”ジミー・ジェフリー・3”を冠したアルバムは全部で3枚あります。
「The Jimmy Giuffre 3」、「Western Suite」と、この「Trav'lin' Light」です。
オリジナリティ溢れるサウンド・・・どれか1枚は聴いて欲しいと思います。

「ドラ流目立たないけどいいアルバム」

(中間系)




(590) MICHAEL BUBLE / CRAZY LOVE

Michael Buble(vo),
David Foster(arr,key), Nathan East(b), Brian Bromberg(b),
Peter Erskine(ds), Vinnie Colaiuta(ds), Lenny Castro(per)
Joe La Barbera(ds), Dean Parks(g), Ron Sexsmith(vo), etc
2009/143/Reprise /


たまには男のヴォーカルも聴きたいと思いました。
「それならやっぱりマイケル・ブーブレだろう」ということで選んだのがこれです。
ブーブレはカナダ出身、何でも歌える多才な歌手、スケールも大きいです。
ブーブレを買うのは2枚目ですが今や世界で最も人気のある男性ヴォーカリストですね。
まず声がいい、シブくて深い、本当に素晴らしい歌声を持っています。
おまけに歌が上手くてスイング感も抜群とくればその人気も十分に納得できます。
純粋なジャズ・ヴォーカルというよりはフュージョン系の色合いが強い歌手だと思います。
バックはプロデュース&アレンジのデヴィッド・フォスターを初めとしてその傾向の人が多いです。
それだけに幅広いファンに受け入れられたということでしょうね。

今作はジャズのスタンダードと自身のオリジナル、ポップスの組み合わせです。
実によく考えられた構成で飽きさせません・・・どれを聴いてもいいと思います。
私の場合は(13)「WHATEVER IT TAKES(R.Sexsmith)」でグイと心をつかまれました。
作曲者とのデュオですがこれが良かった、その心地良いノリに心底痺れました。
気分は最高・・・ラテン調のリズムに乗って快適なテンポで進みます。
スタンダードだと(1)「CRY ME A RIVER」と(12)「STARDUST」がお気に入り。
この(12)〜(13)の8分間はまさに至福の時間を与えてくれました。
昼下がりのコーヒー・タイムにピッタリです。

(くつろぎ系)




(589) SONNY STITT QUARTET / SONNY STITT

sonny stitt(as,ts),
ramsey lewis(p), william austin(b), frank gant(ds)
2011(1958Rec)/Argo /


ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
ソニー・スティット(as,ts)も孤高のジャズ・プレイヤーの一人です。
たらればですが、もしもチャーリー・パーカー(as)がいなかったら
モダン・ジャズ史上最も重要なアルト・サックス奏者になったかもしれませんね。
それほどにその感性と技術は秀でていました。
比肩するとすればキャノンボール・アダレイ以外にはいないのでないかと思っています。

パーカーに似ているといわれることを嫌ったスティットはテナー・サックスを吹くようになります。
アルトとテナーのどちらを聴いても遜色なく素晴らしい・・・この才能だけでも凄いと思います。

今作がとてつもなく貴重なのはラムゼイ・ルイス(p)が参加していることにあります。
多分、スティットがシカゴに楽旅した際に共演の機会があったのだと思います。
ただ正確な録音時期も不確定で本当にラムゼイなのか?との疑問もかすかに残ります。
録音はモノラル、アーゴもマイナー・レーベルです。

内容はスティットそのままのもので名手の名に恥じないプレイです。
オリジナルとスタンダードの構成、(1)「PROPAPAGOON」のブルース・フィーリングは凄い。
ここでのラムゼイ・ルイスのプレイも感動的です。
パーカーの(5)「COOL BLUES」も聴きどころ・・・パーカーは嫌いじゃなかったのか?
(2)「THIS IS ALWAYS」のバラード・プレイ、(8)「EVERYONE DOES」は急速調です。
強烈なブルース&ソウルな感覚を共有するスティットとラムゼイが熱いです。
ラムゼイのテクニシャンぶりとバッキングにも注目しました。
ラムゼイ・ルイスのリアル・ジャズを聴けたのも良かった。
ラムゼイの純ジャズ路線は極端に少ないからです。
元々ポップ&ソウルなフィーリングをもっていたのでジャズ・ロックやフュージョン畑で活躍しました。
「The In Crowd」の大ヒットはよく知られています。

(中間系)




(588) TETSUYUKI MIYA meets KEIICHI YOSHIDA TRIO /
I'LL BE SEEING YOU

宮哲之(ts)、吉田桂一(p)、佐々木悌二(b)、渡辺文男(ds)
2012/What's New Records /


吉田桂一・トリオはライブ・ハウスでよく出会います。
吉田さんは「ケーイチ」の愛称で親しまれているピアニストでバド・パウエル、ウィントン・ケリー、
トミー・フラナガン系の良くスイングするピアニスト、本人はソニー・クラークが好きなのかな。
歌の伴奏の上手さでも定評があります。
まろやかでやさしい響きを持っているのでケーイチさんのピアノは女性ファンが多いです。
この吉田桂一(p)が率いる佐々木悌二(b)、渡辺文男(ds)のトリオは10周年を迎えました。
今作はその記念盤という意味合いもあるようです。
佐々木さんは安定感のあるベーシスト、文男さんはブラッシュ・ワークの名手です。

宮哲之(ts)さんは勉強不足で聴いたことがありませんでした。
関西ではよく知られたテナー奏者だそうですね。
今作の企画はベースの佐々木悌二さんで選曲構成は宮哲之さんだそうです。
スタンダードとジャズ名曲の組み合わせで興味あるラインナップだと思います。

聴いてみてグッときたのはやはりバラードでした。
(5)「YOU'VE CHANGED」は絶品、(3)「ALONE TOGETHER」も良かったです。
ややテンポを上げたタイトル曲の(9)「I'LL BE SEEING YOU」、
最近ライブでも聴くことが多い、リー・モーガンのボサノバ曲(8)「CEORA」もニクイ選曲です。
その他の曲もミディアム・テンポで実に聴き易い仕上がり・・・スーと入ってくる感じで癒されます。
宮さんのテナーは男性的で野太いトーンながらやさしく包み込むような歌い方をします。
オーソドックスでストレートで艶やか、トツトツとした演奏なんだけど心に残ります。
彼の奏法には誰にも似ていない個性を感じました。
ケーイチさんが「宮さんは素晴らしいよ」と大絶賛していたのも納得です。

(くつろぎ系)



(587) BUDDY DeFRANCO QUARTET / THE ARTISTRY OF BUDDY DeFRANCO

buddy defranco(cl),
sonny clark(p), eugene wright(b), robert white(ds)
2010(1954Rec)/NORGRAN Records /


ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
バディ・デフランコ(cl)・カルテットの1954年の作品、邦題には「枯葉」と付きました。
デフランコには「キング・オブ・クラリネット」とか「ミスター・クラリネット」の称号があります。
絶頂期の50年代を聴くと「さもありなん」と十分納得してしまいます。
それほどに素晴らしい演奏を繰り広げているんです。

一曲目のビリー・テイラー(p)の「TITORO」を聴いただけで吹っ飛びました。
豊かなアイデアとよどみないフレージング、鋭いアタックも聴かせどころになっています。
ビ・バップ・・・当時のモダン・クラリネットの全てがここにあるといっても過言ではないでしょうね。
甘さ控え目のリアル・ジャズ・・・録音がモノラルだけに一層その雰囲気が伝わってくるんです。

若き日のソニー・クラーク(p)が聴けるのも嬉しいですがこの時は弱冠22歳でした。
ソニー・クラークにどことなく洗練された思いがあるのはデフランコの影響かもしれませんね。
クラークの大ヒット作「クール・ストラッティン」にもそんなイメージが重なります。

デフランコの珍盤、貴重盤の1枚は強烈な印象を残しました。

(中間系)




(586) PHIL BROADHURST QUARTET / DELAYED REACTION

phil broadhurst(p), roger manins(sax), olivier holland(b), alain koetsier(ds),
julie mason(vo)(8), mike booth(tp)(6)
2011/Independent Artists /


フィル・ブロードハーストはニュージーランド出身のピアニストです。
メンバーもニュージーランド出身者で占められているようです。
今作はミシェル・ペトルチアーニ(p)のトリビュート盤ということで見逃せないと思いました。

ペトルチアーニ作が5曲と自身のオリジナルが4曲の構成です。
ブロードハーストのピアノを聴いていると彼がいかにペトを信奉していたかがよく分かります。
ペトそっくりなシーンが次々と現れてきて嬉しくなりました。
これははっきりホーン入りにして目先を変えて成功したと思います。
トリオだと余りに似てしまうので聴き通すのは厳しかったかもしれません。
さらにヴォーカルやトランペットまで起用している念の入れようです。

全体的に実に気持の良い流れでニュージーランド・ジャズのレベルの高さを感じます。
このようにまったく違ったところからペトルチアーニの信奉者が現れるのは面白いですね。
ジャズはまさしくグローバルな音楽・・・世界各地にペト信者は多いと思います。
国が違えばヨーロッパとはまた一味違った味付けになって当然です。
ペトの名曲(7)「LOOKING UP」はぐっと明るい感じになっていました。

(中間系)




(585) DADO MORONI WITH TOM HARRELL & BOB MINTZER
/ QUIET YESTERDAY

dado moroni(p), andrea dulbecco(vib), riccardo fioravanti(b), enzo zirilli(ds),
stefano bagnoli(ds), camila sampaio rangoni(vo)
tom harrell(tp,flh), bob mintzer(ts),
2012/ABEAT Records /


イタリアのピアニスト、ダド・モロニとトム・ハレル(tp)とボブ・ミンツァー(ts)の共演盤です。
天才ピアニストと言われたモロニもベテランの域に達して精力的に活動しているようですね。
ここはハレルとミンツァーの名前に惹かれました。
とはいうもののハレルとミンツァーの共演はなくて録音も二つに分かれていました。
こういうのって詐欺だよねぇ〜。

構成は(3)、(4)、(5)、(8)がトム・ハレルで(2)、(6)、(10)がボブ・ミンツァーです。
(7)がボーカル入りで一息、(1)、(9)はイントロでごく短い演奏です。
スタンダードが(4)「LIKE SOMEONE IN LOVE」と(8)「EASY LIVING」の2曲、
ハレル作とミンツァー作が各1曲づつ、曲想もバラエティに富んでいてよく考えられています。

特に素晴らしいのは表題曲にもなっている(2)「QUIET YESTERDAYS」です。
モロニの奏でるピアノは感動的・・・美しくて心に沁みる・・・続くミンツァーにも震えた。
これを聴いたらモロニの才能を疑う人はいないでしょうね。
最初に聴いた時にこの1曲だけに買っても惜しくないと思いました。
でもさらにもう1曲あった・・・ハレル入りの(5)「FREE TO MIST」も素晴らしかった。
こちらはフリー・フォーム、フリー・トーンを含む疾走感のある演奏で聴かせます。
現代的ハード・バップの名演でマリンバを使用しているのも新味でした。

(4)と(8)のスタンダード2曲はトム・ハレルの独壇場です。
(4)がベース、(8)がドラムスとのデュオで凝った内容になっています。
全体的にはダド・モロニとボブ・ミンツァーが光っていると思います。
特にミンツァーはもっと評価が上がって欲しいサックス奏者です。
(7)「PURPURA」のボーカルでホッとさせる演出もニクイ。
よく出来た構成・・・その他にも聴きどころが多くて実にバランスがいいアルバムです。

(中間系)




(584) JOHNNY HODGES SEPTET / BLUES A-PLENTY

johnny hodges(as), ben webster(ts), roy eldrige(tp), vic dickenson(tb),
billy strayhorn(p), jimmy woods(b), sam woodyard(ds)
2010(1958REc)/Verve /


ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
ジョニー・ホッジスはいわずと知れたデューク・エリントン楽団の至宝で名アルト奏者。
何とも言えないその魅力的な音色はホッジス独自のもので孤高のプレイヤーの一人です。
ポール・デスモンド(as)は明らかにホッジスの影響を受けて独特のスタイルを作りました。

今作はホッジスのオリジナル5曲とその他4曲の構成です。
特にワン・ホーンで演奏されるバラードは圧巻です。
(1)「DIDN'T KNOW ABOUT YOU」、(3)「GONE WITH THE WIND」
(6)「DON'T TAKE YOUR LOVE FROM ME」、(8)「SATIN DOLL」は絶品。
やさしくささやくように唄う・・・自在かつ微妙に楽器をコントロールしています。
もうイチコロという感じ・・・一発でその音色に魅了されるのは確実です。
ビリー・ストレイホーン(p)のシングル・トーンのバッキングも素晴らしい。

ここでも多くのエリントニアンが共演しています。
ベン・ウェブスター(ts)、ロイ・エルドリッジ(tp)、ヴィック・ディッケンソン(tb)、
特にビリー・ストレイホーン(p)の参加が貴重かな。
エリントン・サウンドの小型版・・・絶妙なスイング感と抜群のハーモニーを聴かせてくれました。
彼らの共演を得てホッジスはリラックスした手慣れた演奏を繰り広げています。
一番の長丁場の(9)「REELING AND ROCKING」も聴きどころになります。
ジャケットはやや甘い感じですが中味にはジャズのエッセンスが詰まっていました。

(中間系)




(583) DAMON BROWN QUARTET WITH STEVE GROSSMAN
/ THIS TIME THE DREAM'S ON ME

damon brown(cor), steve grossman(ts)(1,2,4,6,8),
robin aspland(p), mark hodgson(b), sebastian de krom(ds)
2012/Nomad Jazz Records /


ダモン・ブラウン(tp)は初見、イギリスのトランペッターでよく知られているようです。
メンバーのロビン・アスプランド(p)とセバスチャン・デ・クロム(ds)も初見、
ただマーク・ホッジソン(b)はビル・チャーラップ・トリオで聴いたことがあります。
全9曲はオリジナル3曲、その他6曲の構成でタッド・ダメロン(p)が2曲入っています。
5曲がスティーブ・グロスマン(ts)が加わってのクインテット編成で4曲がカルテットです。
実は共演のグロスマンに惹かれて買いましたが意外にカルテット演奏が良かった。

これは典型的なハード・バップ・アルバムです。
カルテットの(3)「DON'T FINGER THE BISCUITS」、(5)「I REMEMBER YOU」、
(7)「LITTLE HANDS」、(9)「MY IDEAL」でクールで軽快な演奏を聴かせてくれました。
でも全編これでは一本調子になるので目先を変える意味でもグロスマン入りは正解だと思います。
クインテットではソフトなダモンとゴリゴリなグロスマンの対比が聴きどころになります。
いつもと違いやや抑えた表情を見せるグロスマンが面白く、もどかしい感じもいいです。
オーソドックスでストレート・・・聴きやすく好盤です。

今作でダモン・ブラウンはコルネットを使用しています。
コルネットはトランペットより小型でやわらかくまろやかな音色が特徴です。
著名なジャズ・コルネット奏者にはナット・アダレイやルビー・ブラフがいますね。
現在ではコルネットを聴ける機会はほとんどないので貴重盤かもしれませんよ。

(中間系)



(582) TAL FARLOW QUARTET / AUTUMN IN NEW YORK

tal farlow(g),
gerry wiggins(p), ray brown(b), chico hamilton(ds)
1954REc/Verve /


ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
ちょうどこの時期にふさわしい「AUTUMN IN NEW YORK」の題名が目に入りました。
タル・ファーロー・・・久し振りにスイング系ジャズ・ギター奏者も聴きたかった。
共演のレイ・ブラウン(b)やチコ・ハミルトン(ds)のプレイにも興味ありです。

基本的にタルは急速調の超絶技巧が売りのギタリストです。
だからどうしても哀愁やムードには欠けてしまう気がします。
正直、バラードはいまひとつだと思います。
でも速い曲になればなるほどその本領を発揮してきます。
最大の聴きどころは(8)「CHEROKEE」・・・これがもう信じ難い驚異的なプレイです。
ジャズ・ギタリスト、タル・ファーローの真髄がここにありました。
ここでのチコ・ハミルトンのブラッシュ・ワークがまた素晴らしいです。

ちなみにタルの本業はペンキ屋さんだそうです。

(くつろぎ系)




(581) FRANCESCO CAFISO & STRINGS / A TRIBUTE TO CHARLIE PARKER

francesco cafiso(as)

2005/Umbria Records/


さかのぼって聴くフランチェスコ・カフィーソの第八弾です。
2005年の録音なのでカフィーソが15歳か16歳になったばかりの年。
現代の天才アルト奏者に元祖天才チャーリー・パーカーを吹かせようという企画です。
まぁ〜、凄く安易な企画なんだけどその気持は分かるような気がしました。
聴いてみると驚きの内容が詰まっていました・・・音色もスイング感も素晴らしいです。
恐ろしいという表現がピッタリかも・・・年齢は関係なく「いいものはいい」と再認識させられました。

お気づきの方も多いように今作はパーカーの「ウィズ・ストリングス」を踏襲したものです。
曲目もデザインの傾向もほぼ同じです。

著名なホーン奏者はウィズ・ストリングスというアルバムをよく作ります。
でも、世のジャズ・ファンの評価はいまひとつという場合も多いです。
それはなぜか?
ジャズ特有のインター・プレイや刺激に欠けるということがあるかもしれませんね。
でも一人のプレイヤーをじっくりと聴けるという点では大きな魅力があります。

この大スタンダード作品集は良かった・・・カフィーソの原点がここにあります。

(くつろぎ系)




(580) EDDIE COSTA QUARTET / GUYS & DOLLS like VIBES

eddie costa(vib), bill evans(p), wendell marshall(b), paul motiabn(ds)

1958/Coral/


ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
31歳で夭折したエディ・コスタ(p,vib)の作品・・・ヴァイブは独学でマスターしたとのこと。
エディ・コスタのアルバムはどれも貴重ですが特に今作はビル・エバンス(p)との共演です。
さらに珍しいのはミュージカルの「「Guys And Dolls」を取り上げていることですね。
いわゆる「色もの」の1枚です。

大人気のミュージカル「Guys And Dolls」はブロードウエイで何度も上演されています。
作詞作曲はフランク・レッサーです。
マーロン・ブランド、フランク・シナトラ主演で映画化され「野郎どもと女達」の邦題が付きました。

若い恋人達に贈るスマートでクールでロマンチックなジャズがコンセプトかな。
スタンダード化している(5)「I'VE NEVER BEEN LOVE BEFORE」が最も有名、
(3)「IF I WERE A BELL」も演奏されることが多いです。
スイング感溢れるストレートなコスタとエバンスが聴けますよ。
オーソドックスなドラミングを展開するポール・モチアンにも注目しました。


(くつろぎ系)




(579) JOHN ELLIS QUINTET / IT'S YOU I LIKE

john ellis(ts), mike moreno(g),
aaron goldberg(p), matt penman(b), rodney green(ds)
2012/Criss Cross /


ジョン・エリス(ts)の名前を見るのは2回目になります。
前回はロバート・グラスパー(p)のアルバムだったけどノーマークでした。
ここではマイク・モレノ(g)、アーロン・ゴールドバーグ(p)、マット・ペンマン(b)、
ロドニー・グリーン(ds)といった最先端のジャズ・メンがバックに名前を連ねています。

聴いてみると中々に面白くてトツトツとしてクールなサックス奏法はどこか懐かしい思いがしました。
なぜだろうね?
選曲がフレッド・ロジャースとエリオット・スミスといった唄ものにその理由があるかもしれません。
浮揚感のあるバッキングに乗って丁寧に唄うように吹く・・・現代版唄もの奏法の代表作と言えます。
スマートなんだけどゴリゴリなところはデクスター・ゴードン(ts)の影を見ました。
なんか気になる・・・印象的・・・ユニークな演奏スタイルの持ち主です。

(中間系)




(578) TEDDY WILSON AND HIS PIANO / I GOT RHYTHM

teddy wilson(p), gene ramey(b), jo jones(ds)

1956/Verve/


ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
テディ・ウィルソン(p)のよく知られたスタンダード作品集です。
メンバーはジーン・レイニー(b)、ジョー・ジョーンズ(ds)のトリオ。
思うにテディ・ウィルソンを聴くのも何十年振りです。

ウィルソンの立ち位置はジャズ・ピアノの祖、アート・テイタム(p)の次になるかな。
でも大人しくて地味な印象があるのでその実力に比してほとんど目立っていません。
ある意味、カクテル・ピアノの祖といえる存在なのに・・・。
抜群のスイング感と美しいピアノ音は他の追随を許さないほどです。
ナット・キング・コール(p,vo)やオスカー・ピーターソン(p)に与えた影響は絶大です。

もうね、どうしょうもなくロマンチックなピアノが聴けますよ。
正確無比なジョー・ジョーンズのドラミングも素晴らしいです。

(くつろぎ系)




(577) BRICE WINSTON QUARTET / INTRODUCING

brice winston(ts,ss),
aaron parks(p), derrick hodge(b), kendrick scott(ds)
2010/Djemba Music /


ブライス・ウィンストン(ts)は初見です。
私は「INTODUCING〜」とあると気になってつい買ってしまう習性があります。
全て自身のオリジナルで占められアーロン・パークス(p)、ケンドリック・スコット(ds)が参加していました。

浮揚感のある現代的サックス奏者。
ルーツはコルトレーン〜ショーター〜マイケル・ブレッカー〜マーク・ターナーの系統だと思います。
テクニシャンでクールで情念をぐっと抑えているのが緊張感を生んでいます。
暗く深遠な世界に引き込まれる・・・ブライス・ウィンストンは独特の感性を持っていました。
バックのアーロン・パークスとケンドリック・スコットが素晴らしいのでこの人選は大正解です。
バッチリとはまったコンビネーションは彼の持つ音楽性にピッタリでした。

それにしても新人で全てオリジナルというのは聴くほうにしてはかなりきついですね。
せめて1曲でも知っている曲が入っていれば良かったと思います。
曲によって最後がプツンと切れてしまうのも気になりました。
ちなみに紹介解説文を書いているのはテレンス・ブランチャード(tp)です。

(まじめ系)




(576) YOICHI KOBAYASHI QUINTET / KIZUNA/絆

vincent herring(as), eric alexander(ts),
tohru dodo(p), yasushi nakamura(b), yoichi kobayashi(ds)

2012/Monky'sRecords /


”小林陽一&グッド・フェローズ”の日米拡張版です。
ライブ会場で入手しました。
題名を見れば分かるように東日本大震災のトリビュート盤です。
近年、「絆」という言葉ほど頻繁に使われた言葉はありませんね。

ここはメンバーにも魅力があります。
ヴィンセント・ハーリング(as)とエリック・アレキサンダー(ts)のフロント2管、
独自の感性を持つ百々徹のピアノ、ベースにはジュリアード出の逸材、中村恭士を配しました。
この二人はアメリカで活躍中の期待の若手プレイヤーです。
それに日本のアート・ブレイキー(ds)と表される小林陽一の組み合わせです。
小林さんがドンと構えているので安定感は十分・・・音楽性もハッキリしているので気分爽快。

内容は推して知るべしのハード・バップ・テイストがいっぱい詰まっていました。
聴きどころは多いですがメンバーのオリジナル、(1)「KOBA'S DELIGHT」、
(5)「NEMESIS」、(5)「
KIZUNA」に注目しました。
ただ1曲トリオで演奏されるジョビンの(4)「FALANDO DE AMOR」も素晴らしい。
最後に「WHAT A WONDERFUL WORLD」を持って来たのは小林さんの気持でしょうね。


(中間系)




(575) PAT METHENY UNITY BAND

pat metheny(g), chris potter(ts), ben Williams(b), antonio sanchez(ds)
2012/Nonesush /


パット・メセニー(g)の新譜です。
近年、メセニーも精力的な活動が続いています。
前作はソロ・ギターでしたが今度は強力なグループを組んできました。
最も刺激的なサックス奏者のクリス・ポッターと暴れん坊ドラマーのアントニオ・サンチェス、
ベースのベン・ウィリアムスは2009年のモンク・コンペの優勝者で期待の若手です。
全9曲は全てメセニーのオリジナルです。
メセニーはアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターを使い分けて新味を出しています。

メンバー構成からみても先進のジャズが聴けるのは予想できました。
予想通りスリリングな展開になっています。
ファンキーな(3)「Come and See」、スピード感溢れる(9)「Breakdealer」、
凝った演出の(7)「Signals」が印象に残りました。
メセニー、ポッター、サンチェス、ウィリアムスの4人が真正面からぶつかり合います。
この夏の熱い1枚ではありますね。

(まじめ系)




(574) OSCAR PETERSON SINGS / ROMANCE

oscar peterson(vo,p)
barney kessel(g), herb ellis(g), ray brown(b)

1952Verve/


ジャズ再発廉価版シリーズの1枚です。
オスカー・ピーターソン(p)のヴォーカル盤は珍しいですね。
ピーターソン・ファンにとっては咽喉から手が出るほどの垂涎盤だったと思います。

改めて聴いてみるとやっぱり味わい深かった。
テディ・ウィルソン(p)とナット・キング・コール(vo,p)をミックスした見事なパフォーマンスです。
スイング感は抜群・・・グッと心に響いてくる歌声です。
(6)「I CAN'T GIVE YOU ANYTHING BUT LOVE」なんかもうたまりませんよ。
(1)「I'M GRAD THERE IS YOU」、(8)「THESE FOOLISH THINGS」も良かった.

これだけの雰囲気と歌唱力を持っていながらヴォーカル盤が少ないのはなぜか?
理由はただひとつ・・・あまりにキング・コールに似ているから・・・だと思う・・・
ホントに惜しいです。

(くつろぎ系)




(573) RICK GERMANSON QUARTET / LIVE AT SMALLS

rick germanson(p), paul gill(b), lewis nash(ds),
eddie henderson(tp)

2012/SmallsLIVE /


「ライブ・アット・スモールズ」の1枚です。
リック・ジャーマンソン(p)のリーダー作を紹介するのは2枚目になります。
ジャーマンソンはルイス・ヘイス(ds)のグループで活躍したようにバップ・テイストが強いです。
現在では珍しいタイプのピアニストだと思います。
エディ・ヘンダーソン(tp)とルイス・ナッシュ(ds)の両ベテランを迎えての演奏は聴いてみたかった。
全7曲はオリジナル3曲にその他4曲の構成です。

1曲目にボビー・ティモンズ(p)の曲を持って来たところにジャーマンソンのこだわりが見えます。
ソウル&ファンキーなプレイがジャーマンソンの目指すところだと思います。
ボビー・ティモンズ〜シダー・ウォルトン〜ベニー・グリーン〜リック・ジャーマンソンの流れが出来た。
バップ・ピアニストの王道か・・・これはとても嬉しいですね。
加えてジャーマンソンにはマッコイ・タイナーやハービー・ハンコックの流れもあります。

エディ・ヘンダーソンも72歳・・・さすがに速い展開の曲はつらくなったけどまだまだ元気です。
カルテットのベストは(2)「SURREY WITH FRAINGE ON TOP」かな、(7)「EDGE」もそのままに鋭い。
(5)「THE SINGLE PETAL OF A ROSE」はピアノ・ソロ、(6)「SAY IT」はトリオで聴かせます。


(中間系)




(572) STEVE KUHN TRIO / WISTERIA

steve kuhn(p), steve swallow(b), joey baron(ds)

2012/ECM /


スティーブ・キューン(p)の新譜です。
オリジナルが6曲にその他5曲の構成で気合十分、時間は70分近くになりました。

キューンもステーブ・スワロー(b)もジョーイ・バロン(ds)も長い経歴の持ち主ですね。
それぞれ2人の共演はあってもこの3人の組み合わせは初めてだそうです。
世の常ですがジャズの世界でも環境を変えて刺激を求めるのは必要不可欠だと思います。
さて、仕上げはどうかといえばバッチリとハマっていました。
もっともこの3人ならこのくらい出来て当たり前と思われてしまうのがミソですが。

キューンが叙情感溢れるピアノでリードし、それにスワローとバロンがついて行くパターン。
それぞれの曲を三位一体で持ち上げる・・・まるで大事なものを運んでいるようです。
時折ギターのように聴こえるのはスワローのエレベでしょうが抜群の効果を生んでいます。
バラードは静かでも内に秘めた思いが伝わってきます。
(6)「PASTORALE」は美しく、(8)「WISTERIA」は緊張感に溢れています。
でも実は、私はキューンの疾走感のあるスピード感溢れる演奏が好きです。
(6)「A LIKELY STORY」で堪能できました。・・・バロンのドラミングも凄いよ。

(中間系)




(571) ADRIAN IAIES TRIO & QUARTET / MELANCOLIA

adrian iaies(p), ezequiel dutil(b), peoi taveira(ds)
mariano loiacono(tp,fhn)

2012/Sony Music /


アドリアン・イアイエス(p)は初見です。
コンスタントにリリースしているようなのでアルゼンチンの人気ピアニストだと思います。
自身のオリジナルが5曲、その他6曲の構成ですがビリー・ストレイホーンが3曲選ばれています。
デューク・エリントンやストレイホーンの影響が強いということでしょうか。
演奏内容はピアノ・トリオとトランペット入りのカルテットの組み合わせです。

南米の陽気で明るいプレイをイメージするとまったく違っていました。
北欧系の静謐なタッチとボサノバの気だるさを合わせ持つ特徴的なサウンドが聴けました。
ぐっと音数を抑えてポツン・ポツンと落ちてくる感じ・・・トランペットも実にクールです。
夜寝る前に聴くのが効果的でジワーッと心に沁みてきますよ。
ジャケットは地味だけど個性的で魅力に溢れるアルバムです。

(中間系)




(570) ESSENTIAL ELLINGTON & HIDEKO SHIMIZU / SONGS

渋谷毅(p)、松風鉱一(fl,cl,as,bs)、峰厚介(ts)、関島岳郎(tuba)、外山明(ds)、
清水秀子(vo)

2009/Carco/


清水秀子(vo)さんも大好きなので時々ライブを見に行っています。
今作は渋谷毅(p)さんが中心の「エッセンシャル・エリントン」に清水さんが参加したものです。
実はメンバーがメンバーだけに買うのを逡巡していたアルバムです。
ひねて重たいんじゃないかとの先入観を持っていました。
「今さらデューク・エリントン集もなぁ〜」という思いがあったのも事実です。
ライブで清水さんの歌を聴いていて、「やっぱり聴いてみようか」と思いました。
でも聴いてみて良かったです。
エリントンはいわばジャズの原点でいくら引き出しても枯れるということはありませんね。
その魅力的なメロディやハーモニーは永遠に不滅です。
渋谷さんのアレンジがいい・・・清水さんの歌がいい・・・関島岳郎さんのチューバがいい。

(中間系)




(569) AKANE MATSUMOTO TRIO / PLAYING N.Y

akane matsumoto(p), nat reeves(b), joe farnsworth(ds)

2010/T&K /


松本茜(p)さんの2枚目のリーダー・アルバムです。
1枚目の「フィニアスに恋して」も興味があったけれど買いそびれてしまいました。
今作はニューヨーク録音でバックはナット・リーブス(b)とジョー・ファーンズワーズ(ds)です。
オリジナル3曲とその他7曲の構成です。

松本茜さんはすでに何度かライブでも見ています。
容姿に似合わぬ凄みのある音が弾け飛んできてゾクゾクとするピアノを聴かせてくれました。
若手女性ピアニストではピカイチの存在かもしれませんね。
若さがある、輝きがある・・・その鋭い音色には魅力が溢れています。
前作のフィニアス・ニューボーン、ここではオスカー・ピーターソン、ホレス・シルバー、
バド・パウエル、デューク・エリントンといったところの作品を取り上げています。
スピード感に溢れる超絶テクニックはもちろんですが実はバラード奏法が素晴らしいです。
ロマンチックで美しく、とてもこの年齢とは思えない色気を感じます。
これが凄いと思いました。
なんでしょうね、このしっとりした大人の色気はどこからくるのか。
(7)「I SHOULD CARE」の素晴らしさは特筆ものです。
音数を抑えた間合い・・・これが彼女の真骨頂ではないかと思わせる一瞬があります。
というわけでここではバラードの(2)「TWILIGHT」、(4)「WHEAT LAND」、
(10)「SUNSET AND THE MOCKINGBIRD」などが聴きどころになりました。

動と静・・・スピードと間・・・ここの対比、その落差が最大の魅力だと思います。

(中間系)




(568) SHIMRIT SHOSHAN DUO & TRIO & QUARTET / KEEP IT MOVIN'

shimrit shoshan(p),
eric mcpherson(ds), abraham burton(ts), john hebert(b), luques curtis(b)

2010/Shimmya Music/


ジャケ買い・・・エキゾチックな雰囲気に惹かれて購入しました。
読み方はシィムリット・ショシャン(p)でいいのかな。
モンクの(7)「SKIPPY」を除いては全て自身のオリジナルです。
ショシャンはイスラエル出身で現在はニューヨークで活動しているそうです。
メンバーを見るとエリック・マクファーソン(ds)やアブラハム・バートン(ts)が入っていました。
このメンバーなら問題ないと思うと同時にちょっと重たいかもと予想しました。

中味は予想通りの重量系です。
基本的にモンク・テイストが強く中近東のオリエンタルなムードを持っていました。
(7)「SKIPPY」はドラムとのデュオ、(3)「SECRET IDENTITY」、(4)「KEEP IT MOVIN'」、
(6)「WITH THE BIRDS」、(8)「UNDER THE INFLUENCE」がピアノ・トリオ、
ここのトリオが一番の聴きどころになるでしょうか・・・ベースも強力です。
残りの(1)、(2)、(5)がバートンの入ったカルテットです。

コルトレーン系の重厚なバートンのテナーとエルヴィン張りのマクファーソンのドラムが絡む。
中に入るショシャンの力強く男勝りのピアノが聴けました。

(まじめ系)




(567) JOE MARTIN QUARTET / NOT BY CHANCE

joe martin(b),
chris potter(ts), brad mehldau(p), marcus gilmore(ds)

2009/ANZIC/


ここはメンバーが魅力です。
思うに久しくクリス・ポッター(ts)やブラッド・メルドー(p)のアルバムを買っていません。
リーダー作はいまひとつ食指が動かず、探し当てたのがこのジョー・マーティン(b)の作品です。
ポッターとメルドーの二人が共演しているのは幸運でした。
ジャコ・パストリアス(elb)の1曲を除いては全てマーティンのオリジナルです。

リーダーのマーティンの音楽性に合わせて比較的オーソドックスな演奏が聴けました。
ポッターもメルドーもあまりに独自色が出るとつらい部分があるので丁度いい案配です。
とはいうもののこの二人の絡みにはスリルがありました。
特にメルドーのピアノが素晴らしい・・・印象的・・・弾くというより奏でる感じがします。
個性あるメルドーのバッキングに乗ってポッターのサックスがうねります。
ドラムのマーカス・ギルモアにもセンスを感じました。
祖父があのロイ・ヘインズ(ds)という血筋の良さです。
ちなみに今作は「幻の名盤」になる可能性が高いと思いますよ。

(まじめ系)




(566) HAKUEI KIM TRIO / SHADOW OF TIME

hakuei kim(p), ben waples(b), dave goodman(ds)

2007/DIW/


キム・ハクエイ(p)さんの3枚目のリーダー・アルバムです。
このあとメジャー・レーベルに移ることになるので今作がそのキッカケになりました。
それだけ個性が際立った作品だと思います。
選曲も凝っていてハクエイさんの独自性を感じることができました。
私は(1)「LOUD ZEE」を聴いただけでぶっ飛びました。
その他の曲の内容も素晴らしい・・・多彩な表現力が魅力・・・録音もいいです。
ハクエイさんの代表作になり得る1枚です。

(中間系)




(565) JONATHAN KREISBERG QUINTET / SHADOWLESS

jonathan kreisberg(g), will vinson(ts,p),
henry hey(p), matt penman(b), mark ferber(ds), rich stein(tam)(6)

2011/New for Now/


今作も去年の「みんなのベスト3」に選ばれていた1枚ですね。
ジョナサン・クレイスバーグのギターは個性的で面白いと思います。
1曲を除いては全てクレイスバーグのオリジナルです。
クレイスバーグはいわゆる新感覚ギタリストの一人ですが、
代表格のカート・ローゼンウィンケルとは一味違う感性を持っています。
陽性で明るく、弾むような飛び跳ねるようなサウンドが特徴的です。
コンテンポラリーでフュージョン・テイストもあります。
そんな彼の音楽性を十分に楽しむことができました。
ピアノとギターの絡み、ドラムスのハジケ具合は現在の流行ですね。
ピアノやテナーとのユニゾンも魅力・・・ウィル・ヴィンソン(ts)との相性もピッタリです。
ヘンリー・ヘイズ(p)もクレイスバーグと同じ感覚を持っているのでドンピシャの人選です。
じっくりと練り上げられた完成度の高いアルバムだと思います。

クレイスバーグ、マット・ペンマン(b)、マーク・フィーバー(ds)の3人は2006年のライブで見ています。
ちなみにライブ・レポートではこんなことを書いていました。

「ジョナサン・クライスバーグは最近話題になっているギタリストでマット・ペンマンの近年の活躍も目立ちます。
3人共に30歳代前半の現役バリバリ、3人の超絶テクニックが凄いので3者3様の多彩なプレイが楽しめました。
クライスバーグはパット・メセニー級のテクニシャンでなめらかなギター、超高速フレーズには目を見張るばかりです。
ペンマンはすごく大きな手をしていて、まるでメロディー楽器のように軽々とベースを駆使しています。
マーク・ファーバーは硬質で決してスマートとは言えませんが繰り出すユニークなリズムには聴き応えがありました。
一見、学者風に見えてとてもミュージシャンとは思えませんでした」

強烈な印象を残したライブでしたがこのトリオはずっと続いているようですね。
気心の知れた3人のラインがキッチリとしているので安定感があります。

(中間系)




(564) JOAO GILBERTO

joao gilberto(g,vo), etc

1973/Polydor/


輸入ジャズ廉価版シリーズの1枚です。
ボサノバといえばこのジョアン・ジルベルト(g,vo)も忘れてはいけませんね。
アントニオ・カルロス・ジョビンと共にボサノバの生みの親とも言えます。
というわけでボサノバの雰囲気を味わうには最適なアルバムです。
声質、ギターの音色共に申し分ありません。
波打ち際の波に揺られているような気がする・・・。
まるでゆりかご・・・のんびりとけだるくて眠くなってしまいます。

(くつろぎ系)


余談
スタン・ゲッツ(ts)と組んだ「ゲッツ/ジルベルト」は大ヒットしましたね。
ジャズ&ボサノバの魅力を広く世に知らしめた作品です。




(563) STEFON HARRIS DAVID SANCHEZ CHRISTIAN SCOTT
/ NINETY MILES

stefon harris(vib), david sanchez(ts), christian scott(tp),
remember duharte(p), osmar salazar(elb), eduardo barroetabena(ds),
harold lopez-nussa(p), yandy martines gonzalez(b), ruy adrian lopez-nussa(ds),
jean roberto san miguel(cong,per), edgar martinez ochoa(cong,per)

2011/Concord/


ステフォン・ハリス(vib)、デヴィッド・サンチェス(ts)、クリスチャン・スコット(tp)
の3人がキューバのミュージシャンと共演したアルバムです。
去年の「みんなのベスト3」にも選ばれていた1枚ですね。
全9曲はサンチェス、ハリスで5曲、キューバのピアニスト4曲の構成です。

まずは強烈なアフロ・キューバン・リズムが耳に飛び込んできました。
凄いです・・・体が揺れました。
このようなアフロ・キューバン・ジャズを聴くのは久し振りなのでとても新鮮です。
ピアノ、ベース、ドラム、コンガ、パーカッションが一体となって繰り出すリズムが熱い。
この呪術的なリズム感は素晴らしいです。
特にパーカッシブなピアノのバッキングが生み出す効果は抜群です。
キューバの二人のピアニストは印象に残りました。
この強力なリズムに乗ってハリス、サンチェス、スコットも全開でぶっ飛ばします。
気分良く、思いっきり演奏できたんじゃないでしょうか。
ハリスもサンチェスも自己のアルバムではいまひとつねじれたところがあるんでね。
このようにストレートに演奏してくれると嬉しいです。

内容はどれもいいですがメロディアスな(2)「E'CHA」、アフロな(6)「CONGO」、
(5)「BLACK ACTION FIGURE」におけるハリスのプレイなどに注目しました。


(中間系)




(562) JOE PASS & PAULINHO DA COSTA / TUDO BEM !

joe pass(g), paulinho da costa(per),
don grusin(key), oscar castro neves(g), octavio bailey(b), claudio slon(ds)

1978/PABLO/


輸入ジャズ廉価版シリーズの1枚です。
ジョー・パス(g)のボサノバ・アルバムってどんなだろうかと思いました。
パスとパーカッション奏者のパウリーニョ・ダ・コスタの共演盤です。
ブラジルのリズム・セクションにドン・グルーシンがキー・ボードで参加しています。

ボサノバ・テイストを期待するとちょっと違っていました。
名手ジョー・パスにしても感性の違いはいかんともしがたいような気がします。
ボサノバ特有ののんびりとした気だるさに欠けているんですね。
でも、ジャズ・アルバムとしては十分に通用しますよ。
ブラジルのリズムに乗ったスピード感溢れるパスのギター・プレイが聴けます。
(3)「WAVE」の展開は新鮮、(7)「THE GENTLE RAIN」は心地良かった。
ジョー・パスの異色作です。

(くつろぎ系)




(561) PAT MARTINO QUARTET / FOOTPRINTS

pat martino(g),
richard davis(b), billy higgins(ds), bobby rose(second guitar)

2003(1975Rec)/Savoy(Muse)/


輸入ジャズ廉価版シリーズを見ていて欲しくなりました。
オリジナルは1975年発売のパット・マルティーノ(g)・カルテットです。
シルバー・ジャケットで知られるMuse原盤は珍しいかもしれません。

ここは選曲に興味を持ちました。
ウェス・モンゴメリー(g)の(3)「ROAD SONG」、ジョビンの(5)「HOW INSENSITIVE」、
ウエイン・ショーター(ts)の(4)「FOOTPRINTS」など。
いわゆるジャズのスタンダードをマルティーノがどう料理しているのかが聴きたかった。

間延びして途切れるように終わってしまう(2)「WHAT ARE YOU DOING〜」は何とも。
それ以外は聴き味がいいです。

近年の疾走感のある刺激的な演奏とは一線を画します。
大きく鷹揚である種の気だるさもありました。
特に「ROAD SONG」や「HOW INSENSITIVE」がいいですね。
この2曲を何度も聴いてしまいました。
じっくりと聴いているとマルティーノのボサノバがこんなにいいとは思わなかった

表題曲のショーターの「FOOTPRINTS」はちょっと凝り過ぎた感があります。
この曲は今でこそ当たり前ですが当時のギタリストが取り上げたことが驚きです。

今作はウエス・モンゴメリーに捧げる作品にもなっているようですね。
マルティーノがどれほどウエスを敬愛していたのかがよく分かりますよ。
存在感のあるリチャード・デイヴィスのベース・プレイにも注目しました。

(くつろぎ系)




(560) ANTONIO CARLOS JOBIM / WAVE

antonio carlos jobim(p,g), claus ogerman(con),

1986(1967Rec)/A&M/


輸入ジャズ廉価版シリーズの1枚です。
アントニオ・カルロス・ジョビンの有名なキリンのジャケット。
LPでも持っていますがCDでもというわけで買いました。
実はこの他にもボサノバやブラジルものを何枚か入手しました。
私はジャズ聴きが中心だったのでボサノバやブラジル系がまったく抜けているんです。

プロデュースがクリード・テイラー、アレンジにクラウス・オガーマンとくればヒット間違いなし。
ボサノバ、ジョビン・ファンなら必携のアルバムだと思います。
ボサノバの名曲(1)「WAVE」をはじめ、全てジョビンのオリジナルです。
ベースにロン・カーター、トロンボーンのアービー・グリーンのソロが光ります。
天才、アントニオ・カルロス・ジョビンの世界をご堪能あれ。

(くつろぎ系)




(559) MICHEL PETRUCCIANI & NIELS-HENNING ORSTED PEDERSEN

michel petrucciani(p), niels-henning orsted pedersen(b)

2009/Dreyfus/


ミシェル・ペトルチアーニ(p)とオルステッド・ペデルセン(b)のデュオ、ライブ盤です。
2009年の発売なので何をいまさらという感じがするかもしれませんね。
発売時に買わなかったのにはちょっとした理由があります。
ただ単に2枚組だったから・・・私は2枚組というだけで避けて通る習性があります。
2枚あっても聴くのは1枚だけになるのでなんで2枚必要なんだと思っちゃう。
売り手に対する密かな抵抗ですがもちろんいつでも手に入るという計算もありました。

やせ我慢は身体に悪い・・・無理しないで買おう・・・ということで買いました。
今作がペトの最後の正規盤と同時にペデルセンとのデュオは聴かなきゃいけません。
今作はデンマークのコペンハーゲンで1994年の吹き込みです。
なんと15年間も陽の目を見なかったなんて信じられない・・・どんな理由があったのか?

二人は共に10代から活躍しているヨーロッパの天才ジャズ・メンです。
ペデルセンが世界に知られるようになったのはデクスター・ゴードン(ts)盤からだと思います。
17歳の時でした。
真にヴァーチュオーゾと呼べる人は少ないけれどペデルセンは間違いなくその一人です。
クラシックをバックボーンにした驚異的なベース・プレイは後のベーシストに与えた影響はいかばかりか。
「強力無比、強靭なベース・ソロ」という表現はペデルセンから始まったような気がします。
ペトルチアーニが知られるようになったのも同じ17歳でしたね。
こちらは引退していたチャールス・ロイド(ts)がその素晴らしさに驚いてカムバックしたほどです。
スイング感溢れる強烈なタッチは切れ味抜群、その個性的なピアノ音は他の追随を許しません。
まさに痺れる音色の持ち主です。
・・・だけど、もう二人共に亡くなってしまいました。

演奏曲にはよく知られたジャズ・スタンダード・ナンバーが並んでいますね。
どうもCD1はペトルチアーニ、CD2はペデルセンの選曲になるようです。
この二人ならではの圧倒的な珠玉の名演が詰まっていました。
2枚組でも十二分に納得する内容です。
どれを聴いても素晴らしい・・・聴衆の興奮ぶりも手に取るよう分かりました。
録音も良く、グイと引き込まれることは請合います。

私は今でもペトルチアーニのピアノには興奮を抑えられずにはいられません。
多分、最も長く聴き続けているピアニストだと思います。

(中間系)




(558) TOSHIYUKI SEKINE TRIO / DANCING 舞

関根敏行(p) 是安則克(b) 小泉高之(ds)

2011/Mugigi/


関根敏行さんも私の周りで評判の良いピアニストです。
4年ぶりのニュー・アルバムは自身のオリジナル6曲、その他7曲の構成です。
オリジナルはお母さんや妻や娘の家族に捧げた曲になっています。
ウエイン・ショーターやフレディ・ハバード、パスコアールの曲も取り上げていますね。
ピアノの他にフェンダー・ローズも聴けました。
全13曲は73分、録音はやや硬めです。

関根さんの魅力は明るく輝かしいピアノの音色にあると思います。
チック・コリア、ジョー・ザビヌル、セルジオ・メンデスといったところのラテン系の味がします。
聴いていると元気になるし踊りたくもなりますよ。・・・それでアルバム名が「舞」なのかな。
ライブで見るとこの印象は益々強くなります。
関根さんの弾むようなピアノ音を聴いていると自然に体が動いてくるんです。

小泉高之さんのうねるようなドラミングもこのトリオにはピッタリです。
ベースの是安則克さんは去年亡くなってしまいました。
突然だったのでみなさん驚いたようです。
これが最後の吹き込みだったかもしれませんね。

(くつろぎ系)




(557) FRANCESCO CAFISO QUARTET / ANGELICA

francesco cafiso(as),
aaron parks(p), ben street(b), adam cruz(ds)

2009/Cam Jazz/


さかのぼって聴くフランチェスコ・カフィーソの第六弾です。
今作は19歳の時、10代最後の作品になると思います。
自己のオリジナルにビリー・ストレイホーン、デューク・エリントン、ホレス・シルバー、
ソニー・ロリンズの曲などを演奏しています。
共演はアーロン・パークス(p)、ベン・ストリート(b)、アダム・クルーズ(ds)、
ニューヨークの最先端をいくトリオをバックにした作品です。

ここでもカフィーソは物怖じせず堂々と渡り合っています。
っていうか、主役は明らかにカフィーソでその感性の素晴らしさには驚嘆しました。
聴けば一目瞭然です・・・バックの3人も好演しています。
これも凄かった・・・どれを取っても第一級のアルト・サックス・ソロが聴けます。
ジャケットはいかにも甘いけれど中味には強烈な味が隠されていました。
背中がゾクゾクとして涙が出そうになった・・・ジャズは永遠に不滅です。
カフィーソの将来を期待せずにはいられません。

(まじめ系)




(556) ERIC ALEXANDER QUARTET / DON'T FOLLOW THE CROWD

eric alexander(ts),
harold mabern(p), nat reeves(b), joe farnsworth(ds)

2011/HIGHNOTE/


今作はエリック・アレキサンダー(ts)のリーダー・アルバムでは最新のものです。
エリックについてはあまりに色んなところに出没するので食傷気味の人も多いと思います。
それで段々語られることも少なくなりました。
でも、多くのプレイヤーと共演しているのでそれが血となり肉となっているのも事実です
表現力も実に多彩で多くの他流試合が効を奏した好例になっています。

私は最近、エリック・アレキサンダーを聴くことも多いです。
王道を歩くオーソドックスなテナー・サックスは大いなる安心感を与えてくれるからです。
艶のある音色はエネルギッシュでパワフル、テクニックも申し分ありません。
ひねたところがなく、けれん味のないサウンドがストレートにドーンと迫ってきます。
それがエリックの最大の魅力だと思います。
もちろん、ひとつひとつをよく聴いてみるとスリルもサスペンスもありますよ。

みなさんもよくご存知のお馴染みのレギュラー・カルテットによる作品です。
特に師匠格にあたるハロルド・メイバーン(P)には魅力があります。
エリックがより生き生きと輝いてくるんです。
自身のオリジナルが2曲にその他6曲の構成です。
(5)がラテン、(4)がワルツ、(7)は珠玉のバラードと曲調もよく考えられています。
唄ものの(2)「SHE'S OUT OF MY LIFE」が聴きどころになりました。
「シャレード」と「ディア・ハンター」の2曲の映画音楽を取り入れているところが新味でしょうか。
近年の平均点は高いと思います。

(中間系)




(555) DIANA PANTON / TO BRAZIL WITH LOVE

diana panton (vo),
john di martino(p), don thompson (b, p, vib), reg schwager (g),
maninhocCosta (vo, ds, per)(1.3.4.5.8), bill mcbirnie (fl), kiki misumi (cello)
silas silva (ds, per)(2.6.7.9.10.11.13.14 )

2011/MUZAK/


カナダのダイアナ・パントン(vo)は初見です。
ジャズ友の間で話題になっていたので知ってはいましたが今回聴く機会を得ました。
一瞬で「あ〜、なるほどねぇ〜」と思いましたよ。
声が特徴的・・・ハスキーで甘くかわいい声・・・瑞々しく透明感もある
耳元で囁かれたらどうしようかと思います。
やや舌足らずのところがあるけれど歌は上手いです。
日本で人気があるのも納得しました。
バックにはドン・トンプソン(b,p,vib)、ビル・マクバーニー(fl)、
ジョン・ディ・マルティーノ(p)と名手達が参加しています。

今作には「わたしが愛したブラジル」という副題が付いていました。
選曲には馴染みの曲が並んでいますね。
テンポのあるものよりスロー・バラードがいいと思いました。
(4)「Manha de Carnaval」、(12)「And I Love Him」、(14)「I Wish You Love」など。
特に(12)「And I Love Him」は名演です・・・マルティーノのピアノも心に沁みた。
(7)「The Night Has a Thousand Eyes」はどこまで美しくトンプソンのヴァイブが光る。
(6)「His It Really You?」、(8)「Dans mon ile」は歌われることが少ないので新鮮です。
マクバーニーのフルートの味付けも聴きどころになっています。

これは不思議なアルバムです。
なんかよく分からないけれど引きつけられるところがあります。
けだるさがあってもしつこくない・・・あっけらかんとして明るい・・・でも声は甘く切ない。
アンバランス・・・どうにもつかみどころがないのが魅力かな。
個性的で異色のボサノバ・アルバムは時々聴きたくなるような気がします。

(くつろぎ系)




(554) FRANCESCO CAFISO QUARTET / SEVEN STEPS TO HEAVEN

francesco cafiso(as),
andrea pozza(p), aldo zunino(b), nicola angelucci(ds)

2006/Venus/


さかのぼって聴くフランチェスコ・カフィーソの第五弾です。
先日紹介したVenusレーベルの「NEW YORK LULLABY」の録音が16歳の6月、
Camレーベルの「HAPPY TIME」が16歳の10月でした。
今作は17歳の1月の録音です。
今どきたった8ヶ月で3枚のアルバムをリリースするって珍しいんじゃないかな。
それだけ注目されていた証拠ですね

Venusレーベルのスタンダード作品集の第二弾です。
さすがに大スタンダード集なので消化不良になった部分もありました。
惜しかったのは(5)「MY FUNNY VALENTINE」で解釈は新鮮でもやや迷いを感じました。
タンゴ・・・意図は分かるんだけどねぇ〜・・・いまひとつ突き抜けなくて残念です。
特に素晴らしかったのは(2)「GREEN CHIMNEYS」でこれにはインパクトがありました。
ドラムとのコンビネーションは圧巻です。
これを聴いたら誰もがカフィーソの天才を疑わないと思います。
あと、ドラマーのニコラ・アンジェルッチにも注目しました。


(中間系)




(553) FERIT ODMAN QUINTET / AUTUMN IN NEW YORK

terell stafford(tp), vincent herrring(as),
anthony wonsey(p), peter washington(b), ferit odman(ds)

2011/EQUINOX/


フェリト・オドマン(ds)は初見です。
ジェームス・ウィリアムス(p)を3曲取り上げているように彼に捧げるアルバムになっています。
あとはベニー・ゴルソン(ts)にシダー・ウォルトン(p)とくれば狙いは一目瞭然ですね。
アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズのラインです。
もちろん私もそれが聴きたくて買いました。
テレル・スタッフォード(tp)とヴィンセント・ハーリング(as)のフロント2管、
注目すべきはアンソニー・ウォンジー(p)の参加でしょうか。
内容は予想通り、典型的なハード・バップ演奏が聴けました。
スタンダードの2曲、表題曲の(3)「AUTUMN IN NEW YORK」はスタッフォード、
(6)「MY IDEAL」はハーリングのワンホーンで今作の聴きどころになっています。
聴き味の良い安心感を与えるアルバム・・・ホッとしますよ。
ただ録音時間45分は短くて物足りないです。

(くつろぎ系)




(552) MIKE WOFFORD & HOLLY HOFMANN QUINTET
/ TURN SIGNAL

holly hofmann(fl), terell stafford(tp),
mike wofford(p), rob thorsen(b), richard sellers(ds)

2012/Caori Records/


マイク・ウォフォード(p)とホリー・ホフマン(fl)の双頭クインテットの作品です。
マイクとホリーはご夫婦です。
ウォフォードはサラ・ヴォーンやエラ・フィッツジェラルドのバックとして活躍していました。
アレンジャーとしての評価も高いです。
収録曲はオリジナルが2曲にヴィンス・メンドーサ(arr,comp)、ボビー・ワトソン(as)、
ジミー・ホレスト(ts)、リチャード・トゥワージク(p)等が選ばれました。
特に24歳という若さ、麻薬過で早世したトゥワージクの曲が演奏されるのは珍しいですね。

西海岸の軽快で爽やかなサウンドをイメージするとちょっと違うかもしれません。
1、2曲目がやや硬いのでその印象が強くなりました。
フルートとトランペットのフロント2管は珍しいんじゃないかな。
楽器の性格上どうしてもトランペットが目立ってしまうから。
トランペッターにテレル・スタッフォードを起用したのはさすがの人選です。
あんまりしゃしゃり出ない控え目なテレルなのでフルートとトランペットのバランスが取れました。
構成もよく練られていて実にクールな仕上がり・・・グループとしての完成度は高いです。
聴きどころになったのはワトソンの(3)「KARITA」、(4)「SOUL SWEET」も面白かった。
(5)「PURE IMAGINATION」ではテレルが輝きに満ちたソロを聴かせます。

全体的にすんなりと乗れるというわけではないけれど一ひねりある作品です。
アレンジャーとしてのマイク・ウォフォードの実力と独特のリズム感とタッチが楽しめました。

(中間系)




(551) ERIC ALEXANDER QUARTET / SPRIME TIME

eric alexander(ts),
david hazeltone(p), john webber(b), joe farnsworth(ds)

2008/HIghNote/


エリック・アレキサンダー・カルテットのライブ盤です。
この何年かはライブ中心でCD買いから遠ざかっていたので買いそびれていました。
CDとDVDの2枚組なのでお徳用な買い物になりました。
もっともCDの方はかなり編集されているので臨場感は薄いです。
こういうのってあまりに明らさまだと興醒めになりますね。

このメンバーは3年前のライブで見ています。
思ったよりはずっとクールな演奏でしたがここでもその印象は変わりませんでした。
エネルギッシュにパワフルに吹きまくるという感じはほとんどありません。
その分、見事にコントロールの利いたテナー・サックスを聴くことができます。
そんな思いで聴いていたら最長の(7)「NEMESIS」では強烈にぶっ飛ばしてくれました。
まったく惚れ惚れしてしまいますよ。
バックのデヴィッド・ヘイゼルタイン(p)とジョー・ファーンズワーズ(ds)もいいです。
ただベースのジョン・ウィーバーはどうなんだろう。
なんか、いつも物足りないんだけど替えられないのかな。

(中間系)




(550) SOLID & SEAMUS BLAKE / VISITOR

bjorn vidar solli(g), daniel buner formo(org), hakon majset johansen(ds),
seamus blake(ts)

2011/Parallell Records/


北欧ノルウェーのオルガン入りギター・トリオにシーマス・ブレイク(ts)が客演した作品です。
全8曲はメンバーのオリジナル6曲と他2曲の構成です。
曲想にはそれほど変化がなくやや一本調子のような感じがしました。
スタイルはカート・ローゼンウィンケル(g)を筆頭にする新感覚のサウンドです。
リーダーのビヨーン・ヴィダー・ソリ(g)もそのラインを踏襲しているようです。
オルガン・トリオ+テナー・サックス=ソウルというイメージでいると完全に裏切られますよ。
私もオルガン・トリオはこういうものという先入観を壊されました。

北欧独特のクールで静謐なサウンドはここでも生きています。
オルガンはどちらかというとキーボードに近いと思いました。
実に繊細でスマートでこういう使い方は新鮮でもありまた個性があります。
シーマス・ブレイクの馴染み方にも驚きました。
オリジナルのとても初演とは思えない・・・まったくピッタリとハマっているんです。
シーマスはいまひとつ掴みどころがない気がしますがやはり実力は相当なものです。
幅広い音楽性を持つシーマスの新しい一面を見ました。
シーマスはマイケル・ブレッカー(ts)の後継者に成り得ると思っていたけど全然違う。
器用さは無個性にも通じるのでここの評価はむずかしいです。

完成度の高いアルバムで音量の大小でまったく印象が変わってしまいます。
小音量なら就寝時のBGMに大音量ならゾクゾクとするジャズの魅力が味わえます。

(中間系)




(549) MARCUS PRINTUP QUINTET / HOMAGE

marcus printup(tp), gregory tardy(ts),
aaron diehl(p), corcoran holt(b), alvin atkinson(ds)

2012/SteepleChase/


マーカス・プリンタップ(tp)の新譜は先輩トランペッターへのオマージュという企画ものです。
キング・オリバーから始まってマイルス・デイヴィス、リー・モーガン、ウィントン・マルサリス、
ロイ・ハーグローヴ、ディジー・ガレスピー、フレディ・ハバード、ウディ・ショウ、
ファッツ・ナヴァロ、クリフォード・ブラウンという錚々たる名前が並んでいます。

購入のキッカケは去年のベスト3に選んだアーロン・ディール(p)が参加していたからです。
どんなピアノを聴かせているのか、興味がありました。
やはり相当にブルース・フィーリングが強く粘っこいピアノを聴かせてくれました。
もう一人、グレゴリー・ターディ(ts)の個性的なプレイも印象に残りました。
こねくるような不思議なサウンドの持ち主です。
この二人が聴きどころになるかな。

プリンタップは名手で器用なトランペッター・・・これくらい出来て当たり前だと思います。
オリバーの(1)「WEATHER BIRD」やただ1曲のスタンダードの(8)「SUNDAY」、
ナヴァロの(10)「NOSTALGIA」は心に響く演奏・・・より古典的なサウンドが面白かったです。


(中間系)




(548) OMER AVITAL QUINTET / LIVE AT SMALLS

avishai cohen(tp), joel frahm(ts),
jason lindner(p), omer avital(b), johnathan blake(ds)

2011/Smallslive/


「ライブ・アット・スモールズ」の1枚です。
このシリーズは現在のニューヨークのジャズが聴けるということで注目しています。
プレイヤーも自由にやらせてもらっているようでオリジナル曲が多いです。
私もこのところで何枚か買いましたが全体的に重たい作りになっています。
以前だったらこれくらいは何でもなかったですが年なので軟弱になったのかもしれませんね。
正直、ちょっとしんどい時もあるけれど負けてはいられないとも思います。

今作は全曲オマー・アヴィタル(b)のオリジナルです。
イスラエル出身のアヴィシャイ・コーエン(tp)とのコンビは中近東の香りもします。
(3)「ONE」ではその雰囲気を十分味わえました。
あとのメンバーはジョエル・フラーム(ts)、ジェイソン・リンドナー(p)、ジョナサン・ブレイク(ds)です。
重厚な作りはかのチャールス・ミンガス(b)に相通じるところもあります。
最近のベースマンはあんまりミンガス・テイストは出さないのでかえって新鮮な感じもします。
ベストは14分強の(2)「MAGIC CARPET」でしょうね。
途中から展開されるピアノ・トリオではグイグイと盛り上がる抜群なノリに痺れました。
作りが重いのでスピード感のある演奏がいいです。
(6)「ANTHEM TO LIFE」ではアヴィシャイのトランペット、ジョエルのテナーが吼えました。


とっつきはいまひとつだと思いますが何度か聴いているうちに段々良くなってきます。
特にリンドナーのピアノとブレイクのドラムスに注目しました。

(まじめ系)




(547) FRANCESCO CAFISO QUARTET / HAPPY TIME

francesco cafiso(as)
riccardo arrighini(p), aldo zunino(b), stefano bagnoli(ds)

2006/CamJazz/


さかのぼって聴くフランチェスコ・カフィーソの第四弾です。
先日紹介したVレーベルの「NEW YORK LULLABY」の録音が16歳の6月で今作は10月です。
前者が全曲スタンダードならこちらは全曲カフィーソのオリジナルになっています。
一対のアルバムと考えてもいいかもしれませんね。

(3)「HAPPY TIME」を除いては全て誰かに捧げる曲になっています。
(1)「LOUISAINA」はジェームス・ウィリアムス(p)、(7)「GOODBYE ELVIN」はエルヴィン・ジョーンズ(ds)、
(5)「
BLUES FOR ANGEL」はお父さん、(2)「SHE LOVES ME」はガールフレンドといった具合です。
そんなことを考えながら演奏している時が「一番幸せ」ということなんでしょうね。


聴いてみるとカフィーソは作曲家としても非凡な才能を持っていました。
やはり相当違う・・・普通じゃない・・・ただ上手いだけのジャズ好きな若者ではありません。
緩急を問わない抜群のリズム感といい、多彩で自由自在な表現力といい、まだまだ成長途上です。
前述の(7)「GOODBYE ELVIN」なんかもいい感じで聴けました。
言い古された言葉でも使うしかないですね・・・「とても16歳には思えない。」
ジャズ全盛期の50年代に出現した多くのジャズ天才児に匹敵するのではないかな。
これからどう成長していくのか、本当に楽しみです。

(中間系)




(546) ERIC ALEXANDER QUARTET / CHIM CHIM CHEREE
〜tribute to John Coltrane

eric alexander(ts),
harold mabern(p), jhon webber(b), joe farnsworth(ds)

2010/Venus/


疲れた時の神頼みはエリック・アレキサンダーに決まっています。
王道のテナー・サックスはいつでも私の心を癒してくれます。

今作はジョン・コルトレーンに捧げたバラード集です。
コルトレーンの3曲を含めて中々に興味深い選曲だと思いました。
(5)「PURSUANCE」は名作「至上の愛」からの1曲です。
メリー・ポピンズの(4)「CHIM CHIM CHEREEはコルトレーン・カルテットそのものの味わい。
モダン・ジャズの名曲、タッド・ダメロン(p)の(3)「ON THE MISTY NIGHT」も渋い選択ですね。
(6)「AFRO BLUE」や(7)「THE NIGHT HAS A THOUSAND EYES」が聴けたのも嬉しかった。
つくづくハロルド・メイバーン(p)の存在が大きいです。

エリック・アレキサンダー(ts)については多くを語る必要はないでしょうね。
ジョン・コルトレーン&ソニー・ロリンズの流れを汲む現在の主流派テナーの代表格です。
私にとってエリックほど安心して聴けてしっくりくるテナー奏者は他にいません。
エリックはジャズ・ファンの中ではあまりに当たり前過ぎて語られることも少ないですね。
でも現代テナーを代表するプレイヤーであることは間違いありませんよ。
テナー・サックスの持つ魅力の全てを表現できる稀代のプレイヤーだと思っています。

エリックのリーダー作のピアニストはここのハロルド・メイバーンやデヴィッド・ヘイゼルタイン、
マイク・ルドン、ジョン・ヒックスなどが名を連ねています。
特にメイバーンがピアノだとよりバップ色が強くなって思いっきりのいいプレイが聴けます。
デビュー時からの長い付き合いなので兄貴分というより父親の感覚に近いかもしれませんね。
このメイバーンの強烈なバッキングに乗ってエリックのテナーが炸裂します。
力強くよどみないフレーズ、艶のある音色、抜群の表現力は申し分ありません。
惚れ惚れします・・・凄いです。

(中間系)




(545) CARL ALLEN & RODNEY WHITAKER / WORK TO DO

carl allen(ds), rodney whitaker(b),
vincent chandler(tb), george colligan(p), vincent herring(as),
rodney jones(g), bradon lee(tp), dorsey robinson(org)
kirk whalum(ts,ss)j

2009/Mack Avenue/


「何か面白そうなものはないかなぁ〜」と探していて見つけたのがこれです。
カール・アレン(ds)とロドニー・ウィテカー(b)の双頭コンボです。
アレンもウィテカーも共に90年代は大活躍のプレイヤーでした。
この二人なら”真っ黒い”リズムが聴けるのではと思いました。
おまけにスムース・ジャズ・シーンの雄のカーク・ウェイラム(ts)の参加も気になりました。
共演のロドニー・ジョーンズもR&B系を強く感じさせるギタリストです。

演目はアレン&ウィテカーのオリジナルの他にビートルズやマーヴィン・ゲイ、
ソウル・バラードの名曲、ジョニー・マンデルなど全10曲です。
全体を覆うのは70年代を彷彿とさせるフュージョン系サウンドでした。
この狙いで起用したカーク・ウェイラムがやはり主役です。
アレン&ウィテカーの黒いリズムにウェイラムの軽やかなテナーが乗る構図です。
ロドニーのギターがまたいい味を出しています。
(7)「WITH YOU I'M BORN AGAIN」や(5)「WHAT'S GOING ON」が聴きどころになりました。
純ジャズとスムース・ジャズが融合してR&Bを味付けするとこういう感じになるんでしょうね。
ユニークな雰囲気を醸し出しています。

(くつろぎ系)




(544) ALLEN TOUSSAINT SEXTET / THE BRIGHT MISSISSIPPI

allen toussaint(p,vo), don byron(cl), nicholas payton(tp),
marc ribot(g), david piltch(b), jay bellerose(ds)
special guest:brad mehldau(p)(5), joshua redman(ts)(10)

2009/Nonsuch/


先日、ジャズ仲間との話の中でアラン・トゥーサン(p)の名前が出てきました。
それで今どうしているかと思って探したのがこのアルバムです。
メンバーにドン・バイロン(cl)、ニコラス・ペイトン(tp)が名を連ね、
スペシャル・ゲストにブラッド・メルドー(p)とジョシュア・レッドマン(ts)という豪華盤です。

シドニー・ベシエ(cl)、ジム・ロビンソン(tb)、ジェリー・ロール・モートン(p)、キング・オリバー(cor)、
ジャンゴ・ラインハルト(g)、デューク・エリントン(p)などの古典的な楽曲を取り上げています。
演奏はニューオリンズ・ジャズのブルース感覚を色濃く反映したものになっています。
まさに「光り輝くミシシッピー」です。

むずかしいことは何もない、どこか牧歌的で懐かしくふんわりとしたものに包まれる感じがする。
このユッタリとしたノリが心に沁みてくるんです。
トゥーサンのピアノはもちろんですが(11)の歌にも抜群の雰囲気がありました。
(5)メルドーのブルース感覚、(10)レッドマンのバラード奏法・・・その存在感はまた格別のものです。
とかく忙しい毎日、疲れている時にはこのようなのんびり感が必要じゃないかな。

(くつろぎ系)




(543) CARMELL JONES QUINTET / THE REMARKABLE CARMELL JONES

carmell jones(tp), harold land(ts),
frank strazzerii(p), gary peacock(b), leon pettis(ds)

2011(1961/Rec)/Pacific Jazz/


ジャズ廉価版、999シリーズの1枚です。
カーメル・ジョーンズ(tp)の初リーダー・アルバムということで買ってみました。
カーメルは地味なトランぺッターの代表選手みたいな感じですね。
ホレス・シルバー(p)の大ヒット盤、「Song For My Father」に参加していなかったら
ほとんど知られていなかったんじゃないかと思います。
衆目が認める代表作は「Jay Hawk Talk」(1965/Prestige)でしょうか。
もっとも極端に寡作なプレイヤーなので選んでもあんまり意味はないかもしれませんが。

今作はハロルド・ランド(ts)とのフロント2管、注目すべきはゲイリー・ピーコック(b)の参加です。
ピーコックはこの頃からすでに存在感を感じさせます。
スコット・ラファロ(b)とは同年代で西海岸で腕を競い合っていたかもしれませんね。
ワン・ホーンで聴かせる(2)「COME RAIN OR COME SHINE」が素晴らしい。
この時、カーメルはまだ25歳ですよ・・・まったくこの頃のジャズメンはどうなっていたのか・・・早熟です。

デューク・エリントンの(1)「I'M GONNA GO FISHING」は10分を超える一番の長丁場。
ジミー・ボンド(b)の(3)「NIGHT TIDE」、ブルース・マーチのパクリの(4)「SAD MARCH」、
(5)「STELLISA」のバラード、トリッキーなテーマの(6)「FULL MOON AND EMPTY ARMS」など。
全体を覆う
ファンキー&グルービーな雰囲気がたまりません・・・「あ〜、ジャズだなぁ〜」と思います。
ピーコックの一味違うベース・プレイにも注目しました。

カーメル・ジョーンズは真面目な性格だと思います。
音にそれが現れています・・・端正で美しく、清潔、清冽といった表現がピッタリきます。
クリフォード・ブラウン(tp)の小型化というか、逆に突き抜けたところがないのが弱みだったかも・・・。
朴訥でゴツゴツとしたハロルド・ランドとのコンビネーションもいいです。
あとフランク・ストラッツェリのピアノも聴けます。

(中間系)




(542) FRANCESCO CAFISO QUARTET / NEW YORK LULLABY

francesco cafiso(as),
david hazeltine(p), david williams(b), joe farnsworth(ds)

2005/Venus/


さかのぼって聴くフランチェスコ・カフィーソの第三弾です。
カフィーソの日本デビュー盤は16歳の時、今からもう7年も前のことになるんですね。
もちろん、このアルバムの存在は知っていましたがノーマークでした。
改めて聴いてみるとこれも良かったです。

Vレーベルの特徴であるスタンダード作品集。
バックはデヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、デヴィッド・ウィリアムス(b)、ジョー・ファーンズワーズ(ds)
というものでエリック・アレキサンダー(ts)ならそのまま「ジェントル・バラード」になるかな。

カフィーソはまず音色が実に鋭角的で若々しく漲る力強さがあります。
ソロも恐ろしいほどスムーズで驚くしかありません。
多分、メンバーからは「好きなように吹いていいよ」って言われていたんでしょうね。
各曲にカフィーソの感性が溢れています。
鋭く突き刺さる音色は老体には堪えるけれど心にもビンビン響いてくる。

・・・ベストは(5)「ESTATE」・・・
つい、「あ〜、いいなぁ〜」とつぶやいてしまいました。
これほど刺激的で魅力的な「エスターテ」は聴いたことがありません。
「エスターテ」(夏)はイタリアのピアニスト、ブルーノ・マルティーノの作品です。
やはり、イタリア人の心はイタリア人が一番よく分かるということですね。
ここでも定番のボサノバのリズムで演奏されましたがこれは本当に素晴らしかった。
(7)「IMAGINATION」はピアノとのデュオなんだけどここにも才能がきらめいていました。
モンクの(2)「REFLECTIONS」や(6)「WHAT'S NEW」のバラードも良かったです。
(8)「WILLOW WEEP FOR ME」のハジケ具合も半端じゃない。

他にも聴きどころがいっぱいで1曲が終わるたびに「うーん」と唸ってしまいました。
やっぱり凄い・・・ウィントン・マルサリス(tp)が「イタリアで見つけた宝石」と言ったらしい。

ひとつ言えることはカフィーソはもうこのようにストレートにスタンダードは
吹かないのではないかということです。
そういう意味でも貴重なアルバムといえるのかもしれませんよ。

(中間系)




(541) STEVE GROSSMAN QUARTET & QUINTET & SEXTET
/ HOMECOMING

steve grossman(ts), tom browne(tp), bill washer(g),
larry willis(p), joe farnsworth(ds), john webber(b), ruben rodriguez(b),
ralph irizarry(timbales), roberto quintero(cong), chuggy carter(shaker)

2011/CHEETAH/


スティーヴ・グロスマン(ts)の新譜は中村照夫さんのチーター・レーベルから出ました。
マイルス・デイビス・グループに参加したことにより世に出たグロスマンも息の長いプレイヤーです。
このHPを始めた2000年頃はよく聴いていたものです。
しばらくご無沙汰していましたが去年のベスト3に選ばれたので興味を持ちました。

共演陣にはトム・ブラウン(tp)、ラリー・ウィリス(p)、ジョン・ファーンズワーズ(ds)等が名を連ねていました。
特にトム・ブラウンは懐かしく思いました。
フュージョン・シーンの人気トランペッターだったトム・ブラウンはすでに引退したと聞いていたから・・・。
再びカムバックしてきたのは嬉しい限りです。

収録の8曲はオリジナルが2曲、スタンダード3曲、それにケニー・ドーハム(tp)の(1)「UNA MAS」、
モンゴ・サンタマリア(per)の(3)「AFRO BLUE」、リー・モーガン(tp)の(5)「CEORA」など。
カルテット演奏はジャズ・テイストが強く(2)「KATONAH」と(6)「IRRESISTABLE YOU」と
バラードの(7)「IN A SENTIMENTAL MOOD」、(8)「TAKE THE D TRAINの4曲で聴けます
唄もの(4)「THIS TIME THE DREAM'S ON ME」はギター入りのクインテット編成、
上記の5曲はワン・ホーンでじっくりと聴かせてグロスマンの持ち味が生かされます。

(1)「UNA MAS」、(3)「AFRO BLUE」、(5)「CEORA」はフロント2管、ラテンのリズムで楽しめました。

編成やリズムが多彩で構成もよく考えられていると思います。
グロスマンは重たいと感じる人にも十分聴きやすい作品に仕上がっているので魅力十分です。

チーター・レーベルを買ったのはオナージェ・アラン・ガムス(p)に続いて2枚目です。
中村さんはどうやらこの傾向のサウンドで行くようですね。
今度はボブ・ミンツァー(sax)を聴いてみようかな・・・。

(くつろぎ系)